▶ 生活介護 法定研修・訓練キット
生活介護の事業所では、利用者の多くが重度の障害を持ち、自力での避難が難しい方が含まれます。
そのため、非常災害への備えは他のサービスより慎重な計画が必要です。
この記事では、生活介護における非常災害訓練の法的義務と実施の要点を整理します。
根拠条文は省令第93条で準用される第38条です
生活介護の非常災害訓練については、指定障害福祉サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第93条の準用規定により、第38条が生活介護に適用されます(「第三十五条の二から第四十一条まで」を準用)。
第38条の規定内容(準用)
第38条には次の義務が定められています。
- 消火設備その他の非常災害に際して必要な設備を設けるとともに、非常災害に関する具体的な計画を立て、非常災害時の関係機関への通報及び連絡体制を整備し、それらを定期的に従業者に周知しなければならない
- 定期的に避難、救出その他必要な訓練を行わなければならない
「定期的」の回数は条文に直接は書かれていませんが、厚生労働省の解釈通知では年2回以上とされています。
年2回以上の訓練が義務です
解釈通知(平成18年12月6日 障発第1206001号)では、定期的な訓練について少なくとも年2回とされています。
年2回の訓練として、一般的には次のように組み合わせる事業所が多いです。
- 火災避難訓練(通報・初期消火・避難誘導)
- 地震・水害等の訓練(または夜間を想定した訓練)
BCP(業務継続計画)の策定が義務化された現在は、BCP訓練と非常災害訓練を組み合わせて実施する事業所が増えています。ただし、BCPはBCP、非常災害訓練は非常災害訓練として、それぞれ記録を残すことが必要です。
生活介護の避難訓練で押さえるべき特有の課題
生活介護の利用者は、障害支援区分3以上(50名以上の事業所は区分4以上)の方が対象です。
避難訓練では次の点を特に確認します。
車いす使用者の避難経路
生活介護では、車いすを使う利用者が多くいます。避難訓練では、次の点を実際に確認することが大切です。
- 全ての避難経路が車いすで通れる幅があるか
- 段差・スロープ・ドアの開閉に時間はかからないか
- 避難先(集合場所)まで車いすで移動できるか
- 介助者が1人で車いすを操作して避難できるか、2人必要な利用者がいるか
医療的ケアが必要な利用者への対応
たんの吸引・経管栄養など医療的ケアが必要な方がいる場合は、次の準備が必要です。
- 避難時に使用する機器の電源をどうするか(ポータブル電源の確認)
- 誰が医療的ケアを担当するか(担当職員の確認)
- 避難先でケアを続けられるか
コミュニケーションに配慮が必要な利用者への伝え方
知的障害・精神障害のある利用者は、突然の非常時に混乱することがあります。
- 訓練の前に、分かりやすい言葉で「訓練があること」を伝える
- 訓練当日のスケジュールをあらかじめ知らせる
- 訓練中に混乱した場合の対応を職員間で共有しておく
訓練の計画に盛り込む内容
訓練の計画を立てるときは、次の項目を整理します。
- 日時・場所:実施日と場所(事業所内・近くの集合場所など)
- 想定する災害の種類:火災・地震・水害など
- 訓練の内容:通報・初期消火・避難誘導・利用者の移動方法など
- 役割分担:誰が通報し、誰が誘導し、誰が利用者の搬送を担当するか
- 避難先(集合場所):どこに避難するか、避難先の施設との事前連絡の有無
- 評価・振り返りの方法:訓練後の反省点の共有
夜間・早朝を想定した訓練の必要性
生活介護は日中活動のサービスですが、通所前・通所後の短時間に管理者や職員が少ない時間帯があります。
特にサービス提供時間の始まりや終わりに火災が起きた場合を想定した訓練も、年2回の中に含めておくと安心です。
「昼間の職員が全員いる状態でしか訓練したことがない」という事業所では、職員が少ない時間帯でどうするかを訓練で確認することが重要です。
記録に残すべき項目
訓練を実施したら、次の項目を記録します。
- 実施日・実施場所
- 想定した災害の種類
- 訓練の内容(通報・初期消火・避難誘導など)
- 参加人数(職員数・利用者数)
- 訓練結果の評価・気づき点
- 次回に向けた改善事項
記録は運営指導で確認されます。「訓練をやった」だけでなく、「何を学んで、どう改善するか」まで書いておくことで、実効性のある訓練として評価されやすくなります。
消防や自治体との連携
条文には「非常災害時の関係機関への通報及び連絡体制を整備すること」と定められています。
具体的には、次の連携先を確認しておきます。
- 消防署(119番への通報・避難誘導時の消防による支援)
- 市区町村(障害福祉担当・地域の避難支援の仕組み)
- 近隣の指定避難所(利用者を受け入れてもらえるかの事前確認)
- 協力事業所・医療機関(医療的ケアが必要な利用者の受け入れ先)
消防署に事前に施設を見てもらい、「消防訓練立会い」をお願いすると、より実効性のある訓練ができます。立会いの結果として避難計画の改善点を指摘してもらえることもあります。
BCPとの違いと連携
BCP(業務継続計画)と非常災害訓練は、似ているようで目的が異なります。
- 非常災害訓練:災害が起きたときに利用者と職員の安全を確保するための訓練
- BCP:災害・感染症等で事業が停止・縮小した場合に、事業を継続または速やかに再開するための計画
ただし、BCPの訓練に非常災害への対応を組み込むことは可能です。
「今日の訓練はBCPの訓練と非常災害訓練を兼ねています」と明示し、それぞれの記録を残せばよいでしょう。
まとめ
- 生活介護の非常災害訓練は省令第93条で準用される第38条が根拠
- 定期的(年2回以上)の訓練が義務
- 車いす使用者・医療的ケアが必要な利用者への対応を実際に確認する
- 通報・初期消火・避難誘導・利用者搬送の役割分担を明確にする
- 訓練の記録には実施内容・参加人数・評価・改善事項を含める
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