訪問看護ステーションの収入を大きく左右する仕組みの一つが「機能強化型訪問看護管理療養費」です。届出をすると、通常の管理療養費より高い単価が算定できますが、常勤看護職員数やターミナルケアの実績など、複数の要件を満たす必要があります。この記事では、厚生労働省の公表資料をもとに、機能強化型1・2・3それぞれの要件を具体的に整理します。
機能強化型訪問看護管理療養費とは、どんな仕組みですか
訪問看護療養費の「管理療養費」は、月の初日に算定する基本的な費用ですが、体制を整えた事業所は、機能強化型1・2・3のいずれかを届け出ることで、通常より高い単価を算定できます。令和8年6月以降の単価は、機能強化型1が13,760円、機能強化型2が10,460円、機能強化型3が9,030円で、機能強化型でない事業所は7,710円です(令和8年厚生労働省告示第74号)。機能強化型1は、機能強化型でない事業所の約1.8倍の単価になる計算です。
この記事で紹介する常勤看護職員数やターミナルケアの実績などの要件の細部は、令和6年度診療報酬改定時点の公表資料にもとづいています。単価そのものは令和8年6月の改定で上の金額に変わっており、要件の細部も、その後の改定で変更されている可能性があります。実際に届出を検討する際は、最新の告示・通知でご確認ください。
機能強化型1・2・3は、それぞれ何を評価する区分ですか
機能強化型1・2は、ターミナルケアの実施や、重症児の受入れなど、手厚い医療的ケアの体制を評価する区分です。機能強化型3は、少し性格が違い、地域の訪問看護の人材育成等の役割を評価する区分になっています。数字だけを見ると「1が一番上、3が一番下」に見えますが、実際は評価している中身が異なります。
看護職員は、何人必要ですか
常勤換算の看護職員数と、その中での看護職員(保健師・助産師・看護師・准看護師)の割合が、区分ごとに定められています。
| 区分 | 看護職員の数・割合 |
|---|---|
| 機能強化型1 | 常勤7人以上(うち1人は非常勤の常勤換算でも可)、看護職員の割合6割以上 |
| 機能強化型2 | 常勤5人以上(うち1人は非常勤の常勤換算でも可)、看護職員の割合6割以上 |
| 機能強化型3 | 常勤4人以上、看護職員の割合6割以上 |
通常の指定基準(常勤換算2.5人以上)と比べると、機能強化型1は3倍近い看護職員数が必要になる計算です。機能強化型を目指すこと自体が、相応の人員規模を前提にした経営判断だと分かります。
ターミナルケア・重症児の受け入れ実績は、どのくらい必要ですか
機能強化型1・2は、次のいずれかの実績が必要です。
- 機能強化型1:①前年度のターミナルケア実績20件以上、②前年度のターミナルケア実績15件以上+重症児の利用者が常時4人以上、③重症児の利用者が常時6人以上、のいずれか
- 機能強化型2:①前年度のターミナルケア実績15件以上、②前年度のターミナルケア実績10件以上+重症児の利用者が常時3人以上、③重症児の利用者が常時5人以上、のいずれか
機能強化型3には、この項目の要件は含まれていません(人材育成のほうの要件で評価されます)。ターミナルケアの実績は、開業から一定の期間、実際に看取りに関わった件数を積み重ねる必要があるため、開業直後に満たせる要件ではありません。
24時間対応は必須ですか
機能強化型1・2・3のいずれも、24時間対応体制加算の届出と、休日・祝日等も含めた計画的な訪問看護の実施が共通の要件です。機能強化型を目指す場合、24時間対応の体制(オンコール・出動の手当を含む人員体制)は、切り離せない前提になります。
重症度の高い利用者は、どのくらい受け入れる必要がありますか
機能強化型1は、特掲診療料の施設基準(別表第七)に該当する利用者が月10人以上、機能強化型2は月7人以上が要件です。機能強化型3は、別表第七・第八に該当する利用者、精神科重症患者、複数の訪問看護ステーションが共同して訪問する利用者を合わせて月10人以上が要件です。別表第七・第八は、人工呼吸器管理や、頻回の喀痰吸引が必要な状態など、医療的なケアの必要性が高い利用者を指す区分です。
専門の研修を受けた看護師とは、何ですか
