認知症グループホームの地域区分。単価は7区分でどれだけ違うか。

認知症GHの報酬単価は地域区分(1〜7級地・その他の8区分)によって異なります。最も高い1級地(東京23区など)の単価は11.40円/単位、最も低い「その他」は10.00円/単位で、1.40円の差があります(令和6年厚生労働省告示第128号)。1ユニット9人・要介護3で換算すると、1級地と「その他」の月次収入差はおよそ42,000〜45,000円になります。開設地域を検討する際に、地域区分による収入差を把握しておくことが必要です。

地域区分別の単価一覧(令和6年4月時点)

認知症GHは人件費割合55%で地域区分の加算率が設定されています(令和6年厚生労働省告示第128号)。各区分の1単位あたりの単価は次のとおりです。

区分 加算率 1単位の単価 対象地域の例
1級地 20.0% 11.40円 東京都特別区
2級地 16.0% 11.12円 東京都(特別区除く一部)・神奈川・大阪の一部
3級地 15.0% 11.05円 埼玉・千葉・神奈川の一部
4級地 12.0% 10.84円 愛知・京都・大阪の一部
5級地 10.0% 10.70円 兵庫の一部など
6級地 6.0% 10.42円 地方都市の一部
7級地 3.0% 10.21円 地方都市の一部
その他 0% 10.00円 上記以外の地域

「対象地域の例」は代表的な市区町村を示したもので、同じ市内でも旧合併前の地域によって区分が異なる場合があります。正確な区分は厚生労働省が毎年度告示する「地域区分の適用地域」で確認してください。

地域区分が収入に与える影響(1ユニット9人・要介護3の場合)

1ユニット9人・要介護3・稼働率100%・1か月30日で、処遇改善加算を除いた基本報酬(1ユニット・824単位/日)のみで比較します。

区分 月次収入(基本報酬のみ) 「その他」との差
1級地(11.40円) 2,543,040円 +316,080円
2級地(11.12円) 2,479,680円 +252,720円
3級地(11.05円) 2,463,120円 +236,160円
4級地(10.84円) 2,416,320円 +189,360円
5級地(10.70円) 2,385,120円 +158,160円
6級地(10.42円) 2,322,336円 +95,376円
7級地(10.21円) 2,275,452円 +48,492円
その他(10.00円) 2,226,960円 基準

計算式:824単位×30日×9人×単価。1級地と「その他」の差は月約31.6万円です。

地域区分は収入だけでなく人件費にも影響する

単価の高い地域は人件費の水準も高い傾向があります。1級地(東京23区など)は介護職員の賃金水準が高いため、収入が多くても人件費が増加して収支差率が改善しないケースもあります。令和7年介護事業経営実態調査では、地域区分別の収支差率の差は明示されていませんが、人件費率は地域によって変わるため、単純な単価の差だけで収益性を判断しないことが重要です。

自分の開業予定地の地域区分と収入の詳細な試算は、認知症GH収支シミュレーターで地域区分を選択して確認できます。収入の仕組みについては収入の計算方法の記事も参考にしてください。

地域区分が決まる仕組み

地域区分は厚生労働省が介護報酬改定(3年ごと)に合わせて告示で指定します。国家公務員の地域手当の「級地区分」に連動しており、物価・賃金水準の高い地域ほど上位の級地になります。現行の区分は令和6年4月改定によるもので、次回の見直しは令和9年度改定の見込みです。

級地ごとの主な対象地域(参考)

以下は令和6年度時点の主な対象地域の例です。詳細は厚生労働省告示で確認してください。

級地 単価 主な対象地域(例)
1級地 11.40円 東京都特別区全域(23区)
2級地 11.12円 横浜市・大阪市・名古屋市・京都市など
3級地 11.05円 さいたま市・千葉市・神戸市など
4級地 10.84円 東京都下(立川・八王子等)・川崎市など
5級地 10.70円 仙台市・広島市・福岡市など
6級地 10.42円 宇都宮市・金沢市・岡山市など
7級地 10.21円 静岡市・浜松市・新潟市など
その他 10.00円 上記以外の市区町村

自分の開業予定地がどの級地に該当するかは、市区町村の介護保険担当課または厚生労働省の告示一覧で確認できます。

1級地と「その他」の月収入差(試算)

1ユニット9人・要介護3・稼働率100%で計算すると、地域区分による月収入の差は次のとおりです。

地域区分 単価 月収入(概算)
1級地 11.40円 約2,575,000円
その他 10.00円 約2,257,000円
差額 1.40円 約318,000円/月(年間約382万円)

