福祉事業所の人件費率が全国の数字より高いときは、まず、人件費率を「職員1人あたりの給与費」と「職員1人あたりの収入」に分けて、どちらの違いが大きいかを見ます。人件費率は、給与費÷収入で、職員数で割っても変わらないため、「職員1人あたりの給与費÷職員1人あたりの収入」と同じ値になります。この記事では、令和6年度決算の全国の数字を示したうえで、架空の2つの事業所を例に、差を2つに分ける計算の手順を説明します。給与水準の高さが原因のこともあれば、収入の低さが原因のこともあります。人件費を減らせばよい、という話ではありません。
福祉事業所の人件費率は、全国でどのくらいですか
令和6年度決算の収入に対する給与費の割合は、放課後等デイサービスが64.4%、児童発達支援が68.0%、共同生活援助(介護サービス包括型)が61.7%、生活介護が69.1%などで、比べた7つのサービスでは、61.7%から69.2%の間でした(資料4)。
| サービス | 令和5年度 | 令和6年度 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 放課後等デイサービス | 66.8% | 64.4% | -2.4ポイント |
| 児童発達支援 | 69.2% | 68.0% | -1.1ポイント |
| 共同生活援助(介護サービス包括型) | 61.4% | 61.7% | +0.3ポイント |
| 共同生活援助(日中サービス支援型) | 63.2% | 66.1% | +2.9ポイント |
| 生活介護 | 66.2% | 69.1% | +2.9ポイント |
| 就労移行支援 | 65.7% | 64.2% | -1.5ポイント |
| 短期入所 | 66.8% | 69.2% | +2.5ポイント |
収入に対する給与費の割合と、対前年度の増減。いずれも資料4の公表値です(増減は、公表値どうしの引き算とは、丸めの関係で0.1ポイントずれることがあります)。
公的な「目安」の基準があるわけではありません。上の数字は、調査に回答した事業所の平均で、良い・悪いの基準ではありません。
人件費率は、どんな数字に分けられますか
人件費率は、次の式で、「1人あたりの給与費」と「1人あたりの収入」に分けられます。
人件費率=給与費÷収入=(職員1人あたりの給与費)÷(職員1人あたりの収入)
職員数で、分子と分母の両方を割っても、値は変わらないためです。全国の数字を、この形で並べます。
| サービス | 人件費率(給与費÷収入) | 換算した職員数 | 職員1人あたりの給与費(年) | 職員1人あたりの収入(年) | 定員1人あたりの収入(年) |
|---|---|---|---|---|---|
| 放課後等デイサービス | 64.4% | 5.1人 | 389.8万円 | 605.2万円 | 290.6万円 |
| 児童発達支援 | 68.0% | 5.8人 | 257.5万円 | 378.5万円 | 168.9万円 |
| 共同生活援助(介護サービス包括型) | 61.7% | 6.1人 | 400.3万円 | 649.2万円 | 248.2万円 |
| 共同生活援助(日中サービス支援型) | 66.1% | 9.3人 | 413.4万円 | 625.1万円 | 395.2万円 |
| 生活介護 | 69.1% | 9.8人 | 562.3万円 | 813.3万円 | 285.7万円 |
| 就労移行支援 | 64.2% | 5.6人 | 327.7万円 | 510.5万円 | 207.0万円 |
令和6年度決算・1事業所あたり。資料5の各表。「職員1人あたりの給与費」は表の「サービス換算職員数あたり給与費」、「職員1人あたりの収入」は、収入÷換算した職員数で、当方の計算です。短期入所は、他の事業との兼務の換算の影響が大きいとみられるため、この表から除いています。
放課後等デイサービスは、職員1人あたりの給与費が389.8万円、職員1人あたりの収入が605.2万円で、給与費÷収入は64.4%です(389.8÷605.2)。表の右端の、定員1人あたりの収入は、収入を定員で割った数字です。
人件費率が高いとき、差を2つに分けるには、どうすればいいですか
自社の人件費率と、全国の人件費率の差を、「給与水準の違い」と「職員1人あたりの収入の違い」に分けます。手順は、次のとおりです。
- 自社の給与費、収入、換算した職員数を用意します(範囲のそろえ方は、後の節で説明します)。
- 自社の、職員1人あたりの給与費と、職員1人あたりの収入を計算します。
- 全国の、職員1人あたりの給与費と、職員1人あたりの収入と並べます(上の表)。
- 次の2つを計算します。
給与水準の違い=(自社の1人あたり給与費−全国の1人あたり給与費)÷自社の1人あたり収入
収入の違い=全国の1人あたり給与費÷自社の1人あたり収入−全国の1人あたり給与費÷全国の1人あたり収入 - 2つを足すと、人件費率の差(自社−全国)になります。
架空の2つの事業所で、計算してみます(放課後等デイサービスの全国の数字と比べます)。
| 事業所A(架空) | 事業所B(架空) | 放課後等デイサービスの全国の数字 | |
