短期入所の全国の数字。事業所数・収支差率・定員規模の実態(令和7年調査)。

短期入所の全国の数字。事業所数・収支差率・定員規模の実態(令和7年調査)。 短期入所

短期入所の開業を検討するとき、「全国でどのくらいの事業所があり、実際に黒字で運営できているのか」という全体像は、計画の前提として確認しておく価値があります。この記事では、国保連の請求データと厚生労働省の令和7年経営概況調査(令和6年度決算)をもとに、事業所数の推移・収支の実態・定員規模・法人種別の違いを整理します。数字の読み方と、新規開業の計画への活かし方も合わせて説明します。

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短期入所の事業所数は3〜4年で40%増加している

国保連(国民健康保険団体連合会)が毎月公表している障害福祉サービスの請求データによると、短期入所の事業所数は次のように推移しています。

時点 事業所数
令和3年4〜6月 4,688
令和6年1〜3月 6,142
令和7年1〜3月 6,565

出典:国保連「障害福祉サービス等費用状況調査」各月分 https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/001579688.pdf

令和3年から令和7年にかけての約3〜4年で、事業所数は約4,688から6,565に増加しています。増加率は約40%です。令和6年から令和7年の1年間に限っても、6,142から6,565へ約6.9%増えており、新規参入が続いていることが分かります。

1事業所あたりの月の費用額(国保連請求ベース)は約74万円です。この金額は、支援区分・利用日数・加算の取得状況によって事業所ごとに大きく異なります。

収支差率の全国平均は約2.3%。前年度から3ポイント低下した

厚生労働省が令和7年に公表した「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査」(令和6年度決算)では、短期入所の収支について次の数字が示されています。

区分 事業所数 年間収入(平均) 収支差(平均) 収支差率 定員(平均)
全体 337 約880万円 約20万円 約2.3% 7人
定員20人以下 323 約865万円 約11万円 約1.2% 5人

出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_66260.html

収支差率の全国平均は約2.3%です。前年度(令和5年度決算)は約5.4%だったため、1年間で約3ポイント低下しています。中央値の収支差率は約2.8%で、平均値と大きく変わらず、事業所間のばらつきは収支差率の分布としては比較的均一です。

定員20人以下の事業所(全体の96%を占める)に限ると、収支差率はさらに低い約1.2%です。年間収支差の平均が約11万円という数字は、月換算で約9,000円です。この規模の事業所では、わずかな稼働率の変化や人件費の増加で収支が赤字に転じることを示しています。

調査の対象の96%は定員20人以下の小規模事業所

今回の経営概況調査の対象337事業所のうち、323事業所(約96%)が定員20人以下です。定員20人超の事業所はわずか14事業所で、調査数が少なく統計的な信頼性が低いため、今回の調査では定員20人以下の数字が実態を反映しています。

短期入所に定員20人超の事業所が少ない背景として、「大規模型減算」の影響が考えられます。定員が20人を超える場合、基本報酬に減算(×0.9)が適用されるため、規模を拡大しても収入が大幅に増えません。このため、多くの事業所が定員20人以下の小規模で運営しています。

全体の平均定員は7人、定員20人以下に限ると5人です。これは、1事業所あたりの利用者数が極めて小さいことを意味します。5〜7人という小規模での運営が、短期入所の標準的な姿です。

法人種別で収支差率が大きく異なる。社会福祉法人は赤字、NPO法人は黒字

同調査では、法人種別ごとの収支差率も示されています。

法人種別 事業所数 収支差率(平均)
社会福祉法人(社協含む) 247 約−1.6%(赤字)
NPO法人 26 約12.9%
その他法人(株式会社等) 56 約10.4%

出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_66260.html

全体の収支差率約2.3%という数字は、社会福祉法人の赤字(−1.6%)がNPO法人や株式会社等の黒字を引き下げた結果です。

社会福祉法人は事業所数が247と全体の73%を占めているため、平均を大きく引き下げています。社会福祉法人は設立年数が長く、設備の老朽化・人件費の高さ・本体法人(知的障害入所施設等)への補助的な役割での運営など、構造的なコスト要因を抱えているケースが多いと考えられます。

新規に開業するNPO法人や株式会社の場合、収支差率10%前後を達成している事業所が一定数あることも、この調査から読み取れます。ただし、この数字は「うまくいっている事業所の平均」であり、閉所した事業所のデータは含まれていません。生存バイアスがある点には注意が必要です。

