就労継続支援B型の送迎加算、算定要件と収入への影響。
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就労継続支援B型の収入は基本報酬が中心ですが、送迎加算はその基本報酬に上乗せできる加算のひとつです。算定要件を満たして送迎を提供すれば、利用者の通所を支える仕組みを整えながら収入を増やすことができます。
一方で、送迎には車両の確保・運転スタッフの配置・燃料費などのコストが伴います。送迎加算の収入がコストを上回るかどうかは、利用者数・送迎距離・地域区分によって変わります。
この記事では、就労継続支援B型の送迎加算の仕組み・算定要件・単位数・収入への影響・コストとの収支バランスの考え方を整理します。
送迎加算は2種類あり、要件の差で単位数が異なる
就労継続支援B型の送迎加算は、厚生労働省告示第523号(以下「告示」)に2種類規定されています。
- 送迎加算(Ⅰ):21単位/片道
- 送迎加算(Ⅱ):10単位/片道
いずれも「片道ごと」の算定です。自宅から事業所まで送迎した場合(行き)と、事業所から自宅まで送迎した場合(帰り)の両方で算定できるため、利用者1人が往復で送迎を受けた日は合計で(Ⅰ)なら42単位、(Ⅱ)なら20単位が加算されます。
単位数が異なる理由は、算定要件の厳しさの差にあります。(Ⅰ)は乗降介助や安全確保のための体制整備など、より手厚い要件を満たした場合に算定できます。(Ⅱ)は送迎の実施そのものを要件とするものです。具体的な要件の区分については、告示の最新版および都道府県が定める解釈通知で確認してください。
単位数の水準は令和6年度報酬改定後のものです。改定が行われた場合は告示の最新版で確認してください。
送迎加算の算定要件は「実際の送迎の実施」が前提になる
送迎加算を算定するための基本的な要件は、実際に利用者の居宅等と事業所の間の送迎を行っていることです。送迎を実施せずに加算のみを請求することは認められません。
主な算定要件を整理します。
利用者が実際に送迎を受けていること
送迎加算は、その日に送迎を受けた利用者に対して算定します。自力通所した利用者には算定できません。したがって、利用者ごと・日ごとに送迎の有無を記録・管理することが必要です。
送迎に使用する車両の確保
利用者を運ぶ車両が必要です。事業所が所有・リースする車両のほか、運行管理を行う委託先の車両を使う場合も、実態として適切な送迎体制が確保されていることが求められます。
運転担当者の配置と安全管理
運転は職員が行うか、送迎業務を担う委託先が行います。送迎時の安全管理(シートベルトの着用・乗降の介助が必要な利用者への対応)を適切に実施していることが必要です。
送迎記録の保存
送迎を行った日付・利用者・乗降場所の記録を保存する義務があります。運営指導(実地指導)では送迎記録が確認対象になることが多く、記録が不備だと加算の返還を求められる場合があります。帳票の形式は特定されていませんが、送迎日誌・乗降名簿などで実施の事実を示せる状態にしておくことが必要です。
送迎加算の収入は利用者数と算定区分で変わる
送迎加算の収入は、実際に送迎を受けた利用者の延べ人数と、単位数・地域区分の掛け算で決まります。参考として、定員20人・稼働率80%の事業所が全員に往復送迎を提供した場合の目安を示します。
1日あたりの送迎利用延べ人数:20人×80%=16人
送迎加算(Ⅰ)往復の場合:21単位×2片道×16人=672単位/日
672単位×10.27円(地域加算なし・標準単価の参考値)≒6,900円/日
月22日稼働の場合:約15万円/月
送迎加算(Ⅱ)往復の場合:10単位×2片道×16人=320単位/日
320単位×10.27円≒3,300円/日
月22日稼働の場合:約7万円/月
上記はあくまで概算です。実際の単価は地域区分(1〜7級地・その他)によって異なります。東京都特別区(1級地)では1単位11.18円、地域加算のない地域では10.27円が基本単価です。また、全員が往復送迎を受けるとは限らず、片道のみ・送迎なしの利用者が混在するのが実態です。
定員・稼働率・送迎利用者の割合ごとに試算を変えて確認したい場合は、収支シミュレーターのPro版をご活用ください。
