障害福祉サービスの種別、どの事業から始めるか。

生活介護




障害福祉サービスの種別、どの事業から始めるか。

障害福祉サービスの事業所を開業するとき、最初に決める必要があるのは「どの種別でやるか」です。放課後等デイサービス・生活介護・就労継続支援・グループホーム・短期入所など、種別によって対象の利用者・報酬の仕組み・必要な職員・開業資金が大きく変わります。

「どの事業から始めるか」を決めるのに、理念だけでは足りません。報酬の水準・必要な職員数・開業資金の現実的な負担・全国の事業所数(競合)をあわせて確認したうえで判断することが、開業後の経営安定につながります。

この記事では、主な障害福祉サービスの種別を比較し、それぞれの特徴を整理します。

各種別の収支シミュレーターをすぐに試してみたい方は、こちらからどうぞ。
▶ 福祉事業の開業・運営ツール一覧

障害福祉サービスの主な種別

障害福祉サービスは、大きく「障害者向け」と「障害児向け」に分かれます。さらに通所系・居住系・訪問系・相談支援系に分類されます。

分類 サービス種別 対象
通所系(障害者) 生活介護 主に障害支援区分3以上の障害者
就労継続支援A型 雇用契約を結んで働く障害者
就労継続支援B型 雇用契約なしで作業を行う障害者
就労移行支援 一般就労を目指す障害者(原則2年)
短期入所(通所型) 短期間(泊まりを含む)の支援が必要な障害者
居住系(障害者) 共同生活援助(グループホーム) 共同生活を営む障害者
通所系(障害児) 放課後等デイサービス 就学中の障害児(主に放課後・長期休暇)
児童発達支援 主に未就学の障害児
相談支援 計画相談支援(指定特定相談支援) サービス等利用計画を作成する相談支援専門員

この表に含まれないサービス(生活訓練・自立訓練・施設入所支援など)もありますが、個人・法人が新規に開業する場合に多く選ばれるのは上記の種別です。

各種別の基本的な特徴

生活介護

主に障害支援区分3以上(利用条件は年齢・区分で異なる)の障害者に、日中の活動支援・身体介護・創作活動などを提供するサービスです。

報酬は「障害支援区分×所要時間×定員区分」で決まります。区分が高いほど・所要時間が長いほど単価が上がるため、利用者の区分構成が収入に大きく影響します。

全国の事業所数は12,990か所(令和7年1〜3月)で、直近1年間で約1.6%増加しています(出典:厚生労働省「障害福祉サービス等の利用状況について」令和7年1〜3月期)。障害支援区分が高い利用者への人員配置が必要なため、開業時の人件費の水準は通所系の中で比較的高くなります。

就労継続支援A型

雇用契約を結び、最低賃金以上の賃金を支払いながら就労支援を行うサービスです。利用者は「従業員」であるため、労働関係法規(最低賃金・社会保険)の遵守が事業運営の前提になります。

報酬は評価点制(利用者の工賃水準・就労継続率・職場定着率等の評価)に基づく7区分で決まります。利用者への賃金(最低賃金×労働時間)は事業所の費用の中で最大の項目になります。全国の生活介護等と比べると収支差率が厳しい傾向があり、賃金を確保しながら運営を成り立たせる仕組みを開業前に検討しておく必要があります。

就労継続支援B型

雇用契約を結ばず、軽作業・農業・手工芸などを通じて就労訓練を行うサービスです。利用者への工賃は「特定費用」として報酬とは別に扱われます。

報酬は定員区分×前年度の平均工賃月額(14区分)によって決まるため、工賃の実績を積み上げていくことが収入の上昇につながります。A型と比べて最低賃金の制約が直接には適用されないため、農業系・クリーニング系・菓子製造などの作業に取り組む事業所が多くあります。

就労移行支援

一般就労(企業への就職)を目指す障害者に最長2年間の支援を行うサービスです。就職後の職場定着率が翌年度以降の報酬区分に反映されるため、就労支援の質が収入に直結する仕組みになっています。

