小規模多機能型居宅介護の利用者負担は「定額制」が最大の特徴です。通い・宿泊・訪問を何回使っても、月額の介護保険負担は変わりません。ただし食費・おむつ代・日用品代等は別途自己負担となり、要介護度別に月額が異なります。この記事では利用者負担の計算方法と、注意が必要な費用を整理します。
定額制の仕組み:使った回数ではなく月額で支払う
通常の在宅サービス(訪問介護・デイサービス等)は、利用した日数・時間に応じて介護保険の費用が積み上がります。小規模多機能型居宅介護は月額定額制で、通いを週5回使っても週2回しか使わなくても、月額の介護保険費用は同じです。
月額報酬の仕組みを整理すると、以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 報酬の種類 | 登録者1人あたりの月額報酬(要介護度別) |
| 1単位の金額 | 地域区分によって異なる(全国平均は10.45〜11.40円程度) |
| 利用者負担割合 | 1割・2割・3割(所得により異なる) |
| 定額の対象範囲 | 通い・宿泊・訪問(訪問サービス)のすべて |
| 定額に含まれないもの | 食費・宿泊費(おむつ代・日用品代等) |
要介護度別の月額報酬と利用者負担の目安
令和6年4月改定後の月額単位数(通常規模・同一建物以外)は以下のとおりです。
| 要介護度 | 月額単位数 | 月額報酬の目安 | 利用者負担(1割)の目安 |
|---|---|---|---|
| 要支援1 | 3,450単位 | 約36,000円 | 約3,600円 |
| 要支援2 | 6,972単位 | 約72,900円 | 約7,290円 |
| 要介護1 | 10,458単位 | 約109,400円 | 約10,940円 |
| 要介護2 | 15,370単位 | 約160,600円 | 約16,060円 |
| 要介護3 | 22,359単位 | 約233,700円 | 約23,370円 |
| 要介護4 | 24,677単位 | 約257,900円 | 約25,790円 |
| 要介護5 | 27,209単位 | 約284,300円 | 約28,430円 |
※月額報酬の計算:月額単位数 × 1単位10.45円(1級地以外の目安)で試算。地域区分によって異なります。
要介護5で月額報酬が284,300円程度になりますが、これは通い・宿泊・訪問を含むすべてのサービスの費用です。同じ量のサービスを個別に訪問介護+デイサービス+ショートステイで利用した場合と比較すると、サービスの利用頻度によっては小規模多機能の方が費用が抑えられるケースもあります。
2割・3割負担の判定
利用者の負担割合は、所得によって以下のとおり決まります。
| 負担割合 | 判定の目安 |
|---|---|
| 1割 | 合計所得金額160万円未満(65歳以上の場合) |
| 2割 | 合計所得金額160万円以上220万円未満(一定の条件) |
| 3割 | 合計所得金額220万円以上(一定の条件) |
※年金収入・各種所得を合算した合計所得金額で判定します。詳細は市区町村が発行する「介護保険負担割合証」で確認できます。
2割・3割の場合、上記の1割の表の2倍・3倍が利用者負担の目安になります。要介護3・3割負担の場合、介護保険分の月額自己負担は約70,000円になります。
高額介護サービス費:月額の上限制度
介護保険の1か月の自己負担額が一定額を超えた場合、超過分が払い戻される「高額介護サービス費」制度があります。
| 区分 | 月額上限 |
|---|---|
| 現役並み所得者(課税所得690万円以上) | 140,100円 |
| 現役並み所得者(課税所得380万円以上) | 93,000円 |
| 現役並み所得者(課税所得145万円以上) | 44,400円 |
| 一般(上記以外の住民税課税世帯) | 44,400円 |
| 住民税非課税世帯(所得が一定以上) | 24,600円 |
| 住民税非課税世帯(所得が少ない) | 15,000円 |
高額介護サービス費の申請は市区町村の窓口で行います。一度申請すると、その後は自動的に振り込まれる自治体が多くなっています。
定額に含まれない費用:食費・宿泊費は別途
介護保険の月額報酬に含まれない費用(全額自己負担)は以下のとおりです。
| 費用の種類 | 目安・備考 |
|---|---|
| 通いの食費(昼食等) | 1食600〜800円程度が多い。事業所の設定による |
| 宿泊時の宿泊費 | 1泊1,000〜2,000円程度が多い。事業所の設定による |
| 宿泊時の食費 | 1日3食で2,000〜3,000円程度が多い |
| おむつ代(宿泊時) | 実費 |
| 日用品代(宿泊時) | シャンプー・歯ブラシ等の実費 |
食費・宿泊費の上限は省令で定められており、事業所が利用料として徴収できる額には制限があります(重要事項説明書への記載が義務)。
宿泊を頻繁に利用する場合(月20泊以上等)は、食費・宿泊費の実費が月3〜5万円程度になるケースもあります。利用者・家族が「定額制だから安い」と思い込んでいると、実際の費用を見てトラブルになることがあるため、契約時に丁寧な説明が必要です。
低所得者向けの軽減制度
住民税非課税世帯の方には、食費・宿泊費の軽減制度がありません。小規模多機能型居宅介護は「居宅サービス」に分類されるため、特別養護老人ホーム等の「施設サービス」に適用される「補足給付(特定入所者介護サービス費)」の対象外です。
ただし、社会福祉法人等が運営する事業所では、低所得者向けの独自の利用料軽減制度を設けている場合があります。市区町村によっては独自補助を行っているケースもあります。
訪問看護等との費用の扱い
小規模多機能型居宅介護を利用していても、以下のサービスは別途費用が発生します(介護保険の定額の範囲外)。
- 訪問看護:医療保険の費用(医療保険が適用される場合)または介護保険の訪問看護費
- 訪問リハビリテーション:介護保険の訪問リハビリ費
- 居宅療養管理指導(医師・歯科医師・薬剤師等の訪問指導):各専門職の報酬
- 福祉用具貸与:貸与費用の1割等
これらは小規模多機能の月額定額に加算される費用であり、利用者の総費用を試算する際は合算して確認する必要があります。
収支計画での利用者負担の確認
事業所にとっては、利用者が支払える月額負担の範囲内で収支が成り立つかどうかを把握することが重要です。特に要支援1(月3,450単位)は報酬が低く、スタッフのコストを賄うためにはある程度の人数確保が必要になります。
小規模多機能型居宅介護の月額収入・収支の試算は、小規模多機能型居宅介護 収支シミュレーターで確認できます。
参考・出典
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)
- 介護保険法(平成9年法律第123号)
- 介護保険の高額介護サービス費(厚生労働省)
この記事は2026年11月時点の法令・告示に基づいています。
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