小規模多機能型居宅介護の認知症加算。4区分の算定要件と収支への影響。

小規模多機能型居宅介護の認知症加算。4区分の算定要件と収支への影響。 介護

小規模多機能型居宅介護の認知症加算は、認知症の症状が重い登録者(日常生活自立度ランクⅢ以上)に対して算定できる月額加算です。令和6年度改定で4区分に再編され、(Ⅰ)920単位から(Ⅳ)460単位まで区分があります。各区分の要件・研修修了者の配置・算定に必要な記録を整理します。

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認知症加算の4区分と単位数(令和6年度改定後)

令和6年度改定で認知症加算は4区分に再編されました。改定前は2区分でしたが、認知症ケアの体制強化に応じた上位区分が設けられました。

認知症加算の区分と月額単位数(令和6年度改定後)
区分 月額単位数 改定前の区分
認知症加算(Ⅰ) 920単位 新設(リーダー研修+上位要件)
認知症加算(Ⅱ) 890単位 新設
認知症加算(Ⅲ) 760単位 改定前の(Ⅰ)相当
認知症加算(Ⅳ) 460単位 改定前の(Ⅱ)相当

※ 単位数は令和6年度改定の参考資料に基づく数値です。最新の告示(指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準・平成18年厚生労働省告示第126号)で確認してください。

算定対象の利用者:認知症日常生活自立度ランクⅢ以上

認知症加算の対象となる登録者は、「認知症日常生活自立度」の判定がランクⅢ以上の方です。

認知症日常生活自立度の区分(参考)
ランク 状態の概要
Ⅰ 何らかの認知症を有するが、日常生活はほぼ自立(一人で外出できる)
Ⅱ 日常生活に支障のある症状・行動が見られるが、誰かが注意すれば自立できる
Ⅲ 日常生活に支障をきたす症状・行動が見られ、介護を必要とする
Ⅳ 日常生活に支障をきたす症状・行動が頻繁に見られ、常に介護が必要
M 著しい精神症状や問題行動・合併症があり、専門医療を必要とする

ランクの判定は、主治医意見書・認知症の診断書・担当医師の意見をもとに行います。事業所が独自に判定するのではなく、医師の判断を記録に残すことが必要です。

各区分の算定要件

認知症加算の区分ごとに、配置が必要な研修修了者の要件が異なります。

区分ごとの算定要件
区分 研修修了者の要件 配置の目安
(Ⅰ) 認知症介護実践リーダー研修修了者を配置+上位の体制要件 ランクⅢ以上の登録者数に応じて2人以上の実践リーダー等
(Ⅱ) 認知症介護実践リーダー研修修了者を配置 ランクⅢ以上の登録者数に応じて1〜2人のリーダー
(Ⅲ) 認知症介護実践者研修修了者を複数配置 ランクⅢ以上の登録者が20人未満→2人以上、20〜30人未満→3人以上
(Ⅳ) 認知症介護実践者研修修了者を配置 ランクⅢ以上の登録者が20人未満→1人以上

要件の詳細(人数・登録者数の閾値)は令和6年度改定の算定要件(告示・通知)で確認してください。自治体によって解釈の細部が異なる場合もあります。

認知症介護実践者研修とリーダー研修の違い

加算の区分で求められる研修修了者の種類は2つあります。

認知症介護の研修の種類
研修名 目的 受講対象 研修日数の目安
認知症介護実践者研修 認知症の方へのケアの実践力を高める 介護職員(現場で直接ケアを担う職員) 6日間程度(集合研修+実習)
認知症介護実践リーダー研修 チームでの認知症ケアを主導できる人材育成 実践者研修修了者・管理者相当の職員 7〜10日間程度(集合研修+実習)

