放課後等デイサービスの避難訓練は、年に何回か。基準・消防法・水防法の3つから確かめる(計画・記録・報告も/児童発達支援も)

放課後等デイサービスの避難訓練は、年に何回か。基準・消防法・水防法の3つから確かめる(計画・記録・報告も/児童発達支援も) 放課後等デイサービス・児童発達支援

放課後等デイサービスの避難訓練は、事業所の基準で「定期的に」行うことが義務です。基準と国の解釈通知には、年何回という回数は書かれていません。一方、消防法では、防火管理者を置く事業所は、消火訓練と避難訓練を年2回以上行い、事前に消防機関へ通報することになっています。さらに、浸水想定区域や土砂災害警戒区域にあり、市町村の地域防災計画に名前が載った事業所は、避難確保計画に沿った訓練を行い、その結果を市町村長に報告する義務があります。児童発達支援(センター以外)も同じです。

つまり、何回行えばよいかは、3つの決まりのうち、どれが自分の事業所に当てはまるかで変わります。この記事では、基準・消防法・水防法と土砂災害防止法の原文と、自治体の集団指導資料をもとに、当てはまるものの見分け方と、記録・報告の残し方を整理します。

まず、3つの決まりのどれが当てはまるかを確かめる

次の表で、自分の事業所に当てはまる行を確かめてください。当てはまる決まりが複数あれば、すべてを満たす必要があります。

決まり 当てはまる事業所 訓練の回数 報告・通報 根拠
事業所の基準 すべての放課後等デイサービス・児童発達支援 定期的に(回数の定めなし) 記録を残す(自治体の指導) 基準 第40条第2項
消防法 防火管理者を置く事業所(事業所だけで収容人員30人以上の場合など。入っている建物全体で対象になる場合もある) 消火訓練と避難訓練を年2回以上 実施する前に消防機関へ通報 消防法施行規則 第3条第10項・第11項
水防法・土砂災害防止法 浸水想定区域・土砂災害警戒区域にあり、市町村地域防災計画に名称と所在地が載った事業所(要配慮者利用施設) 避難確保計画で定めるところにより 避難確保計画と、訓練の結果を市町村長に報告 水防法 第15条の3、土砂災害防止法 第8条の2

消防法と水防法の欄が当てはまるかどうかは、事業所の側だけでは判断しにくいところです。所轄の消防署(防火管理者が必要か)と、市町村の防災の担当課(地域防災計画に載っているか)に確かめるのが確実です。

事業所の基準は、何を求めていますか

基準の第40条は、非常災害の計画を立てて職員に周知することと、定期的な訓練を求めています。

「指定児童発達支援事業者は、非常災害に備えるため、定期的に避難、救出その他必要な訓練を行わなければならない。」(出典:指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準(e-Gov法令検索))

「指定児童発達支援事業者は、前項に規定する訓練の実施に当たって、地域住民の参加が得られるよう連携に努めなければならない。」(出典:指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準(e-Gov法令検索))

条文は児童発達支援について書かれたもので、放課後等デイサービスには第71条で準用されます。解釈通知は、ここでいう計画を、消防計画と風水害・地震などの計画の両方としています。

「「非常災害に関する具体的計画」とは、消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号)第3条に規定する消防計画(これに準ずる計画を含む。)及び風水害、地震等の災害に対処するための計画をいう。」(出典:こども家庭庁「児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(令和6年改正の新旧対照表))

「訓練の実施に当たっては、消防関係者の参加を促し、具体的な指示を仰ぐなど、より実効性のあるものとすること。」(出典:こども家庭庁「児童福祉法に基づく指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準について」(令和6年改正の新旧対照表))

基準と通知に、訓練の回数の定めはありません。研修や、ほかの訓練の回数は、放課後等デイサービスの研修は、何が義務で、年に何回かで一覧にしています。

非常災害対策計画(訓練の計画)には、何を書きますか

船橋市の集団指導資料は、国の通知(平成28年9月9日付 障障発0909第1号)の概要として、非常災害対策計画に入れる9つの項目を挙げています。「非常災害対策計画は火災のみでなく、水害・土砂災害、地震等地域の実情にも鑑みた災害にも対処できるものとし、枠内の項目例を参考に実効性のあるものとすること。」(出典:船橋市「令和7年度 指定障害福祉サービス事業者等集団指導(障害児通所支援事業所等)」 p.37)

