認知症GH(1ユニット9人・その他地域・要介護3・夜間支援体制加算Ⅱ取得)の場合、入居者が1人増えると月の介護報酬収入は約25,000〜27,000円増加します。稼働率が90%(8.1人)と80%(7.2人)では月収入に約27,000円の差が生じます。全国平均収支差率3.0%(令和7年介護事業経営実態調査)は、損益分岐点を超えた状態の事業所の平均像です。
稼働率と月収入の関係(試算)
以下の条件で稼働率別の月収入を試算します。
- 1ユニット定員9人・その他地域(単価10.00円)
- 要介護3(824単位/日)で統一
- 夜間支援体制加算Ⅱ(25単位/日)取得
- 処遇改善加算Ⅰ(18.6%)取得
- 月30.4日で計算
| 稼働率 | 実人数 | 基本報酬(月) | 夜間加算(月) | 処遇改善加算込み合計(月) |
|---|---|---|---|---|
| 100% | 9.0人 | 約225,300円 | 約6,840円 | 約275,300円 |
| 90% | 8.1人 | 約202,800円 | 約6,156円 | 約247,700円 |
| 80% | 7.2人 | 約180,200円 | 約5,472円 | 約220,200円 |
| 70% | 6.3人 | 約157,700円 | 約4,788円 | 約192,700円 |
| 60% | 5.4人 | 約135,200円 | 約4,104円 | 約165,200円 |
稼働率が10ポイント下がると(例:90%→80%)、月収入は約27,500円減少します。年間換算では約33万円の差になります。
※基本報酬:824単位×10.00円×30.4日×人数。処遇改善加算は(基本報酬+夜間加算)×18.6%で概算。実際の計算は月の日数・要介護度の構成・算定要件によって異なります。
空室1人が収支に与える影響
空室が1人増える(稼働率が約11ポイント下がる)場合、月収入の減少分は約27,500円です。これは収入の減少のみです。人件費・家賃・光熱費などの固定費はほとんど変わらないため、空室1人は収支差額に直接27,500円程度の影響を与えます。
例として月の固定費(人件費・家賃・光熱費等)が220万円の事業所で考えると、稼働率90%(8.1人)では収入約247,700円に対して費用220万円となり、差額は△約172万円(赤字)になります。
正確な計算は1ユニット全体の月収入(定員9人・100%稼働で約275,300円/月→年約330万円)と比較することが必要です。認知症GH収支シミュレーターでは定員・稼働率・加算・費用を入力して損益分岐点まで確認できます。
稼働率を左右する主な要因
認知症GHの稼働率は、以下の要因に影響されます。
- 地域の待機者数・需要:認知症GHの定員は27人以下と小規模なため、地域によっては需要が高く満室状態が続く一方、競合施設が多い地域では空室が生じやすくなります。
- ケアマネジャーとの関係:居宅介護支援事業所のケアマネジャーが利用者を紹介します。開業後の早期稼働には、近隣のケアマネへの積極的な情報提供が重要です。
- 退居者の発生タイミング:認知症GHは長期入居が基本ですが、退居(看取り・医療施設への移転)があると空室が生じます。
- 開業直後の立ち上がり期間:開業直後は利用者がゼロからのスタートとなるため、初期3〜6か月は稼働率50〜70%程度での運営になる場合があります(開業手順の記事参照)。
稼働率と損益分岐点の関係
認知症GHの損益分岐点となる稼働率は、固定費の水準によって変わります。固定費が高いほど、収支をトントンにするために必要な稼働率が上がります。詳しくは損益分岐点の記事で解説しています。
全国平均収支差率3.0%(令和7年介護事業経営実態調査)は、損益分岐点を超えて黒字で運営している事業所の平均像です。人件費の管理(人件費率の記事)と加算の取得(処遇改善加算の記事)が収支改善の基本的な手段です。
稼働率を高めるための実践的な取り組み
認知症GHの稼働率向上には、地域のケアマネジャーとの関係構築が最も重要です。
