放課後等デイサービスの法定研修 義務テーマと年間回数の一覧

放課後等デイサービスの研修は、何が義務で、年に何回か。基準の条文と国の解釈通知の原文で確かめた一覧(児童発達支援も同じ) 放課後等デイサービス・児童発達支援

放課後等デイサービスで、基準が研修や訓練を義務にしているテーマは、6つです。研修が5つ(虐待防止・身体拘束の適正化・感染症と食中毒・業務継続計画(BCP)・安全計画)、訓練が4つ(感染症・BCP・安全計画・非常災害)です。回数は、基準の条文には「定期的に」としか書かれていませんが、国の解釈通知で、虐待防止と身体拘束の研修は年1回以上、感染症の研修と訓練は年2回以上、BCPの研修と訓練は年1回以上とされています。虐待防止・身体拘束・感染症の研修は、新しく入った職員にも必ず行います。児童発達支援も同じです。

この記事では、基準の条文と、国の解釈通知の原文を読んで、義務の一覧と回数を確かめました。回数が書かれているのは、基準(省令)の本文ではなく、通知です。どこに何が書かれているかを、出典つきで整理します。

放課後等デイサービスで、義務になっている研修と訓練は、何ですか

基準(指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準)で、研修か訓練を「実施しなければならない」と定めているのは、次の6テーマです。条文は、どれも児童発達支援について書かれたもので、放課後等デイサービスには第71条で準用されます。

テーマ 研修 訓練 条文
虐待防止 義務 ー 第45条
身体拘束の適正化 義務 ー 第44条
感染症・食中毒 義務 義務(感染症) 第41条
業務継続計画(BCP) 義務 義務 第38条の2
安全計画 義務 義務 第40条の2
非常災害 ー 義務(避難・救出など) 第40条

条文の文言を、いくつか見てみます。

このほか、第38条第3項は、テーマを指定せずに、職員の資質を上げるための「研修の機会を確保しなければならない」と定めています。第38条第4項は、ハラスメントを防ぐための「方針の明確化等の必要な措置」を求めています。後者は研修そのものの義務ではありませんが、職員に方針を知らせる方法として、研修を使うこともできます。

年に何回、行えばよいですか

国の解釈通知は、虐待防止と身体拘束の研修を年1回以上、感染症の研修と訓練を年2回以上、BCPの研修と訓練を年1回以上としています。安全計画と非常災害の訓練には、回数の定めがありません。

テーマ 研修 訓練 新しく入った職員
虐待防止 年1回以上 ー 必ず行う
身体拘束の適正化 年1回以上 ー 必ず行う
感染症・食中毒 年2回以上 年2回以上 必ず行う
業務継続計画(BCP) 年1回以上 年1回以上 別に行うことが望ましい
安全計画 定めなし(定期的に) 定めなし(定期的に) ー
非常災害 ー 定めなし(定期的に) ー

通知の原文です。

安全計画については、研修や訓練の回数ではなく、設備の安全点検について、こども家庭庁の通知が目安を示しています。「少なくとも毎学期1回(年3回)以上の頻度で定期的に点検を行うことが重要である。」(出典:こども家庭庁「障害児支援における安全管理について」(令和6年7月4日))

条文に回数がないのに、なぜ「年1回以上」と言われるのですか

回数は、基準(省令)の本文ではなく、国が基準の読み方を示した解釈通知に書かれているためです。条文は「定期的に実施すること」までで、具体的な回数は通知が補っています。

この通知は、こども家庭庁のページで、令和6年の改正の「新旧対照表」として公開されています。表の左の欄(改正後)には改正で変わった部分が載り、上に挙げた回数の段落は、右の欄(改正前)にだけ載っています。このため当方は、この段落は令和6年の改正で変わっていない、と読んでいます。東京都の令和6年度の集団指導資料も、障害児通所支援について、次のように書いています。

「(5)虐待防止のための研修の実施◆全ての従業者に対して行うこと。◆年1回以上実施すること。」(出典:東京都「令和6年度 指定障害福祉サービス事業者集団指導 実地検査における主な指摘事項と行政処分について」)

運営指導などで根拠を説明するときは、「基準で定期的な実施が義務になっていて、回数は解釈通知で年1回以上とされている」と、分けて話せると確かです。

新しく入った職員にも、研修は必要ですか

必要です。通知は、虐待防止・身体拘束・感染症の研修を、新規採用時に「必ず」行うこととしています。BCPの研修は、新規採用時に別に行うことが「望ましい」という書き方です。

