就労定着支援の報酬は、毎月の支援実績に基づいて国民健康保険団体連合会(国保連)に請求します。報酬請求は障害福祉サービス共通の仕組みに乗っていますが、就労定着支援は「就労定着率」によって報酬区分が決まる特有の算定ルールがあります。請求の流れ・算定確認の方法・返戻が起きた場合の対応を整理します。
就労定着支援の報酬請求は国保連経由が原則
就労定着支援の報酬は、利用者から直接受け取るものではありません。事業所は毎月の支援実績をもとに報酬を算定し、国民健康保険団体連合会(国保連)に請求します。国保連が審査し、原則として翌々月に支払われます。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 当月(1〜末日) | 支援を実施・記録する。支援実績を支援記録・サービス提供記録に記録する |
| 翌月1〜10日 | 国保連への請求データを作成・送信する(請求ソフトを使用) |
| 翌月下旬 | 国保連による審査 |
| 翌々月25日前後 | 国保連から事業所口座に入金(原則) |
実際の入金タイミングは都道府県・国保連によって若干異なります。「サービス提供月から2か月後」が目安ですが、詳細は所在地の国保連または指定権者に確認してください。
就労定着支援の報酬算定の基本:就労定着率区分が毎年更新される
就労定着支援の報酬は、1か月単位で利用者1人ごとに算定します。単位数は「就労定着率」に基づく区分(区分1〜7)で決まります。区分は毎年4月1日に更新されます。
| 区分 | 就労定着率 | 月額単位数 | 1級地(11.20円) | その他(10.00円) |
|---|---|---|---|---|
| 区分1 | 90%以上 | 3,512単位 | 39,334円 | 35,120円 |
| 区分2 | 80%以上90%未満 | 3,348単位 | 37,498円 | 33,480円 |
| 区分3 | 70%以上80%未満 | 2,768単位 | 31,002円 | 27,680円 |
| 区分4 | 60%以上70%未満 | 2,234単位 | 25,021円 | 22,340円 |
| 区分5 | 50%以上60%未満 | 1,690単位 | 18,928円 | 16,900円 |
| 区分6 | 40%以上50%未満 | 1,433単位 | 16,050円 | 14,330円 |
| 区分7 | 40%未満 | 1,074単位 | 12,029円 | 10,740円 |
事業所の就労定着率は、前年度4月1日から当年度3月31日の1年間に就労定着支援を利用した者のうち、当該年度末時点で雇用が継続されていた者の割合で算出されます。算出方法の詳細は解釈通知に定められており、指定権者への届け出が必要です。
開業初年度・2年目の区分の扱い
事業所を新規開設してから1年間(就労定着率の実績がない期間)は、区分の算定に特別な取り扱いがあります。
- 開業1年目(就労定着率の実績なし):開業から最初の4月1日を迎えるまでの期間は区分7(1,074単位)で算定する扱いになる場合があります。詳細は指定権者・国保連に確認してください
- 2年目以降:前年度の就労定着率に基づいて区分が更新されます。就労定着率を高めることが、翌年度からの報酬水準の改善に直結します
開業初年度は区分7での算定が続く見込みが高いため、固定費を抑えた体制でスタートし、就労定着率を高めながら収益基盤を構築していくことが重要です。
請求ソフトの準備と国保連への接続
国保連への請求はオンライン請求(伝送請求)が標準です。請求を行うには以下の準備が必要です。
- 障害福祉サービス対応の請求ソフトの導入:就労定着支援に対応した請求ソフト(例:カイポケ・Wiseman・ほのぼのNEXT等・他にも複数あります)を導入します。ソフトの選定・費用・サポート体制を比較して選ぶことをお勧めします
- 国保連への接続申請:請求ソフトを使ってオンライン請求を行うには、国保連へのオンライン請求の利用申請(電子証明書の取得等)が必要です。手続きには時間がかかるため、開業前から準備を始めることをお勧めします
- 受給者証の確認:利用者の受給者証に記載された「支給量」「有効期間」「負担上限月額」を請求前に確認します。期限切れの受給者証に基づく請求は返戻・過誤の原因となります
毎月の請求業務の流れ:5つのステップ
毎月の報酬請求は以下の5ステップで進めます。
| ステップ | 内容 | 担当・確認事項 |
|---|---|---|
| ①支援実績の確認 | 当月の支援実績(面談・連絡調整等)を支援記録で確認する | 月1回以上の支援実施義務(省令第171号)を満たしているか確認 |
| ②算定単位数の確認 | 各利用者の報酬区分と加算の算定可否を確認する | 区分の更新有無・加算の要件充足(処遇改善加算等)を確認 |
