就労移行支援の基本報酬(1日あたり)は、利用定員の区分と「就労定着者の割合」の組み合わせで決まります。就労定着者の割合は7段階あり、利用定員20人以下の事業所では、1日1,210単位から479単位まで、最大で2.5倍の開きがあります。新しく指定を受けた事業所は、最初の2年間は「30%以上40%未満」(定員20人以下なら879単位)とみなされます。実績で決まるのは3年目からです。3年目は、通常の計算と、国の通知が認める特例の計算のうち、有利なほうを使えます。
この記事では、告示(報酬の決まり)と留意事項通知の原文を確かめながら、区分の決まり方、開業後2年間の扱い、3年目の2つの計算式を、定員20人の例で順に計算します。区分が1つ下がると月にいくら変わるかも、仮の数字で試算しました。
- 基本報酬は、利用定員と就労定着者の割合の組み合わせで決まる
- 就労定着者は「就職して6か月働き続けた人」で、割合は利用定員で割る
- 就職した時期によって、どの年度の実績に入るかが変わる
- 新しく指定を受けた事業所は、2年間「30%以上40%未満」とみなされる
- 2年目は、1年目の実績が40%以上なら、その実績を使ってよい
- 3年目は、通常の式と特例の式のうち、有利なほうを使える
- 4年目からは、前年度と前々年度の実績で、毎年度の区分が決まる
- 年度の途中で指定を受けた事業所は、提供開始から24か月で数える
- 3年目に区分が1つ下がると、定員20人の事業所では月に約55万円の差になる
- 就労支援関係研修修了加算も、定着者の実績とつながっている
- 読み違えやすい点を、一覧にしておく
- 自分の計画で、年度ごとの区分と資金繰りを確かめる
- この記事の出典
基本報酬は、利用定員と就労定着者の割合の組み合わせで決まる
就労移行支援サービス費(Ⅰ)(あん摩マッサージ指圧師などの養成施設を除く一般の事業所)の単位数は、利用定員5区分×就労定着者の割合7区分の35通りです。利用定員20人以下と、21人以上40人以下の単位数は、次のとおりです。国の令和7年経営概況調査では、対象の296事業所のうち288事業所が定員20人以下でした。
| 就労定着者の割合 | 利用定員20人以下 | 利用定員21〜40人 |
|---|---|---|
| 50%以上 | 1,210単位 | 1,055単位 |
| 40%以上50%未満 | 1,020単位 | 881単位 |
| 30%以上40%未満 | 879単位 | 743単位 |
| 20%以上30%未満 | 719単位 | 649単位 |
| 10%以上20%未満 | 569単位 | 524単位 |
| 10%未満(0人を除く) | 519単位 | 466単位 |
| 0人 | 479単位 | 432単位 |
出典:平成18年厚生労働省告示第523号 別表第12の1 イ(厚生労働省 法令等データベースの現行条文)。当方で、厚生労働省「報酬算定構造・サービスコード表等(令和8年6月施行分)」の単位数と、35通りすべてが一致することを確かめています。
表の読み方は、縦に見ると分かりやすくなります。定員20人以下の列で、上の5段は1段ごとに140〜190単位下がります。開業後の区分になる30%以上40%未満の879単位から、1つ下の20%以上30%未満の719単位へは、160単位の差です。1単位の単価は地域で違い、「その他の地域」は10円、東京23区(1級地)は11.18円です。つまり、1人1日あたりの差は、その他の地域で1,600円(処遇改善加算の分を除く)になります。
就労定着者は「就職して6か月働き続けた人」で、割合は利用定員で割る
告示は、就労定着者の割合を、前年度と前々年度に、事業所で就労移行支援を受けたあと就職し、働き続けている期間が6か月に達した人の合計を、前年度と前々年度の利用定員の合計で割った割合としています。告示の原文の要点は次のとおりです。「当該年度の前年度又は前々年度において、当該指定就労移行支援事業所又は指定障害者支援施設等における指定就労移行支援等を受けた後就労(第13の1の注2に規定する指定就労継続支援A型事業所等への移行を除く。)し、就労を継続している期間が6月に達した者」(出典:告示第523号 別表第12の1 注3)
ここから、読み違えやすい点が3つ分かります。
- 分母は利用者の数ではなく、利用定員です。 利用者が定員より少なくても、分母は定員のままです。定員20人なら、2年分の分母は40人です。
