障害者グループホーム 開業向け収支シミュレーター
グループホームの収入の大半は、介護給付費
障害者グループホーム(共同生活援助)の収入は、そのほとんどが障害者総合支援法に基づく「介護給付費」です。入居者がサービスを利用した費用を、国(2分の1)と都道府県(4分の1)と市区町村(4分の1)が共同で負担します。入居者本人の負担は原則1割で、所得に応じた上限額も設けられています。
月の収入を決める計算式は、次のとおりです。
月の収入 = 基本報酬(単位)× 地域区分の単価 × 入居者数 × 在所日数 + 各加算
「単位」とは介護保険の点数に相当するもので、1単位あたりの円換算額(単価)は事業所の所在地によって異なります。この仕組みが、計算を少し複雑に見せる原因です。
基本報酬の単位数は、障害支援区分で決まる
基本報酬は「1日1人あたりの単位数」で定められています。入居者の障害支援区分によって金額が変わり、重度の方(区分が高い方)ほど高い報酬になります。
サービス形態は大きく2種類あります。
介護サービス包括型(世話人の配置基準は6対1)
日中は外部の障害福祉サービス(生活介護・就労支援等)を利用し、夜間と休日の支援を事業所が行う形態です。共同生活援助の中で最も件数が多い形態です。
| 障害支援区分 | 1日あたりの基本報酬 |
|---|---|
| 区分6 | 600単位 |
| 区分5 | 456単位 |
| 区分4 | 372単位 |
| 区分3 | 297単位 |
| 区分2 | 188単位 |
| 区分1・区分なし | 171単位 |
(出典:厚生労働省「障害福祉サービス費等の報酬算定構造」(令和8年6月施行))
日中サービス支援型(世話人の配置基準は5対1)
夜間・休日に加えて日中の支援も事業所が担う形態です。人員配置が手厚い分、基本報酬も高く設定されています。ただし、夜間支援を専門に行う「夜間支援従事者」の配置が必須です。
| 障害支援区分 | 1日あたりの基本報酬 | 備考 |
|---|---|---|
| 区分6 | 997単位 | 日中を共同生活住居で過ごす場合 |
| 区分5 | 860単位 | |
| 区分4 | 771単位 | |
| 区分3 | 524単位 | 日中を共同生活住居で過ごす場合 |
| 区分2 | 270単位 | 日中を共同生活住居以外で過ごす場合 |
| 区分1・区分なし | 253単位 |
(出典:同上)
なお、日中サービス支援型の場合、単位数が高い反面、夜間支援従事者の人件費がかかります。開業前に収支のバランスを確認することが大切です。
地域区分の単価によって、収入は最大16%変わる
1単位あたりの円換算額は、事業所の所在地によって以下のように定められています。共同生活援助は「人件費割合80%」のサービスに分類されます。
| 地域区分 | 1単位あたりの単価 | 主な対象地域(例) |
|---|---|---|
| 1級地 | 11.60円 | 東京都特別区 |
| 2級地 | 11.28円 | 東京都町田市・横浜市・川崎市・大阪市など |
| 3級地 | 11.20円 | さいたま市・千葉市・八王子市・名古屋市など |
| 4級地 | 10.96円 | 相模原市・神戸市・豊中市など |
| 5級地 | 10.80円 | 水戸市・川口市・京都市・堺市・広島市・福岡市など |
| 6級地 | 10.48円 | 仙台市・宇都宮市・川越市・静岡市・岡崎市など |
| 7級地 | 10.24円 | 指定権者(市区町村)に確認 |
| その他の地域 | 10.00円 | 上記以外 |
(出典:厚生労働大臣が定める一単位の単価(平成18年厚生労働省告示第539号)別表・人件費割合80%欄)
東京都特別区(11.60円)とその他の地域(10.00円)を比べると、1単位あたりの価値が16%異なります。定員15人・基本報酬の月の合計が仮に1,500万単位あれば、地域によって240万円の差が出る計算です。開業地の選定は収益に直結します。
加算を取得することで、収入を積み上げられる
基本報酬に加え、体制や要件を満たした場合に算定できる「加算」があります。加算の取得状況が、事業所の収益力を大きく左右します。
夜間支援等体制加算(I)(介護サービス包括型のみ)
夜間・深夜に夜勤または宿直の職員を配置し、入居者の支援を行う体制を整えた場合に算定できます。1日1人あたりの単位数は「夜間支援対象利用者の数」と「その障害支援区分の構成」によって異なります。
