通訳・翻訳者(フリーランス・個人事業主)向け

通訳・翻訳者のインボイス、2027年から消費税はいくら増える?

年ごとの納税額と、毎月いくら積み立てればいいかを無料で試算できます。委託元(翻訳会社・エージェント・直接のクライアント)に「消費税分の上乗せ」を相談するためのシートも作れます。入力した数字は、この端末の中だけで計算し、どこにも送りません。

結論:2割特例は2026年分(2027年3月の申告)で終わり、2027・2028年分は3割特例、2029年分からは特例がなくなります。通訳・翻訳はサービス業なので、簡易課税では第5種(みなし仕入率50%)です。税込売上600万円なら、納める消費税は年約10.9万円(2026年分)、約16.4万円(2027・2028年分)、約27.3万円(2029年分から・簡易課税)と増えていく計算です。2029年分は、2026年分の2.5倍になります(どれも試算)。

1. あなたの数字で試算する

すべての委託元(翻訳会社・エージェント・直接のクライアント)からの入金を合わせた額。例:6000000(600万円)。海外のクライアントからの、消費税が免除される売上は含めません(下の「よくある質問」を参照)
パソコン・翻訳支援ツールや辞書の利用料・通信費・コワーキングの利用料・書籍・交通費など。本則課税の目安にだけ使います。保険料など、消費税のかからないものは除きます
2割特例・3割特例は、2年前の課税売上高が1,000万円以下であることなどが条件です(前の年の1〜6月の課税売上高が1,000万円を超えている場合なども使えません)。超えていた年は特例を使えません。海外のクライアントへの免税の売上も、この課税売上高には含めて数えます(消費税法 第7条・第9条第2項)。

※試算は、国と地方を合わせた消費税10%で計算した概算です。端数処理や、個別の事情(課税期間の短縮、高額な資産の購入など)は反映していません。

2. 委託元に「消費税分の上乗せ」を相談するシート

インボイスに登録して新しく消費税を納めることになったのに、委託元からの支払いが前と同じままなら、納める消費税の分だけ手取りが減ります。国は、この消費税分について「仕入先と明示的に協議することなく取引価格を据え置くこと」は問題となるおそれがあると、Q&Aではっきり書いています(下の原文を参照)。このシートは、翻訳会社やエージェント、クライアントに話し合いをお願いするときに見せる資料を、あなた自身が作るためのものです。

シートの中身①相談のお願いの文例 ②この委託元との取引分で納める消費税の表(あなたの数字で自動作成) ③国の資料の原文(Q&A・取適法・フリーランス法) ④出典 ⑤自分用:話す順番のメモ(委託元には渡さない2枚目)

委託元が複数あるときは、相談する1社分だけを入れます

3. よくある質問

2割特例は、2026年分で終わります

個人事業者は2026年分(2026年1〜12月)が最後です。国税庁のインボイスQ&A(問115)は、2割特例の期間を「令和8年9月30日までの日の属する各課税期間」としていて、個人の課税期間は1〜12月なので、2026年分までとなります。2026年分の申告期限は2027年3月31日です。

3割特例は、2027年分と2028年分の2年だけです

国税庁の「令和8年度税制改正特集 3割特例」(PDF)は、「インボイス発行事業者の登録を受けたことにより免税事業者から課税事業者となった個人事業者に係る令和9年分・令和10年分の消費税の確定申告において納付税額を売上税額の3割とすることができる特例です。」と説明しています。主な条件は、2年前の課税売上高が1,000万円以下であることなどで、事前の届出は要らず、申告書に適用を受ける旨を書きます。

