障害者グループホームの経営は成り立つか。大変なのか。

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全国平均の収支差率は9.1%

厚生労働省「令和5年障害福祉サービス等経営実態調査」(令和4年度決算・介護サービス包括型)によると、共同生活援助(グループホーム)の全国平均の収支差率は9.1%です。月の収入が約347万円で、月の利益が約32万円という水準です。

(出典:厚生労働省「令和5年障害福祉サービス等経営実態調査結果」第17表)

介護保険の訪問介護や通所介護(収支差率が全国平均で1〜4%程度の事業所が多い)と比べると、グループホームの収益性は比較的安定していると言えます。ただし「平均9.1%」は、加算を積み上げ、稼働率を維持している事業所を含めた数字です。

経営が厳しくなる理由は、主に3つある

1. 人件費が収入の6割を占める

全国平均の人件費比率は61.0%です(令和5年調査)。世話人・生活支援員・夜間支援従事者(日中サービス支援型の場合は必須)の人件費が、経営の重さを決めます。特に夜間に職員を配置するコストは避けられないため、小規模な事業所ほど1人あたりの人件費負担が重くなります。

2. 稼働率が収入の量を決める

グループホームの収入は「入居者数×単価×日数」で計算されます。定員15人の事業所で3人空きがあれば、収入は約2割減ります。定員が小さい事業所では、1〜2人の退居が収支を一気に悪化させることがあります。

特に開業直後は入居者が少ない時期が続くため、開業後6〜12か月は収支が赤字になるケースが多く、この期間を乗り越えるための運転資金が必要です。

3. 加算を取らないと、収入が大幅に減る

処遇改善加算は「所定単位数の12.1〜16.9%」に相当します。これを取得しない場合、収入が約1〜2割少なくなります。夜間支援等体制加算・人員配置体制加算も同様で、これらを取得しているかどうかで月の収入に数十万円の差が出ます。

収益を安定させる3つのポイント

1. 処遇改善加算を最大限取得する

処遇改善加算の区分は、「職場環境等要件」(働きやすい職場づくりの取り組み)の数によって決まります。上位の加算区分(Ⅰイ・Ⅰロ)を取得できれば、収入が基本報酬の16〜17%分増えます。

取得に必要な書類の整備や要件確認を事前に行い、開業初年度から上位区分を狙うことが収支改善の第一歩です。

2. 稼働率を早期に引き上げる

開業前から相談支援専門員や基幹相談支援センターとのつながりを作り、入居候補者の見込みを確保しておくことが重要です。紹介ルートが整っている事業所は、開業後の稼働率の上がり方が早い傾向があります。

3. 受け入れる入居者の区分を意識する

同じ定員でも、入居者の障害支援区分が高いほど基本報酬が増えます。区分6(600単位)と区分2(188単位)では1日1人あたりで3倍以上の差があります。ただし、区分が高いほど支援の手間も増えることから、人員体制とのバランスを考慮する必要があります。

日中サービス支援型は、さらに大変な面がある

日中サービス支援型は基本報酬が高い(区分6で997単位)一方で、夜間支援従事者の配置が法令上義務付けられています。夜間支援従事者を毎日配置するためのコストは、日中サービス支援型特有の固定費です。

また、夜勤職員加配加算(149単位/日・1人あたり)を算定するには、必須の夜間支援従事者1名に加えてさらに1名配置する必要があります。小規模な事業所では採用面での難しさもあります。

令和8年6月以降の新規指定は、約2.8%の報酬引き下げがある

令和8年6月1日以降に新たに指定を受ける事業所は、基本報酬に972/1000(約97.2%)を乗じた値が適用されます。月の収入で見ると、定員15人の場合、5〜10万円程度の減収となります。

この引き下げは令和9年度の報酬改定まで継続する見込みです。開業を検討する際は、収支計画にこの引き下げ分を反映した上で、損益分岐点(稼働率)を計算しておく必要があります。

経営が成り立つかは、稼働率と加算取得で決まる

グループホームの経営は、適切な稼働率(入居者数の充足)と加算の取得ができれば、全国平均で収支差率9.1%の利益が出る事業です。一方で、稼働率が低かったり、加算を取得できていなかったりすると、収支はすぐに苦しくなります。

開業前に「①定員規模はいくらが適切か」「②どの加算を取得できるか」「③開業後の稼働率を何か月でどこまで引き上げられるか」を具体的に試算しておくことが、経営判断の土台になります。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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