放課後等デイサービスと児童発達支援は、開業したくても、自治体によっては新規の指定を受けられない場合があります。この制限が「総量規制」です。2026年9月25日に、47都道府県と20政令市の、合わせて67の指定権者の公式ページを確認したところ、児発・放デイの新規指定を制限していると読める記述があったのは8か所、法律にもとづいて「指定しないことがある」と一般的に書いていたのは11か所、確認した範囲に記述が見つからなかったのは48か所でした。「見つからなかった」は、規制がないという意味ではありません。この記事では、確認した結果を一覧にして、開業前に何を調べればよいかを整理します。
総量規制とは、どんな制度ですか
総量規制は、事業所が増えすぎている区域で、都道府県知事などが、新しい事業所の指定をしないことができる制度です。児童福祉法第21条の5の15第5項に、次のように書かれています(出典:e-Gov法令検索・児童福祉法、令和8年9月3日施行の内容で確認)。
都道府県知事は、特定障害児通所支援につき第一項の申請があつた場合において、当該都道府県又は当該申請に係る障害児通所支援事業所の所在地を含む区域(第三十三条の二十二第二項第二号の規定により都道府県が定める区域をいう。)における当該申請に係る種類ごとの指定通所支援の量が、同条第一項の規定により当該都道府県が定める都道府県障害児福祉計画において定める当該都道府県若しくは当該区域の当該指定通所支援の必要な量に既に達しているか、又は当該申請に係る事業者の指定によつてこれを超えることになると認めるとき、その他の当該都道府県障害児福祉計画の達成に支障を生ずるおそれがあると認めるときは、第二十一条の五の三第一項の指定をしないことができる。
かんたんに言うと、申請のあった区域の事業の量が、自治体の障害児福祉計画で決めた「必要な量」にすでに達しているか、この指定で超えるときは、指定しないことができる、という内容です。この条文が名指しする対象は、「放課後等デイサービスその他の内閣府令で定める障害児通所支援」です(同条第2項)。児童発達支援がここに含まれるかどうかは、この条文だけでは分かりませんが、大阪府のページには「「児童発達支援」・「放課後等デイサービス」が総量規制の対象です。(平成30年度改正)」と書かれています。以下でも、児発と放デイの両方を、対象として扱います。
指定は、都道府県のほか、政令指定都市など、市が自ら行う場合があります。実際に、札幌市、京都市、熊本市は、市のページで、市としての総量規制を案内しています。そのため、同じ県の中でも、市によって扱いが違うことがあります。
制限していると読める自治体は、どこですか
公式ページに、児発・放デイの新規指定を制限していると読める記述があったのは、次の8か所です。
| 自治体 | 対象 | ページの内容(要点) | 公式ページの記載(原文) |
|---|---|---|---|
| 札幌市 | 児発・放デイ | 令和7年4月2日以降の新規指定は、市が有識者の委員会で選定した事業者だけが指定を申請できる、市独自の選定制度。主として重症心身障がい児を受け入れる事業所や、看護職員を配置して医療的ケア児を受け入れる事業所などは、選定の対象外で、従来の手続き | 「事業所数が不足しないよう、利用見込量に対応した必要数を定めて新規指定を行います。」 (2026年1月15日(更新)) |
| 京都市 | 児発・放デイ | 区・支所の単位で総量規制を導入している。各サービスの公募の案内が、別に出ている | 「児童発達支援及び放課後等デイサービスについては、現在、区・支所単位での総量規制を導入しています。」 (2026年4月1日) |
| 熊本市 | 児発・放デイ | サービスの供給量が必要量の見込みを上回る場合は、新規の指定を行わない。区ごとに必要量を設定(主として重症心身障害児を通わせる事業所と共生型を除く) | 「熊本市では事業所の地域偏在の解消に向けて、サービス供給量が必要量の見込みを上回る場合に新規の事業所の指定を行わない、総量規制を実施しております。」 (2025年8月1日) |
