認知症GHで働く職員の月給:令和7年介護事業経営実態調査の数字

令和7年介護事業経営実態調査では、認知症対応型共同生活介護(認知症GH)単体の職種別月額給与は公表されていません。ただし同調査の介護サービス全体・類似サービスの職種別月給のデータを参考にすることができます。介護職員(常勤)の月給は全サービス平均で月296,820円(基本給+手当の合計・令和7年4月分)という数字が確認できます(出典:令和7年介護事業経営実態調査)。

令和7年調査の介護サービス全体の職種別月給

以下の数字は令和7年介護事業経営実態調査の「介護サービス全体」の職種別月額給与(基本給+手当。賞与等一時金は含まない・令和7年4月分)です。認知症GHに限定した数字ではないため、参考値としてご覧ください。

職種 常勤(月額) 非常勤(月額換算)
介護職員 296,820円 (時給換算のため月額換算は除く)
看護職員 358,940円 —
介護支援専門員(ケアマネジャー) 339,250円 —
管理者 390,120円 —

出典:令和7年厚生労働省「令和7年介護事業経営実態調査」。数字は全介護サービスの平均であり、認知症GH単体の数字ではありません。

認知症GH単体の給与水準の特徴

認知症GHは1ユニット5〜9人の小規模事業所が多く、事業所ごとの経営状況の差が大きいサービスです。給与水準は事業所の規模・地域・法人の種類・加算の取得状況によって異なります。処遇改善加算Ⅰ(18.6%)を取得している事業所では、加算分が賃金改善に充てられるため、取得していない事業所より給与水準が高くなる傾向があります。処遇改善加算の詳細は処遇改善加算の記事をご覧ください。

処遇改善加算が給与に与える影響

認知症GHの処遇改善加算Ⅰの加算率は18.6%です。1ユニット9人・稼働率90%・その他地域(単価10.00円)・要介護3(基本報酬824単位)の場合の月間収入(加算前)の概算は約203万円であり、処遇改善加算Ⅰの月間額は約38万円になります。この38万円は全額を職員の賃金改善に充てる義務があります(令和6年告示第128号・処遇改善加算の算定要件)。

処遇改善加算分を介護職員3〜4名に配分すると、1人あたり月9〜12万円程度の上乗せになる計算です。ただしキャリアパス要件・賃金改善計画の策定・実績報告などの事務手続きも必要です。

夜間専従スタッフの人件費

認知症GHは夜間に全ユニットを通じて1名以上の常駐が必要です(平成18年省令第34号第105条)。夜間専従のスタッフは夜勤手当・深夜割増が発生するため、日中の介護職員より月給が高くなる傾向があります。夜勤専従で月30〜35万円程度が一般的な採用相場ですが、地域・法人によって差があります。1ユニット(9人)では夜間の収入規模に対して夜勤専従1名の人件費が重く、収支を圧迫する要因になります。夜間体制と収支の関係については人件費率の記事もご覧ください。

開業する側が給与水準を設定する際の考え方

認知症GHは介護人材の採用競合が激しい市場です。地域の相場を下回る給与では採用が困難になり、稼働率の低下につながります。採用計画を立てる際は、地域のハローワーク求人やIndeedの募集状況を参考に、相場に合った給与水準を設定することが重要です。開業時の収支全体の見通しは収支シミュレーターで試算できます。

1ユニットの職員数の目安

定員9人・常勤換算3人以上(要介護者3人に1人以上)の配置が基準です。夜間は全ユニット通じて1名常駐が必要なため、24時間365日のシフトを組むと実質的に以下の人員が必要になります。

  • 日中(早番・遅番・日勤):常勤換算3人分をカバーするため常勤2〜3名+非常勤1〜2名程度
  • 夜間専従:夜間シフト(16〜17時間程度)を月に複数名で分担
  • 合計:常勤3〜4名+非常勤2〜3名程度が実態上の目安

職員数が少ないほど1人あたりの人件費への影響が大きく、欠員時の代替要員の確保が課題になります。

夜間手当と処遇改善加算を含めた実態給与の試算

介護職員の基本給に加え、夜間手当(深夜割増25%)・処遇改善加算分の賃金改善が上乗せされます。処遇改善加算Ⅰ(18.6%)を取得している事業所では、月給ベースで2〜4万円程度の上乗せが可能です。令和7年介護事業経営実態調査の介護サービス全体の常勤介護職員の平均月給(本給+手当)をベースに、夜間手当・加算上乗せ分を加えた実態給与は事業所によって大きく異なります。

