消防設備士 乙種第6類の筆記試験には「機械に関する基礎的知識」という科目があります。出題数は5問。合格基準は40%以上ですから、2問以上正解しなければなりません(消防試験研究センター「試験概要」)。
この科目には、ほかの科目と根本的に異なる特徴があります。消防法・施行令・施行規則・規格省令など、条文が答えの根拠になる科目と違い、「基礎的知識(機械)」は一般的な機械・物理の知識が出題の根拠になります。条文を読んで暗記する方法が通用しない唯一の科目です。
この記事では、基礎的知識(機械)の科目の位置づけ・出題されやすい内容・勉強の進め方を整理します。
筆記30問の内訳と、基礎的知識(機械)の位置づけ
乙6の筆記試験は30問です。科目ごとの問題数は消防試験研究センターの公表内容から次のとおりです(消防試験研究センター「試験概要(乙種第6類)」)。
| 科目 | 問題数 | 合格に必要な最低正解数(各科目40%以上) |
|---|---|---|
| 消防関係法令(共通) | 6問 | 3問(40%基準の切り上げ) |
| 消防関係法令(第6類) | 4問 | 2問(40%基準の切り上げ) |
| 基礎的知識(機械) | 5問 | 2問(5問×40%=2問) |
| 消火器の構造・機能(機械) | 9問 | 4問(9問×40%の切り上げ) |
| 消火器の規格 | 6問 | 3問(40%基準の切り上げ) |
各科目で合格基準(40%以上)を満たすことと、全体で60%以上(30問中18問以上)を正解することが、同時に求められます。全体で18問取れても、どれか1科目が足切りを割ると不合格になります。
基礎的知識(機械)は5問なので、1問しか正解できなければ40%を割ります。3問以上正解できれば60%で余裕ができます。全体の正解率にも影響するため、「法令系を固めれば捨てても大丈夫」という考え方は成り立ちません。
なぜ条文で解けないのか
乙6の筆記でもっとも問題数が多いのは「消火器の構造・機能(機械)」の9問です。この科目は消火器の規格省令・点検要領に答えが書かれていて、条文を正確に理解していれば解けます。
「基礎的知識(機械)」は性質が違います。消防法令には、てこの原理・ボイルの法則・金属の腐食・応力とひずみといった内容は書かれていません。試験の出題根拠は、一般的な機械工学・物理の知識です。
法令を読み込んでも、この科目の得点は上がりません。物理や機械の基礎的な概念を別に習得する必要があります。
市販のテキストが「第1章」に置く内容
乙6のテキストの多くは、消防法令に入る前の章で「機械に関する基礎知識」を扱っています。各社の参考書で共通して取り上げられている主なテーマは次のとおりです。
圧力と気体の法則
圧力の単位(Pa・MPa)と計算の基本、パスカルの法則(密閉容器内では圧力が均等に伝わる)、ボイルの法則(温度一定のとき圧力と体積は反比例)が扱われます。
消火器は内部に高圧のガスや薬剤が入っているため、圧力の概念は試験でも問われます。蓄圧式消火器の指示圧力計の読み方(緑色の範囲:0.7〜0.98MPa)を学ぶ前提知識として位置づけられることが多いです。
力のつり合い(てこ・滑車)
てこの原理(力×腕の長さが等しければつり合う)、滑車を使った力の変換(動滑車1個で引く力が半分になる)が扱われます。力のつり合いを計算する問題が出ることがあります。
金属の性質と腐食
金属の酸化・腐食のしくみ、異種金属が接触したときに起きる電食(ガルバニック腐食)、防食の方法(塗装・メッキ・犠牲陽極法など)が扱われます。消火器本体はアルミ・スチールなどの金属製で、腐食が廃棄の判断基準にもなるため、実務との関連もあります。
応力とひずみ
物体に力を加えたときに内部に生じる応力、変形の程度を示すひずみ、弾性変形(力を除けば元に戻る)と塑性変形(力を除いても戻らない)の違いが扱われます。応力-ひずみ線図(縦軸に応力・横軸にひずみをとったグラフ)の読み方も含まれます。
流体の性質
