通所介護(デイサービス)には、基準(平成11年厚生省令第37号・第七章)が義務として定めている研修・訓練があります。
何のテーマを、年何回やればいいか。根拠の条文と回数を、まとめて確認します。
義務の研修・訓練は5テーマ、回数はテーマによって違う
基準の各条文が直接適用される通所介護では、義務の研修・訓練は次の5テーマです。
| テーマ | 研修 | 訓練 | 委員会 | 根拠条文(原文確認要) |
|---|---|---|---|---|
| 虐待防止 | 年1回以上(新規採用時も必須) | — | おおむね3か月に1回以上 | 第104条の2 |
| 身体拘束の適正化 | 年1回以上 | — | おおむね3か月に1回以上 | 第107条 |
| 感染症・食中毒の予防 | 年2回以上 | 年2回以上 | おおむね3か月に1回以上 | 第103条の2 |
| 業務継続計画(BCP) | 年1回以上 | 年1回以上 | — | 第100条の2 |
| 非常災害への対応(避難等) | — | 年2回以上 | — | 第100条の2(BCP内) |
通所介護の基準は、訪問看護や居宅介護支援と異なり、第七章として独立した条文で直接定められています。準用規定ではなく、通所介護事業所に直接適用される義務です。
虐待防止の研修と委員会は、回数が別に定められている
虐待防止に関しては、「研修」と「委員会」の二本立てで義務が設けられています。
研修:年1回以上。新規採用の職員を迎えるときも、個別に研修を実施する必要があります(「定期的及び新規採用時に実施すること」と基準が求めています)。
委員会:おおむね3か月に1回以上。虐待防止のための委員会(テレビ電話等による参加可)を、事業所内で定期的に開催します。
虐待の防止担当者を1名置くことも義務です。通所介護は利用者が日中を過ごす場であり、入浴介助・食事介助の場面でのリスクを職員全員が正確に把握することが求められます。
感染症は、研修と訓練がそれぞれ年2回以上
感染症・食中毒の予防のテーマは、研修と訓練が別々にカウントされます。どちらも年2回以上の実施が必要です。
根拠は第103条の2で、「感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止のための研修及び訓練を定期的に実施すること」と定めています(原文確認要)。
通所介護では複数の利用者が同じ空間を共有します。1人の利用者に感染症が発生した場合に施設内でどう対応するか(隔離・送迎の見合わせ・家族への連絡・保健所への報告)を、訓練の場で手順として確認しておきます。
BCPは研修と訓練がそれぞれ年1回以上、非常災害訓練は年2回以上
業務継続計画(BCP)の研修・訓練は、年各1回以上です。
BCPの中で非常災害時の対応訓練に関しては年2回以上が求められています(第100条の2・原文確認要)。感染症BCPと自然災害BCPの両方を策定する必要があり、訓練もその内容を含めて実施します。
通所介護では、災害が発生したときに利用者が事業所に滞在していることが多くあります。送迎中に大雨・地震が起きた場合の対応、事業所内で火災が起きた場合の避難誘導を、利用者の歩行能力・認知症の状態に合わせて計画し、訓練で確認します。
身体拘束の研修は年1回以上、通所介護でも委員会が求められる
身体拘束の適正化については、通所介護では研修(年1回以上)とともに委員会(おおむね3か月に1回以上)が義務として定められています(第107条・原文確認要)。
緊急やむを得ない場合の3要件(切迫性・非代替性・一時性)の理解と、家族からの依頼があった場合の対応手順を、研修の内容として盛り込みます。車いすのベルトや介護椅子のテーブルも、使い方によっては拘束に該当することを職員が共通認識として持つことが重要です。
通所介護に特有の研修テーマは5つある
基準が回数を明示している義務の5テーマのほかに、通所介護では把握しておく必要のあるテーマがあります。
認知症の方への対応
通所介護の利用者には認知症の方が多く、日常的な関わりの中でBPSD(行動・心理症状)への対応が求められます。