| 宮崎県 | 児発のみ(放デイは対象外) | 新規指定と定員増を認めない。対象は6つの圏域(宮崎東諸県、都城北諸県、日南串間、西都児湯、日向入郷、宮崎県北部)で、令和7年10月から。宮崎市の区域は市が実施 | 「総量規制を実施するサービス:児童発達支援」 (2025年11月26日更新) |
| 大阪府 | 児発・放デイ | 市町村のニーズと必要数を確認せずに申請を出すと、指定申請の中断・延期・中止になる可能性がある。市町村ごとの意見を確認する運用 | 「※「児童発達支援」・「放課後等デイサービス」が総量規制の対象です。(平成30年度改正)」 (2026-06-26) |
| 兵庫県 | 児発・放デイ | 市町の障害福祉計画の必要量に応じて指定する。申請の前に、市町の担当課から、目標量の範囲内かどうかの意見書をもらう | 「各市町の障害福祉計画に定める必要量に応じた指定を行うこととしていますが」 (2026-09-10) |
| 滋賀県 | 児発・放デイ | 手引きの見出しに「総量規制(法第21条の5の15第5項)」。県への事前協議の前に、市町村に供給状況を確認するよう求めている | 「児童発達支援及び放課後等デイサービスについては各市町村及び滋賀県の障害児福祉計画に定める必要量で指定することとしています。」 (日付の記載なし) |
| 熊本県 | 児発・放デイ | 新設の場合は、開所予定の市町村に、障がい福祉計画の整備予定(指定枠)の残数を確認する。ページに「総量規制」という語はなく、熊本市は別の指定権者 | 「児童発達支援又は放課後等デイサービスの新設の場合、事前に事業所開所予定市町村へ「障がい福祉計画に定める整備予定(指定枠)」の残数を確認してください。」 (2026年4月1日更新) |
2026年9月25日に、各公式ページ(滋賀県は手引きのPDF)から、当方が原文を取り直して確認しました。滋賀県の引用は、PDFの本文から改行と空白を除いたものです。
同じ「総量規制」でも、やり方は自治体ごとに違います。札幌市は、市が選んだ事業者だけが申請できる選定制で、京都市は、区・支所の単位で総量規制を導入し、公募の案内を別に出しています。熊本市は、区ごとに必要量を決め、宮崎県は、児童発達支援だけを対象に、6つの圏域で新規指定と定員増を認めていません。大阪府・兵庫県・滋賀県・熊本県は、申請の前に、市町村の意見や、指定枠の残数を確認する手続きを、開業する人に求めています。
「指定しないことがある」と一般的に書いている自治体は、どこですか
次の11か所は、法律にもとづいて「指定しないことがある」などと触れているものの、今、実際に適用しているか、どの区域かは、確認したページからは分かりませんでした。
| 自治体 | ページの内容(要点) | 公式ページの記載(原文) |
|---|---|---|
| 北海道 | 道の審議会の議事録に「総量規制の協議」とあるが、障害福祉サービス全般の話で、児発・放デイに今適用しているかは分からない | 「総量規制の協議を実施してきております」 |
| 青森県 | 障がい福祉計画に、計画の達成に支障を及ぼすおそれがある場合は指定を行わないことがある、と一般的に書かれている | 「県は、申請が一定の基準を満たしたものについて指定しますが、本計画の達成に支障を及 ぼすおそれがある場合は、指定を行わないことがあります。」 |
| 群馬県 | 手引きの欠格事由の項で、法律の「指定を行わないケース」に触れているだけ | 「児童福祉法(第21 条の5 の15 等)に規定する指定できないケース、指定を行わないケースに該当しないこと。」 |
| 埼玉県 | 開設予定の市町村の意見が「支障あり」「どちらとも言えない」なら指定しないことがある。必要量に達したかどうかではなく、市町村の意見による運用 | 「各市町村の開設の意見が「支障あり」、「どちらとも言えない」である場合は指定しないことがあります。」 |
| 千葉県 | 県のページに、児童福祉法第21条の5の15第5項の条文が掲載されているだけで、県が実際に適用しているかは分からない | 「必要な量に既に達しているか、又は当該申請に係る事業者の指定によつてこれを超えることになると認めるとき」 |