機能強化型1・2は、専門の研修を受けた看護師の配置が要件です(機能強化型2は「配置されていることが望ましい」という努力義務に近い扱い)。令和6年度改定時点では、令和6年3月31日時点ですでに機能強化型1の届出をしていたステーションについては、令和8年5月31日までの経過措置として、この基準を満たしているとみなす取り扱いがありました。この経過措置の期限(令和8年5月31日)は、すでに過ぎています。現時点で機能強化型1を届け出るには、専門の研修を受けた看護師の配置が、経過措置なしで必要になっていると考えられます(現行の取り扱いは最新の告示でご確認ください)。
機能強化型3には、これとは別に「地域における人材育成等」の要件があります。地域の医療機関や訪問看護ステーションを対象にした研修(年2回)、地域の訪問看護ステーションや住民等への情報提供・相談の実績、地域の医療機関の看護職員の一定期間の勤務実績など、地域全体への貢献を評価する内容です。
介護・障害サービスとの連携も、要件になりますか
機能強化型1・2には、介護保険や障害福祉サービスとの連携に関する要件もあります。次のいずれかを満たす必要があります。
- 居宅介護支援事業所を同一敷地内に設置し、かつ、特に医療的な管理が必要な利用者の1割程度について、介護サービス等計画(ケアプラン)または介護予防サービス計画を作成していること
- 特定相談支援事業所または障害児相談支援事業所を同一敷地内に設置し、かつ、サービス等利用計画または障害児支援利用計画の作成が必要な利用者の1割程度について、計画を作成していること
機能強化型1には、さらに医療機関との共同に関する要件もあり、退院時共同指導の実績があること、併設医療機関以外の医師を主治医とする利用者が1割以上いることが求められます。訪問看護ステーション単独で完結する体制ではなく、ケアマネジメントや医療機関との連携体制まで含めて評価される点が、機能強化型のもう一つの特徴です。
なぜ機能強化型を作る意味があるのですか
機能強化型1・2の要件(手厚い看護職員数、ターミナルケア・重症児対応の実績、24時間対応、医療機関との連携)は、いずれも「地域の中で、他の医療機関や訪問看護ステーションでは対応しきれない、医療的なケアの必要性が高い利用者を積極的に受け入れる」という役割を評価する内容です。機能強化型3の人材育成の要件も、「自分の事業所の利用者を見るだけでなく、地域全体の訪問看護の担い手を増やす」という役割を評価しています。いずれも、地域医療における訪問看護の役割の一部を、その事業所が肩代わりしていることへの対価という位置づけで設計されています。
開業したばかりの事業所でも、機能強化型は目指せますか
現実的ではありません。看護職員4〜7人という人員規模、ターミナルケアや重症児対応の実績(前年度の件数、または常時の人数)、24時間対応の体制など、いずれも一定の期間をかけて積み上げる必要がある要件だからです。開業直後は、まず基本の管理療養費(機能強化型でない区分)で収支を成り立たせ、看護職員の採用と、重症度の高い利用者の受け入れ・看取りの実績を重ねながら、数年単位で機能強化型を目指す、という順序が現実的です。
訪問介護にも、似た構造の加算があります。訪問介護の特定事業所加算も、体制要件・人材要件・重度者対応要件の組み合わせで区分が決まり、開業直後は実績不足のため算定できません(訪問介護の特定事業所加算とは。要件をわかりやすく整理します。)。「体制を整えるだけでなく、利用者の実績が伴って初めて上乗せが取れる」という考え方は、介護保険・医療保険を問わず共通しています。
機能強化型を取ると、収入はどのくらい変わりますか
管理療養費は、月初日に1回だけ算定する費用のため、機能強化型と、機能強化型でない事業所との差額は、令和8年6月以降の単価で、利用者1人あたり月6,050円(機能強化型1)・2,750円(機能強化型2)・1,320円(機能強化型3)です(いずれも通常の7,710円との差額)。1人あたりの差額としては大きく見えないかもしれませんが、この単価は利用者の人数分、毎月積み重なります。たとえば医療保険の利用者が50人いる事業所であれば、機能強化型1で月30万円以上の差になる計算です(他の加算・単価との兼ね合いは考慮していない単純計算です)。