たとえば、利用者15人全員が障害支援区分3の場合は75単位/人/日です。利用者が多いほど1人あたりの単位数は減りますが、それでも合計では大きな収入になります。
人員配置体制加算
基準を超える手厚い人員を配置した場合の加算です。
- 介護サービス包括型 加算(I):83単位/日・1人あたり(入居者が主に区分4以上の場合。区分3が多い構成では77単位)
- 介護サービス包括型 加算(II):33単位/日・1人あたり(区分3が多い構成では31単位)
- 日中サービス支援型 加算(V):138単位/日・1人あたり(区分4以上)
- 日中サービス支援型 加算(VI):53単位/日・1人あたり(区分4以上)
医療連携体制加算
看護職員との連携体制に応じた加算があります。
- 加算(I):32単位/日・1人あたり
- 加算(II):63単位/日・1人あたり
- 加算(III):125単位/日・1人あたり
- 加算(IV):800〜400単位/日(入居者数1〜3人以上で異なる)
処遇改善加算
職員の処遇改善を目的とした加算で、基本報酬と各加算を合わせた「所定単位数」に対して一定の率を乗じて算定します。令和8年6月施行の区分と加算率は次のとおりです。
- 加算 Ⅰイ:16.3%
- 加算 Ⅰロ:16.9%
- 加算 Ⅱイ:16.0%
- 加算 Ⅱロ:16.6%
- 加算 Ⅲ:14.4%
- 加算 Ⅳ:12.1%
(出典:厚生労働省「障害福祉サービス費等の報酬算定構造」(令和8年6月施行))
処遇改善加算は最終的な収入の10〜17%に相当する金額になるため、取得しているかどうかが収支に大きく影響します。
令和8年6月以降の新規指定は、基本報酬に972/1000を乗じる
令和8年6月1日以降に新たに指定を受ける事業所は、基本報酬の単位数に「972/1000」を乗じた値が適用されます。既存の事業所と比べて約2.8%低い報酬水準になります。開業計画を立てる際はこの点を収支計画に反映しておく必要があります。
計算例:定員15人・介護サービス包括型・その他の地域(10.00円)
全国平均に近い定員15人の介護サービス包括型事業所を例に、月の収入の概算を示します。令和8年6月以降の新規指定(基本報酬×972/1000)・新規指定引き下げなし(既存事業所扱い)の2通りで比較してみます。
入居者全員を区分4(372単位)として計算します。
【既存事業所の場合】
基本報酬:372単位 × 10.00円 × 15人 × 30日 = 1,674,000円
夜間支援等体制加算(I)(利用者15人・区分4以上→90単位/人/日):90単位 × 10.00円 × 15人 × 30日 = 405,000円
基本報酬+夜間支援加算 合計:2,079,000円
処遇改善加算 Ⅱイ(16.0%):2,079,000円 × 0.160 = 332,640円
月の収入概算:約241万円(2,411,640円)
【令和8年6月以降の新規指定の場合(×972/1000)】
基本報酬が約2.8%低くなるため、月の収入は上記より5〜7万円程度少なくなります。
実際の収入は入居者の障害支援区分の構成・取得加算の種類・稼働率(満室かどうか)によって大きく変わります。事前に収支シミュレーターで具体的な数字を確認することをおすすめします。
全国平均の月収入は、約347万円
厚生労働省「令和5年障害福祉サービス等経営実態調査」(令和4年度決算・介護サービス包括型)によると、共同生活援助の全国平均は以下のとおりです。
- 月の収入:約347万円
- 月のコスト:約316万円
- 月の利益(収支差):約32万円
- 収支差率:9.1%
- 人件費比率:61.0%
- 平均定員:15人
- サービス換算職員数:5.9人
(出典:厚生労働省「令和5年障害福祉サービス等経営実態調査結果」第17表)
この全国平均は定員15人・人員配置体制加算の取得前の数字であり、加算の充実や区分の高い入居者の受け入れによって収入をさらに伸ばしている事業所もあります。一方で、稼働率が低い事業所は収支が厳しくなります。開業時に想定される入居者の確保見込みと、その区分構成を具体的に見積もっておくことが重要です。
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