短期入所の開業は、職員の配置の形で採算が決まる。24時間を短期入所の職員だけで回すと、定員6人・9割の受け入れでも赤字の試算

短期入所の開業は、職員の配置の形で採算が決まる。24時間を短期入所の職員だけで回すと、定員6人・9割の受け入れでも赤字の試算 短期入所

障害福祉サービスの短期入所(ショートステイ)は、全国の平均でも収支差率(収入に対する利益の割合)が約2.3%と低く、調査の対象の7割あまりを占める社会福祉法人の平均は赤字です(令和6年度決算)。当方の試算では、単独型事業所で、夜間を含めた24時間を短期入所の職員だけで回すと、定員6人のベッドが9割埋まっても、人件費が収入とほぼ同じになり赤字でした。一方、生活介護事業所やグループホームなどの中で行い、本体の職員とあわせて配置できる時間があると、採算は大きく変わります。短期入所の開業の採算は、ベッドの数より先に、職員の配置の形で決まります。

この記事では、国の調査の数字、人員の基準の原文、当方の収支シミュレーターの試算をもとに、なぜそうなるのかを数字で順に説明します。試算の前提も、すべて書いておきます。

全国の短期入所の平均は、収支差率2.3%で、社会福祉法人は赤字

国の令和7年経営概況調査(令和6年度決算)の短期入所の数字を、当方で読み取り、率を計算すると次のとおりです。

区分 事業所数 1年間の収入 収支差 収支差率 平均の定員
全体 337 約880万円 約20万円 約2.3% 7人
社会福祉法人(社協を含む) 247 約836万円 約−13万円 約−1.6% 7人
NPO法人 26 約502万円 約65万円 約12.9% 5人
その他の法人 56 約1,179万円 約122万円 約10.4% 8人

出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」の短期入所の表(令和6年度決算)を当方が読み取ったものです。収支差率は、表の収支差を収入で割った当方の計算です。医療法人(8事業所)は数が少ないため省きました。

全体の収支差率は、同じ調査の前の年度(令和5年度決算)の5.4%から、2.3%に下がっています。事業所ごとの収支差率を並べた真ん中の値(中央値)も2.8%です。

ただし、この平均には、障害者支援施設などと一体で運営する併設事業所や、施設の空いている居室を使う空床利用型事業所が多く含まれます。1年間の収入の平均が約880万円と小さい理由の1つと考えられます。これから単独で開業する事業所の目安としては、そのまま使えません。それでも、「短期入所で大きな利益を出すのは難しい」という傾向は、この数字から読み取れます。

事業所の数は、1年で約6.9%増えている

国保連のデータでは、短期入所の事業所は令和7年1〜3月時点で6,565か所です。1年前の6,142か所から約6.9%増え、令和3年4〜6月の4,688か所と比べると約1.4倍です。1事業所あたりの月の費用額(国保連の総費用額を事業所数で割った額で、利用者負担を含みます)は約74万円です。

出典:厚生労働省「障害福祉サービス等の最近の動向について」(社会保障審議会障害者部会 第149回 参考資料8・令和7年9月25日)。数字は各3か月の平均値です。

短期入所は、家族が病気になったときや休息が必要なときなどに使われるサービスで、事業所の数は増え続けています。一方で、1事業所あたりの費用額は月74万円ほどです。

生活支援員は、その日の利用者6人ごとに1人、受け入れている間ずっと必要

単独型事業所(併設事業所・空床利用型事業所以外の事業所)の生活支援員について、省令は次のように定めています。「当該日の利用者の数が六以下一以上」「当該日の利用者の数が七以上一に当該日の利用者の数が六を超えて六又はその端数を増すごとに一を加えて得た数以上」(出典:障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第115条第3項)

短期入所は泊まりのサービスなので、利用者がいる間は、夜間も含めてこの人数が要ります。利用者が6人以下なら1人、7人から12人なら2人です。サービス管理責任者の配置の基準はありませんが、専ら管理の職務に当たる管理者(管理に支障がなければ、ほかの職務と兼ねられます)を置く必要があります。

24時間1人を置くと、常勤換算で約4.5人分の勤務になる

1人を24時間、30日置くと、24時間×30日=720時間の勤務です。常勤1人の月の勤務を160時間とすると、720÷160=4.5人分にあたります。生活支援員の時給を1,300円とすると、720時間で約93.6万円です。これに夜勤の手当、法定福利費、管理者の給与、処遇改善加算による賃金の上乗せが加わります。

夜勤の手当を1回5,000円とすると、30日で15万円です。時給の分と合わせた約108.6万円に、法定福利費(15.7%とします)を加えると約126万円になり、管理者の月給33万円(法定福利費を加えて約38万円)を足すと、管理者と、24時間1人の生活支援員だけで月164万円ほどかかります。

一方、定員6人の単独型事業所が受け入れられる日数には上限があります。定員6人×30日=180日のうち、予約の空きや急な取り消しなどを考えて、9割の162日を受け入れるとします。1日あたりの報酬が1万1,000円前後なら、月の報酬は170万円台です。ここから、職員の勤務時間が収入に対してどれだけ重いかが見えてきます。

