通所介護(デイサービス)の送迎の安全、乗降・車いす固定・置き去り・緊急時の対応手順。

通所介護(デイサービス)の送迎の安全、乗降・車いす固定・置き去り・緊急時の対応手順。 介護

通所介護(デイサービス)の送迎は、訓練を必要とするリスクを含んでいる。

デイサービスの送迎は、利用者が毎日利用する「日常の業務」のように見えますが、事故が起きやすい場面が集中しています。車内での転倒・乗降時の転落・交通事故・夏季の車内熱中症・所在不明(降車確認の漏れ)といったリスクが一つの業務に含まれています。

送迎は法定研修の義務テーマではありませんが、事業所として職員に周知・訓練すべき内容として、通所介護の重要な研修項目の一つです。このページでは、送迎の研修で教えるべき内容と、よく起きる事故の場面を整理します。

送迎で最も多い事故は、乗降時の転倒。

送迎中の事故で多く報告されるのが、乗降時の転倒です。車道から段差のある玄関先まで移動する場面、車の乗り降りの場面では、歩行の不安定な利用者が転倒しやすい状況が生まれます。

注意が必要な場面:

  • 玄関先の段差・すのこ(特に雨天時・霜が降りた朝)
  • 車のステップへの乗り降り(車高のある車種は特にリスクが高い)
  • 補助なしでドアに手をかけて体重をかけたとき
  • 足元を見ずに前方に引っ張られた場合

研修では、乗降の介助手順(利用者のペースに合わせる・両手を塞がない・先に足場を確認する)を職員全員が統一した方法で実施できるよう確認します。

車いす固定の不備は、走行中の転倒に直結する。

車いすで乗車する利用者がいる場合、車いすをスロープで乗せた後の固定が必須です。固定ベルトの締め付け確認・チェアロックの確認が不十分だと、走行中に車いすがずれて利用者が転倒するリスクがあります。

また、シートベルトの着用確認も走行前に全員分を確認する必要があります。利用者の中には自分でシートベルトを外してしまう方もいるため、出発前と走行中の定期確認が求められます。

夏季の置き去り・車内熱中症は致命的なリスクになる。

降車確認を漏れなく行うことは、夏季には特に重要です。車内に利用者が残ったまま施錠・エンジンオフになると、車内温度が急上昇して熱中症・最悪の場合は死亡に至る事故につながります。

降車確認の手順:

  • 降車後は全座席を目視確認する(後部座席・折りたたみ補助席も含む)
  • 降車人数をルートの乗車人数と照合する
  • ドライバーと同乗者(介護職員)が分担して確認する
  • 確認完了後に施錠・エンジンオフを行う

子どもの車内熱中症対策として、国土交通省・消費者庁等が確認チェックリストを公表しています。同様の手順を送迎業務にも取り入れることが推奨されます。

認知症の利用者の無断降車・所在不明には特別な対応が必要。

認知症が進んでいる利用者の中には、走行中に突然ドアを開けようとする、停車中に独りで降りようとする場合があります。また、自宅前で降車したと思っていたが隣の家の前だった、降車後に玄関まで誘導する前に姿が見えなくなったというケースも起きています。

対応の基本:

  • 認知症の利用者は助手席・ドア直近の席を避ける
  • チャイルドロック機能がある車種では活用する
  • 降車後は玄関に入るまで見届ける(車内に戻る前に確認)
  • 居宅に引き継ぐ家族がいない場合は玄関のカギを確認してから離れる

ドライバーと介護職員の役割分担を明確にする。

送迎は「ドライバーが運転して介護職員が介助を担当する」という二役体制が一般的ですが、人員が足りず一人で対応するケースもあります。研修では、二人体制と一人体制それぞれの場面で、誰が何をするのかを具体的に確認しておきます。

特に問題になりやすい場面:

  • 一人体制で乗降介助中に他の利用者がシートベルトを外す
  • 介助中に別の利用者が動き出す
  • ドライバーが運転席から離れられない状況での緊急対応

緊急時(交通事故・急変)の対応フロー

送迎中に交通事故が発生した場合、または利用者が急変した場合の対応手順を研修で確認しておく必要があります。

交通事故が発生した場合

  1. 安全な場所に停車する
  2. 利用者の状態を確認する(意識・呼吸・外傷)
  3. 必要に応じて119番通報する
  4. 110番通報(道路交通法第72条により、交通事故が発生した場合は警察への報告が義務)
  5. 事業所の管理者に報告する
  6. 利用者の家族に連絡する

利用者が車内で急変した場合

  1. 安全な場所に停車する
  2. 意識・呼吸を確認する
  3. 反応がない場合は119番通報・AEDの手配
  4. 心停止であれば胸骨圧迫を開始する
  5. 事業所の管理者に報告する

AEDの設置場所・緊急連絡先(事業所・主治医・家族)は、送迎前に確認できる場所に整備しておきます。

送迎時の記録は何を残すか。

送迎に関して法令上の定めがある記録様式はありませんが、事故やトラブルが起きた場合の証拠として、次の項目を記録しておくことが推奨されます。

  • 乗降時刻・乗降場所
  • 乗降の介助方法(車いす・歩行・要介助・自立)
  • 乗降確認の実施
  • 特記事項(転倒・気分不良・申し送り事項)

事業所によっては「送迎業務日誌」として毎回記録している場合があります。

研修計画への組み込み方

送迎の安全は法定義務の研修テーマではありませんが、以下のような形で年間研修計画に組み込むことが可能です。

  • BCP訓練(年1回以上・義務)に「送迎中の緊急対応」シナリオを含める
  • 非常災害対応訓練に「送迎中の被災」を想定したケースを追加する
  • 安全計画(法令上は小学校等に義務があるが、デイサービスでも作成が推奨される)の中で定期的に確認する

送迎の研修・訓練をセットで提供するキット

通所介護(デイサービス)の法定研修12テーマの資料・確認テスト・委員会議題案・記録様式・運営指導対応パックをセットにした法定研修・訓練キットを提供しています。送迎の安全を含む通所固有テーマも収録しています。

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あわせて読みたい:通所介護(デイサービス)の法定研修、何が義務で年何回か。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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