認知症グループホームを含む介護事業所では、慢性的な人材不足を背景に外国人材の採用が広がっています。主な制度はEPA(経済連携協定)・技能実習・特定技能の3種類です。それぞれ在留資格・採用条件・費用・在留期間が異なります。本記事では3制度の比較と、採用時の注意点を解説します。
外国人材採用の背景:介護分野の人材不足
令和7年介護事業経営実態調査によると、認知症グループホームの収支差率は全国平均3.0%にとどまっており、経営の厳しさの一因として人件費の高騰があります。介護職員の不足は依然として続いており、外国人材は補完的な労働力として活用が広がっています。
ただし、外国人材の採用は通常の採用と比べて手続きが複雑で、費用もかかります。3つの制度の違いを理解したうえで、事業所の規模・体制に合う制度を選ぶことが重要です。
3制度の概要比較
| 制度 | 対象国 | 在留期間 | 日本語能力の目安 | 費用感 |
|---|---|---|---|---|
| EPA(経済連携協定) | インドネシア・フィリピン・ベトナム | 候補者段階で4年、介護福祉士取得後は無期限 | N3以上(来日時) | 高(渡航費・研修費含む) |
| 技能実習(介護) | アジア諸国(ベトナム等が多い) | 最長5年(技能実習1〜3号) | N4以上(入所要件) | 中(送り出し機関費用あり) |
| 特定技能1号 | 特に限定なし | 通算5年(更新可) | N4以上+介護技能評価試験合格 | 低〜中(試験合格者は自力来日可) |
EPA介護福祉士候補者
EPAは国家間の経済連携協定に基づいて来日する制度で、インドネシア・フィリピン・ベトナムの3か国から受け入れています。候補者は介護施設で最大4年間働きながら介護福祉士国家試験の合格を目指します。合格後は在留資格「介護」として期限なく働けます。
採用のポイントは以下のとおりです。
- 採用は厚生労働省が指定した受け入れ団体(JICWELS:公益社団法人国際厚生事業団)を通じて行う
- 候補者の来日前に日本語研修が実施される(N3レベルが目安)
- 受け入れ機関は研修体制・日本語支援・生活支援の体制整備が必要
- 入国から1年目は「入国1年目研修」として座学・実習が中心
介護福祉士試験に合格した場合、長期定着が期待できる点が最大のメリットです。
技能実習(介護)
技能実習制度は、日本の技術・技能・知識を開発途上国へ移転することを目的とした制度です。介護分野は2017年に追加されました。
技能実習(介護)の入所要件は以下のとおりです。
- 介護職員初任者研修修了(入国前に取得している場合もある)
- 日本語能力:N4以上(技能実習1号の入国時)
- 事業所は認定監理団体(監理団体)を通じて受け入れる
最長5年(技能実習1〜3号)働けますが、在留期間の延長には技能評価試験の合格が必要です。
なお、技能実習制度は令和6年に「育成就労制度」への移行が決まっており(令和9年度を目途に完全移行予定)、名称・目的が変わる見通しです。
特定技能1号(介護)
特定技能1号は、即戦力として現場で働ける外国人材を確保する制度です。介護分野では以下の2つの試験合格者が対象です。
- 介護技能評価試験(国内外で受験可)
- 介護日本語評価試験(国内外で受験可)
国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)またはJLPT N4以上の合格も必要です。
技能実習からの切り替えも可能で、現在は技能実習2号を修了した方が特定技能1号に移行するケースが増えています。通算5年間の在留が認められ、更新は4か月ごとです。
採用時の注意点
外国人材を採用する際の主な注意点は以下のとおりです。
- 在留資格の種類・有効期限を確認する(就労が許可された資格かどうか)
- 介護職員初任者研修・実務者研修の修了状況を確認する
- 日本語能力が業務に支障のないレベルかを面接・筆記で確認する
- 生活支援(住居・生活習慣・日本語サポート)の体制を整える
- 日本人職員との摩擦が生じないよう、多様性への理解を職員全体に促す