神戸市のハンドブックは、ほかの事業所で研修を受けている職員(掛け持ちの職員など)についても、次のように答えています。

「他の事業所で研修を受講している職員(登録ヘルパー、ダブルワークなど)にも必要か?⇒必要です。貴事業所の虐待防止に対する取組み、虐待の報告体制など、事業所に合わせた内容で研修を行ってください。」(出典:神戸市「事業所・施設での虐待防止研修 進め方ハンドブック」(令和5年3月))

入職のたびに、虐待防止・身体拘束・感染症の3つを受けてもらい、その記録を残すのが、漏れを防ぐ基本です。

研修・訓練・委員会は、どう違いますか

研修は知識を身につける場、訓練は実際に動けるかを確かめる場、委員会は方針を決めて見直す場です。高知市の集団指導資料は、次のように分けています。

「研修とは・・・・・職員のスキルアップや知識向上を目的とした機会の提供。(講義、動画視聴、eラーニング等)訓練とは・・・・・迅速に行動できるようにするための演習等。(実際の状況を想定し、実地及び机上で行うもの)」(出典:高知市「令和7年度 集団指導資料」)

委員会の回数も、通知に書かれています。

委員会 回数(通知)
虐待防止委員会 少なくとも1年に1回
身体拘束適正化検討委員会 少なくとも1年に1回
感染対策委員会 おおむね3月に1回以上

虐待防止委員会と身体拘束適正化検討委員会は、一体的に設置・運営してもよいとされています。委員会で話したことは、職員に周知するまでが求められています。

資料を配ったり、動画を見せたりするだけで、研修になりますか

配布や回覧だけでは、研修をしたことになりません。動画やeラーニングは研修の方法として認められていますが、理解できたかを確かめることが求められています。

高知市の資料は、運営指導で確認された不適切な事例として、次を挙げています。

「業務継続計画の周知(配布や回覧)のみで研修を実施したと認識している。」(出典:高知市「令和7年度 集団指導資料」)

神戸市のハンドブックは、資料配布やビデオ視聴で研修としてよいか、という問いに、次のように答えています。

「職員に教育・周知すべきことが適切に伝わっているか、十分理解されているかをレポート、ヒアリングなどで確認するようにしてください。」(出典:神戸市「事業所・施設での虐待防止研修 進め方ハンドブック」(令和5年3月))

読む形式や動画で行うなら、終わったあとに、確認テストやレポートで理解を確かめ、その結果を記録に残すのが確かなやり方です。

研修や委員会をしていないと、どうなりますか

報酬が減らされる減算の対象になります。虐待防止の措置(委員会・研修・担当者)をしていない場合は所定単位数の1%、身体拘束の適正化の措置をしていない場合も、放課後等デイサービス・児童発達支援では所定単位数の1%です。こども家庭庁の障害児向けの資料は、次のように書いています。

研修とは別に、業務継続計画(BCP)そのものを作っていない場合の「業務継続計画未策定減算」もあり、放課後等デイサービス・児童発達支援は所定単位数の1%です(「障害児相談支援、児童発達支援、医療型児童発達支援、放課後等デイサービス」(出典:こども家庭庁「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容(障害児関係)」(こども家庭審議会 障害児支援部会 資料1・令和6年3月28日))が、100分の1の対象として並んでいます)。

東京都の資料では、障害児通所支援の文書指摘(令和5年度実績)の1位と3位が、虐待防止と身体拘束の体制の不備でした。

「第1位・障害児の人権の擁護、虐待の防止等のための必要な体制の整備等に不備がある」(出典:東京都「令和6年度 指定障害福祉サービス事業者集団指導 実地検査における主な指摘事項と行政処分について」)

「第3位・身体的拘束等の適正化を図るため、必要な体制の整備を講じていない、又は講じているが不十分である」(出典:東京都「令和6年度 指定障害福祉サービス事業者集団指導 実地検査における主な指摘事項と行政処分について」)

何を記録しておけばよいですか

研修は実施した内容を、委員会は対応の状況を記録します。虐待防止委員会と身体拘束適正化検討委員会の記録は、5年間の保存が求められています。

実務では、次の項目を残しておくと、運営指導で説明しやすくなります。これは、上の通知と指摘事例をもとにした当方の整理です。

記録 残しておく項目の例
研修 実施日、テーマ、方法(集合・読み合わせ・動画など)、使った資料、受講者名簿、理解度の確認(テストの結果など)
欠席者へのフォロー 欠席した職員、フォローした日、方法、確認した人
訓練 実施日、想定した状況、参加者、行ったこと、見つかった課題、次に見直すこと
委員会 開催日、出席者、話し合った内容、決めたこと、職員への周知の方法と日