| 東京都 | 区市町村の計画の量に達している場合は指定を行わない場合がある、と一般的に記載。Q&Aに、総量規制は開設予定の区市町村で確認が必要とある | 「当該特定障害児通所支援がすでに区市町村の障害福祉計画で定める量に達している又は当該指定によってこれを超えるとき等は、指定を行わない場合があります。」 |
| 新潟県 | 県の障害福祉計画の量に達している場合は指定を行わない場合がある、と一般的に記載 | 「当該特定障害児通所支援がすでに県障害福祉計画で定める量に達している又は当該指定によってこれを超えるとき等は、指定を行わない場合があります。」 |
| 新潟市 | 手引き(令和8年4月版)に、サービス量の定めにより新規指定と定員増ができない場合がある、と注意書き | 「児童発達支援、放課後等デイサービスについてはサービス量の定めにより、新規指定及び定員増ができない場合があります。」 |
| 岡山県 | 必要な量に達している場合は、指定や定員の増加ができないこともある、と注意書き。新規指定・定員増の前に、事業所の所在予定の市町村と協議するよう、お願いしている | 「障害福祉計画や障害児福祉計画に定める必要な量に既に達しているなどの場合には、事業所の指定又は定員の増加ができないこともありますのでご留意ください。」 |
| 広島県 | 手引きに「(総量規制)」と明記。市町の意見書の項で触れているが、対象区域や計画年度の記載はない | 「児童福祉法第21条の5の15第5項により、各市町及び広島県の障害児福祉計画に定める必要量を勘案して指定することとしています。(総量規制)」 |
| 福岡県 | 事前協議の資料に「総量規制等」として、事業予定地の市町村から意見書をもらう手順 | 「児童福法上の総量規制等について(事業予定地の市町村障がい福祉所管課)①児童発達支援、放課後等デイサービス、障がい児入所施設⇒事業実施に係る意見書を受領してください。」 |
北海道は、道の審議会の議事録(令和6年度)の記載です。青森県は障がい福祉計画(令和6年3月)の記載で、ほかは、指定申請の案内ページか手引きの記載です。
この11か所のうち、埼玉県、福岡県、岡山県、広島県は、事前協議で、市町村の意見や協議を求めています。ページには、必要量に達したら指定しない、と大きく書かれていなくても、開設予定の市町村の意見が、指定の手続きに関わっているのは、大阪府、兵庫県、滋賀県と同じです。
記述が見つからなかった48か所は、規制がないのですか
ありません、とは言えません。確認した公式ページや手引きに、総量規制や指定制限の記述が見つからなかった、という意味です。実際に、次のような限界があります。
- 堺市は、よくある質問に「指定を受けるにあたって、総量規制はあるか。」という問いがあり、「現在、総量規制は実施していません。」と書かれています。これは、積極的に「ない」と書かれている例です。
- 大阪市と大分県は、総量規制のページがありましたが、対象は就労継続支援B型で、児発・放デイの記載はありませんでした。
- 福井県、山梨県、神奈川県、鳥取県、高知県、山口県、静岡市、川崎市、浜松市、長崎県、岡山市は、手引きの本体や個別のページ、様式のファイルまでは、確認できませんでした。茨城県と仙台市は、障害児福祉計画の本文を確認できていません。
- 神奈川県の指定申請の詳しい案内は、県の公式ドメインではないサイト(障害福祉情報サービスかながわ)にあり、公式サイトではないため、根拠にしていません。
記述が見つからなかった自治体は、次のとおりです。
岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県、茨城県、栃木県、仙台市、さいたま市、千葉市、神奈川県、横浜市、川崎市、相模原市、富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、静岡市、浜松市、愛知県、名古屋市、三重県、京都府、大阪市、堺市、奈良県、和歌山県、神戸市、鳥取県、島根県、岡山市、山口県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、広島市、北九州市、福岡市、佐賀県、長崎県、大分県、鹿児島県、沖縄県。