外国人材の配置と処遇改善加算の関係
外国人材も日本人職員と同様に処遇改善加算の対象となります。加算の申請には、全職員を対象とした賃金改善計画書の提出が必要です。外国人材の賃金設定についても、日本人職員との均等待遇に留意します。
処遇改善加算の詳細は処遇改善加算を参照してください。
まとめ
認知症グループホームで外国人材を採用する際は、EPA・技能実習・特定技能の3制度から事業所の体制・規模・受け入れコストに合う制度を選ぶことが重要です。特定技能1号は比較的導入コストが低く、近年採用事例が増えています。いずれの制度でも、日本語サポートや生活支援の体制整備が定着率を左右します。
開業準備や収支試算は認知症GH収支シミュレーターでご確認ください。
特定技能2号(介護)について
特定技能1号の通算在留期間は5年ですが、令和6年改定で介護分野に特定技能2号が設けられました。特定技能2号は、特定技能1号の取得後に一定の熟練度を証明することで取得でき、在留期間の更新が無期限で認められます。
介護分野の特定技能2号の取得要件は今後の制度整備次第ですが、外国人材が長期間日本で働き続けられる制度として注目されています。
外国人材の日本語能力向上支援
外国人材が職場に定着するためには、日本語能力の継続的な向上が重要です。特にケアの現場では、利用者・家族との日常会話だけでなく、介護記録の作成や申し送りの理解が求められます。
事業所として取り組める支援は以下のとおりです。
- 日本語学習のオンラインツール・テキストの提供
- 日本語学校や日本語教室の受講費用の補助
- 業務用語集(介護用語・施設固有の用語)の作成・配布
- 日本人職員によるOJT(業務を通じた指導)の実施
日本語能力が向上すると、介護記録の精度が上がり、利用者・家族との信頼関係の構築にもつながります。
外国人材の採用で活用できる支援機関
外国人材の採用にあたっては、以下の支援機関を活用できます。
| 支援機関 | 内容 |
|---|---|
| 公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS) | EPA介護福祉士候補者の斡旋 |
| 登録支援機関 | 特定技能1号の在留支援(生活相談・行政手続き補助) |
| 監理団体 | 技能実習の受け入れ支援・指導 |
| ハローワーク・外国人雇用サービスセンター | 外国人求職者への求人紹介 |
特定技能1号を採用する場合、登録支援機関への委託は義務ではありませんが、在留資格の更新手続き・生活支援の手間を省くために委託する事業所が多くあります。
採用後のOJT体制と職員研修
外国人材を採用した後は、OJT(職場内訓練)で介護技術・施設のルール・緊急時対応を習得させます。入職直後は日本人職員とペアを組ませ、業務を一緒にこなしながら覚える体制が有効です。
外国人職員が孤立しないよう、定期的な1on1面談を実施し、困りごとを早期に把握することが定着率の向上につながります。
外国人材が定着しやすい職場環境の整備
外国人材が長く働き続けるためには、職場環境の整備が欠かせません。特に重要なのは以下の点です。
- 職場内コミュニケーション:多言語でのマニュアル・業務手順書の整備。ピクトグラム・イラストを活用した視覚的な説明も効果的です。
- 住居の確保:入居可能な住居が見つかりにくい外国人を支援するため、事業所が宿舎を確保したり不動産会社と協力して住居を紹介するケースがあります。
- 相談窓口:日本語での相談が難しい場合に備え、母語が話せる通訳や相談員(同国人スタッフ・翻訳アプリの活用)を用意します。
外国人雇用状況の届出義務
外国人を雇用した場合(特別永住者を除く)、事業主はハローワークへの「外国人雇用状況届出」が義務付けられています(雇用対策法第28条)。届出は雇用・離職のたびに行い、未届けには罰則があります。採用手続きに含めて必ず実施します。

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