この全国平均の数字は、新規開業の計画に直接は使えない

経営概況調査の数字は、「現在運営している事業所の結果」です。新規に開業を計画している場合、この数字をそのまま自分の事業所の見込みとして使うことはできません。理由を整理します。

  • 空床利用型・併設型を含む:調査の対象には、単独型以外の空床利用型や本体施設に附属した形の事業所も含まれています。空床利用型は本体施設の人件費・設備費を共有するため、単独型と比べてコスト構造が大きく異なります。単独型の新規開業の計画には、単独型のみの数字が必要ですが、そこまで分解した公表データは現時点では限られています。
  • 定員・稼働率・加算の取得状況が異なる:全国平均の収支差率は、各事業所の定員・稼働率・加算の取得状況がすべて混在した平均です。「自分の事業所が同じ条件になる」とは限りません。
  • 生存バイアス:調査に回答している事業所は、現在も運営を続けている事業所です。収支が悪化して閉所した事業所のデータは調査に含まれません。実際の開業後の成功率はこの調査からは分からず、平均が実態より高く見える可能性があります。

「全国平均で黒字ならば自分も黒字になる」という判断は、この調査の構造上、誤りです。特に、定員20人以下・社会福祉法人以外の形態で新規開業する場合は、自分の事業所の条件に近い想定で収支を試算することが重要です。

全国平均2.3%という収支差率の薄さを、試算に組み込む

短期入所の収支差率の全国平均が約2.3%(定員20人以下は約1.2%)であることは、経営の余白が極めて薄いことを示しています。年間収入約880万円に対して収支差約20万円というのは、月換算で約1.7万円の黒字です。

この薄さの構造的な背景には、次の要因があります。

  • 小規模定員(平均7人)のため、1人でも欠席すると収入が大きく下がる
  • 24時間・365日の受け入れ体制が必要な事業所では、夜間の人件費が固定コストとして重くのしかかる
  • 令和6年度の処遇改善加算の引き上げに伴い、収入は増えたが人件費も連動して増加した
  • 令和5年度(収支差率約5.4%)から令和6年度(約2.3%)の低下は、報酬改定の前後の変化が反映されているとみられる

これらの要因は、新規開業の計画にも影響します。人件費の積み上げ・稼働率の想定・加算の取得見込みを、現実的な水準で試算に組み込むことが必要です。

収支シミュレーターでは、稼働率・加算の取得状況・人員配置を変えて月次の収支・資金繰りを試算できます。全国平均の水準を参考にしながら、自分の事業所の条件に近いシナリオを確認してみてください。

短期入所の採算の考え方については、あわせて読みたい:短期入所の開業は、職員の配置の形で採算が決まる。

短期入所以外の9サービスとの比較

短期入所の収支差率約2.3%は、他の障害福祉サービスと比較してどの位置にあるのでしょうか。福祉事業の全国平均の収支差率を複数サービスで比較した記事でまとめています。

あわせて読みたい:障害福祉サービス9種の全国平均の数字。収支差率・事業所数・定員を比較する。

短期入所の2.3%は、全9サービスの中でも低い水準です。同じ障害福祉サービスでも、グループホームや就労継続支援A型など、収支の安定度が異なるサービスと比較することで、参入する事業種別の選択に役立てることができます。

まとめ:短期入所の全国データの要点

  • 事業所数は令和3年〜令和7年の約3〜4年で40%増加(4,688→6,565)。新規参入が続いている
  • 収支差率の全国平均は約2.3%(令和6年度)。前年度(5.4%)から大幅に低下
  • 定員20人以下の事業所が全体の96%を占める。平均定員は全体7人・定員20人以下で5人
  • 社会福祉法人(73%)は平均−1.6%(赤字)。NPO法人・その他法人は黒字傾向
  • この全国平均は、空床利用型・併設型を含む現運営事業所の平均であり、単独型新規開業の計画に直接転用することはできない
  • 生存バイアスにも注意。閉所した事業所は調査に含まれない

短期入所の採算を試算するには、自分の事業所の条件(定員・稼働率・加算・人員配置)で個別に計算することが必要です。収支シミュレーターを活用してください。

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この記事の出典

この記事の内容は当方が一次資料を確認して整理したものです。当方は行政書士・社会福祉士等の資格者ではありません。事業の開業・経営にあたっては、必ず所管の都道府県・指定権者・専門家に確認してください。記事の最終更新:2026年10月。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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