居宅介護支援事業所の開業に必要な法人格。合同会社・株式会社・一般社団法人の比較。

居宅介護支援事業所の開業に必要な法人格。合同会社・株式会社・一般社団法人の比較。 介護

居宅介護支援事業所を開業するには法人格が必要です。個人事業主・フリーランスでは指定を受けられません。株式会社・合同会社・一般社団法人・社会福祉法人・NPO法人など複数の選択肢があり、設立コスト・設立期間・運営の自由度が異なります。この記事では各法人形態の特徴と、居宅介護支援事業所開業に向いている選択肢を整理します。

個人事業主では指定を受けられない

介護保険法に基づく居宅介護支援の指定事業者は「法人」でなければなりません(介護保険法第46条)。個人名義・屋号での開業は認められておらず、必ず法人格を取得した上で指定申請を行う必要があります。

介護保険事業全般を通じて共通の要件であり、他の介護保険サービス事業所と合わせて居宅介護支援を行う場合も、法人名での指定が必要です。

選択できる主な法人形態

居宅介護支援事業所開業で選択できる主な法人形態
法人形態 設立コスト目安 設立期間目安 特徴
合同会社(LLC) 約6〜10万円 1〜2か月 登録免許税が株式会社の半額(6万円)。定款認証不要で設立コストが最も低い。代表社員が出資者兼運営者を兼ねる構造
株式会社 約20〜25万円 1〜2か月 登録免許税15万円+定款認証費用5万円。社会的信用度が高く、将来の資金調達・事業拡大を想定する場合に有利
一般社団法人 約11〜13万円 1〜2か月 登録免許税6万円+公証役場の定款認証費用(5万円程度)。非営利・営利どちらの活動も可能。「法人」として社会的認知度が高く、介護・福祉分野で実績がある
NPO法人 数万円(登録免許税不要) 3〜6か月 所轄庁(都道府県等)への認証が必要で設立期間が長い。税制優遇あり。地域密着型・非営利色が強い事業に向く
社会福祉法人 億単位の資産要件あり 1年以上 厳格な設立要件(資産・施設要件)。税制優遇が最も厚い。大規模な施設系事業との一体運営が前提の場合に向く

居宅介護支援だけを開業するなら合同会社か株式会社

純粋に居宅介護支援事業所(ケアマネ事務所)だけを開業するケースでは、設立コスト・スピードの観点から合同会社または株式会社が現実的な選択肢です。

合同会社は設立コストが最も低く、定款の変更や意思決定が柔軟で、1人経営・小規模経営に向いています。株式会社は後から株式を発行しての資金調達・外部役員の参加が容易で、将来的に複数事業所展開・M&Aを検討する場合に向いています。

合同会社を選ぶ際の注意点

  • 株式会社と異なり株式を発行できないため、外部投資家からの資金調達には向かない
  • 「合同会社」は株式会社に比べて認知度が低く、法人契約(テナント契約・各種口座開設等)で不利になるケースがある場合がある
  • 代表社員(社長に相当)が出資者であるため、経営権と出資が分離しにくい

法人設立に必要な手続きの流れ

株式会社・合同会社の設立の一般的な流れを示します。

株式会社・合同会社の設立手続きの流れ
ステップ 内容
①会社名・本店所在地の決定 商号(会社名)・事業目的・本店所在地を決める。事業目的には「介護保険法に基づく居宅介護支援事業」等を記載する
②定款の作成 会社の基本ルールを定めた定款を作成する。株式会社は公証役場での認証が必要。合同会社は不要
③資本金の払込 設立時の出資金(資本金)を代表者名義の口座に振り込む。最低金額の規制はない(1円以上)
④登記申請 法務局(登記所)に設立登記申請書・定款・払込証明書等を提出する。登録免許税(合同会社6万円・株式会社15万円)を納付する
⑤登記完了・登記事項証明書の取得 登記完了後に登記事項証明書(謄本)を取得する。指定申請書類として必要
⑥各種届出 税務署・都道府県税事務所・市区町村への法人設立届出(法人税・地方税)。社会保険事務所への被保険者資格取得届

事業目的への「居宅介護支援」の記載

定款(または登記事項)の「事業目的」には、介護保険法に基づく居宅介護支援事業を明記する必要があります。指定申請時に事業目的の記載が確認されるため、設立前に以下の文言例を参考にしてください。

  • 「介護保険法に基づく居宅介護支援事業」
  • 「介護保険法に基づく居宅サービス事業」(居宅介護支援以外の居宅サービス事業も行う場合)
  • 「介護保険法に基づく介護保険事業」(複数の介護保険事業を幅広く行う場合)

すでに法人を設立済みで事業目的に居宅介護支援の文言がない場合は、定款変更(登記変更)が必要です。法務局での変更登記には登録免許税3万円がかかります。

社会保険・労働保険の加入義務

法人として従業者を雇用する場合、社会保険(健康保険・厚生年金)と労働保険(労災保険・雇用保険)への加入が義務付けられています。居宅介護支援事業所で管理者1人のみ(役員兼務)の場合でも、役員は社会保険加入の対象となります(労働保険は役員には原則適用されません)。

社会保険・労働保険の加入手続きは法人設立後すみやかに行い、指定申請前に完了させておくことが重要です。

居宅介護支援事業所の開業コストと収支の試算は、居宅介護支援事業所(ケアマネ事務所)収支シミュレーターで確認できます。

参考・出典

  • 介護保険法(平成9年法律第123号)第46条(指定居宅介護支援事業者の指定)
  • 会社法(平成17年法律第86号)
  • 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)

この記事は2026年11月時点の法令に基づいています。法人設立の手続きは司法書士・行政書士に相談することをおすすめします。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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