2割特例が2026年末で終わります。インボイスに登録したフリーランスが2027年以降に知っておくこと。



インボイスに登録した小規模事業者向けの「2割特例」が2026年12月31日で終わります。2023年のインボイス制度開始以降、多くのフリーランス・個人事業主がこの特例を使って消費税の納付額を抑えてきました。2027年以降はこの特例が使えなくなります。

ただし、すぐに大きな負担が増えるわけではありません。2027年・2028年には別の経過措置(3割特例)があります。本格的な選択が必要になるのは2029年以降の話です。

この記事では、2026年末以降のスケジュールと、2029年以降に向けて今のうちに知っておくことを整理します。

2027年・2028年は3割特例があります

2割特例が終わった後、すぐに通常の消費税申告に切り替わるわけではありません。2027年分・2028年分の申告については「3割特例」という経過措置が設けられています。

3割特例の内容は、「受け取った消費税の30%を納税額とする」というものです。2割特例(20%)より負担は増えますが、通常の計算方式より低い水準に抑えられます。

3割特例に必要な手続きは、事前の届出はありません。確定申告書の計算で選択します。対象者は、前々年の課税売上高が1,000万円以下のインボイス発行事業者です。

年分 制度 納税額の計算 事前手続き
2023〜2026年分 2割特例 受取消費税×20% 不要
2027年・2028年分 3割特例 受取消費税×30% 不要
2029年分以降 本則課税または簡易課税 業種・経費による 簡易課税を選ぶ場合は届出が必要

2029年以降は、2つの方法から選ぶことになります

3割特例が終わる2029年以降は、通常の消費税申告に戻ります。選択肢は2つです。

本則課税(原則的な方法)

仕入れや外注に支払った消費税を実際に集計し、「受け取った消費税−支払った消費税」を納める方法です。届出は不要で、何もしなければ自動的にこちらになります。経費(仕入れ・外注費・材料費など)が多い業種では、本則課税の方が納税額を抑えられる場合があります。

簡易課税(みなし仕入率で計算する方法)

実際の経費を集計せず、受け取った消費税に「みなし仕入率」をかけた額を仕入税額とみなして計算する方法です。業種ごとに率が決まっており、記帳の手間が少なくて済みます。ただし、使うには事前に届出が必要です。

業種ごとのみなし仕入率と、3割特例との比較

どちらが有利かは業種によって違います。国税庁タックスアンサーNo.6509に基づくみなし仕入率を確認します。

業種 区分 みなし仕入率 受取消費税に対する実質納税率 3割特例との比較
建設業(一人親方・工事の請負) 第3種 70% 30% 同等
軽貨物ドライバー(運輸業) 第5種 50% 50% 3割特例より不利
通訳・翻訳者 第5種 50% 50% 3割特例より不利
美容師・ネイリスト・アイリスト 第5種 50% 50% 3割特例より不利
ITフリーランス(開発・デザイン等) 第5種 50% 50% 3割特例より不利
イラストレーター・漫画家・声優等 第5種 50% 50% 3割特例より不利
ヘルパー(業務委託) 第5種 50% 50% 3割特例より不利

一人親方(建設業・工事の請負)は第3種(みなし仕入率70%)のため、簡易課税の実質納税率は30%です。これは3割特例と同水準であり、2029年以降も簡易課税を選ぶメリットがあります。

一方、第5種(みなし仕入率50%)に該当する業種は、簡易課税の実質納税率が50%と3割特例(30%)より高くなります。2029年以降に簡易課税を選ぶかどうかは、実際の経費の額と比較して判断する必要があります。仕入れや外注費が多ければ本則課税の方が有利になる場合もあります。

簡易課税を2029年から使いたい場合の届出期限

2029年分の申告から簡易課税を使いたい場合、「消費税簡易課税制度選択届出書」を税務署に提出する必要があります。

原則の届出期限は、適用したい課税期間(2029年1月1日)の前日、つまり2028年12月31日です(消費税法第37条第1項)。

ただし、3割特例を使って申告した翌年(2029年)から簡易課税に切り替える場合に限り、2028年分の確定申告書の提出期限(2029年3月31日)までに届出すれば、2029年分から簡易課税を適用できる特例措置があります。2028年12月31日を過ぎても2029年3月末までは届け出ることができます。

簡易課税には一度選択すると2課税期間(2年間)は変更できないというルールがあります(消費税法第37条の2)。2028年分の確定申告に合わせて届け出た場合、2029年・2030年の2年間は簡易課税が継続します。

届出書は税務署の窓口またはe-Taxで提出できます。様式は国税庁のウェブサイトで取得できます。

今すぐ必要な手続きはありません

2026年中に届出や手続きをする必要はありません。2割特例はこのまま2026年12月31日まで使えます。3割特例も届出不要で2027年・2028年の確定申告で選択できます。

今の段階でできることは、「2029年以降に本則課税と簡易課税のどちらが有利か」を把握しておくことです。年間の売上と経費の状況をもとに試算しておくと、2028年末の届出判断がスムーズになります。

各業種の試算ツールでは、2026年から2029年以降までの消費税の変化を確認できます。

出典:消費税法附則第51条の2(2割特例・令和5〜8年分)・国税庁「令和8年度 税制改正特集」(3割特例)・消費税法第37条第1項(簡易課税の選択届出の期限)・消費税法第37条の2(2年間継続適用)・タックスアンサーNo.6509(みなし仕入率)。本記事の内容は執筆時点の情報に基づきます。詳細は税務署・税理士にご確認ください。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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