送迎加算(Ⅰ)と(Ⅱ)の選択は要件確認が先になる
収入が多くなる(Ⅰ)を算定したいと考えるのは自然ですが、要件を満たしていない状態で(Ⅰ)を算定することは不正請求になります。事業所の体制が(Ⅰ)の要件を満たしているかどうかを、都道府県の担当課または国保連の解釈に照らして確認することが必要です。
体制整備が間に合わない段階では(Ⅱ)から算定を始め、要件を整えてから(Ⅱ)→(Ⅰ)へ移行するという進め方が現実的です。開業直後から無理に(Ⅰ)を算定しようとして体制が不十分なままになるよりも、(Ⅱ)で確実に算定する方が運営指導のリスクを下げられます。
送迎加算の算定に必要な体制整備のポイント
車両の確保
車両は購入・リース・レンタルのいずれかで確保します。購入の場合は初期費用が大きく、リースは月々のコストが発生します。送迎ルートの距離・利用者数・乗降の難易度(車椅子対応が必要か)によって必要な車種が変わります。福祉車両(スロープ付き・リフト付き)を必要とする利用者がいる場合は、対応する車両の手配が必要です。
車両の維持費(自動車保険・車検・燃料費・消耗品)は毎月の固定的なコストとして収支計画に織り込む必要があります。
運転スタッフの配置
送迎を職員が担当する場合、送迎時間は業務として勤務扱いになります。朝の送迎・夕の送迎に対応するためのシフト設計が必要です。送迎のために朝早く・夕方遅くまで勤務する職員の労務管理が、人件費と勤務体制に影響します。
委託を活用する場合は、委託先との契約内容(送迎範囲・時間帯・利用者対応の範囲)を明確にし、安全管理の責任分担を整理しておく必要があります。
送迎記録の整備
送迎を行った日・利用者名・乗降場所・時刻を記録します。記録の様式は各事業所が定めますが、運営指導で問われる内容(誰を・いつ・どこで乗降させたか)が明確に残るものにしてください。乗降の際に利用者の状態(体調不良・転倒リスク)を確認した記録を合わせて残しておくと、事故発生時の対応でも役立ちます。
送迎加算と利用者負担の関係
就労継続支援B型の利用者は、サービス費用の1割(または所得に応じた上限額)を利用者負担として支払います。送迎加算も加算として費用に計上されるため、送迎を受けた利用者の1割負担に含まれます。
ただし、就労継続支援B型の利用者の多くは、低所得者向けの負担上限(月額0円・月額9,300円など)が適用されており、上限額の範囲内で送迎加算の自己負担が吸収されることも多くあります。送迎加算を算定することで利用者の実質的な自己負担が増える場合は、事前に利用者・家族に説明しておくことが重要です。
自己負担の上限額の適用については、利用者のサービス等利用計画や支給決定の内容によって異なります。相談支援専門員と連携して利用者ごとの状況を確認してください。
送迎の提供は稼働率の安定につながる
送迎を提供することで、自力通所が難しい利用者が通いやすくなります。公共交通機関のアクセスが不便な立地の事業所では、送迎の有無が利用者の選択に大きく影響することがあります。
欠席・キャンセルの減少
体調の波がある精神障害・発達障害のある利用者にとって、「今日しんどくても送迎があるから行ける」という安心感は、通所継続の後押しになることがあります。自力通所だと一歩踏み出しにくい日も、送迎のある事業所なら通えるケースがあります。稼働率の安定に送迎が寄与することは、収支計画の前提として考慮する価値があります。
相談支援専門員からの紹介ルートの拡大
相談支援専門員が利用者にサービスを紹介するとき、「送迎あり」は選択の条件のひとつになります。送迎なしの事業所と送迎ありの事業所が同等の条件で並んだ場合、交通アクセスに課題がある利用者には送迎あり側が選ばれやすいです。送迎体制を整えることは、紹介が入りやすい事業所になるための要素のひとつです。
集客エリアの拡大
徒歩・バスで通える圏内に限定されず、車での送迎圏内まで利用者の候補が広がります。競合事業所が集中する徒歩圏内だけでなく、やや遠方に住む方も対象になるため、利用者確保の選択肢が広がります。
送迎コストと加算収入の収支バランスの考え方
送迎加算の収入があっても、送迎にかかるコストが上回れば収支はマイナスになります。送迎の導入判断にあたっては、コストと収入の両面を試算することが必要です。
