消防設備士 乙種第6類(乙6)は、消火器の整備・点検を行うための国家資格です。試験は、四肢択一の筆記30問と、記述式の鑑別5問で、時間は1時間45分。受験資格はなく、誰でも受けられます。合格するには、筆記の科目ごとに40%以上、筆記全体で60%以上、鑑別で60%以上の3つを同時に満たす必要があります。この記事では、試験の中身と合格ラインを公式の数字で整理したうえで、どの順番で勉強すると取りこぼしにくいかをまとめます。
作成:fufumumu_design(ふふ)/作成日:2026年10月1日/数字の出典は、各表の下に記載しています。
乙6は、消火器の整備と点検のための資格
乙種第6類の消防設備士が整備できるのは、消火器です。消防法施行規則第33条の3で、消防設備士の免状の種類ごとに扱える設備が決められていて、第6類は消火器にあたります。
ここで間違えやすいのが、「工事」と「整備」の違いです。消防設備士には甲種と乙種があり、甲種は工事と整備の両方、乙種は整備だけができます。乙6は乙種なので、消火器の点検・整備(部品の交換や、消火薬剤の詰め替えなど)が仕事の範囲です。
なお、消火器を置くこと自体は、消防設備士でなくてもできます。消防設備士でなければ行ってはならない工事の対象(消防法施行令第36条の2)に、消火器は入っていないためです。乙6が必要になるのは、法令で設置しなければならない消火器の整備を行う場面(消防法第17条の5、消防法施行令第36条の2第2項)と、点検を資格者にさせる必要がある建物(消防法施行令第36条第2項)で、消火器と簡易消火用具を点検する場面(消防法第17条の3の3、消防庁告示第10号)です。この点検は、第1種消防設備点検資格者も行えます。消火器については甲種の区分はなく、乙種第6類だけです(消防法施行規則第33条の3)。
試験は筆記30問と鑑別5問、時間は1時間45分
乙6の試験は、マークシートの筆記と、記述式の実技(鑑別等)に分かれています。問題の数は、次のとおりです。
| 区分 | 科目 | 問題数 |
|---|---|---|
| 筆記(四肢択一) | 消防関係法令(共通6問・類別4問) | 10問 |
| 基礎的知識(機械) | 5問 | |
| 消防用設備等の構造・機能・整備(機械9問・規格6問) | 15問 | |
| 実技 | 鑑別等(写真・イラスト・図面等による記述式) | 5問 |
出典:一般財団法人消防試験研究センター「試験科目及び問題数」「試験の方法」(2026年10月1日に確認)
「共通」は、消防設備士の全部の類に共通する法令で、消防法の基本、点検と報告、免状、講習などの決まりが含まれます。「類別」は、乙6にだけかかわる法令で、「消火器をどこに、いくつ置くか」という設置の基準が中心です。
「規格」は、消火器そのものの作り方の決まりで、国の基準(消火器の技術上の規格を定める省令、消火器用消火薬剤の技術上の規格を定める省令)に書かれています。「機械」は、消火器の種類と仕組み、点検の方法です。点検の方法は、消防庁が公表している「消防用設備等の点検要領」に書かれています。
試験の基本情報は、次のとおりです。
| 受験資格 | なし(誰でも受験できる) |
|---|---|
| 試験時間 | 1時間45分(科目の一部免除がある場合は短くなる) |
| 試験手数料 | 4,400円(非課税) |
| 合格発表 | 支部ごとに受験番号を公示し、受験者にはハガキで通知。センターのホームページにも掲示 |
出典:一般財団法人消防試験研究センター「受験資格」「試験の方法」(2026年10月1日に確認)
合格ラインは「科目ごとに4割」と「全体で6割」と「鑑別で6割」の3つ
消防試験研究センターが公表している合格基準は、「筆記試験において、各科目毎に40%以上で全体の出題数の60%以上、かつ、実技試験において60%以上」です。この3つは、すべて満たす必要があります。問題数に直すと、次のようになります。
| 科目 | 問題数 | 40%以上に必要な正解数 |
|---|---|---|
| 消防関係法令 | 10問 | 4問以上 |
| 基礎的知識 | 5問 | 2問以上 |
| 構造・機能・整備 | 15問 | 6問以上 |
| 筆記の合計 | 30問 | 18問以上(60%) |
