認知症GHの処遇改善加算(介護職員等処遇改善加算)は、介護職員の賃金を上げるための加算で、算定した額は事業者が職員の賃金改善に充てることが義務付けられています。令和6年改定後の加算率はⅠ=18.6%・Ⅱ=17.8%・Ⅲ=15.5%・Ⅳ=12.5%で(令和6年厚生労働省告示第128号)、1ユニット9人の事業所では加算Ⅰを取ると月20万〜25万円程度の上乗せになります。人件費の原資になるため、取得できる区分をできる限り高くすることが収支の改善につながります。
処遇改善加算の4つの区分と加算率
令和6年改定後の加算率は次のとおりです(令和6年厚生労働省告示第128号・認知症GH=認知症対応型共同生活介護)。
| 区分 | 加算率 | 主な要件の概要 |
|---|---|---|
| 介護職員等処遇改善加算Ⅰ | 18.6% | キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ+職場環境等要件 |
| 介護職員等処遇改善加算Ⅱ | 17.8% | キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ+職場環境等要件 |
| 介護職員等処遇改善加算Ⅲ | 15.5% | キャリアパス要件Ⅰ+職場環境等要件 |
| 介護職員等処遇改善加算Ⅳ | 12.5% | 職場環境等要件のみ |
加算Ⅰが最も高く、キャリアパス要件(昇給制度の整備・研修体制の整備・職員評価の仕組みなど)3段階すべてを満たす必要があります。要件の詳細は厚生労働省の通知(令和6年3月29日・老発0329第9号)で確認してください。
加算額の計算方法
処遇改善加算の算定基礎は「基本報酬に各種加算(処遇改善加算を除く)を加えた合計額」です。計算式は次のとおりです。
処遇改善加算額 =(基本報酬 + 各種加算)×加算率
(1単位未満の端数は切り捨て)
例として、1ユニット9人・要介護3・その他地域(単価10.00円)・夜間支援体制加算Ⅰ取得・稼働率100%・1か月30日で加算Ⅰを取得した場合を計算します。
| 計算ステップ | 金額 |
|---|---|
| 基本報酬(824単位×30日×9人×10.00円) | 2,224,800円 |
| 夜間支援体制加算Ⅰ(50単位×30日×10.00円) | 135,000円 |
| 算定基礎合計 | 2,359,800円 |
| 処遇改善加算Ⅰ(×18.6%) | 438,923円 |
月約44万円が処遇改善加算として算定され、この全額を職員の賃金改善に充てることが義務付けられます。職員の月給換算でいえば、常勤換算3人の事業所では1人あたり月約14.6万円を加算から賃金改善に充てられる計算になります。
キャリアパス要件の主な内容
加算Ⅰを取得するためには、キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ・Ⅲのすべてを満たす必要があります。各要件の概要は次のとおりです。
- キャリアパス要件Ⅰ:職位・職責・職務内容等に応じた任用要件と賃金体系を整備し、書面で職員に周知する
- キャリアパス要件Ⅱ:資質向上のための計画を策定し、研修の実施または研修機会の確保を行う
- キャリアパス要件Ⅲ:経験・資格・評価に基づく昇給の仕組みを設け、書面で周知する
要件の整備には就業規則や賃金規程の改定が必要になることがあります。開業準備の段階から、区分Ⅰを取ることを前提に整備しておくと、加算額が最大になります。
加算の届出と使用実績の報告
処遇改善加算を算定するには、毎年度の計画書(処遇改善計画書)を市区町村(指定権者)に提出し、年度終了後に実績報告書を提出する必要があります。計画書には賃金改善の方法・額・対象職員等を記載します。実績報告書は、計画どおりに賃金改善が行われたことを確認するためのものです。
未届出の場合や実績報告書の未提出が判明した場合、加算が返還対象になることがあります。届出・報告のスケジュールは年度の早い段階で確認し、抜け漏れのない運営体制を整えることが必要です。
収入全体に占める処遇改善加算の割合
1ユニット9人・加算Ⅰの場合、月次収入に占める処遇改善加算の割合は約15〜19%になります。この割合は人件費の原資として重要です。加算取得区分を1段下げた場合(ⅡからⅢへなど)の差額は、上の計算例で月約25,000〜100,000円程度になります。
収入試算の詳細は収入の計算方法の記事と認知症GH収支シミュレーターで確認できます。
4区分のキャリアパス要件・詳細比較
処遇改善加算の区分はキャリアパス要件と職場環境等要件の組み合わせで決まります。上位の区分ほど要件が厳しく、取得できる加算率が高くなります。
| 区分 | 加算率 | キャリアパス要件 | 職場環境等要件 |
|---|---|---|---|
| 加算Ⅰ | 18.6% | Ⅰ+Ⅱ+Ⅲをすべて満たす | 複数区分で一定数以上の取組みが必要 |
| 加算Ⅱ | 17.8% | Ⅰ+Ⅱ+Ⅲをすべて満たす | 1区分で一定数以上の取組みが必要 |
| 加算Ⅲ | 15.5% | Ⅰ+Ⅱを満たす | いずれか1つ以上の取組み |
| 加算Ⅳ | 12.5% | ⅠまたはⅡのいずれかを満たす | いずれか1つ以上の取組み |
キャリアパス要件Ⅰ:職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系を整備し、書面で示すこと。キャリアパス要件Ⅱ:資質向上のための計画を策定し、研修の実施または研修機会の確保を行うこと。キャリアパス要件Ⅲ:経験・資格・評価に基づき昇給する仕組みを整備すること。出典:令和6年厚生労働省告示第128号・解釈通知。
キャリアパス要件Ⅰの具体的な整備内容