- 居宅介護支援事業所への案内:近隣のケアマネジャーに対して、事業所の特徴・空き情報を定期的に案内します。電話・訪問・ニュースレターの配布など、継続的な情報提供が空室解消につながります。
- 地域包括支援センターとの連携:認知症の方の相談を受ける地域包括支援センターに事業所情報を周知しておくことで、紹介につながる場合があります。
- 運営推進会議の活用:2か月に1回の運営推進会議(地域密着型サービスの義務)を通じて、地域の関係者に事業所の状況を伝える機会として活用できます。
- 見学の受け入れ:利用者の家族やケアマネが見学しやすい体制を整えることで、入居の意思決定を後押しします。
2ユニット・3ユニットと稼働率の関係
ユニット数が増えると定員が増えるため、同じ稼働率でも収入が大きくなります。一方、夜間の人件費(夜間は全ユニット通じて1名以上常駐)は1ユニットでも3ユニットでも1名分が基本となるため、ユニット数が増えると人件費率が下がりやすくなります(固定費の分散効果)。ユニット数の選び方の詳細は定員・ユニット数の記事を参照してください。
稼働率の目標設定と収支管理
開業後3か月・6か月・1年の稼働率目標を事前に設定し、目標を下回っている場合はケアマネへの案内強化など対策を講じます。全国平均収支差率3.0%(令和7年介護事業経営実態調査)を参考に、事業所の損益分岐点を把握した上で稼働率管理を行うことが必要です。
認知症GH収支シミュレーターでは、稼働率を変えながら収支への影響を確認できます。損益分岐点の記事も合わせて参考にしてください。
空室1人の月間・年間影響額(詳細計算)
定員9人・要介護3(824単位)・単価10.00円の事業所で、空室が1人生じた場合の収入差を計算します。
- 稼働率100%(9人フル稼働):824×10.00×9×30.4日=2,256,998円/月
- 稼働率88.9%(8人稼働・1人空室):824×10.00×8×30.4日=2,006,221円/月
- 月間差額:約250,777円
- 年間差額:約301万円
空室1人で年間約300万円の収入差が生まれます。固定費(人件費・家賃等)は変わらないため、この差はそのまま収支に直撃します(令和6年厚生労働省告示第128号の報酬単価をもとに計算)。
空室が発生する主なパターン
- 退所後の空き期間:利用者が退所・死亡した後、次の入居者が確保できるまでの間(平均2〜8週間程度かかることがある)
- 入院中の居室確保:入院中の利用者の居室をキープしている間(基本的に入院中は報酬を算定できない。ただし3日以内の短期入院は一部加算で対応可)
- 開業初期の立ち上がり:開業直後は利用者がゼロからのスタートとなるため、入居者が定員に達するまでの期間
ケアマネジャーとの関係が稼働率に直結する理由
認知症GHへの入居は、居宅介護支援事業所のケアマネジャー(介護支援専門員)が利用者・家族に紹介するケースが多いです。利用者の入居先として認知症GHを選択肢に入れてもらうためには、地域のケアマネジャーとの日ごろからの関係構築が重要です。担当者会議への積極的な参加・運営推進会議の案内・見学受け入れなどを通じてGHの存在を知ってもらうことが空室率の低下につながります。
2ユニット・3ユニットと稼働率管理の違い
ユニット数が増えると定員が増え、空室1人あたりの影響は相対的に小さくなります(1人/18人=5.6%と1人/9人=11.1%の違い)。一方、夜間専従者(夜間は全ユニット通じて1名以上)のコストは1ユニットも3ユニットも同じため、定員が大きいほど夜間コストの1人あたり負担は軽くなります。ただし定員増は初期費用と固定費も増えるため、地域の需要・競合状況をふまえた規模設計が必要です。
出典
- 令和6年厚生労働省告示第128号(基本報酬・加算単位数)
- 令和7年介護事業経営実態調査(厚生労働省)収支差率3.0%
※試算は参考値です。実際の収支は要介護度の構成・加算の取得状況・費用の実績によって異なります。

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