放課後等デイサービスの令和6年度決算の収支差率は、法人の種類によって大きく違います。営利法人は12.6%(191事業所)、NPO法人は4.3%、社会福祉法人(社協を含む)は-2.0%(46事業所)でした。全体の表の平均は9.1%です。ただし、これは調査に回答した304事業所の数字で、区分によっては事業所数が少なく、なぜ差が出るのかは、この調査の表だけでは分かりません。この記事では、厚生労働省の令和7年経営概況調査の数字から、法人の種類別・定員別の違いを、費用の割合まで分けて確認します。
放課後等デイサービスの収支差率は、法人の種類でどれくらい違いますか
令和6年度決算では、営利法人が12.6%で最も高く、社会福祉法人(社協を含む)が-2.0%で最も低くなっています。NPO法人は4.3%、その他の法人は6.1%です。
| 経営主体 | 事業所数 | 構成比 | 収入(年) | 収支差(年) | 収支差率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 営利法人 | 191 | 62.8% | 3,276.8万円 | 411.8万円 | 12.6% |
| NPO法人 | 37 | 12.2% | 2,788.2万円 | 120.4万円 | 4.3% |
| その他 | 30 | 9.9% | 2,948.4万円 | 180.9万円 | 6.1% |
| 社会福祉法人(社協を含む) | 46 | 15.1% | 2,731.7万円 | -54.2万円 | -2.0% |
| 全体 | 304 | 100.0% | 3,102.5万円 | 283.1万円 | 9.1% |
令和6年度決算・1事業所あたり・1年間。事業所数が30未満の区分には※を付けています(数字がぶれやすい参考値)。資料5(第70表)。
表を見るときは、事業所数に注意が必要です。営利法人は191事業所で全体の62.8%を占めるため、全体の表の平均9.1%は、営利法人の数字の影響を大きく受けています。反対に、社会福祉法人は46事業所(15.1%)、NPO法人は37事業所、その他は30事業所と、少ない区分です。事業所数が少ない区分は、数事業所の数字で、平均が大きく動きます。
差は、収入と費用の、どこから生まれていますか
収入を100%としたときの費用の割合で見ると、最も差が大きいのは給与費です。社会福祉法人は78.0%、営利法人は60.2%と、17.8ポイント違います。減価償却費・委託費・その他の費用の割合は、区分によって違いますが、給与費ほど大きな差ではありません。
| 経営主体 | 給与費 | 減価償却費 | 委託費 | その他の費用 | (支出の合計) | 収支差率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 営利法人 | 60.2% | 2.2% | 0.6% | 24.5% | 87.4% | 12.6% |
| NPO法人 | 70.0% | 3.3% | 0.8% | 21.6% | 95.7% | 4.3% |
| その他 | 68.5% | 4.2% | 1.1% | 20.0% | 93.9% | 6.1% |
| 社会福祉法人(社協を含む) | 78.0% | 3.7% | 2.7% | 17.7% | 102.0% | -2.0% |
| 全体 | 64.4% | 2.7% | 0.9% | 22.8% | 90.9% | 9.1% |
数字は、収入を100%としたときの割合です。「その他の費用」は、給与費・減価償却費・委託費以外のすべての費用(事業費・事務費・借入金利息・本部への繰入金など)の残りで、当方の計算です。
一方、その他の費用の割合は、逆に、社会福祉法人のほうが低く(17.7%と、営利法人の24.5%)、給与費の高さを、一部打ち消しています。
この表の読み方は、次のとおりです。各行で、給与費・減価償却費・委託費・その他の費用の割合を足すと、支出の合計の割合(収入を100%とした値)になり、100%からそれを引いた残りが収支差率です。たとえば社会福祉法人は、支出が収入の102.0%で、収支差率は-2.0%になります。
次に、1人あたりの数字を見ます。給与費の割合は、「職員1人あたりの給与費÷職員1人あたりの収入」で決まります。
| 経営主体 | 定員1人あたりの収入(年) | 職員1人あたりの給与費(年) | 職員1人あたりの収入(年) | (換算した職員数) |
|---|---|---|---|---|
| 営利法人 | 301.9万円 | 353.2万円 | 586.9万円 | 5.6人 |
| NPO法人 | 270.8万円 | 423.8万円 | 605.1万円 | 4.6人 |
| その他 | 292.9万円 | 435.0万円 | 634.8万円 | 4.6人 |
| 社会福祉法人(社協を含む) | 256.4万円 | 525.3万円 | 673.9万円 | 4.1人 |
| 全体 | 290.6万円 | 389.8万円 | 605.2万円 | 5.1人 |
職員数は、調査の「サービス換算職員数」です。表の数字は整数に丸められているため、給与費÷職員1人あたり給与費から当方で換算しました。
