就労定着支援の実地指導。何を確認されるか。

就労定着支援の実地指導。何を確認されるか。 福祉事業の開業と運営

実地指導(運営指導)は、指定権者(都道府県・市区町村)が事業所を直接訪問し、指定基準への適合状況と報酬請求の適正さを確認する行政手続きです。就労定着支援でも対象となり、おおむね5〜6年に1回の頻度で実施されます。何を確認されるかを事前に把握しておくことが、日常の運営の質を保つことにつながります。

実地指導で確認される主な事項

実地指導では、主に以下の観点から確認が行われます。

  • 人員基準の充足(就労定着支援員・サービス管理責任者・管理者の配置状況)
  • 設備基準の充足(専用の区画・相談スペースの有無)
  • 運営規程の整備・掲示・利用者への説明
  • 就労定着支援計画(個別支援計画)の作成・見直しの実施状況
  • 支援記録の作成・保管状況
  • 就労定着率の計算根拠・報酬請求の適正さ
  • 利用者負担(自己負担)の適正な徴収
  • 虐待防止・身体拘束廃止の取り組み
  • BCP(業務継続計画)の策定状況
  • 苦情解決の仕組みの整備

就労定着率の計算根拠は必ず確認される

就労定着支援の実地指導で特に重要なのが、就労定着率の計算根拠の確認です。就労定着率は報酬区分を決める指標であり、虚偽の算定は不正請求に当たります。

指導員は以下の点を確認します。

  • 前年度の利用終了者の一覧が記録されているか
  • 終了者に対して就労継続の確認をどのような方法・タイミングで行ったか
  • 確認できなかった者を「就労継続できていない」として扱っているか
  • 算定した就労定着率区分と、請求した単位数が一致しているか

確認方法(面談記録・電話記録・メール等)と確認日が記録に残っていない場合、指導の対象になることがあります。

個別支援計画の作成・見直しが適正か

就労定着支援計画(個別支援計画)は、作成・見直しのプロセスが適正であることが求められます。

個別支援計画の実地指導での主な確認ポイント
確認ポイント 問題になるケース
計画の作成日 利用開始後に計画が作られている(事前作成が必要)
6か月ごとの見直し 見直しの記録がない・形式的にしか変更されていない
利用者・家族の同意 署名欄が空白・代理の同意の根拠がない
計画と支援記録の整合 計画に書かれた支援を実際にしていない

支援記録の内容と請求額の整合

実地指導では、支援記録の内容とサービス提供実績記録票(月次報酬請求の根拠)が一致しているかを確認されます。

よく指摘されるのは以下のようなケースです。

  • 支援記録に記載のない日付が実績記録票に計上されている
  • 電話相談のみで「訪問支援」として請求している
  • 月1回の面談を満たしていない月があるのに満額請求している

これらは不正請求と判断される可能性があり、過去に遡って返還を求められることがあります。

虐待防止・BCP は書類の整備と実施記録が必要

令和6年4月以降に義務化された虐待防止委員会・研修・担当者配置と、BCP(業務継続計画)の策定については、書類が整備されているだけでなく、実際に実施した記録が必要です。

  • 虐待防止委員会:年1回以上の開催・議事録の保存
  • 虐待防止研修:年1回以上の実施・参加者リスト・研修内容の記録
  • BCP:感染症・自然災害の両方を対象とした計画書の策定・年1回以上の研修・訓練の実施

書類はあるが実施記録がない、という状態は指導の対象になります。

苦情解決の仕組みの整備

省令では、利用者・家族からの苦情に対応する仕組みの整備が求められています。実地指導では以下を確認されます。

  • 苦情受付の窓口・方法が利用者に周知されているか
  • 受け付けた苦情の記録があるか(苦情ゼロの場合でも、受け付けた場合の記録様式を用意しているか)
  • 苦情への対応・改善の記録があるか

実地指導で改善指導を受けた場合の対応

実地指導で不備が指摘された場合は、指定権者から文書による改善勧告・指導が行われます。改善事項と期限が示されるため、期限内に改善して報告することが求められます。

重大な不備(虚偽の報酬請求・虐待行為等)については、指定取り消し・業務停止の行政処分に至る場合があります。

実地指導への備え。日常の記録管理が最大の準備

実地指導の日程は事前に通知されることが多く(無通知の場合もあります)、「直前に書類を揃える」という対応はリスクがあります。毎日の支援記録の作成・月次での実績記録票の確認・6か月ごとの計画見直しを日常業務として定着させることが、実地指導の最大の備えです。

就労定着支援の収支・運営状況を把握するツールとして、就労定着支援 収支シミュレーターも活用できます。

参考・出典

  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(厚生労働省令第171号・平成18年)
  • 「指定障害福祉サービス等の事業者に対する監査及び業務管理体制整備の確認に関する指針」(厚生労働省)
  • 各都道府県・市区町村の実地指導のガイドライン(各自治体のウェブサイト参照)

この記事は2026年11月時点の法令・通知に基づいています。実地指導の詳細な手順は指定権者によって異なります。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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