認知症グループホームの人員基準。管理者・計画作成担当者・介護従業者の配置要件。

認知症対応型共同生活介護(認知症GH)を開業するには、管理者・計画作成担当者・介護従業者の3職種を基準どおりに配置しなければなりません。管理者は常勤で認知症介護への3年以上の従事経験、介護従業者は利用者3人に対して常勤換算1人以上の配置、夜間は全ユニットを通じて1名以上が常駐することが、平成18年厚生労働省令第34号で定められています。人員基準を欠いた状態では指定を受けられず、運営中に違反が判明すると報酬の返還を求められることがあります。

管理者は常勤で、認知症介護3年以上の経験が必要

管理者は常勤(所定労働時間をすべて勤務する者)であることが要件です(平成18年省令第34号第89条)。専従の義務はなく、同一敷地内の他の職務との兼務は認められますが、支障がない範囲に限るとされています。

認知症の介護に従事した経験については、「3年以上」が基準です。介護職員として認知症対応型サービスや介護療養型施設などで従事した期間が対象となり、管理職経験は問われません。

管理者として満たすべき要件をまとめると、次のとおりです。

要件 内容
雇用形態 常勤(所定労働時間をすべて勤務)
専従義務 なし(同一敷地内の兼務は支障のない範囲で可)
経験 認知症の介護に3年以上従事した経験
資格要件 特になし(経験年数のみ)

ただし、市区町村が独自に追加の要件(研修修了の義務付けなど)を設けている場合があります。開設予定の自治体に事前確認が必要です。

計画作成担当者は、専従で1名以上配置する

計画作成担当者は、入居者1人ひとりの介護計画(個別援助計画)を作成する役割を担います。省令では「1名以上を専従で配置すること」と定められており(平成18年省令第34号第90条)、介護支援専門員(ケアマネジャー)であることが「望ましい」とされています(努力義務)。

専従とは、その事業所での計画作成担当者業務に専念することであり、他の事業所との兼務は認められません。ただし、同じ事業所内での介護従業者業務との兼務は可能です。

介護支援専門員の資格者がいない場合でも指定を受けることは可能ですが、資格取得に向けた計画を自治体に示すよう求められることがあります。採用計画を立てる際には、この点を開設スケジュールと合わせて確認してください。

介護従業者は、利用者3人につき常勤換算1人以上配置する

介護従業者の配置基準は「要介護者3人につき常勤換算1人以上」です(平成18年省令第34号第91条)。常勤換算とは、常勤の職員が1週間に勤務すべき時間数を1として、非常勤を含む全職員の勤務時間数を換算した人数です。

1ユニット9人を例に計算すると、必要な常勤換算数は「9÷3=3人以上」となります。正社員3人で満たすことも、常勤2人と週30時間勤務のパート2人を組み合わせることも(勤務時間の設定による)可能です。

介護従業者に資格要件はありませんが、夜間帯については別の基準が設けられています。

夜間は、全ユニットを通じて1名以上が常駐する

夜間(おおむね22時から翌6時ごろ)は、全ユニットを通じて介護従業者が1名以上常駐しなければなりません(平成18年省令第34号第102条)。2ユニット・18人の事業所でも、夜間常駐は1名以上です(ただし夜間支援体制加算Ⅰを取得する場合はユニットごとに夜間専任が必要)。

夜間常駐の1名をパートや短時間勤務者が担うことも制度上は可能ですが、認知症の特性(夜間の周徊・転倒リスクなど)を考慮すると、経験者の配置が実務上は求められます。

夜間専任職員を別途配置して夜間支援体制加算(Ⅰ:50単位/日・Ⅱ:25単位/日)を取得するかどうかは、人件費増と加算収入の収支を比較して判断します。詳しくは夜間支援体制加算の解説記事をご参照ください。

ユニット定員と最低限必要な職員数(目安)