流体(液体・気体)の粘性、流れの種類(層流・乱流)、ベルヌーイの定理(速度が上がると圧力が下がる)の基本が扱われます。泡消火器や強化液消火器の放射の原理とも関連します。
「同じ問題が繰り返し出やすい」科目
法令の問題は条文が改正されると内容が変わりますが、「基礎的知識(機械)」のテーマは物理・機械工学の基本的な法則に基づいているため、出題のバリエーションが限られています。ボイルの法則・てこの計算・応力の考え方など、同じ内容が形を変えて繰り返し出題される傾向があります。
これは学習の面では利点です。範囲が広くてどこを勉強すれば良いか分からない法令系の科目と比べて、「繰り返し出るテーマをひとつずつ理解する」という進め方が有効です。
勉強の進め方
「条文暗記」の癖を持ち込まない
法令科目の学習で「条文を繰り返し読む・数字を暗記する」方法を身につけてから基礎的知識(機械)に入ると、「覚えることが書いていない」と感じて止まることがあります。この科目は原理・法則を理解することが目標で、条文の丸暗記とは別のアプローチが必要です。
公式を手で書いて確認する
ボイルの法則(P₁V₁ = P₂V₂)・てこの原理(F₁×L₁ = F₂×L₂)などの公式は、読むだけでなく自分で書いて数値を当てはめる練習が定着を早めます。計算問題は単位を確認する習慣をつけると、答えのオーダー(大きさ)のチェックにもなります。
5問・2問合格の数字を意識する
この科目は5問しかありません。全問正解を目指す必要はなく、2〜3問を確実に取る水準を目標にすると効率が良いです。5テーマをすべて深く勉強するより、理解しやすいテーマから確実に固めていく方法が現実的です。
他の科目との順番
一般的な乙6の学習では、法令と規格を先に固め、基礎的知識(機械)を並行して学ぶ進め方がテキストで多く示されています。法令・規格は問題数が多く(計16問)、条文を軸に体系的に学べるため、まず法令から入る人が多いです。基礎的知識(機械)は5問・独立した分野なので、法令の学習に行き詰まったときの気分転換として取り組む方法もあります。
「消火器の構造・機能(機械)」との違い
似た名前の科目として「消火器の構造・機能(機械)」(9問)があります。こちらは消火器本体の部品・動作・構造に関する問題で、答えは規格省令や点検要領の条文から導けます。
「基礎的知識(機械)」と「消火器の構造・機能(機械)」は同じ「機械」という言葉を含みますが、学習の方法がまったく異なります。規格省令を読んでも基礎的知識(機械)の問題は解けませんし、物理の公式を覚えても消火器の構造問題には直結しません。名前が似ているために混同しやすいですが、別の科目として切り分けて学ぶことが重要です。
点検商法との関係(消火器の扱いを知る)
「消火器 点検 訪問」で検索すると、悪質な点検商法に関する情報が多く出てきます。点検と称して自宅に来て、高額の請求をするケースです。消防設備士の試験勉強の中で消火器の構造・法令を学ぶと、「本来どういう点検がどこで行われるか」という基準も見えてきます。試験勉強と実際の消火器の知識がつながっていることを意識すると、学習の見通しが持ちやすくなります。
乙6の問題集(無料から使える)
当サイトの問題集では、基礎的知識(機械)を含む筆記の確認済み問題を無料で練習できます。各問題に根拠の条文・一次資料が表示されるため、「この答えの根拠は何か」を確認しながら解くことができます。鑑別(記述)と模試は買い切り980円です。
乙6の試験全体の対策については、こちらの記事もご参照ください。
関連記事
- 消防設備士 乙6 の合格に必要なこと、全部まとめます。
- 消防設備士 乙6 の合格率は、令和7年度35.6%。5年連続で下がっている。
- 消防設備士 乙6 で覚える数字は、根拠から覚えると忘れにくい。
- 消防設備士 乙6 の鑑別。本番は記述、練習は書いて採点する。
- 消防設備士 乙6 の一部免除。電工・電主で何問減るか、有利かどうか。
出典:消防試験研究センター「試験概要(乙種第6類)」「試験の合格基準」(いずれも消防試験研究センター公式サイト)


コメント