表の読み方の注意が1つあります。筆記で18問を取っていても、1つの科目が40%を下回ると不合格です。たとえば、構造・機能・整備で15問中14問、法令で10問中4問を取っても、基礎的知識が5問中1問なら、合計は19問でも不合格になります。
基礎的知識は5問しかないので、3問を落とすと40%ぎりぎり、4問落とすと不合格になります。問題数が少ない科目ほど、1問の重さが大きいということです。
実技(鑑別)の60%について、センターは1問ごとの配点を公表していません。記述の部分点の扱いも分からないので、「5問のうち3問を完全に書ける」ことを目安にして準備するのが安全です。
令和7年度の合格率は35.6%、令和2年度から毎年下がっている
乙6の合格率は、令和7年度(2025年4月〜2026年3月)で35.6%でした。受験者32,400人のうち、合格者は11,541人です。直近6年分は、次のとおりです。
| 年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
|---|---|---|---|
| 令和2年度 | 20,955人 | 8,944人 | 42.7% |
| 令和3年度 | 25,634人 | 10,240人 | 39.9% |
| 令和4年度 | 25,023人 | 9,712人 | 38.8% |
| 令和5年度 | 25,136人 | 9,567人 | 38.1% |
| 令和6年度 | 25,835人 | 9,345人 | 36.2% |
| 令和7年度 | 32,400人 | 11,541人 | 35.6% |
出典:一般財団法人消防試験研究センター「試験実施状況」令和元年度〜令和7年度(2026年10月1日に確認)
合格率は令和2年度から令和7年度まで5年続けて下がっていて、令和7年度は受験者が前の年より約6,500人増えました。なお、令和元年度は38.3%で、令和2年度の42.7%は高かった年です。受験する人の3人に2人ほどが不合格になる試験だと考えておくと、準備の量を見誤りにくくなります。推移の見方や、他の類との比べ方は、乙6の合格率と難易度をまとめた記事で詳しく書いています。
勉強は「法令の数字」から始めると、足切りを防ぎやすい
おすすめの順番は、次の4段階です。理由は、合格ラインの仕組みにあります。
- 消防関係法令の数字を覚える(設置の基準、点検と報告の周期、届出の期限など)
- 消火器の種類と仕組みを押さえる(加圧式と蓄圧式、消火薬剤ごとの違い)
- 点検の方法と規格の数字を覚える(点検要領と規格省令)
- 基礎的知識を最低2問取れるようにする(力のモーメント、応力、気体の法則など)
1番目に法令を置くのは、法令は10問あり、しかも答えの根拠が条文ではっきりしているためです。法令には、「何年に1回」「何日以内」「何平方メートル以上」といった数字の決まりが多くあります。数字は覚えれば答えを選びやすく、40%の足切りを避けやすくなります。
2番目の消火器の種類と仕組みは、構造・機能・整備の問題だけでなく、鑑別でも使います。「この消火器の名前は」「この部品は何か」という形で問われることも考えられるので、早めに頭に入れておくほうが、あとの勉強が楽になります。加圧式と蓄圧式の違いや、消火剤ごとに使える火災は、消火器の種類と仕組みの記事に、規格の条文と一緒にまとめています。
3番目の点検と規格は、数字が細かく、量も多い部分です。1と2の土台ができてからのほうが、「この数字は、どの消火器の、どの部品の話か」を結びつけて覚えられます。
4番目の基礎的知識は、機械の基礎(力のつり合い、材料の強さ、気体の性質など)です。人によって得意・不得意が分かれやすい内容です。5問しかないので、満点を狙うより、確実に2問以上取れる範囲を固めるほうが、時間の使い方として合っています。
法令で覚える数字は、30個ほどに絞れる
法令の数字は、範囲の割に数が多くありません。たとえば、次のようなものです。
- 点検結果の報告:特定防火対象物は1年に1回、それ以外は3年に1回(消防法施行規則第31条の6)
- 設置の届出:工事が完了した日から4日以内に、防火対象物の関係者が消防長又は消防署長へ(消防法施行規則第31条の3)
- 講習:免状の交付を受けた日以後の最初の4月1日から2年以内、その後は5年以内ごと(消防法施行規則第33条の17)
- 消火器具に至る歩行距離:20メートル以下(指定可燃物を多く扱う場所に置く大型消火器は30メートル以下)(消防法施行規則第6条・第7条)
