就労定着支援と就労継続支援B型の違い。

就労定着支援と就労継続支援B型の違い。 福祉事業の開業と運営

就労定着支援と就労継続支援B型は、どちらも障害のある方の就労に関わるサービスですが、支援の対象・目的・報酬の構造がまったく異なります。混同されやすいこの2つのサービスを、法令の規定をもとに比較整理します。

就労定着支援と就労継続支援B型の違い:一覧表

就労定着支援と就労継続支援B型の主な違い
項目 就労定着支援 就労継続支援B型
対象者 一般就労(雇用契約)に就いた障害者で、就職後6か月が経過した者 一般就労・就労移行支援の利用が困難な障害者(原則18歳以上)
支援の目的 就労継続・生活面の安定を支援(すでに働いている人のサポート) 就労機会の提供・生産活動の場の提供(事業所内で働く)
利用期間 最長3年(就職後6か月〜3年6か月) 上限なし(必要な限り継続可能)
事業所での活動 利用者は事業所に通所しない(外部の職場で働いている) 利用者は事業所に通所し、事業所内で作業をする
雇用契約 利用者と雇用先(一般企業等)の間に雇用契約がある 事業者と利用者の間に雇用契約はない(工賃制)
報酬の計算単位 月ごと(利用者1人につき月額報酬)・就労定着率で区分が変わる 日ごと(利用者1人・1日あたりの単位数)
最低賃金 利用者は一般就労しているため最低賃金の適用あり 工賃は最低賃金の適用外(月額工賃平均は全国約17,000円台)
スタッフの主な役割 職場・家族・医療機関との連絡調整・相談支援 作業指導・日常生活の支援・生産活動の管理

就労定着支援の対象者と就労継続支援B型の対象者

就労定着支援の利用者は「一般就労(雇用契約)に就いた障害者」です。すでに企業や団体に雇用されており、毎月給与を受け取っている方が利用対象です。就職後6か月が経過した時点から利用が始まり、最長3年間にわたって支援を受けることができます。

一方、就労継続支援B型は、一般就労が現時点では難しい方や、就労移行支援の利用が難しい方に就労機会を提供するサービスです。B型事業所に通所し、事業所内での軽作業・農作業・製造・清掃など多様な作業活動を通じて工賃を得ます。B型は雇用契約のない形態であり、利用者が受け取るのは工賃です。

支援の内容が根本的に異なる

就労定着支援は「すでに一般就労している人」を対象とするため、支援は主に外部の職場・家族・医療機関等との調整と相談支援です。就労定着支援員が職場に訪問したり、利用者と面談したりして、職場での困りごと・生活面の問題・体調の変化に対応します。事業所内で作業を行うサービスではありません。

就労継続支援B型は事業所に通所するサービスです。利用者は毎日または週に数回事業所に来て、作業や訓練を行います。作業の管理・日常生活の支援・健康管理・余暇活動の提供が主な支援内容となります。

報酬の仕組みの違い

就労定着支援の報酬は月額制で、就労定着率(前年度に利用を終了した者のうち、就労を継続できている者の割合)によって7段階の区分が設けられています。利用者1人につき月に1回以上の支援を行うことが原則で、月額の単位数が報酬として請求されます。

就労継続支援B型は日払い制です。利用者が事業所に通所した日数に応じて報酬が算定されます。利用者の平均障害支援区分・平均利用時間・定員数などによって単位数が異なります。稼働率(定員に対する実際の利用者数の比率)が収益に直結します。

報酬の仕組みの比較
項目 就労定着支援 就労継続支援B型
報酬の単位 月額(利用者1人×月) 日額(利用者1人×日)
収益に直結する指標 就労定着率・利用者数 利用者数×稼働日数(稼働率)
利用者が増えた場合 月額×人数分が増える 通所日数×人数分が増える
報酬区分の決まり方 就労定着率(年1回の実績による) 平均障害支援区分・平均利用時間・定員規模等

B型事業所が就労定着支援を追加できるか

就労継続支援B型の事業所が就労定着支援の指定を別途取得して、多機能型として運営することは制度上可能です。ただし、就労定着支援の対象は「一般就労に就いた者」であり、B型利用者(一般就労していない方)は就労定着支援の対象外です。B型事業所を利用しながら一般就労した方が、その後に就労定着支援を利用するという流れは想定されますが、運用上の整合に注意が必要です。

就労移行支援と就労定着支援の組み合わせ(多機能型)が多い理由の一つは、就労移行支援の利用者が就職後6か月で就労定着支援に移行するという流れが設計されているためです。B型から就労定着支援という流れは設計としては少数です。

利用者視点での違い

利用者の視点から整理すると、就労継続支援B型の利用者は事業所に通所して作業を行い工賃を得ていますが、就労定着支援の利用者は企業で働き給与を受け取っています。両者の日常は大きく異なり、支援のニーズも異なります。

  • B型利用者の主なニーズ:日常の作業指導・健康管理・生活全般のサポート
  • 就労定着支援利用者の主なニーズ:職場の人間関係・業務上の困りごと・生活リズムの維持・体調管理

どちらを開業するか迷う場合の視点

就労継続支援B型は、稼働率が安定すると収益が読みやすく、長期にわたる利用者との関係構築ができる反面、利用定員の確保と稼働率の維持が必要です。設備(作業スペース)の確保も求められます。

就労定着支援は、支援員1人で複数の利用者を担当できる効率性があり、設備基準も比較的シンプルです。ただし就労定着率によって報酬区分が変わり、利用者が就労を継続できているかどうかが事業所の収益に直接影響します。また、新規事業所は最初の3年間は就労定着率の実績がないため、最低区分(区分7)からのスタートになります。

就労定着支援の収支シミュレーションは就労定着支援 収支シミュレーターで確認できます。

参考・出典

  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)第5条第15項(就労継続支援B型)・第16項(就労定着支援)
  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(厚生労働省令第171号)
  • 障害福祉サービス等報酬告示(令和6年厚生労働省告示第159号)
  • 令和5年度障害福祉サービス等経営実態調査(厚生労働省)

この記事は2026年11月時点の法令に基づいています。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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