送迎にかかる主なコスト
- 車両費:リース代・ローン返済・駐車場代
- 維持費:自動車保険・車検・燃料費・タイヤ等消耗品
- 人件費:送迎担当職員の勤務時間(送迎中は他の支援業務ができない)
- 委託費:外部に送迎業務を委託する場合の費用
車両を1台確保してリース(月4〜6万円程度)、燃料費・保険を合わせると月10〜15万円前後のコストになることがあります。送迎担当職員の勤務時間を人件費に換算すると、さらにコストが加わります。
コストを上回る収入を確保するための条件
送迎加算の収入でコストをまかなうためには、一定数の利用者が送迎を利用していることが必要です。
たとえば送迎加算(Ⅱ)往復(20単位/人/日)で月あたりの収入を試算すると:
- 送迎利用者10人・月22日稼働:20単位×10人×22日×10.27円≒45,000円/月
- 送迎利用者16人・月22日稼働:20単位×16人×22日×10.27円≒72,000円/月
送迎コストが月10万円かかる場合、(Ⅱ)で送迎利用者16人では収入が足りません。(Ⅰ)(42単位/人/日)に切り替えると:
- 送迎利用者16人・月22日稼働(往復):42単位×16人×22日×10.27円≒151,000円/月
(Ⅰ)の要件を満たせば、送迎コストを上回る収入が得られる可能性があります。ただしこれは地域加算なしの概算であり、実際の単価・送迎利用者数・コスト内訳は事業所ごとに異なります。
開業計画の段階で「送迎を導入するか」「どちらの区分で算定するか」を判断するためには、想定利用者数・送迎ルート・コスト見積もりを組み合わせた試算が必要です。
送迎加算は加算一覧の中でも収入インパクトが大きい
就労継続支援B型で算定できる加算のうち、送迎加算は利用者全員に毎日算定できる性質のため、算定開始後の収入への影響が比較的大きい加算です。福祉専門職員配置等加算(1〜3単位/日・全利用者対象)や食事提供体制加算(30単位/日・食事を提供した利用者対象)と比較しても、送迎加算(Ⅰ)の21単位(片道)は利用者が多いほど収入への貢献が大きくなります。
加算の種類・算定要件・単位数の全体像については、「就労継続支援B型の加算、種類と算定要件を整理する。」で整理しています。加算全体を把握したうえで、送迎加算の位置づけを収支計画に組み込んでください。
送迎加算の導入判断は収支シミュレーターで確認する
送迎加算を算定するかどうかの判断は、コストと収入の両面から試算することが出発点です。利用者数・稼働率・地域区分・送迎加算の区分(Ⅰ/Ⅱ)の組み合わせごとに収支がどう変わるかを確認することで、現実的な判断ができます。
収支シミュレーターのPro版では、送迎加算の有無・区分を設定したうえで、定員・稼働率の変動ごとの収支シナリオを試算できます。送迎導入のシナリオと未導入のシナリオを並べて比較することで、どの稼働率水準で送迎加算がコスト回収に貢献するかを確認することができます。
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まとめ
就労継続支援B型の送迎加算は(Ⅰ)21単位・(Ⅱ)10単位(いずれも片道)の2種類があり、利用者が送迎を受けた日に片道ごとに算定します。算定要件は実際の送迎の実施・車両の確保・記録の保存であり、要件の確認は都道府県の担当課に事前相談することをお勧めします。
送迎加算の収入は利用者数と算定区分に比例するため、送迎利用者が多いほど収入への貢献が大きくなります。一方でコスト(車両費・人件費・維持費)との収支バランスを確認することが導入判断の前提です。送迎を提供することで稼働率の安定・紹介ルートの拡大につながる効果も期待できるため、開業計画の段階で収支ともに試算して検討してください。
出典:厚生労働省告示第523号(指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準)別表第14。指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)。作成日:2026年10月。


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