計画に入れる項目(原文) 訓練で確かめること(当方の案)
1 「障害児通所支援事業所等の立地条件」 ハザードマップで想定した災害が、訓練の想定に入っているか
2 「災害に関する情報の入手方法」 避難の情報をだれが、何で受け取るか
3 「災害時の連絡先及び通信手段の確認」 保護者・職員への連絡が実際につながるか
4 「避難を開始する時期、判断基準」 だれが、どの情報で避難を決めるか
5 「避難場所」 避難場所まで実際に行けるか
6 「避難経路」 かかった時間、通れない場合の別の道
7 「避難方法」 児童ごとの避難の方法(歩けない・飛び出しやすい子など)
8 「災害時の人員体制、指揮系統」 職員が少ない時間帯でも回るか
9 「関係機関との連携体制」 消防・市町村・保護者への連絡の手順

出典:船橋市「令和7年度 指定障害福祉サービス事業者等集団指導(障害児通所支援事業所等)」 p.37〜38(項目の名前)。右の列は当方の案です。

同じ資料は、訓練で計画を確かめて、見直すことも求めています。「避難訓練を実施し、非常災害対策計画の内容を検証し、見直しを行うこと。」(出典:船橋市「令和7年度 指定障害福祉サービス事業者等集団指導(障害児通所支援事業所等)」 p.37) 訓練は、計画が実際に使えるかを試す場でもあります。なお、指定権者によっては、条例で上乗せの決まりを置いている場合があります。船橋市の資料は、計画の周知の範囲について、次のように書いています。「船橋市は条例において非常災害対策計画の周知の範囲を従業者並びに利用する障害児及びその家族等と定めているため、従業者までと定めている事業所においては運営規程を変更してください。」(出典:船橋市「令和7年度 指定障害福祉サービス事業者等集団指導(障害児通所支援事業所等)」 p.31)

消防法の「年2回以上」は、どんな事業所に当てはまりますか

消防法施行令の別表第一で、放課後等デイサービスと児童発達支援(センター以外)を行う施設は、(六)項ハに挙げられています。「児童発達支援センター、児童心理治療施設又は児童福祉法第六条の二の二第二項に規定する児童発達支援若しくは同条第三項に規定する放課後等デイサービスを行う施設(児童発達支援センターを除く。)」(出典:消防法施行令(e-Gov法令検索))

防火管理者を置かなければならないのは、(六)項ハの場合、収容人員が30人以上のときです。「別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項イ、ハ及びニ、(九)項イ、(十六)項イ並びに(十六の二)項に掲げる防火対象物(同表(十六)項イ及び(十六の二)項に掲げる防火対象物にあつては、同表(六)項ロに掲げる防火対象物の用途に供される部分が存するものを除く。)で、収容人員が三十人以上のもの」(出典:消防法施行令(e-Gov法令検索))

そして、(六)項の防火対象物の防火管理者には、年2回以上の消火訓練と避難訓練と、事前の通報が義務づけられています。

「令別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十六)項イ又は(十六の二)項に掲げる防火対象物の防火管理者は、令第三条の二第二項の消火訓練及び避難訓練を年二回以上実施しなければならない。」(出典:消防法施行規則(e-Gov法令検索))

「前項の防火管理者は、同項の消火訓練及び避難訓練を実施する場合には、あらかじめ、その旨を消防機関に通報しなければならない。」(出典:消防法施行規則(e-Gov法令検索))

当方の読みでは、事業所だけで見た収容人員が30人未満でも、雑居ビルなど複数の用途が入る建物((十六)項イ)では、建物全体の収容人員で防火管理者が必要になり、年2回の訓練の対象になることがあります。収容人員の数え方も省令で決まっているため、自分の事業所がどちらに当たるかは、所轄の消防署で確認してください。