定員6人・9割の受け入れでも、人件費が収入とほぼ同じになった

当方の収支シミュレーターの初期値で、次の仮の計画を試算しました。数字はすべて例で、推奨する値ではありません。

  • 単独型事業所・定員6人・地域区分は「その他の地域」・開設は令和9年4月・開設準備6か月
  • 利用者は障害者のみ。障害支援区分の構成は、区分6が15%・区分5が20%・区分4が30%・区分3が25%・区分1と2が10%。利用日のうち30%は日中活動に出かける日
  • 契約者1人あたり月6日の利用。受け入れの上限は定員×30日の90%
  • 処遇改善加算(Ⅲ)。短期利用加算は、年30日の上限から利用日の約42%で計算
  • 管理者の月給33万円、生活支援員の時給1,300円、夜勤1回の手当5,000円、基準に加えて0.5人(常勤換算)、法定福利費15.7%
  • 食費・光熱水費などの実費を1日1,500円受け取り、食材費などに1日1,000円かかる。家賃25万円など毎月の経費は計50.2万円
受け入れが上限(月162日)の月 金額
報酬(介護給付費と利用者負担) 約174万円
利用者から受け取る実費 約24万円
収入の合計 約199万円
人件費(生活支援員は常勤換算5.0人・夜勤手当・法定福利費・処遇改善を含む) 約201万円
家賃・経費・食材費など 約66万円
営業利益 約−68万円

当方の「短期入所 開業向け収支シミュレーター」の初期値で、開設1年後の月を計算(2026年9月27日)。

ベッドが9割埋まった月でも、人件費だけで収入の合計を上回ります。この計画では、満床(100%)まで受け入れても黒字になりませんでした。開設2年目の1年間では、収入約2,383万円に対して人件費率は約101%、収支差率は約−34%です。資金も、開設3か月目の2027年6月に手元の資金がマイナスになりました。

理由は、泊まりのために24時間の勤務が必要なのに対し、定員6人では、1人の職員が受け入れる人数が最大でも6人にとどまるからです。単独で24時間を回すと、この人件費の重さが、そのまま収支に出ます。

ベッドを9割埋めるには、定員の4倍を超える契約者が要る

短期入所の利用者は、毎日泊まるわけではありません。定員6人のベッドを9割(月162日)埋めるには、1人が月に6日使う場合、162÷6=27人の契約者が必要です。1人が月4日なら約41人、月10日でも約16人です。

この試算では、新しい契約者を開設後1〜6か月は月3人、7〜12か月は月2人と置き、毎月2%の人が利用をやめるとしました。それでも、上限の162日に届くのは開設2年目に入ってからでした。開業前に、相談支援事業所や日中活動の事業所、特別支援学校などとのつながりをつくり、利用を希望する人を集める道筋を考えておく必要があります。

7人目を受け入れると、職員が2人必要になり、収支はさらに悪くなる

基準では、利用者が6人を超えると、生活支援員が2人必要になります。同じ計画で定員を7人にし、新しい契約者も増やして(開設後1〜6か月は月4人)、1日平均の利用者が6人を超える月がある計画にすると、その月は職員を2人置く計算になります。この試算では、2年目の人件費率は約143%まで上がりました。

定員は、多ければ収入が増えるとは限りません。6人の倍数(6人・12人)のところで職員の人数が変わるため、定員と、1日に受け入れる人数の見込みを、職員の人数と合わせて決めることが大切です。

本体と一緒に職員を配置できる形では、採算が大きく変わる

単独型事業所のうち、生活介護事業所・自立訓練事業所・就労継続支援事業所・グループホーム・障害児通所支援事業所などで行うものは、本体のサービスを提供している時間は、本体の利用者と短期入所の利用者の合計で、本体の職員として必要な数を置けば足ります(同基準 第115条第3項第1号)。同じ計画で、この形を試算すると次のようになりました。

職員の配置の形 2年目の人件費率 2年目の収支差率 損益分岐の稼働率
短期入所の職員だけで24時間 約101% 約−34% 満床でも赤字
本体と日中8時間一緒(本体で0.5人増やす) 約89% 約−22% 満床でも赤字
本体と24時間一緒(本体で1人増やす) 約50% 約17% 72%

当方の収支シミュレーターで、配置の形と「本体で増やす職員」だけを変えた試算です。家賃などの経費は同じ額のままにしています。本体と建物を共用する場合は、家賃などの経費も少なくなることがあります。

日中だけ本体と一緒に配置できても、夜間は短期入所の職員を置く必要があるため、採算はあまり改善しません。夜間も含めて本体の職員とあわせて配置できる形(たとえば、夜間の支援の体制がある事業所で行う場合)なら、ベッドの72%が埋まれば黒字になる試算でした。ただし、本体の職員の数は、短期入所の利用者を合わせて計算するため、本体で職員を増やす必要があるかは、本体の基準で確かめてください。

