就労定着支援で算定できる加算は、処遇改善加算が中心です。報酬本体(就労定着率による7段階)に加算を上乗せすることで、スタッフの給与原資を確保する仕組みです。ただし、就労定着支援の加算の種類は他の障害福祉サービスに比べて少なく、算定できる加算の組み合わせも限られています。この記事では令和6年改定・令和8年6月施行の処遇改善加算を中心に、整理します。
就労定着支援で算定できる主な加算
令和6年4月改定および令和8年6月施行の改定を踏まえた、就労定着支援の加算の一覧です。
| 加算名 | 概要 |
|---|---|
| 福祉・介護職員等処遇改善加算(Ⅰイ) | 基本報酬に11.5%を上乗せ |
| 福祉・介護職員等処遇改善加算(Ⅰロ) | 基本報酬に11.9%を上乗せ |
| 福祉・介護職員等処遇改善加算(Ⅲ) | 基本報酬に9.8%を上乗せ |
| 福祉・介護職員等処遇改善加算(Ⅳ) | 基本報酬に8.1%を上乗せ |
出典:障害福祉サービス等報酬告示(令和6年厚生労働省告示第159号・令和8年改定反映版)
処遇改善加算(Ⅰイ)が最も加算率が高い
令和8年6月改定・施行済みの処遇改善加算では、区分Ⅰを「Ⅰイ」(加算率11.5%)と「Ⅰロ」(加算率11.9%)に分類しています。Ⅰイは就労定着支援員を含む対象職員への給与改善を基本的な要件として算定するもの、Ⅰロはそれに加えて月額賃金改善の一定額以上の引き上げ要件を満たした場合に算定できます。加算率はⅠロの11.9%がⅠイの11.5%より高く、要件を満たせる場合はⅠロが有利です。
ただし、Ⅰロを算定するためには職種間の賃金配分や昇給の仕組みに関する追加要件があります。算定しやすさも含めた判断が必要です。
処遇改善加算の算定要件
処遇改善加算を算定するためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 計画的な賃金改善に向けた計画(処遇改善計画)を作成し、指定権者(都道府県・市区町村)に届け出ること
- 加算額に相当する賃金改善を、対象となる職員に行うこと
- 就業規則等に職員の昇給の仕組み・要件が明記されていること(一部区分の要件)
- 加算の算定状況を職員に周知すること
処遇改善計画の届け出は年度当初(4月)に行い、翌年度の算定に反映されます。令和8年6月施行の改定については移行期間の取り扱いがあるため、指定権者への確認と届け出のタイミングを事前に把握しておくことが必要です。
加算を算定しないと収支が厳しくなる
就労定着支援は、報酬本体だけでは人件費を賄うのが難しいサービスです。特に新規事業所の1〜2年目は区分7(1,074単位/月)しか算定できないため、処遇改善加算を最大限に活用することが収支の安定に直結します。
区分7で処遇改善加算Ⅰロ(11.9%)を算定した場合の月額報酬(地域区分10割・1単位10円の地域として概算。実際の単価は自事業所の所在地の地域区分で異なります):
1,074単位 × 10円 × 1.119 = 約12,017円/人・月
契約者数10名では約12万円/月になります。人件費・家賃・通信費等の固定費を考えると、利用者数の確保と加算算定の両立が不可欠です。
就労定着支援では算定できない加算
他の障害福祉サービスで算定できる加算の中には、就労定着支援では算定できないものもあります。
| 加算名 | 算定できない理由 |
|---|---|
| 送迎加算 | 送迎は就労定着支援の提供内容に含まれない |
| 食事提供体制加算 | 食事の提供は就労定着支援の対象外 |
| 訪問支援特別加算 | 就労定着支援は訪問を前提としており別途加算なし |
| 医療連携体制加算 | 就労定着支援では対象外 |
就労定着支援は通所・訪問を組み合わせた支援であり、送迎や食事の提供を行うサービス形態ではないため、これらの加算が設定されていません。
特別加算(大都市・中山間地域等)の有無
障害福祉サービス全体では、事業所の所在地に応じた地域区分(地域加算)があります。東京都特別区・政令指定都市など人件費水準の高い地域では単位あたりの単価が高く設定されており、これにより実質的な報酬が増えます(これは加算ではなく単価の差異です)。
就労定着支援においても地域区分は適用されます。地域区分は1級地から7級地等まで分かれており、自事業所の所在市区町村の区分は国保連の資料または都道府県の窓口で確認できます。
令和8年6月改定の処遇改善加算は移行措置あり
令和8年6月施行の処遇改善加算の統合・再編(Ⅰイ・Ⅰロの区分設定)については、事業者への移行のための経過措置が設けられています。令和6年度・令和7年度に算定していた加算区分と、令和8年6月以降の新区分の対応関係については、厚生労働省の通知(令和8年改定に伴う告示・通知)で詳細が示されています。
既に処遇改善加算を算定している事業所は、令和8年6月以降の算定区分の変更・届け出が必要かどうかを、指定権者に確認してください。
収支計画に加算をどう組み込むか
就労定着支援の開業前の収支計画では、処遇改善加算の算定を前提とした試算と、加算なしの試算を両方行うことをお勧めします。加算の算定要件(計画の届け出・賃金改善の実施)を満たせるか否かによって、年間の報酬収入に数十万円の差が出ます。
就労定着支援の収支試算(加算込みの月次報酬の計算含む)については、就労定着支援 収支シミュレーターで試算できます。Pro版では月次36か月・資金繰りの試算も可能です。
参考・出典
- 障害福祉サービス等報酬告示(令和6年厚生労働省告示第159号・令和8年改定版)
- 障害福祉サービス等報酬に関するQ&A(厚生労働省・令和6年3月)
- 福祉・介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方(厚生労働省)
この記事は2026年11月時点の情報に基づいています。加算の要件・届け出時期は年度・改定により変わりますので、最新の通知を確認してください。
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