通所介護(デイサービス)の身体拘束は、原則禁止であり研修と委員会が義務。
通所介護における身体拘束(身体的拘束等)は原則禁止です(指定居宅サービス等の事業の人員及び運営に関する基準 第107条)。身体拘束の廃止に向けた研修は年1回以上、委員会はおおむね3か月に1回以上の開催が義務です。
身体拘束廃止に向けた取り組みを適切に実施していない場合、または記録が不十分な場合は、運営指導での指摘対象になります。また、厚生労働省の定める要件を満たさない身体拘束を行った場合は、1日あたり所定単位数の10%(通所介護の場合)を減算するペナルティが発生します(身体拘束廃止未実施減算)。
身体拘束の11種類(厚生労働省の通知より)
何が身体拘束に該当するかは、厚生労働省「身体拘束ゼロへの手引き(平成13年)」に例示されています。
| # | 行為の例 |
|---|---|
| 1 | 徘徊しないよう、車いすや椅子・ベッドにベルトで縛る |
| 2 | 転落しないよう、ベッドに体幹や四肢をひも等で縛る |
| 3 | 自分で降りられないよう、ベッドを柵(サイドレール)で囲む |
| 4 | 点滴・経管栄養等のチューブを抜かないよう、手指の機能を制限するミトン型手袋等をつける |
| 5 | 車いすや椅子からずり落ちたり立ち上がったりしないよう、Y字型抑制帯や腰ベルト・車いすテーブルをつける |
| 6 | 立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるような椅子を使用する |
| 7 | 脱衣やおむつはずしを制限するために、介護衣(つなぎ服)を着せる |
| 8 | 他の利用者への迷惑行為を防ぐために、ベッドなどに縛りつける |
| 9 | 行動を落ち着かせるために、向精神薬を過剰に服用させる(化学的拘束) |
| 10 | 自分の意思で開けることができない居室等に隔離する |
| 11 | 転倒しないよう、立ち上がりを妨げるテーブルをつかまり立ちさせずに使用する |
「転倒予防のため」「安全のため」という名目で行われても、利用者が自分の意思で動くことを制限する行為はすべて身体拘束に該当します。「これは身体拘束ではない」と職員が思い込んでいるケースが、運営指導での指摘の原因になることがあります。
緊急やむを得ない場合の3要件
身体拘束が許容されるのは「緊急やむを得ない場合」のみです。この例外は「3要件を全て満たし、かつ記録を残した場合」に限られます。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 切迫性 | 利用者本人または他者の生命・身体・権利に著しい危険が切迫している |
| 非代替性 | 身体拘束以外の方法では危険を回避することが困難である |
| 一時性 | 身体拘束は必要最小限の時間にとどめる |
3要件を満たすかどうかは、委員会での検討・記録・家族への説明と同意を経て判断します。「応急的に今日だけ縛った」という対応は、記録がなければ違反とみなされます。
身体拘束廃止委員会の役割と運営
委員会はおおむね3か月に1回以上の開催が義務です。デイサービスでは身体拘束が発生しているか・「緊急やむを得ない」として実施している場合はその状況が適切かを定期的に確認します。
委員会の議題例:
- 現在の身体拘束の実施状況(ゼロ or 3要件による実施中)
- 3要件による実施中の拘束の継続・解除の検討
- 不適切ケアにあたる可能性がある行為(車いすテーブルの常時使用等)の確認
- 研修計画と実施状況の確認
- マニュアルの見直し
デイサービスで特に確認が必要な場面
車いすテーブルの常時使用
車いすに取り付けるテーブル(アームテーブル)は、自力で外せない場合は身体拘束に該当する可能性があります。食事中・レクリエーション中に一時的に使用する場合は問題ありませんが、「転倒予防のため終日テーブルをつけたまま」という運用は身体拘束とみなされる可能性があります。
施錠した空間への隔離
認知症の利用者を専用室に連れて行き、鍵をかける行為は「隔離」として身体拘束に該当します。隔離なく転倒・徘徊を防ぐための環境整備(見通しのよいレイアウト・センサーマット)の検討が求められます。
「落ち着かせるため」の薬(化学的拘束)
医師の処方に基づく服薬は問題ありませんが、介護職員が「利用者を落ち着かせるために」薬の服用を促す行為は、化学的拘束として問題になります。医師・看護師との連携なしに薬に関与しないことを研修で明確にしておく必要があります。
身体拘束廃止未実施減算
研修の未実施・委員会の未開催・適切な記録の不整備等がある場合は、身体拘束廃止未実施減算として1日あたり所定単位数の10%が差し引かれます。これは「実際に身体拘束を行っている」かどうかに関わらず、取り組みが不十分な場合に発動します。
具体的に問われる内容:
- 身体拘束廃止委員会の記録が残っているか
- 委員会が3か月に1回以上開催されているか
- 研修が年1回以上実施され、参加者の記録があるか
- 身体拘束を行った場合(3要件による)の記録・家族への説明・同意書が揃っているか
研修内容のまとめ(チェックリスト)
- 身体拘束の11種類を全員が理解している
- 3要件の意味と手続きを説明できる
- 身体拘束廃止委員会の役割を知っている
- 化学的拘束とは何かを知っている
- 身体拘束廃止未実施減算の仕組みを知っている
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