認知症グループホームの協力医療機関。令和6年改定で「協定書の締結」が義務になった。

認知症対応型共同生活介護(認知症GH)は、令和6年4月の制度改定により、協力医療機関との「協定書の締結」が義務化されました(平成18年厚生労働省令第34号第98条の2)。従来は「協力関係のある医療機関があること」で足りていましたが、改定後は定期的な往診・緊急時の対応・看取りについて、文書で取り決めることが必要です。経過措置として令和7年3月31日までの猶予がありましたが、期限後は未締結の場合に加算の減算対象となる可能性があります。

令和6年改定で義務化された内容

基準省令第98条の2の規定により、認知症GH事業者は次の内容を協力医療機関と協定書で取り決めなければなりません。

項目 協定書に盛り込む内容
定期的な往診 往診の頻度・医師の氏名・訪問スケジュール
緊急時の対応 夜間・休日を含む緊急受診・入院の受け入れ方針
看取りへの対応 看取り介護を行う場合の医師の関与の範囲・方法
情報共有 入居者の健康状態・服薬情報の共有方法

協力医療機関は1か所でよいとされていますが、夜間・緊急時の対応を1か所でカバーできない場合は複数の医療機関と協定を結ぶことが望ましいです。

協力医療機関の種類と役割分担

認知症GHにとっての協力医療機関には、主に3つの役割があります。

1. かかりつけ医・往診医

入居者の日常的な健康管理・薬の処方・定期往診を担います。内科・神経内科・精神科など認知症の専門性を持つ医師が望ましいです。認知症GHでは介護保険で管理者・計画作成担当者が医療行為を行えないため、往診医との連携が入居者の健康維持に直結します。

2. 緊急対応・入院先

転倒・骨折・肺炎・脳卒中などの急変時に入院を受け入れてもらえる医療機関との関係構築が必要です。近隣の急性期病院・地域の中核病院と協定を結ぶか、少なくとも連携の確認をしておくことが求められます。

3. 看取り対応

看取り介護加算(死亡日=80単位/日、前々日=160単位/日、前4〜30日=72単位/日)を算定するためには、医師との連携のもとで看取りを行う必要があります。医師が「看取り期」と判断した時点から記録・家族説明・医療処置の方針共有が始まるため、事前に医師の関与の範囲を協定書で明確にしておく必要があります。

看取り介護加算の詳細は「看取り介護加算の取り方」をご覧ください。

医療連携体制加算との関係

医療連携体制加算は、看護師を配置または訪問看護ステーションと連携することで算定できる加算です(令和6年告示第128号)。協力医療機関との協定書とは別の要件ですが、実務上は一体的に整備することが合理的です。

加算種別 単位数/日 主な要件
医療連携体制加算Ⅰイ 57単位 看護師が日中常駐(24時間対応可)
医療連携体制加算Ⅰロ 47単位 看護師が週4〜6回訪問
医療連携体制加算Ⅰハ 37単位 看護師が週1〜3回訪問

医療連携体制加算の取り方は「医療連携体制加算」で詳しく説明しています。

協定書の締結先を探す方法

協力医療機関を見つける際の主な方法を紹介します。

地域の医師会・在宅医療支援病院への相談

各都道府県・市区町村の医師会は、在宅医療に取り組む医師の情報を持っています。特に「在宅療養支援診療所」や「在宅療養支援病院」として届け出ている医療機関は、24時間対応・往診に積極的なため、協力医療機関候補として連絡を取る価値があります。

地域包括支援センターへの相談

認知症GHは地域密着型サービスのため、市区町村の地域包括支援センターと関係を築くことが指定要件上も求められます。地域包括支援センターは地域のかかりつけ医との連携情報を持っているため、協力医療機関探しの相談窓口として活用できます。

居宅介護支援事業所・ケアマネジャーからの紹介

入居者の元々のかかりつけ医を引き続き主治医として関与してもらう形も、現実的な対応です。担当ケアマネジャーを通じて医師との連絡調整を行い、協定書の締結につなげるケースもあります。

協定書の記載例と作成のポイント

協定書に盛り込むべき最低限の記載事項は次のとおりです。

  • 協力医療機関の名称・医師名・連絡先
  • 往診の実施頻度・方法(例:月2回、緊急時は当日対応)
  • 緊急時の受診・入院対応の方針
  • 看取りを行う際の医師関与の範囲・方法
  • 情報共有の手段(電話・FAX・医療情報端末等)
  • 協定の有効期間・見直し時期

厚生労働省が公表している「協定書ひな形」を参考にしながら、事業所の実情に合わせて作成してください。自治体によっては独自のひな形を提供している場合もあるため、指定申請先の市区町村窓口に確認することをお勧めします。

協力医療機関が見つからない場合の対応

農村部や医師不足地域では、協力医療機関の確保が難しい場合があります。その際の対応策として、以下の方法が考えられます。

  • 複数の診療所・クリニックと緩やかな協力関係を構築し、役割分担を明確にする
  • 訪問看護ステーションを通じた医師との連携体制を整備する
  • 遠隔診療(オンライン診療)を活用した医師との連携
  • 市区町村・医師会に対し、地域の在宅医療体制整備の必要性を申し出る

協力医療機関の確保は、入居者の安全と加算の算定に直結します。開業準備段階から早めに取り組むことが重要です。

開業準備における優先順位

認知症GHの開業にあたって、協力医療機関の確保は「指定申請前から取り組むべき事項」の一つです。指定申請書類の中に協力医療機関の記載欄がある自治体もあります。

開業の全体的な準備の流れは「認知症グループホームの開業手順」でまとめています。収支シミュレーションを先に行いたい方は「認知症グループホーム収支シミュレーター」をご活用ください。

人員基準・設備基準についても「人員基準」「設備基準」であわせて確認してください。

協定書締結後の運用と解除

協定書を締結した後も、定期的に内容を見直すことが重要です。医師の居址変更・診療所の統合・廃業などにより、協定書の内容を変更または締結のわり替えが必要になる場合があります。少なくとも年に1回は協定書の内容を確認し、必要に応じて更新することをお勧めします。

入居者の医療ニーズに応じた連携体制

認知症GHの入居者は、口腔ケア・服薬管理・肚空清歔などの医療ニーズがあります。サービス提供の内容に応じて適切な医療機関との連携円寧を構築します。

医療ニーズ 連携先の候補 協定書の要項
日常的な健康管理・蕸の処方 地域の内科・神経内科・精神科医 往診頻度・連絡方法
緊急時の入院対応 近隣の急性期病院 夜間・休日の回診方針
看取り対応 在宅療養支援診療所 看取り期の医師関与の範囲
口腔ケア 歯科医・歯科衛生士 診察頻度・健康診断連携の方法

医療連携体制加算の詳細は「医療連携体制加算の取り方」で確認できます。収支の試算は「認知症グループホーム収支シミュレーター」で取り組んでください。

協力医療機関との連携を活用した医療連携体制加算の収益試算

医療連携体制加算ぉ1イ(57単位/日)を全入居者(9人)に対しざ30日間算定した場合の加算額は以下のとおりです(其他地域10円・変更先等加算指数を考慮しない単純計算)。

  • 医療連携体制加算ぉ1イ(57単位)×9人×10円×30日=153,900円/月
  • 医療連携体制加算ぉ1エ(47単位)×9人×10円×30日=126,900円/月
  • 医療連携体制加算ぉ1ハ(37単位)×9人×10円×30日=99,900円/月

看護乃居者への対応・医療送迎の深さを算定根拠として示す記録とともに、協定書の内容を加算資法深度に合へた形で整備しておくことで、実地指導時の誤り指摘を予防できます。入居者の集め方については「入居者の集め方」、全加算の内訳は「加算一覧」でご確認ください。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

ご質問はメールで。電話・面談はしていません。

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