社会福祉法人は、職員1人あたりの給与費が最も高く(525.3万円)、定員1人あたりの収入は最も低い(256.4万円)です。営利法人は、職員1人あたりの給与費が最も低く(353.2万円)、定員1人あたりの収入が最も高くなっています(301.9万円)。給与費の割合の差は、「1人あたりの給与費の違い」と「収入の水準の違い」の、両方が重なった結果として現れています。
ただし、なぜそうなるのか(職員の年齢構成、勤続年数、配置の厚さ、加算の取得状況、稼働率、地域など)は、この調査の表からは分かりません。この記事では、原因を断定しません。
定員の大きさによって、収支差率は変わりますか
令和6年度決算では、定員10人以下の事業所が268事業所(88.2%)で大半を占め、収支差率は7.9%です。定員11〜20人は20.0%、21人以上は2.0%ですが、この2区分は事業所数が29と7で、少ない区分です。
| 定員 | 事業所数 | 構成比 | 収入(年) | 収支差率 | 給与費の割合 | 定員1人あたりの収入(年) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 10人以下 | 268 | 88.2% | 3,122.7万円 | 7.9% | 65.3% | 324.1万円 |
| 11〜20人 | 29※ | 9.5% | 3,353.9万円 | 20.0% | 55.8% | 196.1万円 |
| 21人以上 | 7※ | 2.3% | 1,285.6万円 | 2.0% | 73.9% | 53.6万円 |
令和6年度決算。資料5(第71表)。
定員21人以上の区分(7事業所)は、1事業所あたりの収入が1,285.6万円、定員1人あたりの収入が53.6万円と、他の区分と大きく違う数字です。参考値として、ご覧ください。
定員11〜20人の20.0%は目立つ数字ですが、29事業所の平均ですので、「定員を増やせば収支差率が上がる」とまではいえません。定員が大きい事業所は、法人の種類や、開設からの期間、地域なども、小さい事業所とは違う可能性があります。この調査の表は、法人の種類と定員を、同時に分けた数字ではありません。
事業所数が少ない区分の平均は、なぜぶれやすいのですか
平均は、1つの事業所の数字でも動くためです。次の架空の例で、事業所数による違いを確認します。区分のうち1つを除く事業所は、どれも収入2,700万円・収支差0円(収支差率0%)で、残りの1つだけが、収入6,000万円・収支差900万円(収支差率15%)の事業所だったとします。
| (架空の例) | 事業所数 | 収入の合計 | 収支差の合計 | 収支差率(合計÷合計) |
|---|---|---|---|---|
| 収入2,700万円・収支差0円の事業所だけ | 7 | 18,900万円 | 0万円 | 0.0% |
| 7事業所のうち1つが、収入6,000万円・収支差900万円の事業所だった場合 | 7 | 22,200万円 | 900万円 | 4.1% |
| 191事業所のうち1つが、同じ事業所だった場合 | 191 | 519,000万円 | 900万円 | 0.2% |
実在の事業所ではなく、平均のぶれ方を見るための架空の例です。
7事業所の区分では、1つの事業所が違うだけで、収支差率の平均が4.1%に動きます。191事業所の区分では、同じ事業所が1つ含まれていても、0.2%しか動きません。定員21人以上の区分は7事業所、定員11〜20人の区分は29事業所ですので、これらの区分の数字は、特に慎重に受け取る必要があります。
他のサービスでも、法人の種類による違いは同じ傾向ですか
サービスによって違います。児童発達支援は、放課後等デイサービスと同じく、営利法人が高く、社会福祉法人が低い傾向です。一方、共同生活援助(介護サービス包括型)と就労移行支援は、社会福祉法人のほうが、営利法人より高くなっています。
| サービス | 社会福祉法人(事業所数) | 営利法人(事業所数) | NPO法人(事業所数) | その他(事業所数) |
|---|---|---|---|---|
| 放デイ | -2.0%(46) | 12.6%(191) | 4.3%(37) | 6.1%(30) |
| 児発 | -8.0%(44) | 15.7%(202) | 11.3%(23) | 4.5%(51) |
| 生活介護 | 6.1%(241) | 5.7%(47) | 8.7%(47) | 7.1%(33) |
| 就労移行 | 11.7%(76) | 2.6%(136) | 8.8%(32) | 15.5%(52) |
| GH(包括型) | 8.5%(142) | 2.3%(119) | 8.7%(56) | 13.2%(24) |
収支差率。令和6年度決算。カッコ内は事業所数。
つまり、「営利法人は収支差率が高い」「社会福祉法人は低い」といった一般論は、放課後等デイサービスや児童発達支援の令和6年度決算の数字には当てはまっても、他のサービスには当てはまりません。数字は、サービスごとに見る必要があります。
架空の事業所で、実際に当てはめてみると、どうなりますか
定員10人の営利法人が、年間の収入3,000万円、給与費1,900万円、減価償却費50万円、委託費20万円、その他の費用900万円だったとします(実在の事業所ではありません)。支出は2,870万円で、収支差は130万円、収支差率は4.3%です。