- 就労継続支援A型への移行は、就職に数えません。 一般の企業などに雇用され、6か月働き続けた人が対象です。
- 数えるのは「6か月に達した年度」です。 就職した日ではなく、6か月に達した日が属する年度で数えます。そのため、年度の後半に就職した人は、次の年度の人数に入ります。
就職した時期によって、どの年度の実績に入るかが変わる
「6か月に達した年度」で数えるため、同じ人でも、就職した月によって入る年度が変わります。4月に開設した事業所で、年度(4月から翌年3月)ごとに考えると、次のようになります。
- 1年目の9月までに就職した人:翌年の3月までに6か月に達するので、1年目の実績に入ります。
- 1年目の10月以降に就職した人:6か月に達するのは2年目の4月以降なので、2年目の実績に入ります。
- 就職したあと6か月の前に離職した人:働き続けている期間が6か月に達していないので、数えません。
開業した年は、利用を始めた人が訓練を受けてから就職するまでに時間がかかります。1年目の実績に入るのは、開業から半年のうちに就職した人だけです。1年目の就労定着者は、多くを見込まないほうが計画が安全です。また、6か月に達する前に離職すると数えられないため、就職したあとの職場定着の支援が、報酬の区分に直接つながります。
新しく指定を受けた事業所は、2年間「30%以上40%未満」とみなされる
開業したばかりの事業所には、前年度と前々年度の実績がありません。そこで告示は、最初の2年間は、実績にかかわらず上から3番目の区分とみなすとしています。「指定就労移行支援事業所又は指定障害者支援施設等が新規に指定を受けた日から2年間は、就労定着者の割合が100分の30以上100分の40未満である場合とみなして、1日につき所定単位数を算定する。」(出典:告示第523号 別表第12の1 注4の2)
利用定員20人以下なら、開業から2年間は1日879単位です。この「みなし」は、実績がゼロでも下がらない代わりに、実績が良くても自動では上がりません。2年目に上の区分を使うには、次の手続きが必要です。
2年目は、1年目の実績が40%以上なら、その実績を使ってよい
留意事項通知は、2年目の扱いを次のように説明しています。「2年度目において、初年度の就労定着者の割合」が「100分の40以上となる場合は、初年度の実績に応じて基本報酬を算定しても差し支えないこととする。」(出典:留意事項通知(障発第1031001号)令和7年3月31日改正 新旧対照表 p.263〜264)
このときの割合は、1年目に6か月に達した人の数を、1年目の利用定員で割ります。定員20人なら、1年目に8人が6か月に達すると40%で、2年目は1,020単位を選べます。ただ、開業した年の前半は利用者が少なく、6か月に達するには1年目の前半に就職している必要があります。開業1年目に8人は、高い目標です。資金の計画では、2年目もみなしの879単位で考えておくのが安全です。
3年目は、通常の式と特例の式のうち、有利なほうを使える
3年目からは、実績で区分が決まります。通常の式は、1年目と2年目に6か月に達した人の合計を、2年分の定員の合計で割ります。これに加えて、留意事項通知は、3年目に限って次の特例を認めています。「3年度目における就労定着者の割合については、『初年度の利用定員に100分の30を乗じた数』と『2年度目において、就労移行支援を受けた後就労し、就労を継続している期間が6月に達した者(中略)』の合計数を初年度及び2年度目の利用定員の合計数で除して得た割合とすることができる。」(出典:留意事項通知 令和7年3月31日改正 新旧対照表 p.264。「中略」は、復職の支援を受けた人の扱いを定めた括弧書きです。原文のかぎかっこは二重かぎかっこに置き換えました)
特例の式は、1年目の実績の代わりに「定員の30%」を入れる計算です。開業した年は利用者が少なく、6か月に達する人も出にくいため、1年目の実績が定員の30%に届かない事業所では、この特例のほうが有利になります。定員20人の事業所で、2つの式を並べると次のようになります。
| 2年目に6か月に達した人(1年目は1人とする) | 通常の式 | 特例の式 | 3年目に使う区分 |
|---|---|---|---|