- 設置の高さ:床面から1.5メートル以下(消防法施行規則第9条)
こうした数字を、根拠の条文と一緒にまとめたのが、乙6で覚える数字のまとめです。表の形で並べているので、試験の直前の見直しにも使えます。
「3分の1まで減らせる」は、言い回しに注意する
法令の中で、言い回しに注意したいのが、ほかの消火設備があるときの消火器の減らし方です。消防法施行規則第8条は、屋内消火栓設備やスプリンクラー設備があるとき、その有効範囲の部分について、消火器具の能力単位の合計を「三分の一までを減少した数値とすることができる」としています。
これは「3分の1に減らせる」ではなく、「3分の1までを減らせる(残りは3分の2以上)」という意味です。さらに、泡消火設備や粉末消火設備などの場合(同条第2項)は、減らせるのが、少量危険物や電気設備などのために追加で置く分に限られます。どちらも、その消火設備の適応性が消火器具と同じときだけで、防火対象物の11階以上の部分ではこの減らし方は使えません(同条第4項)。選択肢の言い回しで正誤が変わるところなので、条文の文章のまま覚えておくと安全です。
点検と規格の中身は、消防庁の点検要領と国の規格に書かれている
構造・機能・整備の問題は、法令のように条文の番号が表に出てこないので、何を読めばよいか分かりにくい科目です。内容にあたる国の資料は、大きく次の2つです(センターは、出題のもとにした資料を公表していません)。
| 範囲 | もとになる資料 | 覚える中身の例 |
|---|---|---|
| 点検(機械) | 消防庁「消防用設備等の点検要領」第1 消火器具 | 内部及び機能の点検を行う年数(加圧式は製造年から3年、蓄圧式は5年、化学泡は設置後1年。二酸化炭素消火器とハロゲン化物消火器を除く)、耐圧性能の点検(製造年から10年を経過したもの又は本体容器に腐食等があるもの。実施してから3年を経過していないものを除く)、抜取り方式 |
| 規格 | 消火器の技術上の規格を定める省令、消火器用消火薬剤の技術上の規格を定める省令 | 能力単位、放射時間、使用温度範囲、安全栓、指示圧力計、塗色(外面の25%以上を赤色) |
点検要領は、消防庁のホームページでPDFとして公開されていて、誰でも読めます。テキストで分からない部分があったときは、原文に戻って確かめると、あいまいさが消えることがあります。
「下限より下」と「範囲の外」は、どちらも当てはまることがある
原文に戻ると分かる例を1つ挙げます。蓄圧式の消火器の指示圧力計について、点検要領には「指針が緑色範囲の下限より下がっているものは、消火薬剤量を点検すること」「指示圧力値が緑色範囲外のものは、指示圧力計の作動を点検すること」の2つが書かれています。
下限より下がっている状態は、緑色範囲の外でもあります。つまり、この場合は、消火薬剤量の点検と、指示圧力計の作動の点検の両方が当てはまります。4択で「どちらか1つ」を選ばせる問題では、選択肢の中に両方が並んでいないかを見る必要があります。
鑑別は5問すべて記述、写真や図を見て書く
実技の鑑別等は、写真・イラスト・図面を見て、答えを書く形式です。4択ではないので、「見れば分かる」レベルでは足りず、名前や数字を正しく書ける必要があります。
鑑別で書けるようにしておきたいのは、次のような内容です。
- 消火器の名前(写真や断面図から、どの消火器かを答える)
- 部品の名前と役割(安全栓、指示圧力計、加圧用ガス容器、ホーン、ろ過網など)
- 点検に使う器具の名前(キャップスパナ、反射鏡、はかりなど)
- 点検の判定と手順(指示圧力計の読み方、耐圧性能の点検で水圧をかける時間など)
- 設置の標識に書く文字(「消火器」「消火バケツ」「消火砂」)
記述は、自分で書いて答え合わせをしないと、書けるかどうかが分かりません。鑑別の具体的な練習方法は、乙6の鑑別の対策をまとめた記事にまとめています。
過去問は一部だけ公開、二次利用は禁止
消防試験研究センターは、ホームページで、過去に出題された問題の一部を公開しています。一方で、センターは、学校での配布やご自身の学習のためのプリントアウトなど教育目的(非営利)の場合を除き、許可のない複製・転用・販売などの二次利用を禁止しています。
当サイトの問題集も、実際の試験問題そのものではなく、法令や規格、点検要領をもとにAIで作った問題です。どの教材を使う場合も、答えの根拠がどこにあるかが書かれているものを選ぶと、覚え違いに気づきやすくなります。
