就労継続支援B型の虐待防止。職員による虐待1,267件のうちB型は7.8%、原因で多いのは知識・技術の不足(作業・工賃の場面の例と防ぎ方)

就労継続支援B型の虐待防止。職員による虐待1,267件のうちB型は7.8%、原因で多いのは知識・技術の不足(作業・工賃の場面の例と防ぎ方) 就労継続支援B型

令和6年度に、障害福祉の施設・事業所の職員による虐待と認められた1,267件のうち、就労継続支援B型は7.8%でした。国の虐待防止の手引きは、虐待の原因として、B型では「教育・知識・介護技術等に関する問題」が高くなっているとしています。B型の虐待防止で大切なのは、作業の場で起こりやすい行為を具体的に知ることと、研修をしたかどうかではなく、中身が職員に届いているかを確かめることです。

この記事では、国の調査結果報告書と手引きの原文から、B型の数字と原因を確かめ、手引きの例を、作業・工賃・休憩などB型の場面に当てはめて整理します。

職員による虐待と認められた1,267件のうち、B型は7.8%

国の調査結果報告書は、職員による虐待と認められた事業所の種類を、次のようにまとめています。「「共同生活援助」が31.6%と最も多く、次いで「障害者支援施設」が19.2%、「放課後等デイサービス」が12.4%、「生活介護」が11.3%、「就労継続支援B型」が7.8%の順であった。」(出典:厚生労働省「令和6年度『障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律』に基づく対応状況等に関する調査結果報告書」(令和7年12月) p.26) 割合のもとになる件数は、「構成割合は、障害者福祉施設従事者等による虐待の事実が認められた事例件数1,267件に対するもの。」とされています。

この割合は件数の内訳で、サービスごとの事業所の数や利用者の数の違いは考えに入っていません。B型の事業所は数が多いため、この数字だけで、B型が起こりやすいとも起こりにくいとも言えません。それでも、B型でも1年に一定の数の虐待が認められていることは、研修の前提として知っておく数字です。

施設・事業所全体での虐待の種類は、次のとおりです。「「身体的虐待」が51.6%と最も多く、次いで「心理的虐待」が47.3%、「性的虐待」が11.1%であった。」(出典:厚生労働省「令和6年度『障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律』に基づく対応状況等に関する調査結果報告書」(令和7年12月) p.27) 1件に複数の種類が含まれることがあるため、合計は100%になりません。B型だけの種類の内訳は、この記事で確かめた範囲では、報告書に見当たりませんでした。

B型で高い原因は、職員の知識や技術の不足

手引きは、虐待が起きた原因をサービスの種類ごとに見ています。「この要因は、サービス類型によって異なっており、生活介護や就労継続支援B型、放課後等デイサービスでは「教育・知識・介護技術等に関する問題」、障害者支援施設では、「職員のストレスや感情コントロールの問題」が高くなっており」(出典:厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(令和6年7月) p.33)

報告書でも、施設・事業所全体について市区町村などの職員が判断した原因では、同じ原因が最も多くなっています。「「教育・知識・介護技術等に関する問題」が67.5%で最も多く、次いで「倫理観や理念の欠如」が60.2%、「職員のストレスや感情コントロールの問題」が58.7%であった。」(出典:厚生労働省「令和6年度『障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律』に基づく対応状況等に関する調査結果報告書」(令和7年12月) p.30)

知識の不足は、悪意がないまま虐待に当たる行為をしてしまうことにつながりやすいと考えられます。たとえば、作業の手順を覚えてもらうつもりで強い口調になったり、ミスをくり返す人を皆の前で責めたりすることは、手引きが挙げる心理的虐待の例(下の表)に近づくことがあります。手引きは、「しつけや指導と称して行われる上記の行為も虐待です。」(出典:厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(令和6年7月) p.51)としています。指導のつもりかどうかは関係がない、という点を、職員全員で確かめておく必要があります。

研修をしていても、虐待は起きている

報告書は、虐待が認められた施設・事業所で、どんな取り組みがされていたかも調べています。「虐待が認められた施設等に事実確認調査を行った際に確認した虐待防止に関する取組は、「職員に対する虐待防止に関する研修の実施」割合が69.4%、「虐待防止委員会の開催、従業者への検討結果の周知」割合が59.7%、「管理者の虐待防止に関する研修受講」割合が57.1%、「通報義務の履行」割合が51.5%であった。」(出典:厚生労働省「令和6年度『障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律』に基づく対応状況等に関する調査結果報告書」(令和7年12月) p.30)