両研修とも都道府県または指定機関が主催します。研修の開催時期・申込方法は、開業予定地の都道府県の「認知症介護研修」窓口で確認してください。

研修には申込から修了まで数か月かかります。上位区分((Ⅰ)・(Ⅱ))の算定を目指すなら、開業前または開業初年度から計画的に研修を受講しておく必要があります。

認知症加算の算定に必要な記録

加算の算定根拠として、次の記録を整備します。

  • 認知症日常生活自立度の判定記録:主治医意見書のコピー・判定に基づく記録(判定日・判定者・ランク)
  • 研修修了証のコピー:配置している研修修了者の修了証
  • 個別サービス計画への記載:認知症の症状に合わせたケアの方針と具体的な対応内容

実地指導では、対象者の日常生活自立度の判定記録と研修修了者の配置状況が確認されます。研修修了証は原本またはコピーを保管します。

収入への影響:登録者に占める認知症の比率次第

小規模多機能の登録者は認知症を持つ方が多い傾向があります。認知症加算の収入への影響は、登録者に占めるランクⅢ以上の方の比率によって変わります。

認知症加算(Ⅳ・460単位)の収入試算例(地域区分「その他」・登録者29人)
ランクⅢ以上の登録者数 月次加算収入の目安(460単位×1単位10円)
5人 約23,000円/月
10人 約46,000円/月
20人 約92,000円/月

上位区分((Ⅰ)・920単位)では、同じ対象者数でも収入が2倍になります。研修修了者の配置コスト(研修参加の費用・日程調整)と加算収入の増加額を比較して、どの区分を目指すか検討することが実際的です。

「認知症専門ケア加算」との違い

特別養護老人ホーム・介護老人保健施設などの施設サービスには「認知症専門ケア加算」があります。小規模多機能型居宅介護の「認知症加算」は別の制度で、名称・要件・単位数が異なります。混同しないよう注意が必要です。

小規模多機能に算定できるのは「認知症加算」(月額・4区分)であり、「認知症専門ケア加算」(施設系・1日単位)は算定できません。

日常生活自立度の判定の実務

認知症加算の対象者かどうかは「認知症日常生活自立度」のランクで判定します。この判定は事業所が独自に行うのではなく、医師(主治医・かかりつけ医)の意見・判断を根拠にする必要があります。

実務上の判定の流れは次の通りです。

  1. 利用者の主治医が「主治医意見書」に認知症日常生活自立度を記載(要介護認定の際に作成)
  2. 事業所は要介護認定の主治医意見書のコピーを確認し、ランクを記録する
  3. ランクがⅢ以上の場合、加算の対象者として個別サービス計画に記載する
  4. 状態の変化があれば(ランクが上下した場合)、主治医の意見を再確認する

主治医意見書に記載されたランクが最も信頼できる根拠です。「家族が認知症だと言っているから」「事業所の職員が認知症のように見えるから」という理由だけでは、加算算定の根拠として不十分です。

BPSD(行動・心理症状)と認知症加算の関係

認知症の方が示す行動・心理症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)には、徘徊・攻撃性・幻覚・昼夜逆転・抑うつなど多様な症状があります。ランクⅢ以上の方はBPSDが出やすく、介護負担が特に大きくなります。

認知症加算は、こうした対応困難なケースへの手厚いケアを支援するために設けられています。上位区分((Ⅰ)・(Ⅱ))では認知症介護実践リーダー研修修了者の配置が必要ですが、リーダー研修はBPSDへの対応スキルを高める内容が含まれており、ケアの質と加算要件が連動しています。

上位区分を目指すべきかどうかの判断軸

認知症加算の(Ⅰ)・(Ⅱ)(上位区分)を算定するためには、認知症介護実践リーダー研修修了者の配置が必要です。(Ⅲ)・(Ⅳ)(下位区分)は認知症介護実践者研修修了者で足ります。

上位区分を目指すかどうかは、次の観点で判断します。

上位区分と下位区分の比較
上位区分(Ⅰ・Ⅱ) 下位区分(Ⅲ・Ⅳ)
研修の種類 実践リーダー研修修了者が必要 実践者研修修了者で可
研修の期間 実践者研修→リーダー研修(計15〜18日程度) 実践者研修(6日程度)
月額単位数の差 (Ⅰ)920単位 vs (Ⅲ)760単位(差:160単位) —
収入増加の目安(差分) 160単位×1単位10円×対象者数分/月 —