自治体の資料では、この条文を根拠に、年2回以上を求める書き方がよく見られます。

一方、福岡県の資料は、基準の訓練について年1回以上としています。「b避難訓練は年1回以上実施し、その実施した記録を残してください。」(出典:福岡県「令和8年度 集団指導資料(障がい児(通所・入所)系説明資料)」 p.23) 新潟市の資料は、消防法の回数を「一定の規模以上の事業所」の話として書いています。「消防法等に基づき、一定の規模以上の事業所は、避難訓練・消火訓練を定められた回数行わなければいけませんが」(出典:新潟市「令和3年度 集団指導 実地指導における主な指摘内容について」 p.9)

このように、指定権者によって案内の書き方が違います。迷ったときは、消火訓練と避難訓練をそれぞれ年2回以上行っておくと、どちらの案内にも沿います(当方の考えです)。そのうえで、指定権者(都道府県・市)の集団指導資料を確認してください。

浸水や土砂災害のおそれがある場所では、何が必要ですか

浸水想定区域や土砂災害警戒区域にあり、市町村地域防災計画に名称と所在地が定められた要配慮者利用施設は、避難確保計画をつくって市町村長に報告し、訓練の結果も報告します。要配慮者利用施設には、社会福祉施設が含まれます。「要配慮者利用施設(社会福祉施設、学校、医療施設その他の主として防災上の配慮を要する者が利用する施設をいう。第十五条の三において同じ。)」(出典:水防法(e-Gov法令検索))

「第十五条第一項の規定により市町村地域防災計画にその名称及び所在地を定められた要配慮者利用施設の所有者又は管理者は、国土交通省令で定めるところにより、当該要配慮者利用施設の利用者の洪水時等の円滑かつ迅速な避難の確保を図るために必要な訓練その他の措置に関する計画を作成しなければならない。」(出典:水防法(e-Gov法令検索))

「前項の要配慮者利用施設の所有者又は管理者は、同項の規定による計画を作成したときは、遅滞なく、これを市町村長に報告しなければならない。」(出典:水防法(e-Gov法令検索))

「第一項の要配慮者利用施設の所有者又は管理者は、同項に規定する計画で定めるところにより、同項の要配慮者利用施設の利用者の洪水時等の円滑かつ迅速な避難の確保のための訓練を行うとともに、その結果を市町村長に報告しなければならない。」(出典:水防法(e-Gov法令検索))

土砂災害防止法の第8条の2にも、同じ形の決まりがあります。「急傾斜地の崩壊等が発生するおそれがある場合における同項の要配慮者利用施設を利用している者の円滑かつ迅速な避難の確保のための訓練を行うとともに、その結果を市町村長に報告しなければならない。」(出典:土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(e-Gov法令検索))

ここまでの3つの決まりのうち、訓練の結果を報告することが条文で義務になっているのは、この水防法・土砂災害防止法の訓練です(消防法施行規則の条文にあるのは、実施する前の通報です)。報告の様式や出し方は市町村ごとに違うので、市町村の防災の担当課の案内に従ってください。東京都の集団指導資料も、次のように書いています。

「また、避難確保計画に基づき、訓練を実施し、訓練結果を区市町村長へ報告する。」(出典:東京都「令和6年度 指定障害福祉サービス事業者集団指導 実地検査における主な指摘事項と行政処分について」 p.20)

新潟市の資料は、この計画と訓練について、次の指摘を挙げています。

水害の訓練をしたら、消火訓練の回数に数えてよいですか

数えられません。消防法の年2回は消火訓練と避難訓練のことなので、水害を想定した避難訓練だけでは、消火訓練が足りなくなります。新潟市の資料は、実際の事例としてこれを挙げています。

「1水害想定の避難訓練を実施したため、消火訓練を実施せず、回数不足となった。」(出典:新潟市「令和3年度 集団指導 実地指導における主な指摘内容について」 p.9)

「特に、消火訓練の記録漏れが多く認められるので注意してください。」(出典:新潟市「令和3年度 集団指導 実地指導における主な指摘内容について」 p.9)

