令和6年度決算の放課後等デイサービスの収支差率は、表の平均が9.1%、事業所ごとの中央値が2.7%で、大きく違います。表の平均は「収支差の平均÷収入の平均」で計算されるため、収入の大きい事業所の影響を強く受けます。事業所を収支差率の低い順に並べると、ちょうど真ん中の事業所は2.7%で、赤字の事業所は45.4%でした。この記事では、厚生労働省の令和7年経営概況調査の数字から、平均と中央値の違い、収支差率の分布、自分の事業所の位置の見方を整理します。
放課後等デイサービスの収支差率は、令和6年度決算でいくらでしたか
厚生労働省の資料では、表の平均が9.1%、事業所ごとの中央値が2.7%、赤字の事業所の割合が45.4%です(令和6年度決算・有効回答304事業所)。令和5年度決算は、表の平均が7.9%、中央値が0.4%、赤字の割合が48.4%でした。
| 指標 | 令和5年度決算 | 令和6年度決算 |
|---|---|---|
| 表の平均の収支差率(収支差の平均÷収入の平均) | 7.9% | 9.1% |
| 事業所ごとの収支差率の中央値 | 0.4% | 2.7% |
| 赤字(収支差がマイナス)の事業所の割合 | 48.4% | 45.4% |
| 集計した事業所数(有効回答) | 304事業所 | 304事業所 |
出典:資料4・資料5。令和4年度決算(別の調査である令和5年経営実態調査)の表の平均は5.8%です。調査ごとに、対象になった事業所が違います。
表の平均は上がり、中央値も0.4%から2.7%に上がり、赤字の事業所の割合は48.4%から45.4%に下がりました。令和6年度は、報酬改定があった年度です。ただし、この調査は毎回、別の事業所が対象になる標本調査なので、同じ事業所の変化を追ったものではありません。
表の平均9.1%は、どのように計算された数字ですか
1施設・事業所あたりの収支差の平均(283.1万円)を、収入の平均(3,102.5万円)で割った値です。事業所ごとの収支差率を出して平均したものではありません。
| 項目(1事業所あたり・1年間) | 金額 |
|---|---|
| 収入(事業収益+補助金+本部からの繰入金など) | 3,102.5万円 |
| 支出(事業費用+借入金利息+本部への繰入金など) | 2,819.4万円 |
| 収支差(収入−支出) | 283.1万円 |
| 収支差率(収支差÷収入) | 2,831÷31,025=9.1% |
金額は、厚生労働省の資料5(第25表)の「令和6年度決算」の数字です(単位は千円を万円に換算)。
資料4によると、収支差率は「(障害福祉サービス等の収入額−支出額)÷収入額」で、収入額は、障害福祉サービス等の事業収益、各種補助金収益、本部からの繰入金収益の合計です。支出額は、事業費用、借入金利息、本部への繰入金費用の合計です。自分の収支差率を計算して比べるときは、この範囲にそろえると、比べやすくなります。
なお、物価高騰対策関連の補助金を含めた場合の収支差率は、資料4に参考として載っています。放課後等デイサービスは、令和5年度が8.2%、令和6年度が9.3%です。
中央値2.7%は、何を表す数字ですか
事業所ごとの収支差率を低い順に並べたときの、ちょうど真ん中の事業所の収支差率です。304事業所を並べたとき、低いほうから半分が2.7%以下、高いほうから半分が2.7%以上、という意味になります。
資料5の分布のグラフには、令和6年度は「平均値:9.1%、中央値:2.7%」、令和5年度は「平均値:7.9%、中央値:0.4%」と、両方が並べて書かれています。つまり、原典も、平均と中央値が別の数字であることを示しています。
なぜ、平均と中央値は、こんなに違うのですか
平均の計算では、収入が大きい事業所の収支差が、より大きく効くためです。事業所ごとの収支差率を、そのまま平均する計算とは、重みのつき方が違います。3つの事業所の、簡単な架空の例で確認します。
| (架空の例) | 年間の収入 | 年間の収支差 | 収支差率 |
|---|---|---|---|
| 事業所A | 1,000万円 | -100万円 | -10.0% |
| 事業所B | 2,000万円 | +0万円 | 0.0% |
| 事業所C | 6,000万円 | +900万円 | 15.0% |
| 3事業所の合計(金額の平均どうしで割る) | 9,000万円 | +800万円 | 8.9%(表の平均と同じ計算) |
| 事業所ごとの収支差率の中央値 | 0.0% | ||
| 事業所ごとの収支差率の単純な平均 | 1.7% |
実在の事業所ではなく、計算のしくみを見るための架空の例です。
この例では、収入が大きい事業所Cの黒字が、全体の計算に大きく効き、表の平均にあたる値は8.9%になります。一方、真ん中の事業所Bの収支差率は0%で、事業所ごとの収支差率を単純に平均すると1.7%です。同じ3つの事業所でも、見る数字によって、結果が大きく変わります。
実際の数字でも、金額で重みをつけた平均と、事業所ごとの数字の平均には、差があります。資料5のグラフの棒の高さから事業所数を復元して、階級の真ん中の値で概算すると、事業所ごとの収支差率の単純な平均は、およそ5.6%で、表の平均9.1%より低い数字です(概算のため、目安としてご覧ください)。どちらが正しいという話ではなく、「何を平均した数字か」が違います。
収支差率の分布は、どうなっていますか