| 自社(架空) | 全体 | 営利法人 | 定員10人以下 | |
|---|---|---|---|---|
| 収支差率 | 4.3% | 9.1% | 12.6% | 7.9% |
| 給与費の割合 | 63.3% | 64.4% | 60.2% | 65.3% |
| 減価償却費の割合 | 1.7% | 2.7% | 2.2% | 2.7% |
| 委託費の割合 | 0.7% | 0.9% | 0.6% | 0.9% |
| その他の費用の割合 | 30.0% | 22.8% | 24.5% | 23.1% |
自社は架空の例。全国の数字は令和6年度決算(資料5)。
この事業所は、全体の平均(9.1%)より低く、営利法人の平均(12.6%)と比べると、さらに差が大きくなります。費用の割合を見ると、給与費は営利法人の平均より3.1ポイント高く、その他の費用は5.5ポイント高くなっています。全体の平均と並べるだけだと、差は小さく見えますが、同じ法人の種類の数字と並べると、差が大きい費用が、見えやすくなります。
ただし、この差が、良くないことなのか、その事業所の方針(たとえば、職員を手厚く配置している)によるものかは、数字だけでは判断できません。
自分に近い区分の数字は、どうやって探せばいいですか
次の順番で、全体の数字と、法人の種類の数字、定員の数字を、3つ並べると、位置が読み違えにくくなります。
- 自分の収支差率と、費用の割合(給与費・減価償却費・委託費・その他の費用)を計算します。
- 全体の数字と、自分の法人の種類の数字を並べます(事業所数が30未満の区分は、参考値として扱います)。
- 定員が近い区分の数字も並べます。
- 差が大きい費用の割合に注目して、その中身(人数・単価・稼働・加算など)を、自社の帳簿で確認します。
この3つの並べ方は、電卓でもできますが、毎回の計算は手間がかかります。数字を入れると自動で並べる、無料のツールを用意しています。
決算の数字(収入・人件費・減価償却費・委託費・その他の費用)を入れると、回答事業所の中での位置を、分布のグラフで見られます。法人の種類・定員が近い区分との比較と、費目ごとの差額は、Pro版で見られます。入力した内容は、お使いの端末の中にだけ保存され、外部には送信されません。Pro版(9,800円・買い切り)もあります。経営の良し悪しの判定や、融資・指定の保証はしません。
この記事の数字から、言えることと、言えないことは何ですか
言えることは、次の3つです。
- 令和6年度決算の調査に回答した放課後等デイサービスでは、営利法人の収支差率が12.6%、社会福祉法人(社協を含む)が-2.0%で、費目では、給与費の割合の違い(78.0%と60.2%)が最も大きい
- 定員10人以下が88.2%を占め、収支差率は7.9%
- グループホーム(包括型)と就労移行支援では、社会福祉法人のほうが高く、法人の種類による傾向は、サービスで違う
言えないことは、次の4つです。
- 差の理由。職員の年齢構成、配置の厚さ、加算の取得、稼働率、地域などは、この表からは分かりません。
- 法人の種類を選べば、収支差率が変わる、ということ。同じ事業所が、法人の種類を変えた場合の数字ではありません。
- 事業所数が少ない区分の傾向。社会福祉法人は46事業所、NPO法人は37事業所、その他は30事業所、定員11人以上は29と7事業所です。区分別の中央値は、原典に載っていません。
- 自社の経営の良し悪し。収支差率は、経営の良し悪しを決める数字ではありません。事業所ごとの違いのほうが、区分の違いより大きい可能性があります(全体の分布は、平均と中央値の記事で取り上げています)。
なお、標本調査で、放課後等デイサービスの調査客体は760事業所、有効回答は304事業所(有効回答率40.0%)です(資料4)。
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出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算・令和5年度決算。第48回障害福祉サービス等報酬改定検討チーム資料5)および同「結果の概要」(資料4)(厚生労働省)(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_66260.html)(2026年9月24日閲覧)、カイポケ「放課後等デイサービスの人員配置基準とは?」(人員基準の記載)。この記事の数字のうち、収支差率の分布(階級ごとの事業所数)は、資料のグラフの棒の高さから事業所数を復元して整理したものです。復元した事業所数の合計は、各サービス・各年度で調査の事業所数と一致し、赤字の事業所の割合も、資料4の公表値と一致することを確認しています。また、表の数字から求めた割合や差(費目の率、1人あたりの額など)は、当方の計算です。これらは、厚生労働省が公表した数値そのものではなく、厚生労働省が作成したものでもありません。制度や調査結果は更新されるため、最新の公表資料をご確認ください。作成:ふふ(fufumumu_design)/基準日:2026年9月24日


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