認知症グループホームの認知症介護実践者研修。受講義務と進め方。

認知症グループホームでは、計画作成担当者に認知症介護実践者研修の受講が義務付けられています。また、介護職員全体にも計画的な研修受講が求められます。本記事では、受講義務の根拠・研修の内容・申し込み方法・費用・受講後の活用方法を解説します。

認知症介護実践者研修の受講義務の根拠

指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)第92条は、計画作成担当者の要件として「介護支援専門員または認知症介護実践者研修の修了者」を定めています。

ケアマネジャー(介護支援専門員)の資格を持つ職員が計画作成担当者となる場合は研修の修了は不要ですが、ケアマネ不在の事業所では認知症介護実践者研修修了者が担当者を務めます。

さらに、令和6年改定では介護職員全体に対して「認知症対応力向上研修」を計画的に受講させることが努力義務とされました。

認知症介護実践者研修の内容

認知症介護実践者研修は、都道府県または指定を受けた研修機関が実施する公式研修です。研修内容は以下のとおりです。

科目 内容
認知症の基礎知識 種類・症状・BPSDの理解
認知症ケアの原則 利用者中心のケア・パーソンセンタードケア
コミュニケーション技術 認知症のある方への声かけ・関わり方
日常生活の支援技術 食事・入浴・排泄・移動の介助
チームケア 多職種連携・事業所内の情報共有
家族支援 家族との連携・相談対応

研修は座学(講義)と実習(グループワーク・ロールプレイ)を組み合わせた内容で、日程は都道府県によって異なりますが概ね5日間程度実施されます。

申し込み方法と受講の流れ

認知症介護実践者研修の申し込みは、各都道府県または研修実施機関(社会福祉協議会・介護老人福祉施設協議会など)が窓口です。

一般的な受講の流れは以下のとおりです。

  1. 都道府県の研修案内(ウェブサイト・事業者向け通知)を確認する
  2. 所属する市区町村の介護保険担当窓口または事業者団体へ問い合わせる
  3. 申込書を提出する(受講要件の確認:介護職員であること・事業所の推薦等)
  4. 受講決定通知を受け取り、日程・会場を確認する
  5. 研修を受講し、修了証を取得する

受講希望者が多い場合は抽選になる都道府県もあります。開業前から計画的に受講を進めることが大切です。

受講にかかる費用と期間

研修費用は都道府県によって異なりますが、無料または数千円程度の実費負担が一般的です。一部の都道府県では事業所に補助金が出る場合もあります。

研修期間は通学日数5日間程度が多いですが、事前学習(eラーニング)を組み合わせる都道府県もあります。職員が受講中は事業所の人員配置が手薄になるため、勤務シフトを事前に調整しておく必要があります。

認知症介護基礎研修(新任職員向け)との違い

令和6年4月から、認知症介護に直接関わる全ての介護職員(資格なし・入職1年未満も含む)に対して「認知症介護基礎研修」の受講が義務付けられました。

研修名 対象 時間数の目安
認知症介護基礎研修 認知症介護に直接関わる全介護職員 eラーニング約6時間
認知症介護実践者研修 計画作成担当者・中堅スタッフ 通学5日間程度
認知症介護実践リーダー研修 指導的立場の職員 通学8日間程度

認知症介護基礎研修は eラーニングで受講でき、費用は無料(厚生労働省の委託事業)です。義務化後に受講していない職員がいる場合は「認知症介護基礎研修未修了者に対する措置未実施減算」の対象となります。

修了後の活用:計画作成担当者への就任

認知症介護実践者研修を修了した職員は、計画作成担当者に就任することができます。開業時にケアマネジャーが確保できない場合でも、修了者がいれば事業所を運営することができます。

計画作成担当者の要件や役割の詳細は管理者・計画作成担当者の要件を参照してください。

研修義務が収支に与える影響

研修未受講による減算は収益に直接影響します。例として「認知症介護基礎研修未修了者に対する措置未実施」の場合、対象職員の業務提供日数に応じた報酬が減算されます。

開業前から研修の受講計画を立て、すべての職員が義務の研修を修了している状態を維持することが重要です。研修義務の全体像は法定研修の義務を参照してください。

まとめ

認知症グループホームでは、計画作成担当者への認知症介護実践者研修の受講義務と、全介護職員への認知症介護基礎研修の受講義務があります。特に認知症介護基礎研修は令和6年4月に完全義務化されており、未受講者がいる場合は減算の対象となります。開業前から受講計画を立て、体制を整えておくことが重要です。

開業準備の全体像は開業ガイドや収支シミュレーターも参照してください。

認知症介護実践者研修の具体的な研修内容と日程

都道府県ごとに多少の違いはありますが、一般的な認知症介護実践者研修は以下の構成で実施されます。

日程 テーマ 形式
1日目 認知症の基礎知識・制度の理解 講義
2日目 認知症ケアの実践・BPSDへの対応 講義+グループワーク
3日目 コミュニケーション技術・事例検討 ロールプレイ
4日目 家族支援・地域連携 講義+演習
5日目 チームケアの実践・まとめ 発表・修了試験

修了試験がある都道府県では、出席だけでなく試験合格が修了の条件になります。事前に試験の有無・内容を確認しておくと安心です。

認知症介護実践リーダー研修:次のステップ

実践者研修の修了後、さらなるスキルアップとして「認知症介護実践リーダー研修」があります。リーダー研修は、事業所内で他の介護職員を指導・育成する立場のスタッフを対象としており、通学8日間程度の研修です。

リーダー研修を修了した職員が在籍する事業所は、「認知症専門ケア加算Ⅱ」(4単位/日)の算定要件の一つを満たすことができます。認知症専門ケア加算については認知症専門ケア加算を参照してください。

研修費用の補助制度

都道府県によっては、介護職員の研修受講費用に対して補助金を交付しています。厚生労働省の「介護職員のためのキャリアアップ補助金」や都道府県独自の助成制度が活用できる場合があります。開業前後に都道府県の担当窓口に補助制度の有無を確認することを推奨します。

職員の研修受講を推進することは、人材確保・定着にもつながります。研修費用の補助は事業所の持ち出しを抑え、収支改善にも貢献します。

研修記録の管理と法定保存

職員が受講した研修の記録は2年間保存する義務があります(平成18年省令第34号第105条)。記録には以下の内容を残します。

  • 研修名・実施機関・日程
  • 受講した職員の氏名・雇用形態
  • 修了証(コピー)の保管

研修記録が整理されていないと、実地指導で指摘される場合があります。各職員の研修履歴を一覧化して管理することが重要です。

研修受講後のキャリアパスと加算への貢献

認知症介護実践者研修の修了は、職員個人のキャリアアップだけでなく、事業所の加算取得にも直結します。認知症専門ケア加算Ⅰの算定要件として「認知症介護実践者研修修了者の配置」が求められており、1ユニットあたり1人以上の配置が必要です(令和6年告示第128号)。加算単位数は1人あたり3単位/日です。

9人×3単位/日×30日×10円(その他地域)で月8,100円の増収となります。スタッフが研修を修了することで事業所の収益底上げにつながります。

介護職員の離職率低下と研修の関係

認知症グループホームは介護職員の離職率が高い傾向にあります。研修受講は職員のモチベーション向上・自信の醸成につながり、離職率の抑制に寄与します。採用コストは1人あたり数十万円に上る場合もあるため、研修への投資は中長期的にコスト削減にもつながります。

職員の定着策として、研修受講費用の補助・修了後の昇給や手当の設定を組み合わせることが有効です。

関連記事:人員基準・職員採用の進め方・法定研修の義務・BCP策定義務

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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