BCP(業務継続計画)の訓練も、別のものです。仙台市の資料は、BCPの訓練について、次のように注意しています。「(2については、一般的な非常災害対策の避難・救出訓練等とは異なることにご留意ください。)」(出典:仙台市「令和7年度 第2回集団指導 資料1 運営指導等におけるよくある指摘事項」 p.15)

一方で、熊本県の資料は、避難訓練の想定を火災だけにしないよう求めています。「なお、避難訓練は火災のほか、水害、土砂災害等の自然災害なども含めて想定し実施すること。」(出典:熊本県「令和7年度 集団指導 基準・報酬・運営指導結果等(障害児通所支援・入所支援事業)」 p.47) 年間の計画では、火災(消火訓練と避難訓練)と、事業所の場所で起こりうる自然災害の訓練を、それぞれ別の回として組み込むと、回数が足りなくなるのを防げます(当方の考えです)。

訓練の記録には、何を残しますか

訓練をしたら、記録を残します。記録がないと、運営指導で訓練をしたことを示せません。自治体の資料は、次のように書いています。

記録に残す項目の例です。項目は当方の案で、決まった様式ではありません。消防署や市町村に様式がある場合は、そちらを使ってください。

項目 書くことの例
実施日時 日付、開始と終了の時刻(利用児童がいる時間帯か)
想定 火災(出火場所)、地震、水害、土砂災害など。どの訓練か(消火・避難・通報・救出)
参加者 職員の氏名、参加した児童の人数、保護者・地域住民・消防関係者の参加の有無
行ったこと 通報、初期消火、避難経路、避難場所までの時間、児童の引き渡しの手順
事前の通報 消防機関へ通報した日(消防法の対象の場合)
見つかった課題 避難に時間がかかった場面、動けなかった児童への対応、連絡の漏れ
次にすること 計画の見直し、次回の訓練で確かめること
市町村への報告 避難確保計画の対象の場合は、結果を報告した日と方法

地域住民の参加は、基準では努力義務です。参加が得られなかった場合も、声をかけた記録を残しておくと、取り組みを説明しやすくなります。沖縄県の組合の資料も、次のように書いています。「非常災害に備えるための避難訓練等には、地域住民の参加が得られるよう連携に努めてください。」(出典:中部広域市町村圏事務組合(沖縄県)「令和7年度 集団指導(障害児通所支援事業)運営指導での主な指摘事項と周知事項について」 p.14)

避難訓練のほかに、運営指導で何が指摘されているかは、放課後等デイサービスの運営指導、何を指摘されているかで、14の自治体・団体の資料を読み比べています。

訓練の計画と記録を、研修や委員会とまとめて管理するには

当方で作った「法定研修・訓練キット」では、非常災害・感染症・BCP・安全計画の訓練について、想定・参加者・行ったこと・課題・次にすることを記録し、年間の研修・訓練・委員会の予定表を作れます(訓練の記録と年間計画は有料版の機能です)。無料版では、虐待防止のテーマの研修資料・確認テスト・受講記録・委員会の議題案を、記録や印刷まで使えます。法定研修・訓練キットを開く

この記事の出典

作成:fufumumu_design(放課後等デイサービス・児童発達支援の開業向け収支シミュレーターと、法定研修・訓練キットの作成者)。2026年9月27日に、各出典の原文を確認して作成しました(法令はe-Gov法令検索の現行版)。消防法の対象になるか、避難確保計画の対象になるかは、事業所の建物や場所で変わります。所轄の消防署、市町村の担当課、指定権者(都道府県・市)の案内で確認してください。引用した国・自治体の資料と法令は、当方が引用・整理したもので、各機関が作成したものではありません。当方は、行政書士・弁護士などの専門家ではありません。

あわせて読みたい:放課後等デイサービスの安全計画、何を書くか。令和6年4月から義務、国の記載例を放デイ向けに読み替える(研修・訓練・保護者への周知も/児童発達支援も)

福祉事業の開業・運営のツールと記事の一覧:訪問介護・訪問看護・障害者グループホーム・放課後等デイサービス・児童発達支援・就労継続支援B型の、収支シミュレーター・経営診断・法定研修キットとサービス別の記事(無料で試せます)

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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