科目の一部免除がある人は、試験時間も短くなる
ほかの類の消防設備士の免状を持っている人や、技術士(機械部門)などの資格を持っている人は、申請すると、試験科目の一部が免除されます(消防法施行規則第33条の11)。たとえば、すでに消防設備士の免状を持っている人が乙6を受けるときは、法令のうち、全部の類に共通する部分が免除されます(同条第4項第1号)。乙種第5類の免状を持っている人と、甲種第5類の免状を持っている人は、さらに基礎的知識も免除されます(同項第2号・第3号)。5年以上消防団員として勤務し、消防学校の専科教育の機関科を修了した人は、基礎的知識と実技試験(鑑別)が免除されます(同条第6項)。免除があると、その分の問題がなくなり、試験時間も短くなります。どの資格でどの科目が免除されるかは、センターの「乙種用の一覧表」で確認できます。
ただし、合格基準は「免除を受けた以外の問題で」40%と60%を満たすことです。免除で問題数が減ると、1問の重みが大きくなる科目も出てきます。免除を使うかどうかは、自分の得意な科目と合わせて決めるとよいです。免除の9つのパターンごとの試験時間・合格に必要な正解数と、免除を使わないほうが有利になる境目は、乙6の科目免除の記事で計算しています。
合格したあとも、講習は定期的に受ける
消防設備士は、免状を取ったら終わりではありません。消防法施行規則第33条の17で、免状の交付を受けた日以後の最初の4月1日から2年以内に、都道府県知事が行う講習を受けることが決められています。その後は、講習を受けた日以後の最初の4月1日から5年以内ごとに受けます。また、業務に従事するときは、免状を携帯していなければなりません(消防法第17条の13)。
この講習の年数と、免状の携帯は、どちらも消防法と施行規則の決まりで、法令(共通)の勉強で出てくる内容です。合格後の話ですが、試験勉強の中でまとめて覚えておくと、あとで慌てずにすみます。免状の申請先と手数料、講習の期限の数え方、乙6でできる仕事の範囲は、乙6に合格したあとの流れの記事にまとめています。
乙6の勉強に、このサイトの問題集を使う
当サイトでは、乙6の問題集をブラウザで使えるアプリとして公開しています。法令の原文と消防庁の点検要領(基礎的知識は機械の基礎知識)をもとにAIが作った問題を、正解を伏せたAIの確認2回のあと、運営者がAI(Claude)を使って根拠の原文と1問ずつ照合した「確認済みの問題集」が中心で、答えのあとに根拠にした原文が表示されます。
- 数字ドリル(一問一答)と、基本の確認問題は、無料で何度でも使えます
- 筆記の確認済みの問題集(211問)は、全問無料です。分野(法令の共通・法令の類別・基礎的知識・構造の機械・構造の規格)ごとに選んで解けます
- 本番と同じ配分の模試(筆記30問・鑑別5問・1時間45分のタイマー・合格基準の判定)と、鑑別の問題すべて(図の鑑別と文章の鑑別)は、買い切り980円(税込)で使えます。鑑別の一部は無料で試せます
問題集の中身、無料と有料の違い、例題と、乙6の記事の一覧は、消防設備士 乙6の試験対策のページにまとめています。
このアプリは、消防庁や消防試験研究センターとは関係のない、民間の学習サービスです。問題は本番の試験問題そのものではなく、合格を保証するものではありません。
乙6の関連記事
- 消防設備士 乙6の合格率と難易度
- 消防設備士 乙6の鑑別の対策
- 消防設備士 乙6で覚える数字のまとめ
- 消火器の種類と仕組み(加圧式と蓄圧式・使える火災)
- 乙6に合格したあとの流れ(免状の申請・講習・できる仕事)
- 乙6の科目免除(資格ごとの免除・試験時間・合格ライン)
- 消火器の点検商法(手口と断り方)
出典
- 一般財団法人消防試験研究センター「受験資格」「試験科目及び問題数」「試験の方法」「過去に出題された問題」「試験実施状況(令和元年度〜令和7年度)」https://www.shoubo-shiken.or.jp/ (2026年10月1日に確認)
- 消防法、消防法施行令、消防法施行規則、消火器の技術上の規格を定める省令、消火器用消火薬剤の技術上の規格を定める省令(e-Gov法令検索)
- 消防庁「消防用設備等の点検要領」第1 消火器具 https://www.fdma.go.jp/mission/prevention/items/youryou1.pdf


コメント