障害福祉サービスの短期入所(ショートステイ)は、事業所の「形」によって、基準省令の条文が変わり、取れる加算も変わります。新規に開業を考えている場合、最初に決める必要があるのが「どの形で行うか」です。単独型・空床利用型・医療型など複数の形があり、それぞれの要件と報酬上の違いを知っておくと、事業計画を立てるときの前提がはっきりします。
この記事では、省令の原文にもとづいて各形の定義と要件を整理し、報酬の計算に影響する「単独型加算」の仕組みを説明します。新規開業を考えている方向けに、どの形が対象になるかも末尾でまとめます。
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短期入所の事業所には、大きく5つの形がある
障害者総合支援法に基づく短期入所は、運営する法人の種類と設備の使い方によって、次の形に分かれます。
| 形の名称 | 概要 | 要件 |
|---|---|---|
| 福祉型・単独型 | 短期入所のための専用の居室を設けて行う | 省令171 第115条第3項 |
| 福祉型・空床利用型 | 障害者支援施設等の居室が空いているときに利用させる | 障害者支援施設等の運営が前提 |
| 医療型 | 医療機関等が行う。病院・診療所・介護老人保健施設等が対象 | 医療機関等であることが要件 |
| 福祉型・強化 | 看護職員を常勤で1人以上配置する単独型 | 看護職員の常勤配置が要件 |
| 共生型 | 介護保険の居宅サービス事業所等が行う | 介護保険事業所等の指定が前提 |
出典:障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)、各条。
この記事では、新規開業の文脈でもっとも関係する「福祉型・単独型」を中心に説明します。
単独型には2種類あり、職員の配置の仕方が変わる
単独型(省令171 第115条第3項)は、さらに次の2種類に分かれます。
第1号:生活介護等の中で行う単独型
生活介護・自立訓練・就労継続支援・グループホーム・障害児通所支援などの事業者が、自分の事業の中で一緒に行う形です。本体のサービスを提供している時間帯は、本体の利用者と短期入所の利用者の合計人数にもとづいて、本体の職員の数として計算できます。
第2号:それ以外の単独型
第1号に当てはまらない、単独の短期入所事業所です。24時間すべて、短期入所の利用者のためだけに職員を配置する必要があります。
この2つの違いは、採算に大きく影響します。第2号は夜間を含めた24時間の勤務体制が必要になるため、定員が少ない事業所では人件費の重さが収入を上回ることがあります。第1号では、本体の事業所が日中の人員を確保している時間は合算できるため、夜間だけ短期入所側で手当てする形も可能です。詳しくは短期入所の開業の採算の記事でまとめています。
空床利用型は、障害者支援施設等がすでにある法人が使う形
空床利用型は、「障害者支援施設等」(入所施設等)が、居室に空きがあるときに短期入所として利用させる形です。施設の設備をそのまま使えるため、専用の居室を設ける必要がありません。
ただし、空床利用型は既存の施設が前提なので、これから新規に開業する事業所が選ぶことは通常できません。また、障害者支援施設との一体運営になるため、経営の意思決定や人員の管理も施設に準じる部分があります。
国の経営概況調査(令和7年・令和6年度決算)の短期入所の平均収支差率が約2.3%と小さく、社会福祉法人が平均で赤字となっている背景の一つには、この空床利用型・障害者支援施設の中の事業所が多く含まれていることがあります。小規模な運営をしている事業所が多いため、単純平均では実情が見えにくい部分があります。
医療型は、病院・診療所等が行う短期入所
医療型短期入所は、病院・診療所・介護老人保健施設などの医療機関等が行います。医療的なケアが必要な方の受け入れに対応するための形で、一般の障害福祉事業所が選べる形ではありません。
医療型の報酬は、福祉型とは別の区分で設定されており、看護師等の医療スタッフの配置が要件となります。
単独型だけが「単独型加算」を取れる
報酬上の大きな違いが「単独型加算」です。単独型事業所(第115条第3項・第1号・第2号の両方)は、基本報酬に1日320単位の単独型加算を加算できます。
空床利用型、障害者支援施設等の中の事業所、医療型はこの加算の対象外です。
短期入所の基本報酬の単位数は、障害支援区分と「日中活動を使った日か否か」で決まりますが、区分4の方が日中活動を使わない日の基本報酬は648単位です。単独型加算の320単位を加えると968単位になります。地域区分が「その他」なら、単価10.00円で計算すると1日9,680円、これに1割の利用者負担が含まれます。
この320単位の差は、1日の売上でいうと地域区分「その他」で3,200円の差になります。月の利用日数が100日なら32万円、200日なら64万円の違いです。採算を検討するときに、単独型を選ぶことがこの加算を確保するために必要な前提であることを押さえておいてください。
基本報酬の(Ⅰ)〜(Ⅳ)の区分は、形の違いではなく「日中活動の有無」で決まる
短期入所の基本報酬には、(Ⅰ)〜(Ⅳ)の4つの区分があります。これは「単独型か空床利用型か」では変わらず、「その日に日中活動(通所系サービス)を使ったかどうか」と「障害者か障害児か」で決まります。
| 区分 | 適用される日 | 単位数(障害支援区分6の例) |
|---|---|---|
| (Ⅰ)福祉型短期入所サービス費 | 障害者が日中活動を使わない日(宿泊型) | 923単位 |
| (Ⅱ)福祉型短期入所サービス費 | 障害者が日中活動を使った日(通所の日) | 602単位 |
