ケアマネジャー1人の担当件数に上限がある理由。現場の実態から考える。

ケアマネジャー1人の担当件数に上限がある理由。現場の実態から考える。 介護

すぐにご利用されたい方は、こちらからどうぞ。
▶ 担当件数と収入の関係を収支シミュレーターで確認する

居宅介護支援のケアマネジャーには、1人が担当できる利用者数の上限があります。省令は「利用者44名ごとに1名以上」と定めており、1人のケアマネジャーが44名を超えると「費(Ⅱ)」の逓減制が適用されて収入単価が下がります。

この記事では、担当件数の上限が設けられている理由と、逓減制が収入に与える影響を整理します。

省令が定める担当件数の基準

「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第38号)第2条では、介護支援専門員の員数について次のとおり定めています。

「指定居宅介護支援事業所ごとの介護支援専門員の員数は、利用者の数を四十四で除して得た数以上とすること。」

出典:「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第38号)第2条第1項第2号。

これは「最低限の人員配置基準」です。1人のケアマネジャーで44名以上の利用者を担当することが禁止されているわけではありませんが、45名以上になると2人目の配置義務が発生します(常勤換算)。

逓減制の仕組み:45件を超えると単価が下がる

担当件数が一定数を超えると、基本報酬の単価が下がる「逓減制」が適用されます。逓減制は、ケアマネジャーが過剰に多くの利用者を担当することで支援の質が低下することを防ぐために設けられています。

基本報酬の区分(費の区分)は担当件数によって次のように変わります。

担当件数 費の区分 要介護1・2の基本報酬(月) 要介護3〜5の基本報酬(月)
1〜44件 費(Ⅰ) 1,086単位 1,411単位
45〜59件 費(Ⅱ) 544単位(約50%に低下) 704単位(約50%に低下)
60件〜 費(Ⅲ) 326単位(約30%に低下) 422単位(約30%に低下)

出典:厚生労働省「指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準」(告示第125号・令和8年6月施行)。地域区分による単価の違いは別途加算あり。

45件目から費(Ⅱ)が適用されると、その件も含めて45件分の単価が下がります。60件以上になると費(Ⅲ)がさらに適用されます。

1件目から全件に逓減が適用される構造

逓減制でよく誤解されるのが「45件目だけ単価が下がる」という理解です。実際は、担当件数が45件になると「45件分すべて」に費(Ⅱ)の単価が適用されます。

担当件数44件と45件の月次収入の差を試算します(要介護3〜5が50%・地域単価10円の場合)。

担当件数 月次収入の概算
44件(費(Ⅰ)) 要介護1・2(22件)×1,086単位×10円+要介護3〜5(22件)×1,411単位×10円=238,920円+310,420円=549,340円(1件平均12,485円)≒約54.9万円
45件(費(Ⅱ)) 要介護1・2(22.5件)×544単位×10円+要介護3〜5(22.5件)×704単位×10円=122,400円+158,400円=280,800円(1件平均6,240円)≒約28.1万円

44件から45件に増えた時点で月次収入は約半額に減少します。1件増やしても収入が大幅に減るため、44件を境界として意識的に管理することが重要です。

担当件数の上限を設けた政策的な背景

逓減制が設けられた背景には、ケアプランの質の確保という政策的な目的があります。

ケアマネジャーは、利用者ごとに月1回以上の定期訪問・モニタリングを行い、状態に応じてケアプランを見直すことが義務づけられています。担当件数が増えるほどこの訪問・モニタリングにかける時間が確保しにくくなります。

居宅介護支援事業所の多くでは、ケアマネジャー1人あたりの担当件数を逓減制の境界(44件)より少ない件数で運営しています。

逓減制の収入単価の急激な低下は、財政的なペナルティとして機能し、1人が過剰な件数を担当することを抑止する設計になっています。

IT活用の例外規定:電磁的記録で45〜49件まで費(Ⅰ)を維持できる

令和3年の介護報酬改定から、一定の要件を満たした場合に費(Ⅱ)の適用を猶予する例外規定が設けられています。

具体的には、ICTの活用または事務職員の配置を行っている事業所については、45〜49件の担当でも費(Ⅱ)ではなく費(Ⅰ)の単価を維持できます。

要件の概要は次のとおりです。

方法 内容
ICT活用 テレビ電話等を活用したモニタリングを一部実施し、利用者の同意を得ること
事務職員の配置 事業所に事務職員を配置し、ケアマネジャーの事務負担を軽減すること

出典:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における逓減制の見直しについて」。詳細は告示・Q&Aを確認してください。

令和8年6月施行の改定では、ICT活用・事務職員配置がある場合、費(Ⅱ)の適用は50件から・費(Ⅲ)の適用は70件からとなります。例外規定が適用される範囲は45〜49件(費(Ⅰ)維持)・50〜69件(費(Ⅱ)維持)です。

開業後の経営管理:担当件数44件を目標に設定する理由

1人体制の事業所では、担当件数44件が収入を最大化できる上限です。これ以上増やすと費(Ⅱ)が適用されて収入が大幅に下がるため、44件を目指しながら維持することが基本的な経営目標になります。

担当件数の推移は月ごとに変動します。利用者が自宅での生活を終えて入院・入所する場合や、他のケアマネジャーへの変更を希望する場合などで件数が減ることがあります。一方、病院や医療機関からの紹介・地域連携で新しい利用者が入ることで件数が増えます。

件数が44件を超えそうになった場合の対応として、次の選択肢があります。

  • 新規受け入れを一時的に制限する
  • ICT活用・事務職員の配置の例外規定を活用して45〜49件まで費(Ⅰ)を維持する
  • 2人目のケアマネジャーを採用して担当を分担する

まとめ

  • 省令は「利用者44名ごとに1名以上の介護支援専門員」を定める人員基準(配置義務)
  • 逓減制により、担当件数が45件になると費(Ⅱ)が適用され全件の単価が約半分に下がる
  • 1人体制では担当件数44件が収入を最大化できる上限
  • ICT活用・事務職員配置の例外規定で費(Ⅱ)の適用を50件から、費(Ⅲ)の適用を70件から遅らせることができる
  • 44件を目標に設定し、件数の変動を月次で管理することが経営の基本

すぐにご利用されたい方は、こちらからどうぞ。
▶ 担当件数と収入の関係を収支シミュレーターで確認する

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

ご質問はメールで。電話・面談はしていません。

fufumumu_designをフォローする
介護
fufumumu_designをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました