就労定着支援は、就労移行支援等の障害福祉サービスを経て一般就労した方が利用できるサービスです。就労移行支援から就労定着支援への引き継ぎは、利用者の就労継続を支えるうえで最も重要な転換点となります。利用条件・手続き・支援の連続性を確保するための実務上のポイントを整理します。
就労定着支援の利用条件:就労移行支援等の利用が前提
就労定着支援を利用できるのは、以下の障害福祉サービスを経て一般就労(雇用契約に基づく就労)した方です(省令第171号)。
| 直前のサービス | 補足 |
|---|---|
| 就労移行支援 | 最も多いルート。2年間(最大3年)の利用後に一般就労した方が対象 |
| 就労継続支援A型 | A型から一般企業への就職後に就労定着支援に移行できます |
| 就労継続支援B型 | B型から一般企業への就職後に移行できます |
| 生活介護 | 生活介護から一般就労した場合も対象となります |
| 自立訓練(機能訓練・生活訓練) | 自立訓練を経て一般就労した場合も対象です |
重要な条件として、「一般就労後6か月以内に就労定着支援の利用を開始すること」が求められています(省令第171号・解釈通知)。一般就労から6か月を超えた場合は就労定着支援の対象外となりますので、就職後すみやかに手続きを進めることが必要です。
就労移行支援から就労定着支援への移行手続き
就労移行支援から就労定着支援へ移行する際の手続きの流れは以下のとおりです。
| ステップ | 内容 | 担当者 |
|---|---|---|
| ①就職内定・雇用契約の確認 | 就労移行支援の支援員が就職内定・雇用契約の成立を確認する | 就労移行支援員 |
| ②就労定着支援の利用申請 | 利用者または保護者が市区町村の窓口で就労定着支援の支給決定を申請する | 利用者(必要に応じて就労移行支援員が同行) |
| ③受給者証の発行 | 市区町村が審査・支給決定を行い、就労定着支援の受給者証を発行する | 市区町村 |
| ④就労定着支援事業所の選定・契約 | 利用者が就労定着支援事業所を選び、重要事項説明を受けて利用契約を結ぶ | 就労定着支援事業所・利用者 |
| ⑤就労定着支援の開始 | 雇用開始(入社)後、就労定着支援によるサポートが始まる | 就労定着支援員 |
市区町村の審査・受給者証の発行には一定の時間(数週間〜1か月程度)がかかることがあります。就職が決まったらすみやかに申請手続きを開始することが重要です。「就職後に手続きをしようと思っていたが6か月を超えてしまった」というケースを防ぐため、就労移行支援の段階で利用者・家族に申請手続きの流れを事前に説明しておくことが実務上の基本です。
就労移行支援事業所と就労定着支援事業所が同一の場合の扱い
就労移行支援事業所と就労定着支援事業所が同一の法人・事業所(または親会社・子会社の関係)の場合でも、就労定着支援は独立した指定・届け出が必要な別サービスです。「就労移行支援の延長として自動的に就労定着支援を行う」ことはできません。
- 別途の指定が必要:就労定着支援を行うには、就労移行支援とは別に指定障害福祉サービス事業所として指定を受けることが必要です(省令第171号)
- 別途の利用契約が必要:利用者は就労定着支援の受給者証を取得し、就労定着支援の利用契約を別途結ぶ必要があります
- 報酬の別算定:就労定着支援の報酬は就労移行支援とは別に算定され、国保連に請求します
ただし、同一法人が就労移行支援と就労定着支援の両方を提供している場合、就労移行支援で培った利用者との関係・情報を活かしてスムーズな引き継ぎができるというメリットがあります。利用者にとっても、信頼関係のある支援員が続けて関わることで安心感につながります。
引き継ぎで連携すべき情報の整理
就労移行支援事業所から就労定着支援事業所への引き継ぎで共有すべき主な情報は以下のとおりです。
| 情報の種類 | 具体的な内容 | 重要度 |
|---|---|---|
| 障害・医療情報 | 障害種別・診断名・受診先・服薬状況・主治医の連絡先 | 高(要配慮個人情報) |
| 就労移行支援での支援内容 | 就労訓練の内容・利用者の強み・課題・対処法 | 高 |
| 就労先情報 | 企業名・業種・担当者名・連絡先・雇用形態・勤務時間・賃金 | 高 |
| 職場での合理的配慮 | 企業が実施している配慮事項・利用者が希望する配慮 | 高 |
| 緊急連絡先 | 家族・保護者・主治医の連絡先 | 高 |
| 就労移行支援での個別支援計画 | 最終的な個別支援計画・モニタリング記録 | 中 |
引き継ぎには個人情報が含まれるため、利用者の同意を書面で取得してから情報を共有することが個人情報保護法上の原則です。就労移行支援の利用中から「就労後は就労定着支援に移行する予定であること」「引き継ぎのために就労定着支援事業所に情報を提供することがある」を利用者・家族に説明し、同意を得ておくことが実務上の基本です。
支援の連続性を保つためのポイント
就労移行支援での支援内容をそのまま引き継ぐことで、利用者が「また最初から説明しなければならない」という負担を減らすことができます。
- 就職直後の初回面談を早めに設定する:就労定着支援の初回面談は就職後できるだけ早く(入社1〜2週間以内が望ましい)設定します。職場環境への適応が最も困難な時期に支援をつなぐことで、初期離職のリスクを低下させます
- 就労移行支援員との合同面談の活用:就労定着支援の開始初期は、利用者が慣れるまで就労移行支援員と就労定着支援員が合同で面談を行う方法が有効です(費用は就労定着支援として算定します)
- 企業担当者への紹介:就労移行支援員が関係を構築していた企業担当者に就労定着支援員を紹介することで、企業側の安心感が高まり、連携がスムーズになります
- 引き継ぎ面談の記録化:引き継ぎで共有した情報・確認した事項を就労定着支援の支援記録(初回アセスメント記録)に残しておくことが、継続した支援の基盤になります
就労定着支援の利用期間と終了後の選択肢
就労定着支援の利用期間は最長3年(一般就労後から3年間)です。3年を超えて就労定着支援のサービスを継続することはできません(省令第171号)。
利用終了後(一般就労から3年経過後)も就労を継続している場合は、障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)への移行や、企業内のサポート体制での自立を目指す段階に進みます。3年間の就労定着支援を終えた利用者が安定した就労を継続できるよう、終了前から次の支援体制について検討しておくことが重要です。
就労定着支援の対象外となるケース
以下の場合は就労定着支援の対象となりません。
- 一般就労でない就労:就労継続支援A型・B型での就労は「一般就労(雇用契約に基づく就労)」に含まれないため、就労定着支援の利用条件を満たしません。A型・B型に戻る場合は就労定着支援の利用継続ができません
- 一般就労から6か月を超えた申請:就職から6か月以内に利用申請・支給決定が必要です。期限を過ぎると対象外になります
- 就労定着支援の対象となる直前サービスを利用していない場合:新卒で一般就労した場合など、上表の直前サービスを経ていない一般就労者は就労定着支援の対象外です
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参考・出典
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(厚生労働省令第171号・平成18年)
- 障害福祉サービス等報酬告示(令和6年厚生労働省告示第159号)
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について(解釈通知)
この記事は2026年11月時点の告示・通知に基づいています。報酬は改定されることがありますので、最新の告示を確認してください。
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