| ③請求データの作成 | 請求ソフトにデータを入力し、請求書(サービス提供実績記録票等)を作成する | 利用者の受給者証情報との照合 |
| ④国保連への送信 | 月10日までに請求データを国保連に送信する | 送信完了の確認(受付通知の確認) |
| ⑤支払通知の確認 | 翌々月に国保連から送られる支払通知書を確認し、入金額と照合する | 差異がある場合は返戻・減算の理由を確認する |
算定できる加算の種類と確認事項
就労定着支援では、基本報酬(区分1〜7)に加えて以下の加算を算定できます。
- 処遇改善加算(福祉・介護職員処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算):令和6年度から一本化・整理された加算。職員の賃金改善に要する費用として算定します。算定には加算取得に係る計画書の届け出と、対象職員への賃金改善の実施が必要です
- ピアサポート実施加算:障害当事者(ピアサポーター)を配置した場合に月100単位(事業所単位)算定できます。算定要件(障害者雇用・業務従事・研修修了・スーパーバイザー配置)の全充足が必要です
- 視覚・聴覚言語障害者支援体制加算(就労定着支援に適用される場合):指定権者・告示で対象かどうかを確認してください
加算の算定を開始・変更・廃止する場合は、算定月の前月末日(自治体によって異なる場合があります)までに指定権者への届け出が必要です。無届けでの加算請求は返戻・過誤の原因となります。
返戻が起きた場合の対応手順
国保連から「返戻」(請求が却下されて戻ってくること)が起きた場合は、以下の手順で対応します。
- 返戻の理由を確認する:国保連から送られる返戻通知書に返戻理由コードが記載されています。請求ソフトのサポートや国保連のコードリスト等を使って理由を特定します
- 主な返戻理由と対処法:
- 受給者証の有効期間切れ→受給者証の更新手続きを促す
- 支給量の超過→当月の請求単位数が受給者証の支給量を超えていないか確認
- 加算の届け出不足→指定権者への届け出を確認・不足分を提出
- 利用者情報の誤り(受給者番号・生年月日等)→受給者証の情報と照合して修正
- 再請求のタイミング:返戻になった請求は修正後、翌月の請求時に再請求できます。月10日の期限に間に合うよう、返戻通知を受け取ったら速やかに修正します
過誤申立て:誤って請求した場合の修正方法
すでに入金された請求に誤りがあった場合(過大請求・算定誤り等)は、「過誤申立て」という手続きで修正します。
- 過誤申立ての流れ:指定権者(都道府県・政令市等)に過誤申立書を提出→指定権者から国保連に通知→過誤分を翌月の請求で相殺または返戻
- 過誤の多い原因:加算の要件を満たしていないのに算定していた、区分の更新を誤った、兼務職員の常勤換算が不足していたのに算定を継続していた、など
- 自己点検の重要性:実地指導(運営指導)では請求内容と支援記録の整合性が確認されます。算定根拠となる書類(支援記録・加算届出書類・就労定着率の計算根拠等)を整備しておくことが、過誤や指摘を防ぐ最善策です
就労定着率の記録と算定のポイント
翌年度の区分更新のために、就労定着率の算定根拠となる記録を日常的に残しておくことが重要です。
- 雇用継続の確認記録:毎月の支援記録に、利用者の雇用が継続していること(就労先・雇用形態・勤務状況)を記録します
- 離職・転職時の記録:離職・転職が発生した場合は、いつ離職したか・理由・その後の状況(再就職の有無等)を記録します。転職して別の企業に就労継続している場合は、就労定着率の計算上「定着」とみなす扱いになる場合があります(解釈通知・指定権者に確認)
- 年度末の集計:3月31日時点で雇用継続している人数÷当該年度の利用者数(一定期間以上利用した者)で就労定着率を算出し、翌年度4月1日から適用する区分を指定権者に届け出ます
就労定着支援の開業・収支計画については、就労定着支援 収支シミュレーター(無料)で試算できます。
参考・出典
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(厚生労働省令第171号・平成18年)
- 障害福祉サービス等報酬告示(令和6年厚生労働省告示第159号)
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について(解釈通知)
この記事は2026年11月時点の告示・通知に基づいています。報酬は改定されることがありますので、最新の告示を確認してください。
福祉事業の開業・運営に関するツールと記事の一覧は福祉事業の開業と運営(入口ページ)にまとめています。収支シミュレーター・経営診断・法定研修キットを無料で試せます。


コメント