|---|---|---|---|
| 年間の収入 | 3,000万円 | 2,600万円 | 3,102.5万円 |
| 年間の給与費 | 2,000万円 | 1,900万円 | 1,998.3万円 |
| 換算した職員数 | 5.0人 | 5.0人 | 5.1人 |
| 人件費率 | 66.7% | 73.1% | 64.4% |
| 職員1人あたりの給与費 | 400.0万円 | 380.0万円 | 389.8万円 |
| 職員1人あたりの収入 | 600.0万円 | 520.0万円 | 605.2万円 |
事業所AとBは、実在の事業所ではなく、計算のしくみを見るための架空の例です。全国の数字は、令和6年度決算(資料5・第25表)です。
| 人件費率の差 | うち、給与水準の違い | うち、職員1人あたりの収入の違い | |
|---|---|---|---|
| 事業所A | +2.3ポイント | +1.7ポイント | +0.6ポイント |
| 事業所B | +8.7ポイント | -1.9ポイント | +10.6ポイント |
全国の数字(放課後等デイサービス)との差。「給与水準の違い」は、自社の収入で計算した、給与費の1人あたりの差の影響、「収入の違い」は、全国の給与水準で計算した、1人あたりの収入の差の影響です。合計は、人件費率の差と一致します。
事業所Aは、人件費率が全国より2.3ポイント高く、給与水準の違いが1.7ポイント、収入の違いが0.6ポイントです。職員1人あたりの給与費が全国よりやや高く、収入は、ほぼ同じ水準です。
事業所Bは、人件費率が全国より8.7ポイント高くなっていますが、給与水準は、全国より低く(380.0万円)、給与水準の違いは-1.9ポイントと、人件費率を下げる方向に働いています。差の大部分(10.6ポイント)は、職員1人あたりの収入が、全国(605.2万円)より低い(520.0万円)ことによります。この場合、給与水準を見直しても、人件費率の差の原因には、あたりません。収入を決める、稼働率・営業日数・単価(加算の取得を含む)や、職員の配置の厚さを、見ることになります。
職員1人あたりの収入が低いときは、何を見ればいいですか
職員1人あたりの収入は、次の掛け算で、さらに分けられます。
職員1人あたりの収入=定員1人あたりの収入×職員1人あたりの定員
定員1人あたりの収入は、次のように分けられます。
定員1人あたりの収入=稼働率×営業日数×利用者1人1日あたりの収入
(稼働率は、延べ利用者数÷(定員×営業日数)です。)つまり、職員1人あたりの収入が低いときは、次の4つのどれかに、原因がある可能性があります。
- 稼働率:定員に対して、実際の利用が少ない
- 営業日数:開所している日数が少ない
- 利用者1人1日あたりの収入:報酬の単価(基本報酬の区分や、加算の取得状況)が低い
- 職員1人あたりの定員:定員に対して、職員の数が多い(配置が厚い)
どれが原因かは、自社の請求データ(延べ利用者数・営業日数・請求額)と、職員数から、切り分けられます。ただし、職員の配置は、人員基準(定員に応じた人数など)を満たす必要があり、減らせばよいものではありません。
給与水準が高いときは、何を見ればいいですか
職員1人あたりの給与費が高い場合は、次のような点を、自社の帳簿で確認します。
- 職種の構成(管理者・児童発達支援管理責任者・サービス管理責任者・看護職員・直接支援職員の比率)。給与が高い職種の比率が高いと、平均が上がります。
- 常勤と非常勤の比率。
- 処遇改善に関する加算を、職員の賃金にどう配分しているか。
- 賞与・退職給付・法定福利費の扱い(給与費に含める範囲が、全国の数字と同じか)。
職種ごとの月給が、全国と比べてどの位置にあるかは、別の記事(職種別の月給)で、原典の数字を示しています。
自社の数字を、全国と比べるとき、範囲をそろえるには、どうすればいいですか
人件費率は、何を給与費に含めるかで、値が変わります。調査の記入要領では、次のように説明されています。
| 費用の項目 | 人件費(給与費)に含めるか | 調査の記入要領での扱い |
|---|---|---|
| 役員報酬・職員の給与(俸給)・諸手当・非常勤職員の給与 | 含める | 人件費支出として例示 |
| 退職金・退職共済掛金 | 含める | 人件費支出として例示 |
| 法定福利費(事業主負担分) | 含める | 人件費支出として例示 |
| 派遣職員の費用 | 法人の処理による | 社会福祉法人会計では人件費。企業会計等で回答する場合、法人が人件費として処理している分は人件費、業務委託費として処理している分は委託費 |
| 就労支援事業・授産事業の工賃・賃金 | 含めない | 人件費には含まない |
出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査 記入要領」(令和6年度の収支の記入欄の説明)。集計表の「給与費」は、この人件費にあたると考えられます。