認知症施策推進基本計画に基づく「認知症バリアフリー」の考え方に沿って、利用者の意思を尊重した対応・不穏時の声かけ・徘徊リスクの管理を、職員が統一した方法で行える体制を整えます。
口腔機能と嚥下の支援
通所介護では食事介助の場面が毎日あります。誤嚥・窒息のリスクを防ぐための知識と、利用者ごとの食事形態・体位・介助の方法を職員間で共有することが重要です。
口腔機能向上加算の算定有無に関わらず、嚥下機能の基礎的な理解と緊急時(誤嚥・窒息)の対応手順は、全職員が身につけておく内容です。
転倒・転落の防止
通所介護での転倒は、骨折・入院・要介護度の悪化につながるリスクがあります。施設内の危険箇所の把握、移乗介助の方法、ヒヤリ・ハット報告の仕組みを研修で確認します。
転倒防止の加算(科学的介護推進体制加算等)を算定している事業所では、ICT入力と職員間の情報共有の手順も含めて研修に盛り込みます。
送迎の安全
通所介護に特有の業務として送迎があります。送迎車内での急変・転落・車いす固定の不備による事故が発生しています。
送迎担当者(運転手・添乗員)に対して、乗降介助の手順・車いす固定方法・体調急変時の対応を繰り返し確認する研修が求められます。令和6年度から送迎時の事故に関する事故報告基準が整備されています。
利用者の尊厳と自立支援
日常的に利用者と長い時間を過ごす通所介護では、入浴・食事・排泄の場面での言葉かけ・プライバシーへの配慮が、サービスの質に直結します。
「自立支援・重度化防止」の考え方に基づき、できることは職員がやらず本人に行ってもらうという介助のスタンスを、職員全員が共有している必要があります。
義務の研修・訓練の年間計画は、最低11回以上になる
5つの義務テーマをすべて満たすための年間の最低実施回数を整理します。
- 虐待防止の研修:年1回以上
- 虐待防止の委員会:年4回以上(おおむね3か月に1回)
- 身体拘束の研修:年1回以上
- 身体拘束の委員会:年4回以上(おおむね3か月に1回)
- 感染症の研修:年2回以上
- 感染症の訓練:年2回以上
- 感染症の委員会:年4回以上(おおむね3か月に1回)
- BCPの研修:年1回以上
- BCPの訓練:年1回以上
- 非常災害の訓練:年2回以上
研修・訓練の実施回数だけを合計すると、義務の最低ラインは研修5回・訓練5回の計10回以上になります。さらに委員会(虐待防止・身体拘束・感染症)が各年4回以上の開催義務を持ちます。
訪問系の事業所と比べると、通所介護では身体拘束の委員会が加わる点が特徴です。テーマを組み合わせて1回の研修で複数テーマを扱うことは可能ですが、回数の要件はテーマごとに満たす必要があります。
新規採用の職員には個別の対応が必要
虐待防止については、新規採用時にも研修を実施することが基準に明記されています。定期の年1回とは別に、採用のタイミングで研修を組む必要があります。
非常勤・パート職員を含む全職員が対象です。職員の異動・採用のたびに、誰が研修を受けていて、誰がまだかを記録で確認できる体制を整えておくことが重要です。
記録の保存が、後日の確認で証明になる
運営指導(行政の実地確認)では、研修を実施したことの記録が確認されます。
記録として残す内容の例:実施日・テーマ・担当者・受講者の氏名と署名・確認テストの結果。口頭だけで記録がない場合は、実施したとみなされないことがあります。
通所介護は毎日の利用者対応と並行して研修・訓練の記録を整備する必要があります。年間計画を立てて、月ごとにテーマと実施日を決めておくと、記録の漏れが防ぎやすくなります。
通所介護(デイサービス)の法定研修12テーマ(義務の5テーマと通所介護固有のテーマを含む)の資料・確認テスト・受講記録・委員会の議題案を、ブラウザだけでまとめて用意できるツールを作りました。
無料で虐待防止の1テーマをご確認いただけます。有料版(14,800円・買い切り)では12テーマすべてをご利用いただけます。入力内容は端末の中だけに保存されます。
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