義務ではないけれど、行われることが多い研修は何ですか

国の調査では、障害特性の理解や、発達支援の基本を研修したいという事業所が多くなっています。こども家庭庁の委託調査(全国4,142事業所が回答)で、初任者向けに今後実施したい研修の内容は、次のとおりでした(複数回答・初任者研修の回答3,802事業所)。

内容 割合
障害特性について 70.7%
発達支援とは 69.9%
虐待について 57.9%
職員の虐待予防 55.4%
障害者虐待予防(身体拘束等) 54.9%
アセスメントに基づく支援 51.2%
感染症対策 49.0%
災害対策 45.2%
個人情報保護・守秘義務 41.4%
家族支援の定義 36.0%
職員のメンタルケア 34.3%

出典:こども家庭庁 令和5年度 子ども・子育て支援等推進調査研究事業「障害児支援における人材育成研修に関する実態調査」報告書(野村総合研究所・令和6年3月)の参考資料1(事業所向けアンケート 単純集計・質問124)。報告書のPDF

ガイドラインも、職員が理解しておくことの例として、次を挙げています。

「支援を適切に提供する上で、放課後等デイサービスに期待される役割、障害のあるこどもの発達の段階ごとの特性、障害種別・障害の特性、こどもと家族に対する適切なアセスメントと支援の内容・方法、関連する制度の仕組み、関係機関・団体の役割、児童虐待への対応、障害者権利条約の内容等を理解することが重要であり」(出典:こども家庭庁「放課後等デイサービスガイドライン」(令和6年7月))

また、令和8年10月1日から、カスタマーハラスメントへの対策が、すべての事業主の義務になります。「カスタマーハラスメントや求職者等に対するセクシュアルハラスメント(いわゆる「求職者等セクハラ」)の防止措置が事業主の義務となります(令和8年10月1日施行)。」(出典:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」) 保護者や利用者の家族への対応の方針を職員に知らせる場として、研修を使うこともできます。

同じ調査では、人材育成の課題として、「研修を受講する時間的余裕がない」が60.0%、「育成の体系・カリキュラムを整備できていない」が39.5%、「研修を実施する講師がいない・育成できていない」が35.4%、「研修の効果が可視化できない」が20.0%でした(質問139・4,142事業所)。通知に回数があるものだけでも、研修が年5回以上(虐待防止1・身体拘束1・感染症2・BCP1)、訓練が年3回以上(感染症2・BCP1)で、ここに安全計画と非常災害の研修・訓練、委員会、新しく入った職員への研修が加わります(当方の数え方)。時間と準備の負担をどう減らすかが、現場の悩みです。

児童発達支援も、同じですか

同じです。この記事で引用した基準の条文と通知は、もともと児童発達支援について書かれたもので、放課後等デイサービスには第71条で準用されています。多機能型の事業所も、同じ考え方で整理できます。ただし、指定権者(都道府県・市)が独自の資料で運用を示している場合があるので、集団指導資料などで最新の案内を確認してください。

研修と記録を、まとめて回すには

当方で、放課後等デイサービス・児童発達支援の研修を回すための道具「法定研修・訓練キット」を作りました。義務の6テーマと、国の調査などから選んだ6テーマの、あわせて12テーマの研修資料・確認テスト・受講記録・訓練記録・委員会の議題案・年間計画を、事業所の情報を入れて作れます。資料の引用は、この記事と同じく、国と自治体の原文です。職員は自分のスマホで受講でき、確認テストの結果を記録に取り込めます。

「虐待防止」のテーマは、記録や印刷まで無料で使えます。まずは、今年度の虐待防止研修から試してみてください。法定研修・訓練キットを開く

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この記事の出典

作成:fufumumu_design(放課後等デイサービス・児童発達支援の開業向け収支シミュレーターと、法定研修・訓練キットの作成者)。2026年9月26日に、各出典の原文を確認して作成しました。基準・通知の読み方の最終的な確認は、指定権者(都道府県・市)の案内でお願いします。引用した国・自治体の資料は、当方が引用・整理したもので、各機関が作成したものではありません。

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この記事を書いた人

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