1ユニット(定員9人)の場合と2ユニット(定員18人)の場合の最低限必要な職員数の目安です。夜間専任を設けない前提で整理します。

職種 1ユニット(9人) 2ユニット(18人)
管理者 常勤1名 常勤1名
計画作成担当者 専従1名 専従1名以上
介護従業者(日中) 常勤換算3人以上 常勤換算6人以上
夜間常駐 1名以上 1名以上(全体で)

管理者と計画作成担当者は兼務可能なため、常勤の兼務者1名+介護従業者の常勤換算を満たす複数名で最低限の構成を組むことができます。ただし実際の運営では、休暇・欠員・入居者の重度化対応などを考慮して、最低基準より多めに確保することが一般的です。

配置基準の違反は指定取消しにつながる

人員基準の違反は、指導・改善命令・指定取消しの対象となります。特に常勤換算の計算を誤って過少申告している場合や、管理者が経験要件を満たしていない状態で就任している場合は、後から発覚すると報酬返還が求められることがあります。

開業前の書類審査では、管理者の職歴証明や、職員の雇用契約書・労働時間の確認が行われます。提出書類の記載と実態を一致させた運営体制を整えることが、長期的な経営の土台になります。

人件費が収支に占める割合と採算の考え方については、認知症GHの収支差率の記事で解説しています。また、開業全体の手順は別記事で整理しています。

管理者の「認知症介護3年以上」に該当するサービス種別

管理者の要件である「認知症である者の介護に3年以上従事した経験」は、認知症GH(認知症対応型共同生活介護)だけでなく、特別養護老人ホーム、認知症対応型通所介護(認知症デイ)、小規模多機能型居宅介護、介護老人保健施設など、認知症の利用者の介護を行うサービスでの経験が対象となります。ただし、どのサービスの従事経験を認めるかの詳細は市区町村によって異なる場合があるため、指定申請前に担当窓口に確認することをお勧めします(平成18年厚生労働省令第34号第97条)。

非常勤・パートとして従事した期間については、フルタイム(週40時間程度)換算で3年以上と認める自治体が多いですが、週30時間未満の勤務が長期にわたる場合は取り扱いが異なることがあります。在職証明書と合わせて週の勤務時間数を示す書類(雇用契約書等)を準備しておくと申請がスムーズです。

管理者が欠けた場合の対応

管理者が退職・傷病等で欠けた場合、速やかに後任を確保し、市区町村に変更届を提出する必要があります(変更後10日以内)。後任の管理者が要件(認知症介護3年以上の経験・常勤)を満たさない状態が続く場合、指定基準違反として指導対象になる可能性があります。開業前から管理者候補となる職員を育成しておくことが重要です。

兼務できるケースとできないケース

1ユニット(定員5〜9人)の小規模事業所では、管理者・計画作成担当者・介護従業者の兼務が認められる場合があります。ただし、管理者は「常勤」、計画作成担当者は「専従」が要件です。1人が3役を兼務するためには、常勤かつ専従(ほかの事業所の業務に従事しない)であることが前提となります。夜間に介護従業者として入る場合も、管理者としての業務が実質的にこなせる体制かどうか、市区町村が実地指導で確認します。

夜間の1名常駐と兼務の整理

夜間は全ユニットを通じて介護従業者1名以上が常駐する必要があります(省令第106条)。この夜間担当者は、宿直員や警備員ではなく、介護サービスを提供できる介護従業者でなければなりません。2ユニット(定員18人)以上の事業所では、各ユニットを1人で対応できるため2ユニット1名で認められる場合がありますが、市区町村によって取り扱いが異なります。夜間専従者のシフト設計は人件費に直接影響するため、開業前に市区町村の解釈を確認した上で計画することが重要です。

出典

  • 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)第89条〜第108条
  • 令和7年介護事業経営実態調査(厚生労働省)

収入と費用の試算は、認知症GH収支シミュレーターで確認できます。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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