職員数も、範囲をそろえる必要があります。調査では、令和7年4月末時点で在籍している直接雇用の職員が対象で、派遣職員・業務請負の労働者(外部委託の調理員など)・経営専従の役員は、含まれません。常勤は、事業所が定める所定労働時間(週32時間未満の場合は32時間)のすべてを勤務する人で、非常勤は、その勤務時間を、常勤の勤務時間で割って、常勤換算します。派遣職員の費用を、給与費に入れて、職員数には入れない、といった扱いをすると、1人あたりの給与費が、全国より高く出ます。
ここまでの計算は、電卓でもできますが、毎回、全国の数字を探して並べるのは手間がかかります。自社の数字を入れると、給与水準と収入の、どちらが差の中心かを、自動で計算する機能を用意しています。
決算の数字(収入・人件費・減価償却費・委託費・その他の費用)を入れると、回答事業所の中での位置を、分布のグラフで見られます。「人件費率の差の内訳」は、Pro版の機能です。入力した内容は、お使いの端末の中にだけ保存され、外部には送信されません。Pro版(9,800円・買い切り)もあります。経営の良し悪しの判定や、融資・指定の保証はしません。
人件費率について、注意することは何ですか
- 人件費率の「適正な値」の、公的な基準はありません。この記事の数字は、調査に回答した事業所の平均です。
- 人件費を減らせばよい、という話ではありません。人員基準を満たす必要があり、職員の処遇や、サービスの質にも関わります。この記事は、原因の切り分けの方法を示すもので、削減を勧めるものではありません。
- 全国の職員数は、換算した値です。表の職員数は整数に丸められているため、給与費÷職員1人あたりの給与費から、当方で求めています。
- 短期入所は、この記事の表から除きました。他の事業との兼務の換算の影響が大きく、1人あたりの数字が、他のサービスと比べにくいためです。
- この記事の計算は、差の大きさを2つに分けるものです。差の原因そのものを示すものではありません。原因は、自社の帳簿や請求データで確認する必要があり、この記事の数字だけでは、断定できません。
- 標本調査です。令和6年度決算の数字は、調査に回答した事業所のものです。
よくある質問
Q. 人件費率は、何%以下にすればよいのですか
公的な基準は、ありません。全国の数字は、サービスによって61.7%〜69.2%の範囲にありますが、これは平均で、目標の値ではありません。自社の値が、全国と違う理由(給与水準か、収入か)を、切り分けることが先です。
Q. 人件費率が、全国より低い場合は、良い状態ですか
一概にはいえません。給与水準が低い場合は、採用や定着に影響する可能性があります。収入が高いために低い場合は、収入の中身(稼働・単価・加算)が、持続できるかを確認する必要があります。
Q. 賞与を出した月は、人件費率が跳ね上がりますが、どうすればいいですか
月ごとの人件費率は、賞与や、退職金の支給月で大きく動きます。全国の数字は、1年間の決算額ですので、比べるときは、1年間の合計で計算してください。
まとめ
- 令和6年度決算の人件費率は、7つのサービスで61.7%〜69.2%(放課後等デイサービスは64.4%)
- 人件費率=職員1人あたりの給与費÷職員1人あたりの収入。差は、給与水準の違いと、1人あたりの収入の違いに分けられる
- 架空の例では、事業所Aは給与水準の影響が大きく、事業所Bは、給与が低いのに、収入の低さで人件費率が高い(8.7ポイント)
- 収入が原因の場合は、稼働率・営業日数・1人1日あたりの収入・職員の配置の厚さを、自社のデータで切り分ける
- 比べる前に、給与費と職員数の範囲を、調査の定義にそろえる。人件費の削減を勧める記事ではない
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- 放課後等デイサービスの職員の月給は、全国でいくらくらいか(職種別)。
- 放課後等デイサービスの開業資金はいくら必要か。(開業前の方向け)
出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算・令和5年度決算。第48回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム資料5)および同「結果の概要」(資料4)(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_66260.html)(2026年9月24日閲覧)。この記事の数字のうち、収支差率の分布(階級ごとの事業所数)は、資料のグラフの棒の高さから事業所数を復元して整理したものです。復元した事業所数の合計は、各サービス・各年度で調査の事業所数と一致し、赤字の事業所の割合も、資料4の公表値と一致することを確認しています。また、表の数字から求めた割合や差(費目の率、1人あたりの額など)は、当方の計算です。これらは、厚生労働省が公表した数値そのものではなく、厚生労働省が作成したものでもありません。制度や調査結果は更新されるため、最新の公表資料をご確認ください。作成:ふふ(fufumumu_design)/基準日:2026年9月24日


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