通訳・翻訳は、簡易課税では第5種(みなし仕入率50%)です

国税庁のタックスアンサー(No.6509)は、第5種事業(みなし仕入率50%)を「運輸通信業、金融・保険業 、サービス業(飲食店業に該当する事業を除きます。)」としています。通訳・翻訳はこのサービス業に入ります。みなし仕入率が低い区分なので、3割特例が終わった2029年分からの増え方が大きくなります。簡易課税を使うには、2年前の課税売上高が5,000万円以下であることなどが条件で、原則として使う年の前の年までに届出が必要です(3割特例を使った翌年に移る場合は、申告期限までの届出で移れる措置があります)。事業の区分は、実際に行っている仕事の中身で判定されるので、翻訳のほかに教材や書籍の販売などもしている場合は、税務署や税理士に確かめてください。

海外のクライアント(非居住者)への翻訳・通訳は、消費税が免除されることがあります

国税庁のタックスアンサー(No.6567)は、「非居住者に対する役務の提供は一般的には輸出免税の規定が適用され、消費税が免除されます。」としています。ただし、相手が国内で直接便益を受けるものは免除されず、海外の会社でも国内に支店などがあるときは、原則として免除されません。免除される売上には消費税が含まれないので、この試算の「売上」には入れないでください。免税の適用には、契約書などの書類を7年間保存する必要があります(国税庁 No.6551)。あなたの取引が当てはまるかどうかは、税務署や税理士に確かめてください。

登録しないで免税のままなら、委託元の負担が少しずつ増えます

あなたが消費税を納めることはありません。ただし委託元は、あなたへの支払いに含まれる消費税を、少しずつ差し引けなくなります(2026年10月から70%、2028年10月から50%、2030年10月から30%、2031年10月から0%しか控除できない)。委託元の負担が増えるぶん、単価の引き下げや取引の見直しを求められることがあります。上の試算で「登録していない」を選ぶと、その額の目安を表示します。

フリーランス法や取適法が当てはまるかは、取引の中身で決まります

フリーランス法は、従業員を使わない個人などに業務を委託する場合の取引のルールです。あなたが従業員を使っていない場合、委託元は、報酬の額や支払期日などを書面かメールなどで示すことになっています(第3条)。委託元が従業員を使う事業者(法人なら、役員が2人以上いる場合も含みます)なら、報酬は原則として役務の提供を受けた日から60日以内に支払う決まりがあり(第4条)、一定の期間以上続く委託では、買いたたきや減額なども禁じられます(第5条)。取適法は、委託元の資本金や従業員の数、委託の中身によって当てはまる法律です。あなたの取引に当てはまるかどうかは、公正取引委員会などの相談窓口で確かめてください。

このシートを使っても、値上げが必ず通るわけではありません

国の資料は、話し合いを求める根拠になりますが、相手に値上げを強制するものではありません。エージェントの料率表やワード単価で単価が一律に決まっている仕事のように、個別の相談がしにくい取引もあります。このシートは、あなたが自分の名前で相談するための材料です。結果を約束するものではありません。

4. 国の資料(原文)

「免税事業者であった仕入先が課税事業者に転換した場合、新たに納税が必要となる消費税分について、①仕入先と明示的に協議することなく取引価格を据え置くことは、独占禁止法上の優越的地位の濫用又は取適法上の買いたたきとして、②仕入先から協議の要請があった場合に、当該協議に応じず一方的に取引価格を据え置くことは、取適法上の協議に応じない一方的な代金決定として、それぞれ問題となるおそれがあることに留意が必要です。」財務省・公正取引委員会・経済産業省・中小企業庁・国土交通省「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」(令和4年1月19日、改正:令和8年1月30日)Q5
「中小受託事業者の給付に関する費用の変動その他の事情が生じた場合において、中小受託事業者が製造委託等代金の額に関する協議を求めたにもかかわらず、当該協議に応じず、又は当該協議において中小受託事業者の求めた事項について必要な説明若しくは情報の提供をせず、一方的に製造委託等代金の額を決定すること。」製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(取適法) 第5条第2項第4号(委託事業者が、中小受託事業者の利益を不当に害してはならない行為)
「特定受託事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い報酬の額を不当に定めること。」特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス法) 第5条第1項第4号(特定業務委託事業者がしてはならない行為)