対象者が20人いる場合、(Ⅰ)と(Ⅲ)の差は月160単位×20人=3,200単位=32,000円の差です。研修のコスト・時間と収入増加の差を比較して、上位区分を目指す価値があるか判断してください。

認知症加算と他の加算との組み合わせ

認知症加算は、他の加算と組み合わせて算定できます。認知症の方への対応に強い事業所は、複数の加算を積み上げることで月次収入を大きく増やせます。

認知症加算と組み合わせが多い加算(小規模多機能)
加算名 認知症加算との関係
看護職員配置加算(Ⅰ・Ⅱ) 認知症が重い方は医療ニーズも高く、看護体制を厚くすることで加算も算定
機能訓練体制加算 認知症でも維持・向上できる機能があり、機能訓練と組み合わせることで加算収入が積み上がる
科学的介護推進体制加算(LIFE) LIFE連携でデータを送信することで上乗せ。認知症加算対象者のデータも登録対象
看取り連携体制加算 認知症が重い方の看取りを担う場合に算定。看護職員配置加算(Ⅰ)が前提

加算を複数算定する場合は、それぞれの要件・記録・届出を漏れなく整備することが必要です。加算ごとに別々の書類が求められるため、管理の仕組みを整えておくことが重要です。

研修の受講スケジュールと加算算定の関係

認知症介護実践者研修・リーダー研修は都道府県が年に数回開催しますが、定員があるため申込が集中する場合があります。開業後に加算を算定するためには、研修の受講から修了までのスケジュールを事前に確認することが必要です。

  • 開業前から研修の開催スケジュールを都道府県の窓口で確認する
  • 複数の職員が受講できるよう、受講希望者をリストアップして順次申し込む
  • 実践者研修を修了してからリーダー研修に申し込めるため、上位区分は時間がかかる(最短でも1〜2年)

認知症加算の届出手続き

認知症加算を算定するには、市区町村(指定権者)への届出が必要です。届出のタイミングと手続きは次の通りです。

  • 届出先:事業所を指定した市区町村(指定権者)の介護保険担当窓口
  • 届出のタイミング:加算を算定しようとする月の前月末(自治体によって異なる場合があります)
  • 必要書類:加算届出書・研修修了証のコピー・配置職員の一覧(自治体指定の様式を使います)

開業時から認知症加算を算定する場合は、指定申請時に加算の届出も同時に行う場合があります。指定申請の際に担当窓口に確認することをお勧めします。

加算の区分が変わる場合(例:(Ⅳ)→(Ⅲ)へ)も変更の届出が必要です。研修修了者が退職した場合など、要件を満たさなくなった場合は速やかに届出をして加算の算定を停止する必要があります。

認知症加算が収支に与える影響の試算

認知症加算が収支にどの程度影響するか、登録者数をもとに試算してみます。

登録者20人のうち認知症加算対象者が10人のケース
区分 単位数(月) 月額収入(10人×10円換算)
認知症加算(Ⅰ) 920単位 92,000円
認知症加算(Ⅱ) 890単位 89,000円
認知症加算(Ⅲ) 760単位 76,000円
認知症加算(Ⅳ) 460単位 46,000円

区分(Ⅰ)と(Ⅳ)では月46,000円の差があります。研修修了者が確保できていれば、上位区分を目指すことが収支改善の有効な手段になります。小規模多機能は登録定員29人の制約があり売上の天井が低いため、加算の積み上げが黒字化のカギになります。

収支全体の試算には、小規模多機能型居宅介護 収支シミュレーターをご活用ください。

参考・出典

  • 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号)
  • 令和6年度介護報酬改定の概要(厚生労働省):認知症加算の4区分への再編

この記事は2026年11月時点の情報に基づいています。報酬改定により単位数・要件は変更されることがあります。最新の告示をご確認ください。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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