就労定着支援の支援内容。具体的に何をするか。

就労定着支援の支援内容。具体的に何をするか。 福祉事業の開業と運営

就労定着支援は「就労した後の定着を支援する」サービスですが、具体的に何をするのかは意外と知られていません。省令(厚生労働省令第171号)では、支援の内容・方法・頻度が一定程度定められており、単に「相談を受ける」だけではなく、職場・医療機関・行政機関との連携まで支援の範囲に含まれます。この記事では省令・解釈通知の原文を元に整理します。

就労定着支援の基本:就労に伴う生活面の課題に対応する

障害者総合支援法第5条第16項では、就労定着支援を「就労に伴う生活面の課題に対応するための支援」と定義しています。障害のある方が一般就労をした後に直面するのは、仕事の技術面の問題だけではありません。

  • 生活リズムの乱れ(起床・通勤・食事が不規則になる)
  • 職場の人間関係・コミュニケーションのトラブル
  • 体調管理(疲労・薬の管理・通院の時間確保)
  • 給与・税金・社会保険の手続きへの戸惑い
  • 家族・住居・金銭管理の問題

就労定着支援はこれらの「就労に付随する生活全般の課題」に対応することを役割としています。

支援の主な方法:面談・訪問・電話・関係機関との連絡調整

就労定着支援の支援方法は、省令(厚生労働省令第171号の就労定着支援に関する条文)で以下のとおり定められています。

  • 利用者との定期的な面談(事業所での対面・電話・オンライン等)
  • 職場や自宅等への訪問支援
  • 職場の担当者・上司等との連絡調整
  • 主治医・医療機関・保健センター等との連絡調整
  • ハローワーク・障害者就業・生活支援センター等の関係機関との連絡調整

月1回以上の面談が省令で義務付けられている

省令では、就労定着支援員は利用者と月に1回以上の面談(連絡調整)を行うことが求められています。面談の方法は対面に限らず、電話やオンラインでの相談対応でも認められる場合があります。

ただし、月1回はあくまで最低頻度です。就職直後や職場での問題が発生している時期には、週単位での対応が必要になるケースも多くあります。

「訪問支援」は職場への訪問が中心

就労定着支援における訪問は、主として利用者の職場(雇用先の企業等)への訪問を指します。職場の状況を把握し、職場の担当者(上司・人事担当者等)と直接情報を共有することで、早期の問題把握と対応が可能になります。

訪問の頻度や方法については省令に具体的な規定はなく、利用者・職場の状況に応じて事業所が判断します。就労定着支援計画(後述)に訪問の方針を明記することが一般的です。

就労定着支援計画を作成する義務がある

就労定着支援事業所は、利用者一人ひとりについて就労定着支援計画(個別支援計画)を作成しなければなりません(省令の運営基準の規定)。計画には以下の内容が含まれます。

  • 利用者の状況(就労先・業務内容・障害の状況)
  • 支援の目標(就労の継続・生活面の安定 等)
  • 具体的な支援内容・方法・頻度
  • 関係機関との連携方針

計画は少なくとも6か月ごとに見直すことが必要です。利用者・家族の意向を踏まえて作成・変更し、本人の署名(または確認)を得ることが求められます。

支援記録の作成も義務

支援を行った都度、支援の内容・時間・利用者の状況を記録する義務があります(省令の運営基準の規定)。記録の保存期間は省令の定めに従い、一般的な障害福祉サービスの記録保存と同様に一定年数(指定権者の指導に従うこと)保管することが求められます。

記録は、報酬の請求根拠にもなります。記録のない支援は報酬算定の対象にならないため、面談や訪問のたびに記録を残すことが運営上の基本です。

他機関との連携が定着率に直結する

就労定着率(報酬区分を決める指標)を維持・向上させるためには、就労定着支援員単独での支援には限界があります。以下の関係機関との連携が実務上重要です。

連携する主な関係機関とその役割
機関 連携の目的・内容
職場(上司・人事担当) 職場環境の把握・合理的配慮の確認・問題の早期発見
主治医・精神科医等 体調変化の情報共有・診察への同行・受診勧奨
ハローワーク 転職相談・再就職への支援
障害者就業・生活支援センター 就労・生活両面の相談・行政手続きの支援
市区町村の障害福祉担当 サービス利用の変更・生活保護等の相談
家族 自宅での生活状況の把握・家族への支援情報提供

就労定着支援員が担う業務の範囲

就労定着支援員は、基本的に相談支援・連絡調整の役割を担います。以下は「就労定着支援員が行うこと」と「行わないこと」の整理です。

就労定着支援員の業務範囲
行うこと(省令・通知の範囲) 行わないこと
利用者との定期面談・相談対応 利用者の職場での業務代行
職場担当者との情報共有・調整 医療行為・服薬管理
医療機関・行政機関への連絡調整 法的手続きの代理(弁護士等が担う業務)
就労定着支援計画の作成・見直し —
支援記録の作成・保管 —

支援の実態:「月1回」だけでは不十分なケースが多い

省令の最低要件は「月1回以上の面談」ですが、就職直後の不安定な時期や、職場での問題が深刻化している場合には、週1〜2回の対応が必要になることもあります。就労定着支援の収支計画を立てる際には、1人のスタッフが担当できる利用者数(支援の頻度・移動時間を含む)を現実的に見積もることが重要です。

業界全体の就労定着率が低くなりやすい傾向のある時期(就職後1年以内)に手厚い支援を行うことが、結果として事業所の報酬区分の維持・向上につながります。

就労定着支援の収支計画(スタッフ1名あたりの担当可能人数の試算を含む)については、就労定着支援 収支シミュレーターで確認できます。

参考・出典

  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)第5条第16項
  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(厚生労働省令第171号・平成18年)
  • 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準について(解釈通知)

この記事は2026年11月時点の法令・通知に基づいています。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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