認知症グループホームの設備基準。ユニット数・居室面積・共有設備の要件。

認知症対応型共同生活介護(認知症GH)の設備基準は、1ユニット5〜9人・最大3ユニット(定員27人以下)、居室は1人あたり7.43㎡以上(収納設備等を除く)・原則個室、共有設備として居間・食堂・台所・浴室が必要という3点が骨格です(平成18年厚生労働省令第34号第95条〜第101条)。認知症GHは「家庭的な環境での小規模共同生活」という制度趣旨があり、設備基準は大規模施設とは異なる小規模・家庭的な設備を前提としています。

1ユニットの定員は5人以上9人以下

認知症GHでは、複数の入居者が共同生活をする1まとまりを「ユニット」と呼びます。1ユニットの定員は5人以上9人以下、1事業所に設けられるユニットの数は最大3ユニット(定員27人以下)です(平成18年省令第34号第95条)。

最大定員は事業所単位で27人ですが、定員9人×3ユニットで上限を取るか、定員6人×3ユニット=18人にするかは事業者が設計します。定員が大きいほど1人あたりの固定費が分散されますが、人員配置(介護従業者は利用者3人に常勤換算1人以上)も定員に連動します。

項目 基準
1ユニットの定員 5人以上9人以下
最大ユニット数(1事業所) 3ユニット
最大定員(1事業所) 27人以下

居室は、1人あたり7.43㎡以上・原則個室

居室の面積基準は「収納設備等を除いて1人あたり7.43㎡以上」です(平成18年省令第34号第96条)。7.43㎡はおおよそ畳4.5枚分(4.5畳)に相当します。この面積は収納設備・出入口・窓ガラスなどを除いた有効面積で計算します。

居室の形態は原則個室とされています。例外として、入居者の処遇上必要と市区町村が認める場合に限り2人部屋を設けることが可能ですが、入居者・家族の同意が前提となります。実際の運営では個室が主流です。

居室に必要な設備として、プライバシーを確保するための鍵または鍵に代わる設備が求められます。入居者が自室の鍵を持ち、自分のペースで出入りできる環境が基本となります。

共有設備は居間・食堂・台所・浴室が必須

各ユニットには、入居者が共同で使用する居間・食堂・台所・浴室を設けることが義務付けられています(平成18年省令第34号第97条)。これらはユニット単位で設けるのが基本ですが、設備の効率的な共用が認められる場合はユニット間で共有できる設備もあります(市区町村の判断による)。

設備 必要性・備考
居間 入居者が集まれる共有スペース。日常の活動・交流の場
食堂 食事を提供する共有スペース。居間と兼用可
台所 調理設備。家庭的な生活の場として設置
浴室 入浴介助に対応できる広さが必要
消火設備等 消防法に基づく設備(スプリンクラー等)

消防設備は消防法の基準に従って設置します。認知症GHは特定防火対象物に該当するため、スプリンクラー設備・自動火災報知設備・誘導灯などの設置が必要です。消防署への事前相談が開設準備の早い段階で必要になります。

賃貸物件を改修して開業する場合の注意点

物件を賃借して認知症GHとして利用するケースは多くあります。その場合、建築基準法上の用途変更(共同住宅から福祉施設への変更)や、消防設備の新設・改修が必要になることがあります。

居室7.43㎡以上を確保しながら共有設備(居間・食堂・台所・浴室)も設けるには、1ユニット9人の場合、おおむね200〜300㎡以上の床面積が必要とされます。物件探しの段階でこの面積を念頭に置いておくことが重要です。

開業にかかる資金の目安については開業資金の記事で、物件費・改修費・運転資金の関係を整理しています。開業全体の流れは開業ガイドを参照してください。

設備基準は市区町村が詳細を定める

認知症対応型共同生活介護は地域密着型サービスであり、指定権者は都道府県ではなく市区町村です。省令の基準は全国共通の最低基準ですが、市区町村が条例でより厳格な基準を定めることがあります。面積基準・設備の仕様・スプリンクラーの設置要件などは自治体によって異なる場合があるため、開設前に必ず指定を受ける市区町村の担当窓口に確認してください。

収入の試算や人件費とのバランスを見たい場合は、認知症GH収支シミュレーターで定員・稼働率を入力して確認できます。

居室7.43㎡の具体的なイメージ

7.43㎡は約4.5畳(1畳≒1.65㎡)に相当します。シングルベッド・小型収納・テレビ台が置ける広さで、認知症の方が自分の荷物を持ち込んで生活できる最低限の個室空間として設定されています。

「収納設備等を除く」とは、押し入れ・クローゼット・洗面台・トイレなどを床面積から除いた有効床面積が7.43㎡以上であることを意味します(平成18年厚生労働省令第34号第95条)。設計の際は、収納や設備を含めた総面積ではなく、生活スペースとしての有効面積で7.43㎡以上を確保する必要があります。

共有設備の機能と設計のポイント

居間・食堂・台所・浴室は認知症GHの共有設備として省令で義務付けられています(第95条)。それぞれの機能と設計上の注意点は次のとおりです。

設備 機能・用途 設計のポイント
居間 入居者が日中を過ごすリビング・グループ活動の場 車椅子のまま動ける広さ・自然光が入る窓・ソファ・テレビ等を配置
食堂 食事をとる場。居間と兼用可 9人が同時に着席できるテーブル・車椅子対応の高さ・食事介助スペースを確保
台所 調理場。入居者が参加できる設計が制度の趣旨 入居者が立ち入れる開放型が望ましい。業務用設備でなく家庭的な雰囲気を重視
浴室 個別入浴・介助入浴に対応 介助者が一緒に入れる広さ(目安:2㎡以上)・滑り止め・手すり・シャワーチェア設置スペース