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開業資金全体の考え方や、医療保険・介護保険それぞれの基本的な仕組みは、こちらの記事でも解説しています(訪問看護ステーションの収入、介護保険と医療保険でどう計算するか。)。
よくある質問
Q. 機能強化型1・2・3のうち、目指しやすいのはどれですか
一概には言えませんが、機能強化型3は看護職員数の要件が4人以上と他の2区分より少なく、ターミナルケア・重症児の受け入れ実績も要件に含まれていません。ただし、代わりに地域への人材育成・情報提供という別の実績が必要になるため、単純に「簡単」というわけではありません。
Q. 機能強化型でない事業所は、この管理療養費を算定できませんか
算定できます。機能強化型の届出をしていない事業所も、通常の管理療養費(令和8年6月以降7,710円)を算定できます。機能強化型は、追加の体制・実績を整えた事業所が、より高い単価を選べる仕組みという位置づけです。
Q. 介護保険側にも、似た仕組みはありますか
あります。介護保険には「看護体制強化加算」という加算があり、緊急時訪問看護加算の算定割合や、特別管理加算の算定割合、ターミナルケアの実績などが要件になります。医療保険の機能強化型とは対象・要件が別の制度ですが、どちらも「一定の実績を積んだ事業所が上乗せを受けられる」という構造は共通しています。
Q. なぜ令和6年度改定時点の要件を使っているのですか、最新ではないのですか
この記事の単価は令和8年6月以降の最新のものですが、常勤看護職員数やターミナルケアの実績といった要件の細部は、確認できた公表資料の中で最も詳しい令和6年度改定時点のものです。単価が令和6年度から令和8年度にかけて変わっていることからも分かるとおり、要件の細部も改定のたびに見直される可能性があります。届出を検討する段階では、必ず最新の告示・通知で確認することをおすすめします。
Q. 機能強化型4という区分もあると聞きましたが、この記事に出てこないのはなぜですか
令和8年6月以降の単価表には、機能強化型4という区分(月初日9,030円・機能強化型3と同額)が存在します。ただし、この記事の情報源にした令和6年度改定時点の資料には、機能強化型4の記載が見当たらなかったため、具体的な要件を確認できていません。誤った情報を載せるより、この記事では機能強化型1〜3にとどめています。機能強化型4を検討する場合は、最新の告示・通知で個別に確認してください。
Q. 機能強化型を目指すなら、開業当初から何を意識しておくべきですか
看護職員の採用計画と、対応できる利用者の幅(重症度の高い利用者やターミナルケアへの対応力)を、開業当初から意識しておくことをおすすめします。要件のうち看護職員数は、採用が進めばすぐに満たせますが、ターミナルケアや重症児対応の実績は、実際に利用者を受け入れて積み重ねるしかありません。「いつか機能強化型を目指す」のであれば、開業初期の利用者の受け入れ方針にも影響してきます。
まとめ
- 機能強化型訪問看護管理療養費は、体制を整えた事業所が、通常より高い単価(令和8年6月以降:機能強化型1は13,760円、2は10,460円、3は9,030円、通常は7,710円)を算定できる仕組みです。
- 機能強化型1・2は、ターミナルケア・重症児対応など手厚い医療的ケアの体制を、機能強化型3は地域の人材育成等の役割を評価します。
- 看護職員数(常勤4〜7人以上)、24時間対応、重症度の高い利用者の受け入れ実績などが、共通・個別の要件になっています。
- 開業したばかりの事業所は、実績の蓄積が前提のため、機能強化型を届け出ることは現実的ではありません。
- 自分の事業所での収支への影響は、無料の収支シミュレーターで試算できます。
出典:厚生労働省「(参考)機能強化型訪問看護ステーションの要件等」(令和6年度診療報酬改定・Ⅱ-8 質の高い在宅医療・訪問看護の確保資料)、令和8年厚生労働省告示第74号(訪問看護療養費・令和8年6月1日〜)。要件・単価は改定により変わる場合があるため、実際に届出を検討する際は、最新の告示・通知・地方厚生局の案内でご確認ください。


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