保育所の法定研修、何が義務で年何回か。

保育所の法定研修 義務と回数 アイキャッチ 福祉事業の開業と運営



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保育所や認定こども園では、「定期的に研修・訓練をしてください」と法令で定められています。

しかし、何が義務で、何が努力義務で、年に何回やればいいのかが整理されているドキュメントはあまり多くありません。運営指導のときに「記録がない」「回数が足りない」と指摘されて初めて気づくケースも少なくありません。

この記事では、保育所の法定研修・訓練を根拠条文と回数の一覧でまとめます。「うちはちゃんとできているか」を確認する材料として使ってください。

保育所の法定研修・訓練、一覧で整理する

「法定研修」と呼ばれるものの根拠は、主に児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和23年厚生省令第63号)です。この省令が、研修・訓練の種類と頻度の骨格を定めています。

以下の表が、保育所に関係する研修・訓練の一覧です。

テーマ 種別 最低回数 根拠
虐待防止 研修 年1回以上 第9条の2
安全計画の周知・訓練 研修・訓練 年1回以上 第6条の3
感染症の予防・まん延防止 研修・訓練 年2回以上 第10条第3項
BCP(業務継続計画) 研修・訓練 年1回以上 第6条の4
非常災害(避難・消火) 訓練 月1回以上 第6条第2項
食物アレルギー・アナフィラキシー 研修・訓練 年1回以上 保育所保育指針・アレルギーGL
プール・水遊びの安全管理 研修・訓練 年1回以上(シーズン前) 事故防止取組GL
不審者対応・安全確保 研修・訓練 年2回以上 自治体ガイドライン等
急変・救急対応(BLS) 訓練 年1回以上 事故防止GL等
ハラスメント防止 研修 年1回以上 男女雇用機会均等法第11条等
個人情報保護 研修 年1回以上 個人情報保護法
事故・苦情対応 研修 年1回以上 第25条

この中で特に確認が必要なのは、非常災害の訓練が月1回以上という点です。年に1〜2回で済ませている施設も見受けられますが、第6条第2項には「少なくとも毎月1回、避難及び消火に対する訓練を行わなければならない」と明記されています。

令和5年・6年に新しく加わった義務

保育所の法定研修は、近年続けて改正されています。特に影響が大きいのは次の2つです。

安全計画の策定と訓練(令和5年4月施行)

第6条の3の改正によって、保育所は安全計画を策定し、職員に周知し、年1回以上の訓練を実施する義務が生まれました。

安全計画には、①散歩等の園外活動中の安全、②水遊び・プールの安全、③園バスの安全、④災害時の安全の4つの観点を盛り込むことが求められています。「なんとなく安全に気をつけています」ではなく、具体的な計画書を作って、年1回以上の訓練とセットにして記録を残す必要があります。

BCP(業務継続計画)の策定と訓練(令和6年4月施行)

第6条の4の追加によって、感染症・災害が発生したときの業務継続計画(BCP)の策定と、年1回以上の訓練が義務になりました。

BCPは「施設が被災しても保育を続けるための計画」です。感染症BCPと災害BCPはそれぞれ内容が違いますが、一体の文書としてまとめることが多いです。令和6年4月以降に運営指導を受けた施設では、BCPの有無・訓練の記録がチェック対象になっています。

この2つは、令和4年以前に「うちは研修体制が整っている」と思っていた施設でも、対応が漏れているケースがあります。現状を一度確認してみてください。

「定期的に」は何回を意味するか

条文を読むと、「定期的に研修を行わなければならない」という書き方が多く出てきます。「定期的に」は何回を意味するのか、気になる方も多いと思います。

各テーマの解釈の目安は次のとおりです。

条文に回数が明記されているもの

非常災害の訓練は「少なくとも毎月1回(第6条第2項)」と明記されています。感染症の研修・訓練も「年2回以上(第10条第3項)」と明記されています。これらは回数が条文に入っているため、それを下回ると基準違反になります。