| 0人 | (1+0)÷40=2.5% | (6+0)÷40=15% | 10%以上20%未満・569単位 |
| 2人 | (1+2)÷40=7.5% | (6+2)÷40=20% | 20%以上30%未満・719単位 |
| 4人 | (1+4)÷40=12.5% | (6+4)÷40=25% | 20%以上30%未満・719単位 |
| 6人 | (1+6)÷40=17.5% | (6+6)÷40=30% | 30%以上40%未満・879単位 |
| 10人 | (1+10)÷40=27.5% | (6+10)÷40=40% | 40%以上50%未満・1,020単位 |
定員20人・1年目と2年目の定員も20人とした当方の計算です。特例の式の「6」は、1年目の定員20人×30%です。単位数は利用定員20人以下の列です。
この表から、2つのことが読み取れます。1つは、2年目の定着者が0人でも、特例の式を使えば3年目は15%となり、いちばん下の479単位ではなく569単位で止まることです。もう1つは、みなしの879単位を3年目も保つには、2年目に6人(定員の30%)が6か月に達する必要があることです。3年目の報酬は、2年目の就職と定着の結果で、ほぼ決まるといえます。
4年目からは、前年度と前々年度の実績で、毎年度の区分が決まる
特例の式が使えるのは3年目だけです。4年目からは、前年度と前々年度に6か月に達した人の合計を、2年分の定員の合計で割る通常の式になり、毎年度、割合を計算し直して届け出ます。告示は、この割合を「都道府県知事に対して障害保健福祉部長が定める様式による届出を行った就労定着者の割合」としています(出典:告示第523号 別表第12の1 注3)。
定員20人の例で、4年目の区分を計算すると次のとおりです。
- 2年目に6人、3年目に8人が6か月に達した場合:(6+8)÷40=35%で、30%以上40%未満の879単位
- 2年目に6人、3年目に2人の場合:(6+2)÷40=20%で、20%以上30%未満の719単位
- 2年目に2人、3年目に2人の場合:(2+2)÷40=10%で、10%以上20%未満の569単位
2年分の合計で決まるため、1年だけ実績が落ちても、前の年の実績が支えになります。反対に、落ちた年の実績は、翌年と翌々年の2回、区分の計算に入ります。就職と定着の実績を毎年、安定して出し続けることが、報酬を安定させることにつながります。
年度の途中で指定を受けた事業所は、提供開始から24か月で数える
年度の途中で開業した場合の「2年間」は、年度ではなく、支援の提供を始めてからの月数で数えます。留意事項通知は、「年度途中に指定された事業所については、支援の提供を開始してから2年間(24月)は、就労定着者の割合が100分の30以上100分の40未満の場合であるとみなして、基本報酬を算定する。」としています(出典:留意事項通知 令和7年3月31日改正 新旧対照表 p.264)。
2年目に1年目の実績を使う場合も、提供を始めた日から1年間の実績で計算します。届け出の時期や様式は、指定権者(都道府県・市)によって違うため、開業前に所在地の案内で確かめてください。
3年目に区分が1つ下がると、定員20人の事業所では月に約55万円の差になる
区分が1つ下がると、収入はどのくらい変わるのでしょうか。次の仮の条件で計算しました。
- 利用定員20人、1日の平均利用者14人、月の営業日22日(延べ利用日数は月308日)
- 地域区分は「その他の地域」(1単位10円)
- 処遇改善加算(Ⅱ)イ(11.3%)を算定
879単位から719単位に下がると、1日1人160単位の差です。160単位×308日=49,280単位に、処遇改善加算の11.3%を加えると約54,849単位で、金額にすると月に約55万円、1年で約658万円の差になります。定員20人の事業所の1年間の収入の全国平均は約2,791万円なので、その2割を超える額です。
この差は、人件費や家賃を減らさない限り、そのまま利益を押し下げます。開業の計画では、3年目の区分を「みなしのまま」と置かず、2年目の定着者の見込みから、区分が下がった場合の資金繰りも確かめておくことが大切です。
就労支援関係研修修了加算も、定着者の実績とつながっている
就労支援員に、国が定める研修を修了した人を置くと、1日6単位の就労支援関係研修修了加算を算定できます。ただし告示は、「当該指定就労移行支援事業所等における就労定着者の割合が零である場合は、算定しない。」としています(出典:告示第523号 別表第12の12)。