新規指定の事業所は最初の2年間は「みなし」の区分で算定できますが、3年目以降は実績に基づく区分になります。就職実績を積み上げられない場合、3年目以降に報酬区分が下がります。就職支援の経験・人脈・企業とのつながりが事業の核心になります。

グループホーム(共同生活援助)

地域の住居で障害者が共同生活を送るためのサービスです。介護サービス包括型(生活支援員が常駐)と日中サービス支援型(夜間支援従事者が必要)の2つが主な形態です。

住居の確保(賃貸契約)が開業の前提となるため、不動産オーナーの理解・建物の構造設備の基準を満たすことが課題になります。通所系と異なり、365日24時間の支援体制が必要なため、夜勤対応の職員確保が重要になります。定員は4〜5人程度の小規模から運営できるため、少ない初期投資で始めやすい面もあります。

放課後等デイサービス

就学中の障害児を対象に、放課後や長期休暇中に療育・生活訓練・余暇活動を提供するサービスです。全国の事業所数は22,748か所(令和7年3月末)で、直近1年で+6.8%と拡大を続けています(出典:こども家庭庁「障害児通所支援の現状等について」2025年)。

利用者が「学校のある日」と「学校休業日(夏休み等)」で異なるため、報酬の計算も2種類の基本報酬を組み合わせて考える必要があります。定員10人以下から運営できるため開業資金の規模はやや小さく、個人・小規模法人が参入しやすい種別です。ただし事業所数の増加が続いており、地域によっては競合が多い環境になっています。

児童発達支援

主に未就学の障害児に発達支援を提供するサービスです。全国の事業所数は13,831か所(令和7年3月末)で直近1年で+10.2%と高い成長率が続いています(出典:こども家庭庁「障害児通所支援の現状等について」2025年)。放課後等デイサービスと組み合わせて「児発・放デイ両対応」で開業するケースも多くあります。

短期入所(ショートステイ)

障害者が短期間(日帰りから数日)施設に入所し、日常的な介護・支援を受けるサービスです。介護者の負担軽減(レスパイト)の目的で使われることも多く、地域の受け皿としての役割があります。全国の事業所数は6,565か所(令和7年1〜3月)で直近1年で+6.9%と増加しています(出典:厚生労働省「障害福祉サービス等の利用状況について」令和7年1〜3月期)。

単独型の事業所として開業する場合、24時間の職員配置が必要で人件費が高くなる傾向があります。既存の生活介護等の施設に附設する「本体との併設型」は職員を共用できるため採算が取りやすくなります。

計画相談支援(指定特定相談支援)

障害者がサービスを利用するためのサービス等利用計画を作成し、定期的にモニタリングを行うサービスです。「相談支援専門員」の資格が必要で、相談支援専門員1人が担当できる利用者数(概ね40〜50件程度)が収入の上限を決めます。設備への投資が比較的少ない一方、売上はほぼ人件費(相談支援専門員の人数)と担当件数で決まります。

どの種別を選ぶかの判断軸

①自分・スタッフが持つ経験・資格と一致するか

障害福祉サービスには、各種別に「サービス管理責任者(サビ管)」の配置が義務づけられています(児童発達支援・放デイは児童発達支援管理責任者)。サビ管・児発管になるには、実務経験の年数と都道府県が実施する研修の修了が必要です。

開業者本人または雇用するスタッフが、サビ管・児発管の要件を満たしているかどうかが、すぐに開業できるかどうかの最初の確認事項です。要件を満たしていない場合は、研修受講と実務経験年数の確保に時間がかかります。

②対象とする利用者とのつながりがあるか

放課後等デイサービスは学校・特別支援学校との連携が、就労継続支援は企業・就労支援機関とのつながりが、グループホームは地域の障害者相談支援事業所とのつながりが、それぞれ集客(利用者の確保)につながります。

開業後に「利用者が集まらない」という状況は、特に地域の相談支援事業所・基幹相談支援センターとの関係構築が遅れた場合に起きやすいです。開業前から地域の相談支援事業所・社会福祉協議会・特別支援学校などとの関係を作っておくことが重要です。