条文に回数が明記されていないもの

虐待防止・安全計画・BCPなどは「定期的に」という書き方です。各自治体の運営指導の手引きや厚生労働省の通知では、年1回以上を目安とするケースが多いです。ただし自治体によって解釈が違う場合もありますので、管轄の自治体に確認するのが確実です。

なお、「年1回以上」というのは最低ラインです。新人職員が多い時期や、事故・ヒヤリハットが続いたあとに臨時で実施する施設も増えています。

研修と訓練は違う

「研修と訓練ってどう違うの?」という質問をよく受けます。法令の文脈では、大まかに次のように分かれます。

  • 研修(けんしゅう):知識・技術を学ぶことが目的。講義・動画視聴・テストなどの形式が多い。
  • 訓練(くんれん):実際に体を動かして手順を確認することが目的。避難訓練・消火訓練・シミュレーションなどの形式が多い。

たとえば非常災害は「訓練(月1回以上)」であり、机上で資料を読むだけでは訓練として扱われません。一方、虐待防止は「研修」なので、講義形式でも記録があれば認められます。

ただし、BCP・感染症・アレルギーなどは「研修と訓練の両方」を実施することが望ましいとされているテーマです。条文が「研修及び訓練」と書いている場合は、両方の記録が必要になります。

委員会の設置義務もある

研修・訓練とあわせて、虐待防止委員会(第9条の2)の設置と定期開催も義務です。委員会は年4回以上(おおむね3か月に1回)を目安に開催し、議事録を残す必要があります。

運営指導では「委員会を開いた記録がない」「議事録に検討内容が書かれていない」という指摘も多いです。研修の記録と委員会の議事録は、セットで整備しておくことをおすすめします。

記録の残し方

研修・訓練をやっていても、記録が残っていないと「やっていない」と同じ扱いになります。最低限、次の情報を記録してください。

  • 実施日
  • テーマ・内容
  • 参加した職員の氏名(または署名)
  • 確認テストの結果(できれば)

記録の様式は法令で決まっていませんが、自治体が参考様式を配布している場合はそれを使うと運営指導のときにスムーズです。様式がない場合は、A4一枚に上記の項目が書いてあれば十分です。

なお、職員がスマートフォンで確認テストを受けて結果を保存する形式も使われ始めています。紙の台帳でもデジタルの記録でも、「どの職員がいつ受けたか」が確認できる状態にしておくことが大切です。

運営指導でよく指摘される3つの不備

保育所の研修・訓練に関して、運営指導でよく指摘される不備を整理しておきます。

① 非常災害の訓練が年1〜2回しかない

月1回以上の義務を、「年1〜2回でいいだろう」と誤解しているケースです。12か月分の訓練記録がないと、基準未達になります。避難経路を変えたり、年度によって地震・火災を交互に設定したりして、形式的にならない工夫が必要です。

② 令和5年・6年の新義務が未対応

安全計画(令和5年4月)・BCP(令和6年4月)はまだ対応できていない施設もあります。「計画書はあるが訓練をやっていない」「BCPは作ったが記録がない」というケースも指摘対象になります。

③ 一部の職員しか受けていない

「去年の新人研修でやった」「リーダーだけ受けた」という状態では、全職員が受けたことにはなりません。パートや非常勤も含めて全員が受けた記録が必要です。

まとめ

保育所の法定研修・訓練を整理すると、次のポイントが重要です。

  • 非常災害の訓練は月1回以上(年12回以上)が条文に明記されている
  • 感染症の研修・訓練は年2回以上が条文に明記されている
  • 安全計画(令和5年4月)・BCP(令和6年4月)は新しい義務で未対応の施設も多い
  • 研修と訓練は違う。条文が「研修及び訓練」と書いていれば両方の記録が必要
  • 記録がなければ「やっていない」と同じ扱いになる

年度の始めに12か月分の研修・訓練スケジュールを組んでおくと、漏れなく進められます。各テーマの資料・確認テスト・記録様式をまとめたツールも用意していますので、活用してください。

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虐待防止・安全計画・感染症・BCP・アレルギー・プール・不審者・急変など12テーマの研修資料・確認テスト・訓練記録が使えるツールです。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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