開業直後について、留意事項通知は「新たに指定を受けた日から1 年間は算定できない。なお、新たに指定を受けてから2 年目においては、前年度において就労定着者がいた場合には当該加算を算定することができる。」としています(出典:留意事項通知 令和7年3月31日改正 新旧対照表 p.269)。1年目は算定できず、2年目は1年目に定着者が1人でもいれば算定できる、という関係です。
読み違えやすい点を、一覧にしておく
- 分母は利用定員。 利用者数で割ると、割合が高く出てしまいます。
- A型への移行は数えない。 就労継続支援A型事業所などへの移行は、就職に含みません。
- 「6か月に達した年度」で数える。 就職した年度ではありません。
- 2年間のみなしは、上にも下にも動かない。 2年目に上の区分を使えるのは、1年目の実績が40%以上のときです。
- 3年目の特例は3年目だけ。 4年目からは、前年度と前々年度の実績による通常の式です。
- 地方公共団体が設置する事業所は、所定単位数の1000分の965。 告示の注3のただし書きです。
- 令和8年6月からの新規指定の基本報酬の引き下げは、就労移行支援には無い。 引き下げの対象は、就労継続支援B型・共同生活援助・児童発達支援・放課後等デイサービスです(厚生労働省「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について(報告)」社会保障審議会障害者部会 第155回 資料1)。
なお、令和9年4月に障害福祉サービス等の報酬改定が行われる見込みです。この記事の単位数は、令和8年6月以降の告示にもとづいています。開業が令和9年4月以降になる場合は、改定後の告示で確かめてください。
自分の計画で、年度ごとの区分と資金繰りを確かめる
当方の「就労移行支援 開業向け収支シミュレーター」は、定員と、1年目・2年目の就労定着者の見込みを入れると、この記事の2つの式で年度ごとの区分を自動で計算し、有利なほうを使います。開設後3年の収支と資金繰り、必要な資金の目安も試算できます。入れた定着者の見込みが、試算上の退所者の数を上回るときは注意も出します。年ごとの収支と主な指標は無料で使え、月ごとの資金繰りの表・グラフ・印刷は有料版(買い切り9,800円)です。入力は、お使いの端末の中にだけ保存されます。
この記事は、告示第523号(厚生労働省 法令等データベースの現行条文)、留意事項通知(令和7年3月31日改正の新旧対照表)、令和8年度報酬改定の改定事項の資料の原文を確認して書いています(確認日:2026年9月27日)。金額の試算は、記事中に書いた仮の条件によるもので、実際の収入を約束するものではありません。区分の届け出の時期や様式は、指定権者(都道府県・市)の案内で確認してください。作成:fufumumu_design
この記事の出典
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第523号・厚生労働省 法令等データベース)
- 厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の制定に伴う実施上の留意事項について」(障発第1031001号)令和7年3月31日改正 新旧対照表
- 厚生労働省「報酬算定構造・サービスコード表等(令和8年6月施行分)」介護給付費等単位数サービスコード その2
- 厚生労働省・こども家庭庁「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定における改定事項について(報告)」(社会保障審議会障害者部会 第155回 資料1・令和8年4月24日)
- 厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」
福祉事業の開業・運営のツールと記事の一覧:訪問介護・訪問看護・障害者グループホーム・放課後等デイサービス・児童発達支援・生活介護・就労移行支援・就労継続支援B型・短期入所の、収支シミュレーター・経営診断・法定研修キットとサービス別の記事(無料で試せます)
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