令和6年度決算では、0%未満の赤字の事業所が45.4%(138事業所)で、その中に−20%未満の事業所が59事業所(19.4%)ありました。反対に、40%以上の事業所も50事業所(16.4%)あり、分布は、平均の近くに集まるというより、低いほうにも高いほうにも広がっています。
| 収支差率の階級 | 令和6年度 事業所数 | 割合 | この階級までの累計 | 令和5年度 事業所数 | 割合 |
|---|---|---|---|---|---|
| −20%未満 | 59 | 19.4% | 19.4% | 34 | 11.2% |
| −20%以上−10%未満 | 25 | 8.2% | 27.6% | 30 | 9.9% |
| −10%以上0%未満 | 54 | 17.8% | 45.4% | 83 | 27.3% |
| 0%以上5%未満 | 21 | 6.9% | 52.3% | 28 | 9.2% |
| 5%以上10%未満 | 16 | 5.3% | 57.6% | 29 | 9.5% |
| 10%以上15%未満 | 21 | 6.9% | 64.5% | 15 | 4.9% |
| 15%以上20%未満 | 11 | 3.6% | 68.1% | 8 | 2.6% |
| 20%以上30%未満 | 30 | 9.9% | 78.0% | 17 | 5.6% |
| 30%以上40%未満 | 17 | 5.6% | 83.6% | 14 | 4.6% |
| 40%以上 | 50 | 16.4% | 100.0% | 46 | 15.1% |
合計は各年度とも304事業所。元は5%刻みの階級で、読みやすいように、まとめて表示しています。0%未満(赤字)の事業所は、令和6年度が138事業所(45.4%)、令和5年度が147事業所(48.4%)です。
表の見方は、次のとおりです。たとえば、自社の収支差率が3%なら、「0%以上5%未満」の階級です。この階級より下の階級までの累計は45.4%、この階級までの累計は52.3%なので、自社より低い事業所は、およそ45%〜52%、つまり半分前後の位置です。細かい位置は、5%刻みの階級のため、「およそ」としかいえません。
令和5年度から令和6年度で、分布はどう変わりましたか
上の表のとおり、赤字の事業所は147事業所から138事業所に減り、−10%以上0%未満の階級は83事業所から54事業所に減りました。一方、−20%未満の階級は34事業所から59事業所に増えています。赤字の事業所の数は減りましたが、赤字の幅が大きい事業所は、増えています。
この変化が、報酬改定によるものか、対象になった事業所の違いによるものかは、この調査の数字だけでは分かりません。
他の障害福祉サービスと比べると、放課後等デイサービスの平均と中央値の差は大きいのですか
比べた7つのサービスの中で、平均と中央値の差が最も大きいのは、放課後等デイサービスです(表の平均が中央値を6.4ポイント上回る)。生活介護や児童発達支援では、逆に、中央値のほうが表の平均より高くなっています。
| サービス | 事業所数 | 表の平均 | 中央値 | 平均−中央値 | 赤字の事業所の割合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 放デイ | 304 | 9.1% | 2.7% | +6.4ポイント | 45.4% |
| 児発 | 320 | 7.8% | 9.7% | -1.9ポイント | 33.8% |
| GH(包括型) | 341 | 6.9% | 5.3% | +1.6ポイント | 39.0% |
| GH(日中支援型) | 236 | 5.1% | 5.9% | -0.8ポイント | 42.8% |
| 生活介護 | 368 | 6.3% | 7.9% | -1.6ポイント | 31.0% |
| 就労移行 | 296 | 6.0% | 4.5% | +1.5ポイント | 41.9% |
| 短期入所 | 337 | 2.3% | 2.8% | -0.5ポイント | 45.1% |
令和6年度決算。赤字の割合は、資料4の公表値です。
サービスによって、平均と中央値の関係は違います。他の種別の数字を見るときも、「表の平均だけを見て、自分の位置を判断しない」ことが大切です。
収支差率が上がった年度に、給与費の割合はどう動きましたか
放課後等デイサービスの給与費割合(収入に対する給与費の割合)は、令和5年度の66.8%から、令和6年度の64.4%に、2.4ポイント下がりました(資料4)。収支差率の表の平均は、同じ期間に7.9%から9.1%へ1.2ポイント上がっています。
| 指標 | 令和5年度決算 | 令和6年度決算 |
|---|---|---|
| 収入に対する給与費の割合 | 66.8% | 64.4% |
| 表の平均の収支差率 | 7.9% | 9.1% |
出典:資料4。給与費は、調査の記入要領で、役員報酬・職員給与・賞与・諸手当・退職金・法定福利費などを含む人件費として集計される費用にあたると考えられます。
収入に対する給与費の割合が下がった分だけ、収支差率が上がる方向に働きますが、この調査の数字だけでは、なぜ給与費の割合が下がったのか(収入が増えたのか、給与費が減ったのか、対象の事業所が違うのか)は分かりません。給与費の割合は、収支差率と並べて確認したい数字ですので、詳しい見方は、人件費率の記事で取り上げます。