虐待が認められた施設等のうち約7割で、職員への研修は実施されていました。研修を「やった」ことと、職員が「分かって行動できる」ことは別です。原因の多くが知識や技術の不足なら、研修のあとに理解を確かめ、分かっていない点をもう一度扱うことが欠かせません。確認テストの結果を虐待防止委員会で見て、まちがいの多かった問題を次の研修で扱う、という流れが一つの方法です。

作業の場で起こりやすい例は、手引きの表-1に並んでいる

手引きの表-1は、施設・事業所の職員による虐待の例を、種類ごとに挙げています。その中から、B型の作業・工賃・休憩の場面で起こりえるものを選び、場面ごとに並べました。例の文と種類は、表-1の原文と見出しのとおりです。

B型の場面 手引きの例(原文) 種類
作業の指示・ミスへの対応 「「意味もなく呼ばないで」「どうしてこんなことができないの」などと言う。」 心理的虐待
作業の指示・ミスへの対応 「怒鳴る、罵る。」 心理的虐待
工賃・お金 「「給料もらえないですよ」「好きなもの買えなくなりますよ」などと威圧的な態度を取る。」 心理的虐待
工賃・お金 「年金や賃金を管理して渡さない。」 経済的虐待
工賃・お金 「立場を利用して、「お金を貸してほしい」と頼み、借りる。」 経済的虐待
休憩・楽しみ 「「これができたら外出させてあげる」「買いたいならこれをしてからにしなさい」などの交換条件を提示する。」 心理的虐待
作業の割り振り 「その利用者以外の利用者だけを集めて物事を決める、行事を行う。」 心理的虐待
体調・作業の環境 「健康状態の悪化をきたすような環境(暑すぎる、寒すぎる等)に長時間置かせる。」 放棄・放置
体調・作業の環境 「医療が必要な状況にも関わらず、受診させない。あるいは救急対応を行わない。」 放棄・放置
呼び方 「子ども扱いするような呼称で呼ぶ。」 心理的虐待

出典:厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(令和6年7月)(表-1 障害者福祉施設従事者等による障害者虐待類型(例))。場面の分け方は当方によるものです。

工賃が関わる例は、B型で特に関わりが深いものです。作業を急がせたいとき、「これができないと工賃が減るよ」と言ってしまうことは、どの事業所でも起こりえます。工賃は利用者の権利で、指導の道具にしないことを確かめておきます。工賃そのものの決まり(平均3,000円以上、給付費から払わない、目標と実績の通知)は、就労継続支援B型の工賃のルールの記事にまとめています。

休憩を作業の条件にすることにも注意が必要です。「これが終わったら休憩」という声かけは、段取りの説明のつもりでも、本人が休みたいときに休めない形になれば、手引きの交換条件の例に近づきます。休憩の取り方は、本人の体調と希望を聞いて決めます。

二人きりの場面と、見えにくい場所を減らす

手引きは、性的虐待を防ぐための取り組みとして、次を挙げています。「勤務シフトや業務分担の工夫などにより職員と利用者が二人きりになる場面や死角になる場面場所を極力作らないこと」(出典:厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(令和6年7月) p.27) B型では、倉庫や作業場の奥での作業、送迎の車内、施設の外での作業などで、職員と利用者が二人きりになりやすくなります。作業の割り振りや送迎の組み方を決めるときに、二人きりの時間を減らせないかを確かめます。

トイレや着替えの場面も同じです。手引きは、「更衣やトイレ等の場面をのぞいたり、映像や画像を撮影する。」(出典:厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(令和6年7月) p.12)を性的虐待の例に挙げています。作業着に着替える場所が、ほかの人から見えないようになっているかも、あわせて確かめます。

落ち着かない人を部屋に閉じ込めることは、身体拘束であり、虐待にもなりうる

作業の場で、大きな声を出したり物を投げたりする人がいるとき、ほかの利用者を守ろうとして、押さえたり別室に閉じ込めたりしてしまうことがあります。手引きの表-1は、正当な理由のない身体拘束を、身体的虐待の例に挙げています。その中には、「職員が自分の身体で利用者を押さえつけて行動を制限する」と、「自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する」が入っています。

やむを得ず身体拘束を行う場合には、3つの要件をすべて満たし、組織として判断します。「やむ得ず身体拘束を行う場合には、以下の3要件を全て満たす必要があり、その場合であっても、身体拘束を行う判断は組織的にかつ慎重に行います。」(出典:厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(令和6年7月) p.39) 3つの要件は、切迫性・非代替性・一時性です。その場の職員の判断で閉じ込めることは、この手続きを満たしません。B型でも、身体拘束の記録・委員会・指針・研修のどれかが欠けていると、身体拘束廃止未実施減算(所定単位数の1%)の対象になります。