計算式:824単位×単価×9人×30.4日。差額の約382万円/年は、職員1人分の人件費に相当するほどの影響があります。

処遇改善加算も地域区分の影響を受ける

処遇改善加算(介護職員等処遇改善加算Ⅰ:18.6%)は、介護報酬収入に加算率を乗じて計算します。地域区分が高い(単価が高い)地域では報酬の絶対額が大きくなるため、加算額も大きくなります。

  • 1級地・加算Ⅰの場合:約2,575,000円×18.6%=約479,000円/月
  • その他・加算Ⅰの場合:約2,257,000円×18.6%=約420,000円/月
  • 差額:約59,000円/月(年間約71万円)

この差は職員の賃金改善に充てる原資の差に直結します。

地域区分の変更と運営への影響

地域区分は報酬改定のたびに見直される場合があります。実際に令和3年度・令和6年度の改定でも一部の市区町村で級地が変わりました。開業後に自分の市区町村の級地が変更された場合、報酬収入が増減するため、収支計画を見直す必要があります。

開業地の選定で地域区分以外に考慮すること

地域区分は収入に直接影響しますが、開業地の選定では収入だけでなく次の要素も合わせて確認します。

  • 地価・賃料:1級地・2級地の都市部は物件費用が高く、人件費も高水準になりやすい
  • 人材市場:介護人材の採用競合が多い地域では人件費が上昇しやすい
  • 地域の需要:市区町村の介護保険事業計画で認知症GHの必要量を確認する(公募制がある自治体では指定枠が限られる)
  • 競合施設の数:既存の認知症GHが多い地域では稼働率の立ち上がりが遅くなる場合があります

地域区分の確認方法

開業予定の市区町村が何級地に該当するかを調べる方法は2つあります。

  1. 厚生労働省の告示を確認する:厚生労働省が公表している「指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(令和6年厚生労働省告示第128号)の別表に、市区町村ごとの地域区分が記載されています
  2. 市区町村の介護保険担当課に問い合わせる:指定申請を予定している市区町村の担当課に確認する方法が確実です。指定申請の相談と合わせて聞くことができます

収支シミュレーターを使う際は、開業予定地の地域区分の単価を選択することで、より正確な収入試算ができます。

地域区分7区分の単価一覧(令和6年度)

令和6年度の地域区分ごとの1単位あたりの単価(認知症GHは人件費割合55%)は以下の通りです(令和6年厚生労働省告示第128号)。

区分 1単位あたりの単価 該当地域(例)
1級地 11.40円 特別区(東京23区)
2級地 11.12円 狛江市・調布市等
3級地 11.05円 横浜市・川崎市等
4級地 10.84円 大阪市・名古屋市等
5級地 10.70円 さいたま市・千葉市等
6級地 10.42円 仙台市・福岡市等
7級地 10.21円 政令指定都市・一部中核市等
その他 10.00円 上記以外の市区町村

市区町村の地域区分は厚生労働省の告示で指定されています。各市区町村の区分はインターネット上で「介護保険 地域区分 〇〇市」等で検索するか、市区町村の介護保険担当窓口に確認することができます。

地域区分の違いが収益に与える影響(試算)

1ユニット9人・要介護3(824単位)・稼働率85%・月稼働30.4日で試算します。

  • 1級地(11.40円):824×11.40×9×30.4×0.85 ≒ 2,187,000円/月
  • その他(10.00円):824×10.00×9×30.4×0.85 ≒ 1,918,000円/月
  • 差額:約269,000円/月・約323万円/年

同じ事業規模・稼働率でも、地域区分だけで年間300万円以上の収入差が生まれます。都市部と地方では開業コスト(家賃等)も異なるため、収益計画は自分の開業予定地の地域区分を必ず確認した上で作成することが重要です。

地域区分の変更(見直し)と対応

地域区分は介護報酬の改定時(3年ごと)に見直されます。開業後に地域区分が変更になると、報酬単価が変わり収益計画に影響が生じます。令和6年度改定では一部の市区町村で区分が変更されました。収益計画は現在の区分を基準に作成しますが、3年ごとに改定があることを念頭に置いて固定費の設計(特に賃貸契約期間)をすることが重要です。

処遇改善加算の地域区分適用

処遇改善加算は基本報酬・各加算の合計に対して加算率(Ⅰ=18.6%等)をかけた額が加算されます。地域区分が高い地域では基本報酬の単価が高いため、処遇改善加算の絶対額も大きくなります。1級地と「その他」では処遇改善加算Ⅰの月間加算額に2〜4万円程度の差が生じることがあります。地域区分の高い地域は人件費も高い傾向にありますが、加算額が大きくなる分、賃金改善の原資も確保しやすくなります。

出典

  • 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第128号)令和6年改正
  • 令和7年介護事業経営実態調査(厚生労働省)

収入と費用の試算は、認知症GH収支シミュレーターで確認できます。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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