都道府県と政令指定都市を対象にしました。中核市など、そのほかの自治体は、この一覧に入っていません。自分が開業したい市が、この一覧の外にある場合は、その市のページで確認してください。
都道府県のページに書いていなくても、開業前に確認が必要ですか
必要です。この調査で、都道府県のページに「総量規制」の語がなくても、市町村の意見書や、指定枠の残数の確認を求める自治体が、いくつもありました。熊本県は、ページに「総量規制」の語がありませんが、新設の場合は「障がい福祉計画に定める整備予定(指定枠)」の残数を、事前に開所予定の市町村へ確認するよう求めています。福岡県は、事前協議の資料に「総量規制等」として、市町村の意見書をもらう手順を載せています。
大阪府のページは、市町村のニーズや必要数を事前に確認せずに申請を出すと、指定申請の中断・延期・中止になる可能性がある、と書いています。物件を借りたり、人を採用したりしてから、指定が受けられないと分かると、そのぶんの費用が無駄になります。
開業する前に、何をどの順番で確認すればよいですか
- 開業したい市町村の、障害福祉の窓口に、聞きます。「児童発達支援(または放課後等デイサービス)の新規指定に、総量規制はありますか」「事前に必要な意見書や協議はありますか」と、電話かメールで確認します。
- 都道府県(または政令市など)の、指定申請のページと手引きを読みます。この記事の表のリンクは、その入口として使えます。ただし、更新されることがあるため、最新の版を確認してください。
- 障害児福祉計画の「必要な量」を、確認します。市町村の計画に、児発・放デイの必要な量(見込み)が載っています。今ある事業所の定員と比べて、余地があるかどうかの目安になります。
- 物件や人員の契約は、指定の見込みが立ってからにします。指定の前に、契約を進める場合は、指定が受けられなかったときの負担を、考えておきます。
収支の試算は、いつ使えばよいですか
総量規制は、「指定を受けられるか」の話です。当サイトの放課後等デイサービスの収支シミュレーターと児童発達支援の収支シミュレーターは、指定を受けたあとの、収入と支出の試算をするものです。総量規制で指定を受けられるかどうかは、判定できません。まず、開業したい市町村で指定の見込みを確認し、そのうえで、資金と収支を試算する、という順番になります。資金の目安は、放課後等デイサービスの開業資金の記事と児童発達支援の開業資金の記事で、どちらで開業するかは、児発と放デイの比較の記事で整理しています。
この調査は、どのように行いましたか
- 対象:47都道府県と、20の政令指定都市(札幌市、仙台市、さいたま市、千葉市、横浜市、川崎市、相模原市、新潟市、静岡市、浜松市、名古屋市、京都市、大阪市、堺市、神戸市、岡山市、広島市、北九州市、福岡市、熊本市)。
- 確認日:2026年9月25日。
- 根拠にしたもの:自治体の公式サイトのページ、手引き、計画のPDF。行政書士やコンサルタントなど、民間のサイトは、根拠にしていません。
- 確認の方法:各自治体のページを調べ、記述のあった箇所を、原文のとおり抜き出しました。そのうえで、当方が、公式ページの原文を取り直し、抜き出した文が、そのまま載っていることを、すべて確認しました(総量規制の記述があった19か所)。
- 限界:記述が見つからなかったことは、規制がないことを意味しません。ページは更新されます。自治体の実際の運用(どの区域が対象か、いつまでか)は、ページに書かれていないことがあります。
この記事は、一般的な情報で、個別の開業の可否を判断するものではありません。指定を受けられるかどうかは、開業したい自治体の窓口に、確認してください。当サイトは個人が運営する情報サイトで、自治体や行政機関とは関係ありません。
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