訪問看護ステーションには、基準(平成11年厚生省令第37号)が義務として定めている研修・訓練があります。
何のテーマを、年何回やればいいか。根拠の条文と回数を、まとめて確認します。
義務の研修・訓練は5テーマ、回数はテーマによって違う
基準第67条(準用規定)が定める義務の研修・訓練は、次の5テーマです。
| テーマ | 研修 | 訓練 | 委員会 | 根拠条文(第67条準用) |
|---|---|---|---|---|
| 虐待防止 | 年1回以上(新規採用時も必須) | — | おおむね3か月に1回以上 | 第28条の2 |
| 身体拘束の適正化 | 年1回以上 | — | — | 第34条の2 |
| 感染症・食中毒の予防 | 年2回以上 | 年2回以上 | おおむね3か月に1回以上 | 第29条の2 |
| 業務継続計画(BCP) | 年1回以上 | 年1回以上 | — | 第26条の2 |
| 非常災害への対応(避難等) | — | 年2回以上 | — | 第26条の2(BCP内) |
訪問看護ステーションは、居宅サービスの基準(第37号)の第67条によって、居宅介護支援等の各条文を準用します。研修・訓練の義務はこの準用規定から発生しています。
虐待防止の研修と委員会は、回数が別に定められている
虐待防止に関しては、「研修」と「委員会」の二本立てで義務が設けられています。
研修:年1回以上。新規採用の職員を迎えるときも、個別に研修を実施する必要があります(「定期的及び新規採用時に実施すること」と基準が求めています)。
委員会:おおむね3か月に1回以上。虐待防止のための委員会(テレビ電話等による参加可)を、事業所内で定期的に開催します。
虐待の防止担当者を1名置くことも義務です(第28条の2の準用)。
感染症は、研修と訓練がそれぞれ年2回以上
感染症・食中毒の予防のテーマは、研修と訓練が別々にカウントされます。どちらも年2回以上の実施が必要です。
根拠は第29条の2(第67条で準用)で、「感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止のための研修及び訓練を定期的に実施すること」と定めています。
訪問看護は1日に複数の利用者宅を回ります。施設と異なり、訪問先ごとに環境が違います。標準予防策(スタンダードプリコーション)の理解と、訪問時のバッグや器材が感染源にならないようにするための手順確認が、訓練の軸になります。
BCPは研修と訓練がそれぞれ年1回以上、非常災害訓練は年2回以上
業務継続計画(BCP)の研修・訓練は、年各1回以上です。
ただし、BCPの中で非常災害時の対応訓練に関しては年2回以上が求められています。感染症BCPと自然災害BCPの両方を策定する必要があり、訓練もその内容を含めて実施します(第26条の2の準用)。
訪問看護では、大規模災害や感染症流行が起きたときに、利用者への訪問が続けられるかどうかが直接的な課題になります。特に医療依存度の高い利用者(在宅酸素・人工呼吸器等)への対応順位と、移動・通信の確保が訓練のポイントです。
身体拘束の研修は年1回以上、委員会の設置は訪問看護では不要
身体拘束の適正化について、訪問看護では委員会の設置は義務ではなく、研修の年1回以上が求められています(第34条の2の準用)。
緊急やむを得ない場合の3要件(切迫性・非代替性・一時性)の理解と、家族からの依頼があった場合の対応手順を、研修の内容として盛り込みます。
訪問看護に特有の研修テーマは7つある
基準が回数を明示している義務の5テーマのほかに、訪問看護では把握しておく必要のあるテーマがあります。
医師の指示と訪問看護指示書
訪問看護は、主治医の指示のもとに行われます。訪問看護指示書がなければ、訪問看護を行うことはできません(第70条の準用)。
通常の訪問看護指示書の有効期間は発行日から6か月以内です。特別訪問看護指示書(急性増悪・退院直後・終末期)は発行日から14日以内(月1回、ただし気管カニューレ使用・真皮を超える褥瘡がある場合は月2回可)です。
指示書の保存期間は完結の日から5年間です。更新忘れや内容の確認不足は、訪問看護の実施根拠に直結するため、事業所としての管理ルールを職員全員が共有する必要があります。
ターミナルケアと看取り
