小規模多機能型居宅介護の登録者数・稼働率と収支の関係。

小規模多機能型居宅介護の登録者数・稼働率と収支の関係。 介護

小規模多機能型居宅介護の月額収入は「登録者数×要介護度別単位数」で決まります。固定費(人件費・家賃等)は登録者数に関わらず発生するため、損益分岐となる登録者数(稼働率)を把握することが収支管理の基本です。この記事では登録者数・稼働率と収支の関係を具体的に示します。

収入の計算式

小規模多機能型居宅介護の月額収入は以下の式で計算できます。

月額収入の計算式
項目 内容
基本収入 登録者数 × 要介護度別月額単位数 × 1単位の金額(地域区分)
処遇改善加算 基本収入 × 加算率(加算Ⅰ:14.9%等)
その他加算 認知症加算・看護職員配置加算等(算定している場合)

処遇改善加算で得た収入は職員の賃金改善に充てる義務があるため、事業所の「実質的な収入」としては基本収入部分がメインです。

要介護度構成と月額収入の目安

登録定員29人の場合の月額収入の目安を、要介護度別に示します(1単位10.45円・処遇改善加算Ⅰ除く)。

登録者数ごとの月額収入の目安(要介護度別・処遇改善加算Ⅰ除く)
要介護度 月額単位数 月額報酬(1人) 29人フル稼働の月額収入
要支援1 3,450単位 約36,000円 約104万円
要支援2 6,972単位 約72,900円 約211万円
要介護1 10,458単位 約109,400円 約317万円
要介護2 15,370単位 約160,600円 約466万円
要介護3 22,359単位 約233,700円 約678万円
要介護4 24,677単位 約257,900円 約748万円
要介護5 27,209単位 約284,300円 約824万円

要介護度が高いほど1人あたりの収入が大きくなります。実際の利用者は複数の要介護度が混在するため、平均要介護度で試算することが一般的です。

稼働率の考え方

小規模多機能型居宅介護の「稼働率」は、登録定員(29人)に対して実際の登録者数がどの程度あるかを示す指標です。

稼働率と月額収入の関係(要介護3中心・平均報酬約233,700円/人の場合)
稼働率 登録者数(定員29人の場合) 月額収入の目安
100% 29人 約678万円
90% 約26人 約607万円
80% 約23人 約537万円
70% 約20人 約467万円
60% 約17人 約397万円
50% 約15人 約350万円

開業初期は利用者が少なく、稼働率が50〜70%程度からのスタートになることが多いです。損益分岐点(固定費をカバーできる収入)に達するまでの期間、赤字運営を見込んだ資金計画が必要です。

損益分岐点となる登録者数

固定費(人件費・家賃・水光熱費・システム費等)の合計を月額収入が上回った時点で損益が分岐します。固定費の目安として、以下を参考にしてください。

小規模多機能型居宅介護の固定費の目安(標準的な事業所の場合)
費目 月額の目安 備考
人件費(常勤換算5〜6人分) 200万〜280万円 管理者・計画作成担当者・介護職員・看護職員
家賃・リース費 10万〜50万円 物件・地域によって大きく異なる
水光熱費 5万〜15万円 宿泊があるため24時間稼働
通信費・システム費 2万〜5万円 介護ソフト・電話等
消耗品・食材費(一部) 3万〜10万円 食費は別途徴収分と相殺

月額固定費の合計が概ね250万〜350万円程度のとき、損益分岐となる登録者数は要介護3中心の場合で約11〜15人になります。開業後にこの水準に達するまでの期間が「赤字期間」です。

稼働率が上がりにくい要因と対策

開業後に稼働率が想定より上がらないケースの主な要因は以下のとおりです。

  • 地域の認知度がない:居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)からの紹介がない → 開業前からケアマネジャーへの挨拶回り・情報提供が必要
  • 公募地域で競合がある:同じエリアに複数の事業所が公募で選定された場合 → 差別化(認知症専門性・24時間対応等)を明確にする
  • 利用者の確保に時間がかかる:要介護認定から利用開始まで数か月かかる場合がある → 地域包括支援センター・病院連携を早期に始める

処遇改善加算を含めた収支計画の試算

処遇改善加算Ⅰ(14.9%)を算定した場合、月額収入は加算分だけ増加しますが、その全額を職員の賃金改善に充てる義務があります。収支計画では「基本収入部分」と「加算収入部分(人件費の増加分)」を分けて管理することが実務上の基本です。

登録者数・要介護度・処遇改善加算の有無・地域区分を組み合わせた収支計画の試算は、小規模多機能型居宅介護 収支シミュレーターで確認できます。

参考・出典

  • 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号・令和6年改定後)
  • 介護保険事業状況報告(厚生労働省・各年度版)

この記事は2026年11月時点の法令・告示に基づいています。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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