訪問介護の研修記録の書き方、実地指導で求められる記録の様式と保存のポイント。

介護

訪問介護事業者には、実施した研修の記録を2年間保存する義務があります(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準・平成11年厚生省令第37号。以下「指定基準」)。行政の実地指導では「研修を実施したことが分かる記録」の確認が行われます。

研修の記録は「書けばよい」ではなく、実地指導で「これで研修をした証明になる」と認められる内容を残すことが目的です。年間研修計画の立て方については訪問介護の年間研修計画の立て方で整理しています。この記事では「計画を立てた後、各回の研修で何を記録に残すか」という実施記録の書き方に絞って解説します。

研修記録に必ず書く5つの項目

指定基準は研修記録の書式を指定していません。しかし、実地指導で確認される観点から、次の5項目は必ず含める必要があります。

記録項目 書き方のポイント よくある漏れ
実施日 年月日を書く。「2026年10月」のような月単位の記録は不十分 日付を書き忘れる。後から日付を記入する
研修テーマ 「虐待防止に関する研修」のように、何のテーマかが分かる書き方をする。「勉強会」だけでは内容が不明 「スタッフミーティング」など研修と区別がつかないタイトルにしている
参加者 参加した職員の氏名または署名を当日記録する。後から名前を書き足すと改ざんの疑いを受けることがある 人数しか書いていない。「全員」という表記では誰が参加したか不明
研修の内容 当日扱ったテーマの概要(例:「訪問介護における虐待の定義・種類・通報義務について学んだ」)を1〜3文で記録する 「虐待防止」だけで何を学んだかが分からない
使用資料 配布した資料のコピーを添付するか、資料名・内容を記録する 資料を添付せず記録だけ残している

訪問介護の研修記録は「全員参加」が難しい点が特有の課題になる

施設系と異なり、訪問介護は職員が分散して働いています。全職員が同じ時間に集まれないため、研修への参加記録に工夫が必要です。

複数回実施の場合は「全回の記録」が必要

同じテーマの研修を2回に分けて実施した場合、各回の記録を別々に作成します。「10月に虐待防止研修を実施した」という1枚の記録に2回分を含めようとすると、日付・参加者・内容が混在して読みにくくなります。各回を独立した記録として残します。

動画・資料配布で受講した職員の記録の残し方

録画した研修動画を各自が視聴する形式や、資料を配布して読んでもらう形式をとる場合は、確認テストへの回答や署名入りの確認書を受け取ることで、「受講した記録」になります。

「動画を見てください」と伝えただけでは記録になりません。何を視聴したか・いつ視聴したか・理解を確認したかの証拠が残ることが必要です。

外部研修に参加した場合は修了証・受講票を保管する

都道府県や市区町村主催の研修・eラーニング等の外部研修に参加した場合は、修了証・受講票・参加証明書を保管します。これが研修記録の代わりになります。外部研修に参加した職員が事業所内で伝達研修をした場合は、伝達研修の記録も別途作成します。

実地指導で「記録が不十分」と指摘されやすいパターン

実地指導での指摘として多いパターンをまとめます。事前に確認しておくことで対策できます。

指摘されやすいパターン 対応方法
虐待防止研修の記録はあるが、新入職員(採用時研修)の記録がない 採用時研修は年1回の定期研修とは別に記録を残す。入職時の記録をファイルに綴じる
年間計画では年2回実施予定だったが、記録は1回分しかない 実施できなかった場合は翌月に振り替えた記録と計画との差異メモを一緒に保存する
研修記録はあるが、使用した資料が手元にない 資料は記録と一緒にファイリングする。外部研修のレジュメも保管する
参加者の欄に「全員」とだけ書かれている 氏名または署名を当日記録する。登録ヘルパーが多い場合は参加者名簿を別紙で添付する
記録の保存期間が切れているテーマがある 2年以上前の記録は処分可だが、2年以内のものはすべて保存する。年度ごとにフォルダ分けすると管理しやすい

研修記録のファイリング方法

研修記録は「テーマ別」と「年度別」の2軸で管理するのが実務でよく使われる方法です。

テーマ別ファイル(実地指導での提示に向いている)

「虐待防止」「感染症」「BCP」など研修テーマごとにフォルダを作り、そこに各年度の記録を入れます。「虐待防止の研修記録を見せてください」という指摘への対応がスムーズです。

年度別ファイル(日常管理に向いている)

「2026年度」「2025年度」など年度ごとにフォルダを作り、その中に実施した順に記録を入れます。「今年度に何のテーマを実施したか」の全体像が把握しやすいです。

どちらの方法をとっても、「年間研修計画」と「各回の実施記録」をセットで保存することが重要です。実地指導では「計画があること」と「計画通りに(またはそれに近い形で)実施した記録があること」の両方が確認されます。

デジタルでの管理と紙の記録の扱い

研修記録をExcelやクラウドで管理している事業所も増えています。デジタルで管理する場合の注意点として次のものがあります。

  • 参加者の署名が必要な部分は紙での記録か、電子署名・記名の方法を決めておく
  • 「誰でも後から書き換えられる状態」にしないよう、記録の確定後は編集制限をかける
  • バックアップを定期的に取り、データの消失リスクに備える

実地指導では印刷して提示できる状態にしておくと対応がスムーズです。

研修記録と他の義務記録との保存期間を確認する

研修記録だけでなく、関連する記録の保存期間を合わせて確認します。

記録の種類 保存期間
研修記録(テーマ・参加者・内容) 2年間
虐待防止委員会の記録 2年間
身体拘束適正化委員会の記録 2年間
苦情の記録 2年間
事故報告書 2年間
BCP(業務継続計画)本体・訓練記録 指定基準に明示規定なし(実務上2年以上推奨)

保存期間の「2年間」は「作成日から2年」ではなく「サービス提供の終了後2年」と解釈される場合もあります。実際の取扱いは指定権者(都道府県・市区町村)に確認してください。

研修記録の管理をツールで効率化する

訪問介護向け法定研修・訓練キット(https://fufumumu-design.com/kenshu-kit-houmon/)の有料版(14,800円買い切り)では、職員がスマートフォンから確認テストに回答した記録が自動で蓄積されます。「後から参加者の署名を集める」「誰がいつ受講したかを一覧で確認する」という研修記録の実務負担をなくせます。実地指導で「〇〇研修の記録を見せてください」と求められたとき、テーマ別・職員別に受講状況を即座に提示できます。

無料版では虐待防止の1テーマを利用できます。12テーマすべての記録管理には有料版が必要です。

あわせて読みたい:訪問介護の法定研修、何を何回やればいいか。

あわせて読みたい:訪問介護の年間研修計画の立て方、12テーマの割り当てと記録管理のポイント。

この記事で確認した根拠

  • 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)記録整備規定
  • 指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について(老企第25号)
この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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