落ち着かなくなる前のサイン(音・人の多さ・作業の変更・体調など)を職員で共有し、静かな場所を本人が自分で選んで使えるようにしておくなど、閉じ込める以外の方法を先に決めておくことが大切です。

疑いを持った時点で、市町村に通報する義務がある

虐待かどうかがはっきりしなくても、通報の義務があります。「虐待を受けたのではないかと疑いを持った場合は、事実が確認できなくても通報する義務があることを意味しています。」(出典:厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(令和6年7月) p.15) 上司や虐待防止の担当者に報告して、通報してもらう形でもかまいませんが、報告しても通報されないときは、自分で通報します。「上司や管理責任者に報告したにもかかわらず、通報がされなかったときにはうやむやにせず自ら通報すべきです」(出典:厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(令和6年7月) p.23)

通報した職員は、法律で守られています(うその通報などは除きます)。「通報等をしたことを理由に、解雇その他不利益な取扱いを受けないこと(第16条第4項)。」(出典:厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(令和6年7月) p.32) 手引きは、正直な通報が関わる人すべてを救うと書いています。「虐待を正直に通報することは、虐待を受けた障害者や家族のみならず、虐待をした職員、虐待に気づいた職員、管理者・設置者など、全ての人を救うことにつながるのです。」(出典:厚生労働省・こども家庭庁「障害者福祉施設等における障害者虐待の防止と対応の手引き」(令和6年7月) p.16)

事業所がすることは、委員会・研修・担当者の3つ

基準の第40条の2(居宅介護の条文で、B型には第202条で準用)は、虐待を防ぐための措置として、委員会・研修・担当者の3つを求めています。「当該指定居宅介護事業所において、従業者に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること。」(出典:障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号・e-Gov法令検索)(第40条の2第2号))「前二号に掲げる措置を適切に実施するための担当者を置くこと。」(出典:障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号・e-Gov法令検索)(第40条の2第3号))

この3つのどれかが欠けていると、報酬が減らされます。「次の基準を満たしていない場合に、所定単位数の1%を減算する。」(出典:厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」(令和6年2月6日) p.12) 回数は、国の解釈通知で、研修が年1回以上(新しく採用したときは必ず)、委員会が少なくとも1年に1回です。B型の回数の根拠は、解釈通知の居宅介護の項を参照して読む形になっています。たどり方と、ほかの研修の回数は、就労継続支援B型の研修・委員会・訓練の回数の記事にまとめています。

研修で話し合うと効果がある問いは、場面ごとに作れる

手引きの例を読むだけでなく、自分の事業所で起こりえるかを話し合うと、知識が行動につながりやすくなります。場面ごとの問いの例です。

  • 作業でミスがあったとき、どんな言い方をしていますか。皆の前で注意していませんか。
  • 工賃を理由に、作業を急がせたり、脅すような言い方をしていませんか。工賃の支払いを、本人が確かめられる形にしていますか。
  • 「これが終わったら休憩」のように、休憩や楽しみを作業の条件にしていませんか。
  • 作業場の暑さ・寒さを確かめていますか。体調の悪そうな人を、作業を優先して休ませずにいませんか。
  • 大人の利用者を「ちゃん」づけやあだ名で呼んでいませんか。
  • 倉庫、送迎の車内、施設の外の作業で、職員と利用者が二人きりになる時間はありますか。
  • 「虐待かもしれない」と思ったとき、まず誰に報告し、市町村のどこに通報するか、全員が言えますか。

当方の法定研修・訓練キット(就労継続支援B型版)では、虐待防止の研修資料に、この記事の場面(作業の指示・工賃・交換条件・体調と環境・食事と服薬・トイレと着替え・写真とスマートフォン)を選んで入れられます。事業所の報告先・通報先・決まりごとも資料に入り、確認テストの結果から、まちがいの多かった問題を虐待防止委員会の議題案にします。虐待防止のテーマは、無料版で、記録や印刷まですべて使えます。

この記事は、国の調査結果報告書(令和6年度)、国の虐待防止の手引き(令和6年7月)、基準の条文、令和6年度報酬改定の概要の原文を確認して書いています(確認日:2026年9月27日)。場面の分け方と問いの例は、当方が手引きの例をもとに作ったものです。作成:fufumumu_design

この記事の出典

福祉事業の開業・運営のツールと記事の一覧:訪問介護・訪問看護・障害者グループホーム・放課後等デイサービス・児童発達支援・就労継続支援B型の、収支シミュレーター・経営診断・法定研修キットとサービス別の記事(無料で試せます)

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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