就労定着支援とは何か。開業から運営まで、全体像をまとめます。

福祉事業の開業と運営



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就労定着支援は、平成30年(2018年)4月に創設された比較的新しい障害福祉サービスです。就労移行支援などを利用して一般就労した障害者が、職場や生活の中で生じる課題に対応できるよう、最大3年6か月にわたって継続的に支援します。

この記事では、就労定着支援の概要・対象者・人員基準・報酬の仕組み・開業の流れまでを、厚生労働省の省令と告示の数字をもとに整理します。「就労定着支援を新たに開設したい」「就労移行支援との違いを知りたい」という方に向けて書いています。

就労定着支援は、就労後の「定着」を担う福祉サービスです

就労定着支援は、就労移行支援・就労継続支援・生活介護・自立訓練(以下「就労移行支援等」)を利用して一般就労した障害者を対象に、就労後の生活リズムや職場内の人間関係、体調管理など、働き続けるうえで生じる課題に応じた相談・調整を行うサービスです(障害者総合支援法第5条第15項の2)。

支援の具体的な内容は、利用者の職場への訪問または事業所への通所を組み合わせた面談です。月1回以上の連絡(訪問・通所のいずれか)が義務づけられており、就労先の担当者や家族、医療機関との連絡調整も含まれます。

対象者:就労移行支援等を利用した後、一般就労した人です

利用できる人は、就労移行支援等を利用して一般就労した障害者であり、就労後1年6か月未満の期間に支援が始まります(基準省令第175条・利用期間が開始した後は最大3年6か月)。就労移行支援等を経ずに就職した場合は対象外です。

利用期間は最大3年6か月です

就労定着支援の利用期間は、就労移行支援等のサービス終了後から最大3年6か月です。利用期間の内訳は、初年度から3年目まで(1年ごとに更新)+最終6か月の4段階です。

利用期間が限られているため、利用者の入れ替わりが継続的に発生します。1年目・2年目は「就労定着率の実績なし」として最も低い報酬区分(3割未満・1,074単位)が適用されますが、3年目以降は前年度の就労定着率によって報酬区分が上がる仕組みです(詳しくは後述)。

人員配置基準は、就労定着支援員と管理者の2種類です

人員基準(基準省令第175条の2)では、次の2職種が必要です。

職種 配置基準 兼務
就労定着支援員 常勤換算1人以上 就労移行支援等の従事経験者。他のサービス職員との兼務可
管理者 常勤の者1人以上 支障のない範囲で他のサービスの管理者との兼務可

就労定着支援員の要件は、就労支援に関する知識・経験が2年以上(就労移行支援・就労継続支援・障害者職業センター等での勤務経験)であることが求められます(省令上の要件の詳細は指定基準の解釈通知を確認してください)。

設備基準は、相談室と備品だけです

就労定着支援の設備基準(基準省令第175条の3)は、次のとおりです。

  • 相談室:プライバシーを確保できる構造のもの(他のサービスとの共用可)
  • 必要な備品(書類棚・PC等)

訪問型の支援を主体とするため、通所定員のような概念がなく、面積基準もありません。既存の就労移行支援等の事業所があれば、相談室を共用するだけで指定申請が可能です。

報酬の仕組みは、就労定着率が翌年度の単位数を決めます

就労定着支援の基本報酬は、「登録利用者数に対する就労定着者(6か月以上就労が継続した者)の割合(=就労定着率)」によって7段階に分かれます(告示523・令和6年4月改定)。

区分 就労定着率 基本報酬(単位数/月) 地域単価1単位=10.73円(6級地)換算
1 9割5分以上 3,512単位 約37,683円/月
2 9割以上 3,348単位 約35,925円/月
3 8割以上 2,768単位 約29,700円/月
4 7割以上 2,234単位 約23,970円/月
5 5割以上 1,690単位 約18,133円/月
6 3割以上 1,433単位 約15,374円/月
7 3割未満 1,074単位 約11,524円/月

出典:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(告示523)令和6年4月改定版

地域区分は人件費割合60%で算定されます。地域ごとの単価は異なります(上表の換算例は6級地=1単位10.73円で計算。実際の地域単価は各都道府県の障害福祉サービス等報酬改定の資料で確認してください)。

報酬は「登録利用者1人あたり月額」で支払われます

就労定着支援の報酬は、登録利用者1人につき月1単位、上記の単価が支払われます。登録利用者が20人いれば月間報酬は「基本報酬×20」が上限の目安です(実際には加算の有無によって変わります)。

開業の流れは、4つのステップです

就労定着支援の指定申請から開業までの流れは、他の障害福祉サービスと共通です。

  1. 法人格の取得:株式会社・合同会社・NPO法人など(社会福祉法人でなくても可)
  2. 人員・設備の確保:就労定着支援員の採用と相談室の用意
  3. 都道府県・政令市への指定申請:申請から指定まで1〜2か月が目安(自治体によって異なる)
  4. 開業・登録利用者の受け入れ開始

就労定着支援は単独での開業も可能ですが、実際には就労移行支援事業所が追加で指定を取るケースが多いです。既存の事業所の設備・職員を活用できるため、初期費用を抑えやすいという理由があります。

処遇改善加算も対象です(令和8年6月施行分)

令和6年度以降の処遇改善加算(令和8年6月施行の新加算体系)の対象サービスに、就労定着支援も含まれます。加算率(令和8年6月施行)は次のとおりです。

区分 加算率
処遇改善加算Ⅰイ 11.5%
処遇改善加算Ⅰロ 11.9%
処遇改善加算Ⅲ 9.8%
処遇改善加算Ⅳ 8.1%

出典:令和6年度障害福祉サービス等報酬改定(令和8年6月施行分)厚生労働省

就労定着支援の収支の目安

就労定着支援の収支は、登録利用者数と就労定着率によって大きく変わります。1年目・2年目は最低区分(3割未満・1,074単位)が適用されるため、登録利用者が少ない段階での収入は限られます。

例として、登録利用者20人・最低区分(1,074単位)・6級地(1単位10.73円)の場合:
1,074単位×20人×10.73円=約23万円/月の基本報酬

職員1名分の人件費・事務費を賄うためには、登録利用者を一定数確保することが必要です。具体的な試算は、下のシミュレーターで地域単価や人件費を入れて確認してください。

まとめ:就労定着支援の開業を検討する際の3つの確認ポイント

  1. 就労移行支援等との連携:単独開業より既存事業所への追加指定の方が人員・設備コストを抑えやすい
  2. 1〜2年目の収益計画:最低区分(1,074単位)が適用されるため、登録利用者数の見込みを保守的に立てる
  3. 就労定着率の管理:3年目以降の報酬区分を左右するため、定着状況のモニタリング体制が重要

就労定着支援の収支を、地域単価・登録利用者数・人件費を入れて試算できます。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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