| (Ⅲ)福祉型短期入所サービス費 | 障害児が日中活動を使わない日(宿泊型) | 784単位(区分3) |
| (Ⅳ)福祉型短期入所サービス費 | 障害児が日中活動を使った日(通所の日) | 527単位(区分3) |
出典:障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第523号)別表第7の1。単位数はR8.6施行の数字です。
(Ⅰ)と(Ⅱ)の差が大きい理由は、日中活動(生活介護・就労継続支援等)を使った日は、日中活動の事業所の報酬がそちら側で発生するためです。利用者が放デイや生活介護に出かけた日の短期入所は「泊まるだけ」の状態になり、単価は低くなります。
基本報酬の全区分の数字と、日数の数え方については短期入所の基本報酬の違いの記事でまとめています。
定員20人以上の単独型は、基本報酬が0.9倍になる
単独型事業所で定員が20人以上の場合、加算を除く基本報酬の所定単位数に0.9を掛けた単位数になります(大規模事業所の減算)。この減算は、加算をつける前の段階で適用されます。
単独型加算(320単位)は「加算」なので、この0.9の対象外です。基本報酬の部分だけが0.9倍になります。
定員20人以上の事業所を計画している場合は、収支の見通しを立てるときにこの減算を考慮してください。
現在の短期入所の事業所は6,565か所、1年で6.9%増えている
国保連のデータ(令和7年1〜3月平均)では、短期入所の事業所は全国で6,565か所です。1年前(6,142か所)から約423か所増え、増加率は約6.9%です。令和3年4〜6月(4,688か所)と比べると、3年半で約1.4倍になっています。
出典:厚生労働省「障害福祉サービス等の最近の動向について」(社会保障審議会障害者部会 第149回 参考資料8・令和7年9月25日)。
この6,565か所には、単独型・空床利用型・医療型のすべてが含まれています。1事業所あたりの月の費用額(国保連の総費用額を事業所数で割った額。利用者負担を含む)は約74万円です。
事業所の数が増えている背景には、家族の高齢化や体調不良に伴う緊急の需要が増えていることがあります。特に、重度の障害のある方の家族が高齢化するにつれ、緊急時の受け皿となる短期入所への需要は高まる傾向があります。
新規開業で選べる形と、選べない形
開業を検討する場合、自分が選べる形と選べない形を整理しておくことが大切です。
- 空床利用型:すでに障害者支援施設等を運営している法人が使う形です。新規に開業する場合は選べません。
- 医療型:病院・診療所等の医療機関が必要です。一般の福祉事業者が新規で選ぶことはできません。
- 福祉型強化:看護職員の常勤配置が必要です。看護職員を確保できる見通しがある場合のみ検討できます。
- 共生型:介護保険の居宅サービス事業所等の指定を受けていることが前提です。
- 単独型(第2号):専用の居室を設け、短期入所のみで24時間の人員を確保する形です。採算を出しやすい規模の計画が必要です。
- 単独型(第1号):生活介護・グループホーム・放課後等デイサービスなど、すでに運営している事業所や、新たに一緒に開業する事業所がある場合に選べます。日中の人員を本体と合算できるため、採算が出やすくなります。
多くの場合、新規開業では単独型(第2号または第1号)のどちらかを選ぶことになります。すでに生活介護やグループホームを運営している法人が追加で行うなら第1号を選び、単独で短期入所専業で開業するなら第2号になります。
単独型(第2号)の採算は、定員と稼働率の組み合わせで決まる
単独型(第2号)は24時間の勤務体制が必要なため、定員が小さいと採算が出にくくなります。職員の配置の形ごとの採算の違いは、短期入所の開業の採算の記事で整理しています。
まとめ
- 短期入所には、単独型・空床利用型・医療型・強化型・共生型がある
- 新規開業で選べるのは主に単独型(第1号または第2号)
- 単独型は1日320単位の単独型加算が取れる。空床利用型・医療型等は対象外
- 単独型第1号は、生活介護等の本体と職員を合算できるため採算が出やすい
- 単独型第2号は24時間すべて単独で配置する必要があり、定員が小さいと採算が出にくい
- 定員20人以上の単独型は基本報酬に0.9の減算がかかる
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この記事の出典
- 障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第115条第3項・第117条・第120条 e-Gov法令検索
- 障害者総合支援法に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第523号)別表第7の1 e-Gov法令検索
- 厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_66260.html
- 厚生労働省「障害福祉サービス等の最近の動向について」(社会保障審議会障害者部会 第149回 参考資料8・令和7年9月25日)PDF
この記事の数字は、当方が上記の資料から読み取り・計算したものです。当方は行政書士等の資格者ではありません。指定申請や事業運営については、都道府県等の担当窓口にご確認ください。最終更新:2026年10月。
あわせて読みたい:グループホームで短期入所を行う形。職員の配置を合算できる第1号の仕組み。


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