重い区分の人を多く受け入れると、1日の単価は上がるが、24時間を単独で回す形では足りない

同じ計画で、障害支援区分の構成を、区分6が40%・区分5が30%・区分4が20%・区分3が10%に変えて試算しました。区分5・6の割合が70%になるため、重度障害児・障害者対応支援加算(1日30単位)もつきます。

  • 利用1日あたりの基本報酬の平均:約591単位から約701単位へ上がりました。
  • 短期入所の職員だけで24時間を回す形:2年目の収支差率は約−34%から約−20%に改善しましたが、赤字のままでした。
  • 本体と24時間一緒に配置できる形:2年目の収支差率は約25%、損益分岐の稼働率は63%でした。

重い区分の人を受け入れると、報酬は上がります。ただし、実際には、介助の手間に合わせて職員を厚くする必要が出ることもあります。この試算は職員の数を変えていないため、区分を重くした効果は、実際より大きく出ている可能性があります。

必要な資金は、配置の形によって2倍以上違う

同じ計画の「必要な資金の目安」(初期費用と、赤字の累計がいちばん大きくなるまでの額。借入の返済は含みません)は、次のように大きく違いました。

  • 短期入所の職員だけで24時間を回す形:約4,578万円(3年間のうちに赤字の累計が膨らみ続けるため)
  • 本体と24時間一緒に配置できる形(本体で1人増やす):約1,714万円

初期費用(法人設立・敷金・内装・家具と寝具・備品など)は、どちらも約575万円です。差のほとんどは、開設してから毎月出ていく人件費の違いです。融資を受けて開業する場合は、開設直後の数か月だけでなく、職員の配置の形のまま3年間続けた場合の資金の動きを示せるようにしておくと、計画の説得力が増します。

採算を見るときは、5つの数字を分けて置く

短期入所の収入と費用は、次の5つで大きく変わります。計画を立てるときは、1つの「平均単価」にまとめず、分けて置くことをおすすめします。

  1. 契約者1人あたりの月の利用日数:入所日と退所日の両方を数えます(1泊2日=2日)。
  2. 日中活動に出かける日の割合:出かける日は、区分4で1日648単位から318単位へ、半分以下になります。
  3. 短期利用加算がつく日の割合:1年に通算30日までです。月6日(年72日)使う人なら、約42%の日だけです。
  4. 区分5・6の利用者の割合:区分5・6(障害児は障害児支援区分3)の利用者が50%以上なら、重度障害児・障害者対応支援加算(1日30単位)がつきます。基本報酬も区分が重いほど高くなります。
  5. 夜間を誰が見るか:短期入所だけの職員か、本体の職員とあわせて配置できるかで、人件費が大きく変わります。

報酬の決まり(単位数・日数の数え方・加算)は、「短期入所の報酬の仕組み。日数の数え方と単独型加算」にまとめています。

開業前に確かめておきたいこと

  • 地域の需要:市町村の障害福祉の窓口や相談支援事業所で、短期入所の利用の希望と、今ある事業所の空き状況を聞きます。市町村の地域生活支援拠点等の整備の方針も、あわせて確かめておきます。
  • 設備:単独型事業所の居室は、1室4人以下、利用者1人あたり8平方メートル以上です(同基準 第117条)。食堂・浴室・洗面所・便所も必要です。
  • 夜間の体制:採用の見通しと、本体と一緒に配置できる時間があるかを、先に決めます。
  • 実費の設定:食費・光熱水費などは利用者から受け取れますが、額を決めて利用者に説明し、同意を得る必要があります(同基準 第120条)。
  • 制度の変更:令和9年4月に報酬改定が見込まれています。食事提供体制加算(1日48単位)は、告示で令和9年3月31日までとされています。

自分の計画で、職員の配置の形ごとの採算を比べる

この記事の試算は、当方の「短期入所 開業向け収支シミュレーター」で計算しました。定員、契約者の増え方、1人あたりの利用日数、障害者と障害児の割合、区分の構成、職員の配置の形、家賃、借入などを入れると、開設後3年の収支と資金繰り、必要な資金の目安、損益分岐の稼働率を示します。短期入所の職員だけで24時間を回して赤字になる計画には、本体と一緒に配置する形と比べるよう案内も出します。年ごとの収支と主な指標は無料で使え、月ごとの資金繰りの表・グラフ・事業計画書の印刷は有料版(買い切り9,800円)です。入力は、お使いの端末の中にだけ保存されます。

この記事は、国の経営概況調査・最近の動向の資料、省令第171号、告示第523号の原文を確認して書いています(確認日:2026年9月27日)。試算は記事中に書いた仮の条件によるもので、実際の収入や採算を約束するものではありません。作成:fufumumu_design

この記事の出典

福祉事業の開業・運営のツールと記事の一覧:訪問介護・訪問看護・障害者グループホーム・放課後等デイサービス・児童発達支援・生活介護・就労移行支援・就労継続支援B型・短期入所の、収支シミュレーター・経営診断・法定研修キットとサービス別の記事(無料で試せます)

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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