看護師を配置する場合の費用対効果

医療連携体制加算Ⅰイ(57単位/日)を取得するためには、看護師が24時間連絡体制を確保し、必要に応じて訪問等に対応できる体制が要件です。自法人に看護師を雇用する場合、常勤看護師の月給は30〜40万円程度(処遇改善加算含まず)が目安です。1ユニット9人でⅠイを取得した場合の月間加算収入は約156,000円(57単位×10.00円×9人×30.4日)であり、外部の訪問看護事業所との委託契約(委託費月5〜15万円程度)と比較して採算を検討することになります。

非常勤・夜間専従スタッフの時給設定

夜間専従スタッフは深夜割増(22〜5時は基本賃金の25%増)が法定で義務付けられています。地域の最低賃金を下回ることはできません。夜間専従(例:21時〜7時・10時間実働)の時給を1,200円と設定した場合、1回の夜間シフトの賃金は約12,000〜15,000円(深夜割増含む)になります。月に10〜15回の夜間シフトを複数名で分担すると、夜間人件費だけで月15〜23万円程度になります。

採用競合との給与比較

介護職員の採用では、特別養護老人ホーム(特養)・介護老人保健施設(老健)・訪問介護事業所が主な競合です。認知症GHは少人数での家庭的なケアが特徴であり、ゆとりある職場環境を売りにできますが、大規模施設と比べて給与水準が低くなりがちです。処遇改善加算を最大限取得し、夜間手当を適切に設定することで、採用競争力を維持することが重要です。

出典

  • 令和7年厚生労働省「令和7年介護事業経営実態調査」(介護サービス全体の職種別月額給与)
  • 平成18年厚生労働省令第34号(夜間体制の人員基準)第105条
  • 令和6年厚生労働省告示第128号(処遇改善加算の算定要件)

採用競合と給与水準の設定

認知症GHは介護人材の採用市場での競合が多く、特に夜勤可能な介護職員の確保が課題になりやすいサービスです。地域によっては特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・訪問介護と同じ人材を取り合う状況になります。採用計画を立てる際は、地域のハローワーク・Indeed等の求人情報をもとに、常勤介護職員・夜勤専従スタッフ・計画作成担当者の地域相場を確認してから求人条件を設定することが大切です。

非常勤スタッフの活用と人件費管理

介護従業者の配置要件は常勤換算で要介護者3人につき1人以上ですが、常勤換算は常勤・非常勤の合算で計算できます(平成18年省令第34号第97条)。非常勤スタッフを活用することで、繁閑に応じた柔軟なシフト組みが可能になりますが、認知症ケアは継続性が重要なため、担当職員が頻繁に入れ替わる状況は利用者へのケアの質に影響します。非常勤の活用は人件費の弾力性を高めながらも、コアスタッフの継続性を確保するバランスが求められます。

人件費を適正に見積もるための試算

開業計画における人件費の見積もりは、採用想定人数×採用予定月給で計算します。以下は1ユニット9人の事業所の標準的な人件費の参考例です(実際の採用状況・地域によって異なります)。

職種 人数(目安) 月給(目安) 月間人件費(目安)
管理者(兼計画作成担当者) 1名 35〜40万円 35〜40万円
介護職員(常勤・日中) 2〜3名 28〜32万円 56〜96万円
夜勤専従スタッフ 1〜2名 30〜35万円 30〜70万円
介護職員(非常勤) 1〜2名 時給1,200〜1,500円程度 10〜25万円
合計(法定福利費含む) — — 約150〜260万円

法定福利費(社会保険・雇用保険等)は給与の約15%程度が目安です。人件費の全体像は人件費率の記事で解説しています。開業時の収支全体は収支シミュレーターで試算してください。

処遇改善加算と給与の関係

処遇改善加算Ⅰ(18.6%)の加算額は全額を職員の賃金改善に充てる義務があります。1ユニット9人・稼働率90%の場合、月間の処遇改善加算額は約38万円であり、これを介護職員3〜4名で配分すると1人あたり月9〜12万円の上乗せになります。加算の詳細は処遇改善加算の記事をご覧ください。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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