市区町村が独自基準を上乗せできる仕組み

省令(平成18年厚生労働省令第34号)は最低基準を定めたものです。各市区町村は条例により、省令よりも厳しい設備基準を設けることができます(介護保険法第78条の4)。たとえば「居室面積を10㎡以上とする」「バリアフリー仕様の手すりを全室に設置する」といった追加要件を持つ自治体があります。

指定申請先の市区町村に事前確認することが不可欠です。省令だけを確認して設計を進め、申請段階で自治体独自の基準を満たしていないと判明するトラブルを防ぐ必要があります。

賃貸物件を改修して開業する場合の注意点

既存の戸建て住宅や集合住宅を改修して認知症GHとして使用する場合、次の点を確認します。

  • 間取りの変換可能性:柱・梁の位置によっては、7.43㎡以上の個室が9室取れない場合があります。設計前に構造図面の確認が必要です
  • 消防法上の用途変更届:住宅から老人福祉施設(認知症GHは老人福祉法上の「認知症対応型老人共同生活援助事業」に該当)への用途変更には消防署への届出が必要です。スプリンクラー設置義務(延べ床面積275㎡以上等)の適用有無を消防署に確認します
  • 建築確認:用途変更に伴い建築確認申請が必要な場合があります(延べ床面積200㎡超の特殊建築物への用途変更)
  • 大家との協議:改修工事を行う場合は貸主の承諾書が必要です。原状回復の取扱いについても事前に書面で確認します

新築・建て直しの場合の床面積の目安

1ユニット9人で新築する場合の概算床面積の目安は次のとおりです。

  • 居室9室:1室約10〜12㎡×9室=90〜108㎡
  • 共有部(居間・食堂・台所・浴室・廊下・収納等):100〜150㎡
  • 合計:200〜260㎡程度

実際の面積は設計によって異なります。バリアフリー対応(廊下幅・スロープ等)を加えるとさらに広くなることがあります。

設備基準違反のリスク

設備基準を満たさないまま開業した場合、または運営中に違反が発覚した場合、市区町村から改善命令が出ます。改善命令に従わない場合は最終的に指定の取消しになります(介護保険法第78条の9)。指定取消しになると、既存の入居者を他の施設に移す必要が生じるなど、入居者・職員双方に重大な影響が出ます。物件の確認は設計段階から徹底することが重要です。

居室の広さ基準(7.43㎡)の現実的な使われ方

省令が定める居室の床面積7.43㎡(収納設備等を除く)は、おおむね4.5畳程度に相当します。この基準は最低面積であり、実際の開業では8〜12㎡程度の居室を設けるケースが多いです。広すぎる居室は建設コストに影響し、狭すぎると利用者の生活環境の質が下がります。介護ベッド・衣類収納・車いすの動線を確保すると、実質的に10㎡前後が機能的な広さの目安となります(平成18年厚生労働省令第34号第93条)。

共有設備の確保が入居者の生活の質に直結する

食堂・居間・洗面所・浴室・便所はユニットごとに設置が義務付けられています(省令第93条)。これらの設備は利用者の日常生活動作(ADL)の維持・改善に直接関わります。浴室については、介護浴槽(チルトバスや特殊浴槽)を設置するか一般浴槽にとどめるかは運営方針と初期コストに影響します。特殊浴槽は1台100〜300万円程度するため、利用者の要介護度が高い場合は整備計画に含めることが重要です。

消防設備・バリアフリー基準

認知症GHは消防法上の「特定防火対象物」(6項口)に分類され、スプリンクラー設備の設置が義務付けられています(延べ面積275㎡以上は全館・以下は用途部分)。また、廊下幅・段差解消・手すり設置などのバリアフリー基準(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律)への適合も必要です。これらの設備コストは物件取得・改修計画の段階で見積もる必要があります。

2ユニット・3ユニットの設備計画のポイント

2ユニット以上では、ユニットごとに食堂・居間・浴室等を設けるか、共用化できるかが収益計画に影響します。省令では原則ユニットごとの設置を求めていますが、一定条件下で共用が認められる場合があります。2ユニット(定員18人)の浴室をユニット別に設けると、建設コストと清掃・管理の手間が増える一方、同時利用が可能になり利用者サービスが向上します。設備の共用可否は、指定申請前に市区町村と事前相談することが重要です。

賃貸物件を使う場合の注意点

認知症GHは既存の住宅・マンション・事務所を改修して開業するケースも多いです。賃貸物件を使う場合、①耐火・準耐火構造の確認、②スプリンクラー設置の可否(天井高・設備工事の許可)、③バリアフリー改修の許可(大規模修繕は貸主の同意が必要)、④用途変更の確認(住居→社会福祉施設への用途変更届が必要な場合あり)が指定申請前に必要です。改修工事の許可が得られない物件での開業は困難なため、物件選定の早い段階で確認することが重要です。

出典

  • 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)第95条〜第101条

収入と費用の試算は、認知症GH収支シミュレーターで確認できます。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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