就労定着支援の利用者が失業した場合。報酬算定・就労定着率・収支計画の考え方。

就労定着支援の利用者が失業した場合。報酬算定・就労定着率・収支計画の考え方。 福祉事業の開業と運営

就労定着支援の利用者が失業した場合、就労していない期間は報酬の算定対象外となる可能性があります。就労定着率の計算への影響・事業者が取るべき対応・収支計画上の考慮点を整理します。

「一般就労の継続」が報酬算定の前提条件

就労定着支援の報酬は、利用者が「一般就労を継続していること」を前提として算定されます。障害福祉サービス等報酬告示・解釈通知において、就労定着支援の支援対象は「一般就労をしている者」とされており、就労していない状態の利用者については報酬算定の対象外となる場合があります。

失業(会社都合・自己都合を問わず一般就労の状態でなくなること)は、就労定着支援の報酬算定の前提が失われる状態です。失業中の利用者を支援することは事業者の判断で可能ですが、その期間の報酬を請求できるかについては指定権者に確認することをお勧めします。

失業時の報酬の取り扱い:就労していない期間は算定不可の可能性

就労定着支援の報酬算定に関する解釈通知では、報酬の算定は「当該月に就労定着支援を行った日数」ではなく「契約者数(就労している利用者数)」に基づくとされています。そのため、失業した利用者を契約者として算定し続けることは、算定の要件を満たさない可能性があります。

具体的な運用(失業後も契約を継続できるか・継続できる場合の最長期間等)は解釈通知に明確な規定がなく、自治体の判断による部分があります。失業した利用者が出た場合の対応については、指定権者に個別に確認することが必要です。

就労定着率の計算への影響:失業は「就労継続できていない」と扱われる

就労定着率は「前年度に就労定着支援の利用を終了した者のうち、当該年度の前年度末(3月31日)時点で就労を継続している者の割合」で計算されます。

利用終了時点または3月31日時点で失業(就労していない)状態にある元利用者は、「就労継続者」としてカウントされません。失業が就労定着率の分子から外れることで、区分が下がり報酬単位数が減少する可能性があります。

就労定着率区分と月額単位数(令和6年4月〜)
区分 就労定着率 月額単位数(1人あたり)
1 9割5分以上 3,512単位
2 9割以上9割5分未満 3,348単位
3 8割以上9割未満 2,768単位
4 7割以上8割未満 2,234単位
5 5割以上7割未満 1,690単位
6 3割以上5割未満 1,433単位
7 3割未満(新規1〜2年目含む) 1,074単位

区分1(9割5分以上)と区分7(3割未満)の差は月額約2,438単位/人であり、利用者が多いほど就労定着率の低下が収益に与える影響は大きくなります。

事業者が取るべき対応:早期に把握し再就職を支援する

利用者の失業・退職を事業者が早期に把握し、適切に対応することが就労定着率の維持と利用者の生活安定の両方につながります。

  • 早期把握のための定期連絡:月1回以上の支援連絡の中で、就労状況の変化を早期に把握します。企業担当者からも退職・解雇の動きがあれば事前に情報を得られるよう関係を構築しておきます
  • 失業前の早期介入:欠勤の増加・職場トラブルのサインを早期に察知し、本人・企業・医療機関と連携して対処することで、失業そのものを回避できる場合があります
  • 失業後の再就職支援との連携:失業が確定した場合は、就労定着支援の範囲を超えた再就職支援が必要になります。ハローワーク・障害者就業・生活支援センター・以前の就労移行支援事業所等との連携を早めに行います

会社都合による失業(倒産・解雇)の場合

本人の意思に関係なく、会社の倒産や一方的な解雇によって失業した場合も、就労定着率の計算における扱いは変わりません。解釈通知では、就労定着率の計算において「連絡が取れない者は就労継続できていないものとして扱う」とされており、失業の原因(本人都合・会社都合)による区別は規定されていません。

ただし、倒産・解雇後に速やかに再就職し、3月31日時点で就労継続している場合は「就労継続者」として扱えます。会社都合による失業であっても、再就職支援を積極的に行い、就労継続につなげることが重要です。

失業リスクへの収支計画上の備え

就労定着支援を開業する事業者にとって、利用者の失業は就労定着率の低下を通じて中長期的な収益に影響します。収支計画を立てる際には、一定割合の利用者が失業・転職・利用終了する可能性を見込んだ試算が必要です。

  • 新規開業の1〜2年目:就労定着率の実績がなく、最低区分(区分7・1,074単位)での算定。失業者が出ても報酬区分には直接影響しない(既に最低区分のため)
  • 3年目以降:前年度の就労定着率実績が報酬区分に反映される。失業者が多い年度の翌年度に区分が下がるリスクがある

収支の変動リスクも含めた3年間の試算は、就労定着支援 収支シミュレーター(無料)で行えます。Pro版では感度分析(就労定着率区分の変動シナリオ)も確認できます(買い切り9,800円)。

参考・出典

  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(厚生労働省令第171号・平成18年)
  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について(解釈通知)
  • 障害福祉サービス等報酬告示(令和6年厚生労働省告示第159号による改定版)

この記事は2026年11月時点の告示・通知に基づいています。報酬は改定されることがありますので、最新の告示を確認してください。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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