訪問看護では、ターミナルケア療養費の算定基準に基づいて、看取り期の利用者への支援を行う場面があります。
利用者・家族への十分な説明と同意確認、主治医・ケアマネジャーとの情報共有、緊急時の連絡体制が職員間で統一されている必要があります。
医療的ケアの範囲
何が「診療の補助(看護師が行える医療行為)」に含まれ、何が「特定行為(研修修了者のみ)」かを、職員が正確に理解していることが重要です。
特定行為研修を修了していない看護師が行える範囲を明確にし、範囲を超える行為については主治医への確認や特定行為研修修了者への対応依頼ができる体制を整えます。
精神科訪問看護の基礎
精神科訪問看護(診療報酬の精神科訪問看護・指導料)を行う場合は、対象疾患・利用者への接し方・危機介入の原則・家族支援の方法など、一般の訪問看護と異なる視点が必要です。
精神科訪問看護を提供しているステーションでは、基礎的な知識を職員間で共有する研修を別途設けることが求められます。
ハラスメント防止(カスタマーハラスメントを含む)
第28条第4項(準用)により、職場内のハラスメント防止措置が義務づけられています。令和8年10月からはカスタマーハラスメント(カスハラ)への対策措置も義務化されます。
訪問看護では、利用者・家族から暴言・暴力・時間外の要求などを受ける場面があります。これがカスハラにあたる場合があることと、その際の対応手順(記録・管理者への報告・訪問継続の判断)を、職員が理解している必要があります。
個人情報保護
第34条(準用)により、利用者・家族の個人情報を秘密として保持することが義務づけられています。
訪問看護では、利用者の氏名・住所・病名・薬の内容・訪問記録などを扱います。スマートフォン・タブレットへの保存ルール、移動中の会話、SNSへの投稿について、研修の中で確認しておきます。
事故・緊急時の対応と苦情解決
第36条・第37条(準用)により、事故発生時の記録・市区町村への報告、苦情受付窓口の設置が求められています。
訪問先での転倒・転落、注射・点滴のミス、服薬の誤り等、訪問看護特有のリスクへの対応手順を、職員が共有している必要があります。
義務の研修・訓練の年間計画は、最低10回以上になる
5つの義務テーマをすべて満たすための年間の最低実施回数を整理します。
- 虐待防止の研修:年1回以上
- 虐待防止の委員会:年4回以上(おおむね3か月に1回)
- 身体拘束の研修:年1回以上
- 感染症の研修:年2回以上
- 感染症の訓練:年2回以上
- 感染症の委員会:年4回以上(おおむね3か月に1回)
- BCPの研修:年1回以上
- BCPの訓練:年1回以上
- 非常災害の訓練:年2回以上
研修・訓練の実施回数だけを合計すると、義務の最低ラインは研修5回・訓練5回の計10回以上になります。さらに委員会(虐待防止・感染症)が各年4回以上の開催義務を持ちます。
テーマを組み合わせて1回の研修で複数テーマを扱うことは可能ですが、回数の要件はテーマごとに満たす必要があります。
新規採用の職員には個別の対応が必要
虐待防止については、新規採用時にも研修を実施することが基準に明記されています。定期の年1回とは別に、採用のタイミングで研修を組む必要があります。
管理者が入れ替わるタイミングや、非常勤・パート職員を迎える際も同様です。職員の異動・採用のたびに、誰が研修を受けていて、誰がまだかを記録で確認できる体制を整えておくことが重要です。
記録の保存が、後日の確認で証明になる
運営指導(行政の実地確認)では、研修を実施したことの記録が確認されます。
記録として残す内容の例:実施日・テーマ・講師(担当者)・受講者の氏名・確認テストや署名。口頭だけで記録がない場合は、実施したとみなされないことがあります。
訪問看護ステーションの法定研修12テーマ(義務の5テーマと訪問看護固有のテーマ7つを含む)の資料・確認テスト・受講記録・委員会の議題案を、ブラウザだけでまとめて用意できるツールを作りました。
無料で虐待防止の1テーマをご確認いただけます。有料版(14,800円・買い切り)では12テーマすべてをご利用いただけます。入力内容は端末の中だけに保存されます。
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