③初期投資と開業資金に現実的な余裕があるか

種別によって開業資金の規模が変わります。グループホームや通所系(放デイ・児発・生活介護)は定員規模・物件の状況によって差があります。短期入所の単独型は24時間対応の人員が必要なため、人件費という「毎月の固定費」が高い状態から始まります。

各種別の収支シミュレーターで開業資金と月次の資金繰りを確認してから、実現可能な規模を判断することをお勧めします。

④地域のニーズと競合状況

同じ種別でも、地域によって既存の事業所数・空き枠・利用待ちの状況は異なります。放課後等デイサービスは全国で22,748か所と事業所数が多く、都市部では1か所あたりの利用者を確保するのが難しくなっているエリアもあります。

一方で、短期入所・グループホーム・生活介護は利用したくても事業所数が少なく待機者が発生しているエリアも多くあります。開業を検討しているエリアの市区町村の障害福祉計画(第7期・令和6〜8年度)を確認すると、地域で不足しているサービスの種別が確認できます。

各種別を比較した開業の特徴

種別 定員の目安 報酬の主な決まり方 開業の難しさ
生活介護 20人以上 障害支援区分×所要時間 定員が大きく開業資金が多い
就労継続支援A型 10人〜 評価点制7区分 最低賃金を守りながら運営する
就労継続支援B型 10人〜 定員×工賃実績区分 工賃を生み出す作業の確保
就労移行支援 10人〜 就職実績に基づく区分 企業とのつながり・3年目の区分下落
グループホーム 4〜5人〜 障害支援区分×日 住居確保・24時間体制
放課後等デイサービス 10人以下〜 時間区分(学校のある日/休業日) 事業所数が多く地域競合
児童発達支援 10人以下〜 障害児支援区分(3区分) 未就学児の集客・保護者対応
短期入所(単独型) 6人〜 宿泊型/日中型の区分×障害支援区分 24時間対応の人件費が高い
計画相談支援 (人数制) 作成費+モニタリング費 相談支援専門員の確保

複数の種別を組み合わせるパターン

実際には、1つの法人が複数の種別を組み合わせて運営するケースも多くあります。代表的なパターンとして、次のものがあります。

放課後等デイサービス+児童発達支援:就学前(児発)から就学中(放デイ)まで一貫して支援できる。物件・職員を共用しやすい。

就労継続支援B型+就労移行支援:一般就労を目指す利用者と、通所継続が目標の利用者の両方を受け入れられる。

生活介護+短期入所:日中の通所(生活介護)と短期の宿泊(短期入所)を組み合わせて地域の支援拠点になる。短期入所の本体+附設型は職員を共用できるため採算が改善しやすい。

複数の種別を同一法人・同一施設で運営することは可能ですが、種別ごとに指定申請・報酬請求が必要になるため、開業時の事務負担が増えます。最初は1種別から始め、運営が安定してから追加する流れが現実的です。

収支シミュレーターで開業前に試算する

各種別の収支計画・開業資金・月次の資金繰りを試算できるシミュレーターを公開しています。定員・利用者の構成・人件費・地域区分を入力して、損益分岐点と3年分の収支を確認できます。


出典:厚生労働省「障害福祉サービス等の利用状況について」(令和7年1〜3月期)・こども家庭庁「障害児通所支援の現状等について」(2025年)・障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(告示523・令和8年6月施行版)。記載の数値は各資料に基づくものです。実際の開業要件・報酬の詳細は指定権者(都道府県・指定都市・中核市)にご確認ください。

各種別の収支シミュレーターをすぐに試してみたい方は、こちらからどうぞ。
▶ 福祉事業の開業・運営ツール一覧

福祉事業の開業・運営のツールと記事の一覧:fufumumu-design.com/fukushi/(無料で試せます)

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

ご質問はメールで。電話・面談はしていません。

fufumumu_designをフォローする
生活介護福祉事業の開業と運営
fufumumu_designをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました