児童発達支援の令和6年度決算では、定員が大きい区分ほど収支差率が高い、という関係にはなっていません。収支差率は、定員10人以下が14.4%(242事業所)、11〜20人が8.8%(47事業所)、21人以上が-10.5%(31事業所)で、定員が大きくなるほど低くなり、21人以上はマイナスです。この記事では、厚生労働省の令和7年経営概況調査の数字から、定員別の違いを、費用の割合や、1人あたりの数字まで分けて確認します。ただし、定員の違いだけが原因かどうかは、この調査の表からは分かりません。
先に、要点を3つだけ
- 定員が大きい区分ほど、収支差率が低い(10人以下14.4%、11〜20人8.8%、21人以上-10.5%)。給与費の割合は、逆に高くなる(63.5%→68.1%→80.0%)
- 放課後等デイサービスでは、同じ傾向ではない。定員と収支差率の関係は、サービスによって違う
- 定員の大きい区分は、事業所数が少なく、法人の種類やセンターかどうかが混ざる。原因は、この表から断定できない
児童発達支援は、定員が大きいほど収支差率が高くなりますか
令和6年度決算の数字では、逆でした。定員が大きい区分ほど、収支差率は低くなっています。
| 定員 | 事業所数 | 構成比 | 収入(年) | 収支差(年) | 収支差率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 10人以下 | 242 | 75.6% | 1,819.5万円 | 262.5万円 | 14.4% |
| 11〜20人 | 47 | 14.7% | 2,169.6万円 | 190.6万円 | 8.8% |
| 21人以上 | 31 | 9.7% | 5,352.2万円 | -561.1万円 | -10.5% |
| 全体 | 320 | 100.0% | 2,213.1万円 | 172.2万円 | 7.8% |
令和6年度決算・1事業所あたり・1年間。事業所数が30未満の区分には※を付けています。資料5(第68表・第24表)。
全体(320事業所)の表の平均は7.8%、事業所ごとの中央値は9.7%、赤字の事業所の割合は33.8%です(資料4・資料5)。児童発達支援は、放課後等デイサービスと違い、中央値のほうが、表の平均より高くなっています。表の平均は収入の大きい事業所の影響を受けるため、収入が大きい定員21人以上の区分(31事業所・1事業所あたりの収入5,352.2万円)が、平均を押し下げている可能性があります。この区分は、事業所数では全体の9.7%ですが、収入の合計では、全体の約23%を占めます(当方の計算)。
児童発達支援全体の、収支差率の分布は、どうなっていますか
全体の分布も、あわせて確認します。事業所ごとの収支差率の中央値が9.7%で、赤字(0%未満)の事業所が108事業所(33.8%)です。10%以上の事業所が、157事業所(49.1%)あります。
| 収支差率の階級 | 事業所数 | 割合 | この階級までの累計 |
|---|---|---|---|
| −20%未満 | 51 | 15.9% | 15.9% |
| −20%以上−10%未満 | 20 | 6.2% | 22.2% |
| −10%以上0%未満 | 37 | 11.6% | 33.8% |
| 0%以上5%未満 | 26 | 8.1% | 41.9% |
| 5%以上10%未満 | 29 | 9.1% | 50.9% |
| 10%以上15%未満 | 26 | 8.1% | 59.1% |
| 15%以上20%未満 | 18 | 5.6% | 64.7% |
| 20%以上30%未満 | 25 | 7.8% | 72.5% |
| 30%以上40%未満 | 15 | 4.7% | 77.2% |
| 40%以上 | 73 | 22.8% | 100.0% |
令和6年度決算・合計320事業所。元は5%刻みの階級を、まとめて表示しています。資料5のグラフから復元した事業所数です。
定員別の表の平均が示す傾向は、この分布の一部を、切り取ったものです。全体の分布では、収支差率が大きく違う事業所が、混ざっています。
定員が大きい区分は、費用のどこが違いますか
最も違うのは、給与費の割合です。定員10人以下が63.5%、11〜20人が68.1%、21人以上が80.0%と、定員が大きくなるほど高くなっています。定員21人以上では、委託費の割合も8.1%と、他の区分(0.9%、2.8%)より高くなっています。
| 定員 | 給与費 | 減価償却費 | 委託費 | その他の費用 | (支出の合計) | 収支差率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 10人以下 | 63.5% | 2.2% | 0.9% | 19.0% | 85.6% | 14.4% |
| 11〜20人 | 68.1% | 2.0% | 2.8% | 18.3% | 91.2% | 8.8% |
| 21人以上 | 80.0% | 3.4% | 8.1% | 19.0% | 110.5% | -10.5% |
収入を100%としたときの割合。「その他の費用」は、給与費・減価償却費・委託費以外のすべての費用の残りで、当方の計算です。
この表の読み方は、次のとおりです。各行で、費用の割合を足すと、支出の合計の割合になり、100%から引いた残りが収支差率です。定員21人以上では、支出が収入の110.5%にあたるため、収支差率は-10.5%になっています。
1人あたりの数字では、何が違いますか
定員が大きい区分は、職員1人あたりの給与費も、職員1人あたりの収入も、高くなっています。ただし、給与費の伸びのほうが大きいため、給与費の割合が高くなります。
| 定員 | 平均の定員 | 定員1人あたりの収入(年) | 職員1人あたりの給与費(年) | 職員1人あたりの収入(年) | (換算した職員数) |
|---|---|---|---|---|---|
| 10人以下 | 10人 | 190.5万円 | 229.5万円 | 361.3万円 | 5.0人 |
| 11〜20人 | 16人 | 132.1万円 | 249.4万円 | 366.2万円 | 5.9人 |
| 21人以上 | 36人 | 149.6万円 | 351.9万円 | 440.1万円 | 12.2人 |
職員数は、調査の「サービス換算職員数」です。表の数字は整数に丸められているため、給与費÷職員1人あたり給与費から、当方で換算しました。
定員10人以下は、職員1人あたりの給与費が229.5万円、収入が361.3万円です。定員21人以上は、給与費が351.9万円(1.53倍)、収入が440.1万円(1.22倍)です。給与費が、収入より大きく増えています。また、定員1人あたりの収入は、定員10人以下が最も高く(190.5万円)、定員11〜20人が132.1万円、21人以上が149.6万円です。
なぜそうなるのか(人員の配置基準の違い、専門職の配置、加算の取得、利用者の状態、稼働率など)は、この調査の表からは分かりません。この記事では、原因を断定しません。
放課後等デイサービスも、同じ傾向ですか
いいえ。放課後等デイサービスは、定員10人以下が7.9%(268事業所)、11〜20人が20.0%(29事業所)、21人以上が2.0%(7事業所)で、定員が大きくなるほど下がる、という関係にはなっていません。
| サービス | 定員10人以下 | 定員11〜20人 | 定員21人以上 |
|---|---|---|---|
| 児童発達支援 | 14.4%(242) | 8.8%(47) | -10.5%(31) |
| 放課後等デイサービス | 7.9%(268) | 20.0%(29) | 2.0%(7) |
収支差率。令和6年度決算。カッコ内は事業所数。
同じ障害児通所支援でも、サービスによって、定員と収支差率の関係は違います。「定員が大きいほうが有利(または不利)」といった一般論は、数字では、確認できません。
法人の種類の違いは、影響していますか
調査の表では、児童発達支援の収支差率は、法人の種類でも大きく違います。営利法人が15.7%(202事業所)、NPO法人が11.3%、社会福祉法人(社協を含む)が-8.0%(44事業所)です。
| 経営主体 | 事業所数 | 構成比 | 収支差率 | 給与費の割合 |
|---|---|---|---|---|
| 社会福祉法人(社協を含む) | 44 | 13.8% | -8.0% | 82.4% |
| 営利法人 | 202 | 63.1% | 15.7% | 60.5% |
| NPO法人 | 23※ | 7.2% | 11.3% | 62.1% |
| その他 | 51 | 15.9% | 4.5% | 72.5% |
令和6年度決算。資料5(第67表)。
ただし、この調査の表は、定員別と法人の種類別を、別々に集計したものです。定員が大きい区分に、どの法人の事業所が多いのかは、表からは分かりません。定員の大きい区分の数字には、法人の種類の影響が混ざっている可能性があります。
「定員21人以上」の区分には、何が含まれていますか
調査の表では、児童発達支援は、1つの表にまとめられており、「児童発達支援センター」と、それ以外の「児童発達支援事業所」の区別は、表に出ていません。児童発達支援センターは、児童発達支援事業所とは別の類型です。定員の大きい区分に、センターが含まれている可能性はありますが、この表からは、確認できません。
定員21人以上の区分は、31事業所と、少ない区分です。この区分の収支差率(-10.5%)は、少数の事業所の数字が、大きく効いている可能性があります。
架空の事業所で、実際に当てはめてみると、どうなりますか
定員10人の児童発達支援事業所が、年間の収入2,000万円、給与費1,300万円、減価償却費45万円、委託費20万円、その他の費用400万円だったとします(実在の事業所ではありません)。支出は1,765万円で、収支差は235万円、収支差率は11.8%です。
| 自社(架空) | 全体 | 定員10人以下 | |
|---|---|---|---|