自分の事業所の収支差率は、どこに当てはまりますか
次の4つの手順で、確認できます。
- 自分の決算から、収支差率を計算します(収入は事業収益・補助金・本部からの繰入金の合計、支出は事業費用・借入金利息・本部への繰入金の合計。上の範囲にそろえます)。
- 表の平均だけでなく、中央値と、分布の表の上での位置を見ます。
- 自分の事業所に近い区分(法人の種類・定員)の数字も見ます。全体の分布では、法人の種類や規模の違いが、ならされているためです。
- 収支差率の位置だけでなく、収入と費用のどちらに差があるかを見ます(費用の割合、職員1人あたりの数字など)。
自分の収支差率が、回答事業所の分布のどのあたりにあたるかは、数字を入れるだけで確認できます。そのための無料のツールを用意しています。
決算の数字(収入・人件費・減価償却費・委託費・その他の費用)を入れると、回答事業所の中での位置を、分布のグラフで見られます。同じ経営主体・同じ規模の平均との比較は、Pro版で見られます。入力した内容は、お使いの端末の中にだけ保存され、外部には送信されません。Pro版(9,800円・買い切り)もあります。経営の良し悪しの判定や、融資・指定の保証はしません。
この数字を読むとき、注意することは何ですか
- 標本調査です。放課後等デイサービスの調査客体は760事業所で、有効に回答したのは304事業所(有効回答率40.0%)です。抽出は、サービスごとに、層化無作為抽出法で行われています(資料4)。全国の事業所の数(令和7年1〜3月で2万2千か所余り)と比べると、一部の事業所の数字です。
- 収支差率は、経営の良し悪しを決める数字ではありません。立地・定員・利用児童の状態・法人の方針・開設からの期間によって、収支の出方は大きく違います。自社が中央値より低くても、それだけで問題があるとはいえません。
- 階級は5%刻みです。分布の位置は、およそのものです。
- 令和6年度決算の数字です。調査は令和7年6〜7月に行われました。その後の報酬・基準の変更や、事業所の状況の変化は反映されていません。
よくある質問
Q. 自社の収支差率が、表の平均9.1%を下回っています。良くない状態ですか
表の平均だけでは、判断できません。中央値は2.7%で、事業所の半分は、この数字以下です。自社の位置は、分布の表と、法人の種類・定員の近い区分の数字とあわせて、見てください。
Q. 平均と中央値は、どちらを見ればいいですか
両方を見てください。表の平均は「全体の金額の動き」、中央値は「事業所ごとの真ん中の位置」を表します。自社の位置を知りたいときは、中央値と分布のほうが、近い目安です。
Q. 赤字だった場合は、どうすればいいですか
赤字の事業所は、回答した事業所の45.4%にあたります。まず、収入と費用のどちらに原因がありそうかを、費用の割合や、職員1人あたりの数字で切り分けてみてください。人件費率が高いときの見方は、「福祉事業所の人件費率が平均より高いとき、何を見ればいいのか」の記事にまとめています。
まとめ
- 放課後等デイサービスの令和6年度決算は、表の平均が9.1%、事業所ごとの中央値が2.7%、赤字の事業所が45.4%
- 表の平均は「収支差の平均÷収入の平均」で、収入の大きい事業所の影響を強く受ける
- 放デイは、7つのサービスの中で、平均と中央値の差が最も大きい(6.4ポイント)
- 分布は、−20%未満が59事業所(19.4%)、40%以上が50事業所(16.4%)と、両側に広がっている
- 自社の位置は、平均でなく、中央値と分布、近い区分の数字で見る
- 調査は標本調査で、経営の良し悪しを決めるものではない
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- 福祉事業所の人件費率が平均より高いとき、何を見ればいいのか。
- 放課後等デイサービスの職員の月給は、全国でいくらくらいか(職種別)。
- 放課後等デイサービスの開業資金はいくら必要か。(開業前の方向け)
出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算・令和5年度決算。第48回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム資料5)および同「結果の概要」(資料4)(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_66260.html)(2026年9月24日閲覧)、厚生労働省・こども家庭庁「障害福祉サービス等の最近の動向について」(令和7年1〜3月時点の事業所数)。この記事の数字のうち、収支差率の分布(階級ごとの事業所数)は、資料のグラフの棒の高さから事業所数を復元して整理したものです。復元した事業所数の合計は、各サービス・各年度で調査の事業所数と一致し、赤字の事業所の割合も、資料4の公表値と一致することを確認しています。また、表の数字から求めた割合や差(費目の率、1人あたりの額など)は、当方の計算です。これらは、厚生労働省が公表した数値そのものではなく、厚生労働省が作成したものでもありません。制度や調査結果は更新されるため、最新の公表資料をご確認ください。作成:ふふ(fufumumu_design)/基準日:2026年9月24日


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