最もよく問われるキャリアパス要件Ⅰの整備は、次の内容を就業規則または賃金規程に明記し、職員に周知することで満たせます。
- 職位(例:一般・主任・リーダー)ごとの職務内容を文書化する
- 各職位の任用要件(経験年数・資格等)を明記する
- 職位と賃金水準の対応関係を賃金規程に記載する
- 作成した文書を職員に配布または職場掲示し、周知したことを記録する
開業前に就業規則を整備する際、これらの要件を同時に盛り込んでおくと、開業と同時に加算Ⅰ以上を申請できます。
加算額の月次試算(1ユニット9人・その他地域・要介護3)
処遇改善加算の加算額は、処遇改善加算を除く介護報酬収入に加算率を乗じて計算します。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 基本報酬月収(824単位×10.00円×9人×30.4日) | 約2,257,000円 |
| 夜間支援体制加算Ⅰ(50単位×10.00円×9人×30.4日) | 約136,800円 |
| 小計(処遇改善加算の計算ベース) | 約2,393,800円 |
| 処遇改善加算Ⅰ(18.6%) | 約445,247円 |
この約445,000円/月はすべて職員の賃金改善に充てなければなりません。事業者の利益には計上できませんが、採用・定着の競争力を高める効果があります。
届出と実績報告の流れ
処遢改善加算を取得するには、事業を開始する前(または翌年度から算定する場合は前年度の2月末まで)に市区町村に加算の種別と取組内容を届け出ます。
- 届出:事業開始の際、処遇改善計画書を市区町村に提出
- 算定開始:届出が受理された月から算定可能
- 実績報告:翌年の8月末までに賃金改善の実績を報告(未報告や実績額の不足は加算の返還が求められます)
取得しない場合のリスク
処遇改善加算を取得していない事業所は、加算を取得している競合施設と比べて職員の賃金水準が相対的に低くなります。介護人材の確保競争が激しい現在、加算の取得は採用・定着に直接影響するため、開業時から最上位の加算Ⅰを目指して整備することが現実的です。
令和9年度改定での変更の見込み
現行の処遇改善加算の枠組みは令和6年4月改定から適用されています。次回の報酬改定は令和9年度(2027年度)の見込みです。加算率・区分・要件が変わる可能性があるため、改定案が示される令和9年2月ごろに内容を確認する必要があります。
処遇改善加算の取得要件(キャリアパス要件)詳細
処遇改善加算Ⅰを取得するためには、賃金改善の計画・実績報告とあわせて、以下のキャリアパス要件をすべて満たす必要があります。①職位・職責・職務内容に応じた任用要件・賃金水準の設定、②資質向上のための研修計画の策定・当該研修の実施または研修機会の確保、③資格取得や経験年数等に応じて昇給する仕組みの整備(令和6年改定で追加)。実地指導では、これらの要件が書類(就業規則・賃金規程・研修計画)で証明できるかどうかを確認されます。
加算の届出と計画書の提出スケジュール
処遇改善加算を算定するには、事業年度ごとに「処遇改善計画書」を市区町村(指定権者)に提出する必要があります。提出期限は通常2月末〜3月末(翌4月から算定開始のため)ですが、自治体によって異なります。年度途中での新規算定を希望する場合は、算定開始月の前月末までに届け出が必要です(令和6年厚生労働省告示第128号の各都道府県への通知)。
特定処遇改善加算との違い
処遇改善加算(2019年以前)は全職員の平均賃金改善を目的とするのに対し、特定処遇改善加算(令和元年以降)は「経験・技能のある介護職員」の賃金改善に重点を置いていました。令和6年度改定では両加算と新たな加算が一本化され、「介護職員等処遇改善加算」として再編されました。取得できる加算区分はⅠ〜Ⅳで、Ⅰが最も要件が厳しく加算率も最大です。事業所の体制に応じてどの区分を取得するかを計画の段階で検討することが重要です。
処遇改善加算の「全額を賃金改善に充てる」義務の実務
加算収入は全額を職員の賃金改善に充てる義務があります(介護保険法施行規則第140条の63の2)。「賃金改善」には、基本給・手当・賞与・定期昇給の原資への充当が含まれます。一方、法定外の福利厚生費(社員食堂・制服等)や社会保険料の事業主負担分には充てられません。加算収入と賃金改善額の対応関係を、毎年度末に「処遇改善実績報告書」として提出します。虚偽報告や不正受給は指定取り消し事由となるため、会計処理と書類管理を正確に行うことが重要です。
小規模事業所が処遇改善加算を活用する実務上のポイント
1ユニット定員9人の小規模事業所では、管理者・計画作成担当者・介護従業者を合わせて4〜6名程度の職員規模です。職員数が少ない分、1人あたりの加算分配額が大きくなる可能性があります。キャリアパス要件の整備は規模の小さな事業所ほど書類作成の比重が重くなりますが、賃金改善の原資が確保できる処遇改善加算の取得は職員の定着率向上に直結します。開業前から就業規則・賃金規程・キャリアパス制度を整備しておくことが、加算取得のスムーズな申請につながります。
出典
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第128号)令和6年改正
- 介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和6年3月29日・老発0329第9号)
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収入と費用の試算は、認知症GH収支シミュレーターで確認できます。

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