| 収支差率 | 11.8% | 7.8% | 14.4% |
| (参考)事業所ごとの中央値 | 9.7% | 原典に載っていません | |
| 給与費の割合 | 65.0% | 68.0% | 63.5% |
| 減価償却費の割合 | 2.2% | 2.5% | 2.2% |
| 委託費の割合 | 1.0% | 2.8% | 0.9% |
| その他の費用の割合 | 20.0% | 18.9% | 19.0% |
自社は架空の例。全国の数字は令和6年度決算(資料5)。
この事業所の収支差率は、全体の表の平均(7.8%)より高く、事業所ごとの中央値(9.7%)より高い水準です。ただし、定員10人以下の区分の平均(14.4%)と比べると、低くなります。全体の数字だけを見ると「平均より上」ですが、定員が近い区分と並べると、位置が変わります。給与費の割合は、定員10人以下の区分の平均より1.5ポイント高くなっています。
全体の平均、中央値、近い区分の数字を並べて、複数の見方で確認することが、位置を読み違えないための方法です。
定員が近い区分の数字と、どう並べればいいですか
- 自社の決算から、収支差率と、費用の割合(給与費・減価償却費・委託費・その他の費用)を計算します。
- 全体の数字(平均と中央値)と、定員が近い区分の数字を、横に並べます。
- 給与費の割合が違う場合は、「職員1人あたりの給与費」と「職員1人あたりの収入」のどちらが違うかを見ます(人件費率の見方は、別の記事にまとめています)。
- 定員1人あたりの収入が違う場合は、稼働率・営業日数・1人1日あたりの収入・加算の取得を、自社の帳簿で確認します。
児童発達支援を選んで、自社の決算を入れると、全体・中央値・分布での位置を、すぐ確認できます。
決算の数字(収入・人件費・減価償却費・委託費・その他の費用)を入れると、回答事業所の中での位置を、分布のグラフで見られます。定員別の数字との比較は、Pro版で見られます。入力した内容は、お使いの端末の中にだけ保存され、外部には送信されません。Pro版(9,800円・買い切り)もあります。経営の良し悪しの判定や、融資・指定の保証はしません。
先に押さえておきたい、数字の限界は何ですか
- 標本調査です。児童発達支援の調査客体は750事業所で、有効に回答したのは320事業所(有効回答率42.7%)です(資料4)。
- 定員21人以上(31事業所)と、11〜20人(47事業所)は、少ない区分です。1つの事業所の数字で、平均が動きやすくなります。
- 区分別の中央値は、原典に載っていません。区分ごとの数字は、「収支差の平均÷収入の平均」です。
- 定員の違いだけが原因とは限りません。法人の種類、センターか事業所か、地域、開設からの期間、利用児童の状態などが混ざっています。
よくある質問
Q. 定員を増やすと、収支差率は下がりますか
この調査の数字だけでは、そうとはいえません。定員が大きい事業所が、そもそも別の特徴(センターである、法人の種類が違う、など)を持っている可能性があるためです。同じ事業所が定員を増やしたときに、どうなるかを追った調査ではありません。
Q. 定員21人以上は、赤字が多いのですか
定員21人以上の区分の、収支差の平均は-561.1万円のマイナスです。ただし、赤字の事業所の割合は、資料4では、定員別には公表されていません。児童発達支援全体の赤字の割合は33.8%です。
Q. 児童発達支援の給与費の割合が高いのですが、問題ですか
全体の給与費の割合は68.0%です(資料5)。自社の数字が高くても、それだけで問題とはいえません。職員1人あたりの給与費と、収入のどちらが違うのかを、分けて見てください。
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出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算・令和5年度決算。第48回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム資料5)および同「結果の概要」(資料4)(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_66260.html)(2026年9月24日閲覧)。この記事の数字のうち、収支差率の分布(階級ごとの事業所数)は、資料のグラフの棒の高さから事業所数を復元して整理したものです。復元した事業所数の合計は、各サービス・各年度で調査の事業所数と一致し、赤字の事業所の割合も、資料4の公表値と一致することを確認しています。また、表の数字から求めた割合や差(費目の率、1人あたりの額など)は、当方の計算です。これらは、厚生労働省が公表した数値そのものではなく、厚生労働省が作成したものでもありません。制度や調査結果は更新されるため、最新の公表資料をご確認ください。作成:ふふ(fufumumu_design)/基準日:2026年9月24日


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